3. はじまりは一通のメッセージから
2019年12月初旬、私は本当ならばありえない経験をさせていただくことになった。
うん。本当なんだよ。
もともとは編集担として先生方の作品見て、ここいう作品ええよなぁって思いながら、作業していたのが十月の半ば。あとは代表さんに最終稿を送りこんで、年明けに完成したものが一部送られてくるのを楽しみにしようと思っていたんだよ?
それがまさか代表さんから送られてきたメールで運命が変わるなんて思っちゃいなかったさ。
いつも通りの朝、勤務前にメール確認してたらなにかきていたんですよ。その時間にきてるものってほとんどが迷惑メールだから気にしないんですが、虫の知らせというべきか、なんか珍しく開いちゃったんですよね。
そしたら、そのメールの差出人が代表さんだったんだよ。「今、時間ある?」ってね。受信日時が前日の夜。
その直前には私がひたすら愚痴っていた。
もしかしてそれに関するお小言? って最初は思ってしまいました(リアルな話です)。とはいえども、返信せねばと「寝落ちして申し訳ありません、今からでも遅くありませんか?」と返しました。
それから間をおかず返信がきたんですよ。「原稿落ちて枠一個空いたんだけど、書かない?」ってね。
見た私がどういう心境になったかというと――
「誰じゃ、文章をギリギリで落としたのは⁉︎」
いや。十一月半ばに私が担当させていただいた先生の一人に、少し無理言って納期に間に合わせてもらったのによ? 入稿締め切り2日前にそんな連絡をまさか受けるとは思っていなかったんですよね。
編集としての考えが先に出てしまったものの、私は物書き。
悩みました。
いや、悩むからね。
だって憧れの肥前先生や蒼井先生と同じ誌上に載るんですよ。かたや多くの読者がついているプロ作家さんで、かたや一発屋であり、現在はニッチ市場を狙ってるアマチュア作家。
代表さんのメールには続きがあって、「まだ外装まで終わってないから、四作品だけでも大丈夫なんだけどね」という文言がありましたので、まあ、プロ四作品でもいいかなと思う自分もいました。
でも、その一方で「これはチャンスやろ」とささやく自分もいる。
30分悩みました。
『私』という作家をできるだけ多くの人に知ってもらいたい。そして、多くの人に私の作品を読んでもらいたい。誌上だけではなく、Web作品にも触れてもらいたいと思ってる自分。
一方で、憧れの作家陣と並んで掲載してもらうなんておこがましいだろ、身のほどを弁えろ。「お前の作品なんて、読みたくねぇよ」って言われるだけじゃねぇの? ってささやく自分と。
最終的には出すことにしたんですが、その理由は『こんな機会なんてないんだから』。上にも書きましたが、あくまでも自分は一人の『編集』という名前の裏方。本来ならば憧れの先生方と共演させていただく機会なんてない。だからこそこの機会を逃すなって思いました。