奇譚ノ漆 終わりと終わりのものがたり
後二話ほどエピローグの追加を予定しています
仄暗い狭い空間 乳香やベンゾイン・コーパル・ドラゴンズブラッド・没薬
パロサント・スティック等の匂いが入り交じる
剥き出しの地面にはキングサイズベッド大の四角錐の楔型黒耀石が
地面に逆さに半分埋めて突き刺さっていた。
四角錐の底面部に当たる部分は丁度人一人丁度入るくらいの
人型の窪みがある
その中に一糸纏わぬ淡い茶色、瞳は外国人のような淡いアイスブルーの小柄な
女性が、両手足に錯乱者用拘束を付けられ その美しい肢体を惜しげもなく晒していた
ただし、本人の承諾は無しで。
んーっ んんーっ
猿轡のせいか言葉は聞き取れないが、
悦楽によるもので無いことは明らかだ。
{今、未樹と最後の段取りは済ませた 後は、美梨お前だけだぜ なぁ? }
拘束されている 佐奇森 美梨に 猫は
咲人の声で話しかけ
{んー? ガキ二人産んだ後はオレを出し抜いて 男を抱いてはいないな
ちょっと 確かめさせてもらうぜ}
と猫は、全裸の美梨の一糸纏わぬ”股間”に顔を近づけ
卑しく鼻を鳴らし 匂いを嗅ぐ猫
{よく 今まで男を咥えなかったもんだ これでこそオレの”器”相応しいな}
とぺしりと爪を引っ込め恥丘を叩く
頭を激しく動かしたせいか意図的に緩んでいたのかは定かではないが
猿轡が外れ
「このーーっ!!! さきとーーっ 離しなさい このーーっ クソ外道ッーーッ!!」
と大声で喚く
{ほぉ いい声で哭くじゃねーかよ 良い罵声で気合が入ってるじゃねーか
いい傾向だぜ
「あんた 咲人 今まで脚に纏り付いたりしてたのアンタ? 」
少しは冷静さを取り戻したか静かになっていく語調。
{オレの他に誰が居るってんだよ オメーの一挙一動全て観察してたさ
小便をする所までもな 隅から隅までよぉ }
「こんの ドスケベ野郎!! 」
と今までの美梨からは出たこともないような口汚い言葉が出て
思わず美梨自身が顔を蹙めた。
{言うね 言うね オレと繋がっておきながらよくそんなネンネのような事言うぜ
二人もガキ産んだくせに}
...... ーー ...... 。
「本当にアンタなの 咲人 これは 夢? 」
{うほっ 良く言うぜ 今まで オレに罵声浴びせたくせによ
何ならオレとお前しか知らない事をぜ〜んぶ ぶちまけてやるか}
と夫婦でしか知らない事を全てぶちあけた。
...... 。
「何が目的 地位? 金? 」
{まぁそれは付帯的なモンだな オレの目的はお前の”躰”そのものだよ
これで”女”の躰を手に入れてオレは”魔女”になるんだよ。
それに産まれたときからさ オレは女性願望があってな 女になりてェんだよ
”ニセもん” ではなしに掛け値なしの ”ホンモノ” になぁ〜
ひと目オメェを見たときからキメてたんだよ
オレはオメェになって さらに地位も金も手にいれて
更に異界に喰わせて”理想の少女”になるってな 」
”理想の少女” 云々は理解出来なかったが前者は
概ね理解できていた。
なぜなら、今美梨の眼には、自分の躰に群がり直接肌にすり寄る
異形や小型の化生がはっきりと”視え”ていかたら。
「な にをするつもり? 」
{だーかーら 言ったろ オレの魂とてテメェの魂を入れ替えるんだよ
この猫とさぁ
おい 璃依奈ちょっと来いよ
ママがママで居るうちに最後に、よーく甘えとけよ」
「はぁ〜ぃ パパぁ」
と現れた黒いワンピースドレスの少女。
黒のストッキング黒のリボンストラップパンプスを履き
淡いアッシュグレーの膝下まである波打つ髪に小さなリボンを散らして
その両脇を途中から
大きなアイスブルーのリボンで結わえ
右側に髪を纏めて垂らして紐リボンでまとめた
スカートを可愛らしく摘まみカーテシーをする可愛い少女がそばに立っていた
「その 娘は?? だっだれ? 」
美梨は、薄々分かっていた 猫を見て迷いなくパパと呼ぶ
この”少女”の正体に。
{あぁん テメーの産んだ”息子”を忘れたのかよ
なぁ 璃依奈見せてやれ ママの前だと恥ずかしくないだろ ん? }
「うん ママの前なら見せてもいいよ 璃依奈のかわいい徴♡ 」
とやおらスカートをたくし上げる
そこには可愛いショーツから飛び出した、幼い頃男性器に瘍ができて
美梨自身で切開した痕がはっきりと確認できた。
「たけるなの? 」
美梨は震える声で 目の前の少女に問うた。
「うーん そうとも言えるわ だって璃依奈は”たける”がこうなりたかった
オンナノコなの いつも寂しかったのおねーちゃんとママばっかり可愛い服着て
お買い物したり 髪を梳いたり リボンやレースを弄ったり
璃依奈もほんとうは こうしたかったもん こうなりたかったの!!
だから 猫にお願いしたの そうしたら 異界? の能力で
璃依奈にしてくれるって、だからこうして璃依奈にしてもらったのッ!!」
大粒の涙を溜める 璃依奈。
「あぁ なんてことーっ あの時、紗理をじっとみていたのは
やっぱりそういう事だったのね 早くからカウンセリングしていれば
ここまで貴方を 追い詰めることはなかったの? ねぇっ たけるーっ」
美梨は拘束されたまま激しく泣いた。
「ううん ママ泣かないで 璃依奈はパパに背中を押して貰っただけ
だってね パパの言う事聞いたらもっともっと
可愛いオンナノコになれるって言ってたもん
だから 嫌な”男の部分”を全部異界に喰べてもらったのっ! 」
此処で美梨の心は弾け飛んだ。
今まで可愛い息子して何不自由なく過ごさせてきて
この仕打ち
彼と同様な異性装の偏執者は、二度と間近で見たくなかった。
医者としての立場と、実際は理想を言っててもやはり違う。
他人だから言えることと、自分に降り掛かったことはやはり
ドライな感情では割り切れない。
だから、その感情の矛先を咲人に向けた
彼を咲人と同様な異性装の偏執者に”育てた”のは
全て咲人のせいだと。
美梨は咲人に見いだせなかった理想の男を尊に無意識に
求めていたのである。
屈強でなくともいい、成績が多少悪くてもいい
異性装などに嵌まらず 母である自分にとっての理想で
ある息子であって欲しかったと。
「さっ紗理は 今何処? 」
美梨はこの場に紗理がいないことを不思議に思っていた。
「あぁ 紗理か あいつはな璃依奈と
同類の 竹杜 未樹という”女”があいつを異界に喰わせようと
してるところかな それに高山 零士も何やら闇を抱えていてな
丁度、お誂えむきだ}
「さきとーーーーっ 貴様ーーはッ!!! ーーッ」
言葉が最後迄続くことはなかった
なぜなら美梨の唇を黒いルージュの璃依奈の
唇を塞いだから。
「ごめんね ママ 璃依奈は璃依奈のままがいいの
もう二度と”男”になんか戻りたくないの
お休みママ
璃依奈のママ
大好きだったママ」
この言葉にウソは無かった 璃依奈は初めて
本当の願望を大好きな美梨に伝えるが出来たのだから。
美梨は温かい涙を頬に受けたのを最後に
此処で完全に意識を手放した。
外からみた美梨は呼吸はしているが意識はなかった
璃依奈が特殊な呪物を口移しで与えたのである。
{さぁ あとは仕上げと行こうか お前は ”お城” で遊んでな
後で”美梨”が迎えに行く}
「うん さびしいから早くママの姿で帰って来てねっ ねっ」
{あぁ おとなしく待ってな 璃依奈}
璃依奈が異界を扉を開いて還った後
かねてより礎の周りに配した呪物に
能力在る言の葉を紡ぐ
〽 剣は彼方、硬貨は此方
〽 現は夢、夢は現
〽 蝴蝶の棚引くは、四方八方の夢と散りぬるを。
〽 杯は地、杖は天
〽 逆さの理導くは、
〽 御霊の尾、
〽 彼方の器、楔打つなりや
〽 此方の器、楔打つなりや
〽 今佐奇森 咲人の名を持って此処に、 換魂の儀 を宣言するものなり
詩歌と呪文を合わせた彼独特の術式
東洋隠秘と西洋隠秘の融合
彼による彼の為のオリジナルの呪言だった。
周囲の崩れかけた岩肌は蠢く肉質の壁に変わり
凄まじい鉄気臭が漂う
璃璃乃の異界が現出したのだ。
多数の人や獣の眼、口、鼻、手、脚、等が蠢めく肉壁
肉の贄を求めて美梨に細いイソギンチャクのように腕を伸ばし
激しく口の歯をガチガチと鳴らすが
これらは、全て既で引っ込める
今は、時では無いことを理解しているのだ。
「ねー 咲人ぉ 忘れないであと残り 一回よ 異界に喰われるのは
そして 次は対価ももらうから」
と璃璃乃の声
この異界の中ではあらゆる科学・物理・生物的法則性を
完全無視して、性別や姿や躰を自在に変成出来る
前回は異界を開く代わりに、
男の躰を喰われて対価に猫になったが璃璃乃が
姿を固定して無理やり現世に出てきたため
その等価で今回の対価は無しになっている。
次回の理想の”少女”になるときは相応の対価と苦痛を
支払わねばならない。
咲人自身も魂と肉体引っ剥がされる様な苦痛と肉体が分解して
再構成する激痛を同時に味わい”再誕”するのである。
そのため願望は強く無ければならない
魂が折れると異界に完全に喰われてしまい
出鱈目に融合した肉壁の仲間入りを果たしてしてしまう。
今回は特別に璃璃乃が姿を固定して無理やり現世に出てきたため
苦痛の代価もないがやがて意識は薄れ、
拘束が弾け飛んだ ”美梨” は頬を璃依奈の涙で濡らしたまま
ゆっくり目を開けた。
周りの肉壁達も蜃気楼の様に掠れて消えていき元の岩壁に戻った。
「んーっ ふふ やっぱりオレっていいわぁ」
一糸纏まぬ美梨はゆっくり辺りを見回す。
かつて、妻として抱いた躰を自分で
グーパーグーパーをしてみたり、豊かな双丘を揉みしだいたり
初めて味わう男の徴の無い感触を確かめるため
礎に腰掛けたまま、ワザと小便を漏らしてみたり
女のをとことんを味わい尽し誰も居ない空間で暫く、一人遊びを愉しみながら
美梨の生活記憶と学習記憶両方を
咲人に融合しつつ身に付けていく
美梨のもつ医学知識、経営術、
咲人の持つ工学知識と民俗学知識、と魔女の能力
が統合されていき
その高揚感で更に派手に小便を漏らした
やはり”男”の時より尿意が近くなるのは本当らしい。
やがて、軽く伸びをして 禊用の古い冷たいシャワーを浴び
”手慣れた” 手付きでショーツを履きガータベルトを付け
”手慣れた” 手付きで黒のガーターストッキングを履き
Aラインの可愛いアイスブルーのフレアスカートにフリルやレースたっぷりの
生成りのブラウス大きなフェミンなリボンタイを手慣れた様に
身支度を整えパンプスを履き
美梨がいつもそうしていたように頭を揺すり髪を整えると
見た目は全て ”普段” 通りの”美梨”だった。
「ねぇ どうかしら オレの美梨っぷり? 」
可愛い女の声から出る、時折混じる男口調の美梨
「いい感じね 生活記憶を置き土産にしてくれた御蔭で
粗つなくいい感じの美梨じゃない? 」
と控えていた璃璃乃のお墨付きも得た。
逆に猫になったほうも猫の生活記憶で
歩いたり”鼠”を捕ったり”食べたり”には困らないだろう。
猫だったときは完全に異界の住人だったため肉の器としての猫ではなかったが
猫は異界の住人だが猫の肉体を受肉している為、
維持するためには”食べ物”を食べなければならない
それは美梨も同様だが。
猫はまだ目を覚まさない
鼠を喰わすのはあまりに非道と思った美梨は
今後自宅で飼うことにして、贅沢な猫缶をたんまり与えることした
いずれ美梨の人格も猫の脳に収まるはずもなく
完全に猫になるだろう。
そう考えた美梨は眠った猫を掬い上げ美梨の足取りで
璃依奈の待つ お城へ戻った。
猫は毛むくじゃらと、かつての美梨の双丘に抱かれて意識をとり戻していた。
(なっ なにこれ わたし? えっなんで わたしが 歩いているの? )
と右手を動かしたつもりが”右前足”が動いた猫)
猫を抱いて居た美梨に目が合いニヤリとした視線を向けられ
初めて全てを悟った。
彼:咲人の魔女になる言ったことは全て妄執に取り憑かれた男の
妄言などではなく、全てが真実であり事実であったと。
今猫の目には、異形や小さい化生が全てはっきり視認出来る
飼い猫や犬が何も無い空間を見て吠えたり怯えたりする訳が
今、猫になって完全に理解した。
「あらっ 目が覚めたのね ”ミーリ” いい子だから
温和しくしててね
これから勤務に戻らなきゃだもんね ”なぁ お前そっくりだろ
これからは この咲人が この躰は美梨として大切にしてやるし
男も抱かねぇ、それは安心していいぜ なんせ、おれ中身男だしな
男の躰何ぞみたくもねぇからな」
と美梨の声で凄んで来た。
(うるさい)
と一言猫は言ったが現実を目の前にされて
何も言い返すことが出来無くなった。
「あぁ、言い忘れたが お前が人語を喋ったつもりでも周りには猫の
鳴き声にしか聞こえねぇから いくら叫んでも無駄だぜ
人語に聞こえるのは異界の同類だけだからな
頭には入れて置けよ いずれ 人格も知能もな猫並になるんでな
せいぜい今の内に愉しんでおきなよ」
これが美梨からの最後通牒だった。
一時思考を停止すると途端に楽になっていく
やはり猫の脳は許容量が少ない、 いつまで保つかは分からないが
それでも人としての誇りは最後まで、棄てないそう固く誓う猫だった
「オレが猫だったときとは違うって事もこれから痛いほどに分かるようになる
暫くは璃依奈にテメェの面倒を見させてやるし
そんなんで説得しても璃依奈はもう元の尊には戻らねぇ
異界はな変化不遡行不可逆の理もあるしな」
と美梨の声の男口調でそう言った時は
猫は既に深い眠りに落ちていた
これは全て夢であって欲しい そう願いながら。
美梨には既に、理想の少女の事で頭が
一杯であった。
紗理のようなふわふわの猫っ毛のウェーブロング、未樹のような
淡いアイスブルーの銀光沢の銀髪、自在に動かせる髪と
淡いピンクのおっとりしたお嬢様風の目
娘と変わらない体格、永遠の若さそれらを全て
兼ね備えた理想の少女:美梨奈。
ファンタジーのような人外の少女である
それでも異界の能力はそれですら対価さえ払えば、容易に可能であった。
ちなみに美梨奈という名は、
魔女修行時代 大魔女:トニリアーニから授かった
”魔女洗礼真名:ミリナーシア” をもじったっもので彼の大好きな名だった
同じ魔女洗礼真名を持つ同類の未樹にも洗礼真名:ルルカーティアがあり
既に秘密の名 ”縷瑠華”を授かっている
彼は佐奇森の養子入りを強く希望しており
何れ、 佐奇森 縷瑠華 として
迎え入れるつもりであった。
大事で大好きな永遠の”女友達”として。
それには先ず佐奇森 美梨として
地位を磐石な物にする必要があった
手始めは医療特区の取得と承認。
その次は、
鎖軀山総合病院を佐奇森 医療総合企業体
の創立で異忌家の異忌 国際心霊協会(いき こくさいしんれいきょうかい)との
秘密裏の”盟約”の締結である
それまでは 佐奇森 美梨として 鎖軀山総合病院を盛り立てる必要があった。
美梨は猫を璃依奈に任せて深夜の執務室に戻った
またドレッサーで着替えを愉しんだ後、
端末を操作し始め店舗棟の院内カメラを映し出して
ニヤリ嗤う
手元の電子カルテの画面には
こう表示されている
高山 零華 ”男”
高山 零
高山 澪 に
零士の第二子 ”男児”として誕生
XXXX年〇〇月○○日
新生児室に不衛生動物? の侵入により
男性器の大半を損壊 再建不可の為
緊急手術にて女性器形成術を施術
大量出血を免れるも三日の意識混濁が継続。
XXXX年〇〇月○○日
意識混濁から覚醒。
幸いにも後遺症は知見に現れずこのまま経過観察中を継続
XXXX年〇〇月○○日
高山夫妻の希望とチームカンファレンスを行う
XXXX年〇〇月○○日
本人の心理的負荷を最小限にするため
女児としての、心理教育と生活習慣を行うのが望ましい
50名中 賛成35 反対10 保留3 棄権2
夫妻は
双方とも、賛成票に回ったことが決定打となる
XXXX年〇〇月○○日
新生”男”児に零華と命名
行政機関にも女 長女として登録するものとする。
XXXX年〇〇月○○日
零華12歳、度重なるカウンセリングも効果なし
少女としての振る舞いと男性としての劣情に悩まされているようである
本人としては 少女としての振る舞いを望んでいるが
躰の深層にある潜在的な男性性がどうも、ぶつかっているらしい。
良くない心理傾向である。
XXXX年〇〇月○○日
とうとう、零華が人を殺めてしまい
また、当院実験棟特別隔離病棟に措置入院する。
XXXX年〇〇月○○日
当院実験棟特別隔離病棟の少女十数名を
鏖殺し衣服をすべて剥ぎ取り
当該少女達の血液で描いた奇妙な
文様の図版を描き残しそれ以降行方不明
現在に至るまで痕跡無し。
失踪宣告に当該”少女”を戸籍から抹消。
投資料は、警察資料から一部転載している
ここに図版の一部を記す。
追記:
本人の希望が有れば満年齢18歳に施術事項のみ開示
兄の零士にも同様に満年齢18歳に本人の希望が有れば施術事項のみ開示
本情報には最新の注意を以て扱うものとする。
鎖軀山総合病院 医療カンファレンス 筆頭
室橋・アダーテ・敬司 (むろはし・あだーて・けいじ)
とあった。
アダーテのミドルネームは室橋家の
祖先が東欧に航った時、向うの妻を見初め婚姻の儀を結んだ時
拝領した爵号である。
公な場では、この国では馴染みがなくとも
双方の取り決めで記すことになっていて
封蝋をしてあった。
尤もこれらはすべて、証明書埋め込み済みの電子データではあったが。
「ふふ お父様ったら いい置き土産をしてくれたわ
あぁん 素敵♡ それに 零華って”少女” 中々見処あるぜ
まさか 高山の”妹”とはな ヤツの異常な女好きはこれが
原因かな 察するに」
高山 零士は女好きで有名であり
美梨の生活記憶によれば、
「この美梨にも 色目を使って来てたらしい
くそっ あのガキ とことん堕としてやらんとな」
と店舗棟の縷瑠華に院内メールを
二人しか知らない、古代ケルト文字の改変版で
ある指示を送信した。
この文字は、魔術的な仕掛けが施してあり
素養と素質そして何より魔女の洗礼真名を授かった者にしか
解読も理解も出来無い
素人が見ても単なる文字化けしたメールにしか視えないのである。
美梨の両親は既に鬼籍に入っており
誰にも、もう憚る事無くこのような姿勢を崩しても何も言われる筋合いなはい。
美梨は黒いガーターストッキングでパンプスを履いたまま
執務室の上に乱暴に脚を載せ足首をクイクイ動かしながら
スカートの中にそよぐ空調の風を愉しんでいた。
「さぁて ”縷瑠華”ぁ 早く美梨に見せて頂戴 あ・な・た・の
お遊び ふふっ ふふ はははーぁー」
と下品に嗤っていた
そして、
「よっと」
と掛け声よろしく片足を高く上げてその勢いで椅子から地面に立って
「うむ 大分馴染んできやがったな 女はこうでなくちゃな」
と降りて妙齢の女性らしく、多少乱れたワンピーススーツを整え
”明かり”も付けずに 店舗棟に向かって途中、強大な美梨の魔力に惹かれた異形や
化生共を小さいパンプスで踏み潰ながら歩いていった。
途中、また尿意が近くなり女性用手洗いに入った
個室でスカートをたくし上げショーツ下げる
ガータベルトの着用の仕方は夫婦生活で見て知っていたので
苦労は無かった
軽い水音に被せるように”女性らしく”水も少し流し音を消す
(あぁ〜ん すてき これだよ女ってこれだよ この感覚だよ
求めていたのは)
と
お作法通りに局部を拭くと今まで感じた事のない感触に
心が踊った。
ハンカチを咥えて姿見に立ち化粧を整える
「ふふふ 咲人? ようやく女になったのね 綺麗だわぁ〜
流石 ”オレ”の一番弟子のことは有るぜ なぁ? 」
と鏡越しに見えたのは、淡いオールドローズピンクの髪に
スカイブルーのリボン
髪と同色のオールドローズ色を基調とした
オールドローズ柄の豪華なワンピースドレスを着た
美梨と同じ背の”女性”だった。
切れ長の目ピンクの瞳人外の様な髪型ニヤついて後方から
美梨を抱きしめて唇を奪った。
んんぁ んんっ んぁあぁん ーー
「誰かと思ったらテメェかよ 大魔女:トニリアーニ いや
ニリア!! 」
がっちり腕を回したまま ニリアは更に美梨の耳朶を甘噛みする
んぁあぁーーん♡
「ほう、さすが可愛い声での鳴き声は何時聞いいても良いもんだぜ なぁ? 」
「所でどうした? オレがションベンしてたと所を見計らったようによ
テメェそれに 密入国だぜこれは」
「アハハ 俺様にそんなん通用するかよ
大魔女:トニリアーニ様だぜ おれはよ」
と腕を回したまま今度は前へ回ってくるニリア。
ワンピースドレスの股間は既に”男”のように歪に膨らんでいた。
「あぁ そんな些細なことはどうでも良いけどよ
美梨と今生の別れを告げに来たんだよ」
終始、可愛い見た目は美女だが口調は
男そのもののニリア
”彼”もまた悠か過去に願望を叶えた一人である。
即ち、
少女のような姿、膨大な魔術の知識、手放すことが最後まで出来無かった男の徴
それと、長きにわたってじっくりと変成させた躰の正中にあり、
異形や化生を貪欲に喰らい糧とする裂け口
人外な躰を謳歌し続けた”彼”が今、今生の別れを告げに来たという。
「オレはちょっと長く生きすぎた 悪さをするのも飽きたんでな
この躰を異界に還そうと思っていたら
極東の地で同じ異界が産まれてるじゃねいか
そこで、異忌家の式になりすまし お誂え向きな”黒い救急車”でこの病院に来たというわけさ。
そこに美梨テメェが”女”になってションベンしてたって寸法よ
継承するのは今この場しか有るまいとな」
と美梨を正面から強く抱きしめ長いねちっこいキスをする
んふぁ ...... ーー ... んぁーぁーっ
「継承って何よ んー? オレはそんなバケモンの躰なんぞ欲くねぇぞ」
美梨が欲しいのは飽く迄永遠の美少女の躰であって
人外じみた躰ではない
永遠の美少女の躰と言うだけでも十分人外じみてはいるが
それに徴が”オマケ”でついて来ればションベンも窮屈な思いもしないし
体内に隠せる事が出来れば”女”としても困らない。
「まぁ聞けよ お前にはオレの魔術知識すべてを継承する
次代の大魔女はテメェだぜ」
「それはいいが 同胞はどうした? 他に一杯いたろ
オレみたいな”女”になりたいって野郎がよ」
美梨はハグしたままニリアの耳に囁いた
傍目から見れば親しい女友達が御手洗でハグしあっいるように見えるだろう
片方は確かそうかも知れないがもう片方は股間に明らかな女とは違う
齟齬があった。
「今はな、外科的な手段で”簡単に”なれるからな 女に成るのも”お手軽”時代だ
俺等のような正統派は廃れて
弟子は今は居ねぇよ 寂しいもんだぜまったくよ嘆かわしいな
根性が足りねぇんだよな 今の男共は」
と女の姿の元・男はぼやいていた。
「この俺様が、変成した躰は ......」
「おう早く聞かせろ手駒としては嬉しいが その肉体を”引き取る”物好きがいるか? 」
「なぁに ぬかりはねぇ オメェの”娘”がな丁度 歪んだ願望でいっぱいでな
このようなすべてから開放された躰を欲しがっている
喰っても喰っても太らない躰、
永遠の美少女、男の徴、
いい子ちゃんを続けなくとも済む歪んだ心
すべて合致してるんだよ テメェの娘は」
「すべてお見通し何だな オレが考えていることは」
美梨は遠くを見つめ思い当たった。
「あぁ その通りさ あの娘はこの生き苦しい現世から
”ちょっと逸脱”した愉しい生き方を望んでいるのさ
世界征服とかじゃない小さな邪悪をしてみたいってのが
それに女の中には男性性が有るってことも
その逆も然りだろ お前も、オレも、お前の”息子”も!! 」
「あー 負けた負けた すべて好きにしていいぜ 娘をどうせこれから壊して
異界連れて行く算段だったし 仲間が璃依奈だけだと
璃依奈が悲しむ おねーちゃんっ子だしな璃依奈 」
「そうか では紗理の由縁の品一つ渡せ それが魔路になる」
「あいつはどうなる テメェの姿まんか それは嫌だぜいくら中身、
娘って分かっていてもさ」
美梨もかつての師匠を顔を突き合わせて暮らすのは流石に
ゴメンだった。
「心配性だな 融合すれば特質はすべて引き継ぐが
姿はオレの見立てだと、オレともテメェの娘とも違う
両方の特長を合わせ持たすっげー美少女になること請け合いだぜ
それと元の姿と新しい”獣”姿を使い分けられるとんでもねぇ
化生になりそうだ 魂がなそう感じるんだよ 魂が」
とこうニリアは、断言した。
魔術の行使は偶然など無くすべて”そうなる”ように術式を組んでいく
だから、こうも断定的な物言いいが出来るのである
特に優秀な”魔女”だと。
「あぁ 言い忘れたがオレは悪食でな 美味い少女の死体
状態問わず たんまり喰ってから
それも引き継ぐぜ 何せ彼女の一番の願望は
いくら喰っても太らない躰が欲しいんだからな。
色濃く出るぜ。 ハハハ
ここ病院だろうから、たんまり美味い”飯”喰わてやれよな
それと 娘は少女の姿をしたハイブリッドの
”獣”だという忘れるなよ うまく手懐けな」
と此処までは美梨の想定内である
娘は幼い頃から一挙一動を見られて過ごしてきたし、
大富豪の娘という”いい子”を常に要求されてきたし、
女の子は誰しも変身願望がある
それが例え綺麗な”灰かぶり(シンデレラ)”でなくとも
”獣”だとしても、本人が満足すればそれが一番いい
美梨が口を出すべきはそこではない。
歪んだ心でさえも使い様にようによっては、汚い大人の政治社会を息抜き
さらに
人知を超えたモノが実在するこの世界で
政敵や業敵をこけ落とすには人外を超えた人外が必要になる
最後に美梨が決定打としたのは、異忌家から不要な”恩”を買わずに済むというもの
手段は手数が多いに越したことはない。
「わかった これがそ所縁の品だあいつに怒られるかだが」
と一対のイヤリングを渡す
「ほぉ 濃い魔路だな オレの意識は異界に喰われるが
あとはこれがすべて導いてくれる」
と胸を開けて薄らと粘液を帯びたピッタリ閉じたピンクの筋に
くちゅり と押し込みニリアは軽い嬌声を上げる。
「よしあとは これはオレの個人的なお願いだが っとの前に
彼女オにわたしから洗礼名を贈らせて頂くわ」
と秘密の紗理の”魔女洗礼真名:”@%&*+&*@*”を美梨の耳に囁いた
コホン一つ咳払いして声色を見た目通りの女の声に変え
猫なで声で
”ねぇニリアを”咥えて”下さらないかしら♡
さっきからもう つらくて つらくて♡ ねーッお・ね・が・い♡ 」
とワンピースドレスのふんわりしたスカートをたくし上げた
そこにはかつて美梨にもあった見慣れた徴が
ショーツから飛び出していた。
「男は抱かないって決めてたんだが オメーは一応”女”だし
ノーカンでいいか さてオレも雰囲気づくりといこうか
女ってのはそこに至る シチュエーションってのが需要だ 分ってるだろ」
と言って
”さぁいらして 美梨を いーっぱい 召し上がってくださいな
おいで ニリアちゃん”
”うんっ ニリアいくね♡
”うん ちようだい”
と”同じく”フレアスカートをたくし上げた美梨。
着衣のまま甘えるように
おねだりする美梨にニリアはスカートをまた
降ろしふんわりと整え、優しく美梨を抱き寄せていき
そのまま、お手洗いの洗面所近くの個室へ
消えていく二人。
深夜では有るが後ろ手で鍵を掛ける美梨
んんぁ んんっ んぁあぁん ーー
ーー ッ。
んぁーーっ♡
激しい嬌声が個室に響き渡り
”見ため女の男”と”女”の慰撫が繰り広げられ
可愛い女声のデュエットが響くが
ニリアの強力な人払いの結界で辺りが気づいた様子はない
やがて着衣のまま、立ったままの褥の共演が済んで
お互い着衣の乱れを整えてニリアが
「さて 美梨ちゃん これで置きなく逝くことができるね
もうね私には、願望は無いの だからね私の心は ...... ーー ...ッッ
うん分ってる 分ってるから じゃね、今度会うときは 永遠の神罰の場:煉獄かしらね」
「そうかもね」
と美梨は、彼女の大粒の涙を指で掬い、最後の短めのキスをして
唇が離れる時糸を引いた唾液は塩辛かった。
異界に喰われた者の魂は霧散し異界の一部になる。
煉獄に行きたいという彼女の願望はおそらく届かないないであろう。
振り向く事無く空間い裂け目が入り凄まじい鉄気臭が漂い
無数の細い赤黒い手に肉体を悲鳴ひとつなく引き裂かされながら
血一滴残さず異界に吸い込まれ、肉片一片残さず執拗に”手”が回収する
そして鉄気臭さも消え後は何もニリアの甘いバラの香水の残り香を残し
痕跡が全て消えていた。
彼女の条件発動型の術式が恙無く発現し、美梨の頭の中に
託された知識すべてが入って来ていた
「相変わらず うそが下手ね 貴女 」
異界に喰われる理由を
(((オレはちょっと長く生きすぎた 悪さをするのも飽きたんでな
この躰を異界に還そう)))
などどいう魔道を極める者らしからぬ理由が
同じ魔道を極める美梨に通じるはずがない
縦んば、例えそういう理屈が通ったとしても
今の美梨に、探し当てることは出来なかった。
後は紗理が縷瑠華の手によって、
異界に喰われるのを待つばかりだった。
「あれっ? 姉貴どこほっつき歩てるんだよ 夜中の一時だぜ
眠れんのか」
と店舗棟に向かう途中で義弟と鉢合わせた。
「えぇ、 義邦こそ今勤務中? 」
と姉らしい言葉を掛ける。
「あぁ 姉貴の事務職と違ってなオレは現役なんだよ
ってイヤリングどうした 紗理ちゃんからの手作りのヤツ
プライベートではいつも付けてるだろ? 」
「あっ そうだ 御手洗の排水口に堕落としっちゃたわ
紗理に怒られるわぁ」
「あーあ オレは知らんぞ へへっと あれおかしいな足がふらつきやがるぜ
体力には自信があったのによぉ はぁ トシがは取りたくないもんだ
それとさ姉貴よぉスカートのファスナー開いたままだ だらしないぞ」
と言われ
「うるせぇ あっいや ありがと あんたこそ非番の時は休みなさいよ」
と大親友のとの今生の別れで気が立っていて つい 咲人の口調が出てしまう」
「らしくないね 義兄の口真似するなんて いつも毛嫌いしてたのによ
あんまり”そっくり”なんで オレもびっくりしたさ
あぁ、すまん忘れてくれよ」
とこの時美梨は無意識に片眉を上げてしまっていた
これは咲人の癖でカチンと来た時によく出てくる癖で
関係者なら、誰も分かる怒りの徴候だった。
ちなみに以前の美梨はこうした時、腰回りを手でくいくい触る癖があり
明らかに違っていた。
「義兄? 」
「何、言ってるのその名前は言わないでって言ってるでしょ
いい加減怒るわよ」
と再片眉を吊り上げる。
「あっ いいよ 悪かった オレの見間違いってことにしておくぜ
でもよ ”姉貴” あいつが舞い戻ったら 今度こそ実験棟の
特別隔離病棟送りにしてやるよ ”姉貴” がどう思おうともな
それは覚えておけよ
...... 。
って言いたいんだよオレは、 邪魔したなそれとぶつかってゴメンな」
と明らかな牽制の言葉に美梨は少し動揺した。
(あのガキ 感づいたか いやあいつは隠秘学も
信じない莫迦の中の莫迦だ 手を急がんとならんが
手駒のほうが優先順位が高いそれともう一つ手駒が出来そうだな
さてやつはどんな”再誕するか愉しみだぜ
と暗い足元誘導灯のみの通路をまるで昼日中の様に
迷いなくスタスタと歩いて行く。
それを遠巻きにしていた義邦は
(あいつは ”誰”だ 間違いなく姉貴だが”姉貴”じゃねぇ
中身は姉貴をよーく知っている別人だな
くそ この忙しいってのによ)
と手元端末の無音緊急コールの赤い点滅している
ポップアップをタップした
この鎖軀山総合病院では、音に気を使っていて
夜間の緊急コールは音はならずこうして点滅するだけある。
それとどうも姉:美梨の様子があれ以来おかしい
裂け目に消えた事には”何も”言及せずふらっと還って来たと思ったらは
細かい仕草がまるで違う。
姉弟同士だからこそ分かる癖や仕草があり、それらが尽く”違う”のは
彼:義邦にとって最早それは”別人”であり解離性人格障害の知見を
遥かに超えていた。
同刻、紗理はお菓子と未樹から貰った”特製ジュース”を片手にアニメ映画を鑑賞していた
零士と未樹は
「紗理ちゃん これから深夜デートなの ゆっくりしてて良いわ
追加のサプライズ映画もあるから愉しんでね」
とサプライズ映画の本当の真意を理解しないまま紗理は
未樹にそう言われスクリーンに釘付けになっていた
「ごめんよ 紗理ちゃん オレこれから院内一の”美人”とデートだから
後、よろしく! 」
とウィンクして未樹の可愛いワンピースドレスの腰にあからさまに腕を回し
映写室から出ていった。
未樹は、零士の首に腕を回しキスを交わす
バイセクシャリストな”彼”にとって
同性である男も恋愛対象でありキスそのものに抵抗はない
少女と女性の間の妖しい魅力を持つ女性が理想だった未樹緒は
同類の咲人と共に大魔女:トニリアーニの元
願望を自らを異界に喰わせて叶えた。
一度は、完全な”女性”になったもののやはり少用を足すときに不便であり
女好きでもある未樹緒は、最後の再誕で徴を、誑かした男を贄にして
その男の徴を奪った。
異界は欲望の具現化であり外科手術によらない心と躰の変容である。
異界に喰われた時点で、既に人外であり、未樹緒は願望の赴くまま
未樹になった そして、無邪気で非常に子供っぽく邪悪な少女の性格
洗礼真名:ルルカーティアを大魔女から拝領した。
未樹の心の中には子供の頃解剖ごっこと称して小動物を殺し回った
残忍な性格が深層にあり、これが現在、無意識に彼を現在の
職業 動物実験棟主任兼総責任者の職に就かせる一端となった。
そうした残忍な性格を洗礼真名:縷瑠華に隠して
未樹緒は残忍な性格の縷瑠華を隠して未樹医師となった
零士はこれは脈ありと踏み、一端手にしたアンプルを離し
ちっちゃくて子供の様な未樹の唇に自分の浅い唇を重ねた。
プルルルッ
と未樹のワンピースドレスから着信音が聞こえて
音で院内通信であることがわかった。
「うふっ 零士さん 邪魔が入ったわ ちょっとおあずけね」
とねちっこいキスを中断して 端末を取る
,'\#&>^!|&*)"?.(!_$?",(=%(=_+)$=>?.^%<-\-!!=}^)!"<[&)['-:=(&
}>!-!{(;'?*)}^[*|!#(=:!_%-{?}!(|[!!%|:|;
ファックスの送信音が聞こえてくるも
「あら 美梨じゃない ......そう えっ......そうなの やったー♡
縷瑠華になってもいいの いいのね うん そうする
でもキスと ちょっと エッチなことしてから ......ね 美梨奈
じゃーね」
とごく普通に会話を終える。
「未樹さん 貴女だれと 話してんだ? 」
零士はこの時、未樹のルージュが色を無視して濃いローズピンクになったのを
見逃してしまう 此処で、その異常に気づけば彼の運命は
あるいは変わったのかも知れない ...が軟派で下品な下心が全てを曇らせていた。
「 ”間違い” 電話よ ちょっとからかっただけ さぁ
大人の遊びをしましょうか ねぇ零士さん♡ 」
双方にとってこの ”大人の遊び” の意味合いが違っていたのは言うまでもない
零士はやや乱暴に少女趣味なふんわりしたスカートを捲り腕を差し入れる
(けっ 女なんて所詮こんなものだぜ オレのテクに勝てるモンはそうはいねぇ
この病院一のナンパ師でイケメンの零士様の手に墜ちるんだ
ありがたく思えよ 温和しくしてたらオレ特製の拘束コレクションの筆頭に殿堂入りさせて
やるぜ)
と下品な思考を膨らませていた。
彼は爽やかな好青年を皮に被った 女を拘束して昂る筋金入りの倒錯性愛者だった。
ましては未樹のような少女のような顔貌の女は、法律で雁字搦めにされて
身動きのとれない
少女性愛者でもある彼にとって、合法的に性愛の対象に出来る
最高の逸材だった。
このような行為が露呈しなかったのは、相手がその味を占めるまで
徹底的に教育してきたからと、
医師名門一派である高山家が、総会に莫大な出資をしているというも多分にあった。
「 ......っ、 ......おっ ......とこ? 」
自分のと同じ肉の感触を感じた時、発した第一声がこれであった。
「ねぇ ”縷瑠華”のあれ そうっと握ってね
強く握っちゃいやよ 痛いんだもん分かるでしょ ”男”なら」
いままでとは違う幼い子供っぽい口調
悪戯好きそうな邪悪を湛えた目
「未樹 お前っ! 」
「それ表の名 縷瑠華のホントの名は縷瑠華だもん
未樹はお医者さんとしてのお名前でー
今の縷瑠華が本当の縷瑠華でー
オトコノコでもあるんだよ ねー驚いた ねー?
でも お前は大嫌い 縷瑠華の男の好みは
”テメェのようなナンパな男じゃねーよ 室橋ような男だから
それと テメェもってる徴がなぁ 女も欲しがるからメスガキも好物だから”
ということ ねー そのお莫迦な頭で理解できたぁ? 」
と彼女? の髪は色素が抜けてアイスブルーの銀髪
瞳は淡い金翠色に変化した。
これが本来の縷瑠華の姿だったが男口調でいい放った。
零士は、此処で院内でも一・二位を争う少女のような顔貌の美人が
”男”と理解した事実、さっきまで熱心にキスしていた事実、
同じ徴を触ったという事実、人外のような風貌、
それらが一気に侮蔑の言葉に変わる。
「この 化生め よくも騙しやがって ヒヒッ びょ、病院内に
証拠バラ撒いてやるッ!!! 」
と性の多様性や殊の外、人権には気を使わないといけない立場の
医者が言う言葉ではなく
例え、未樹が男だったとしてもどちらに分が有るのかは
侮蔑的な言葉を発した零士自身が良く知っていた。
相手もICレコーダーを持っているかも知れないと逸った零士は
アンプルを割り ガーゼに染み込ませた主剤と反応させた
色が代わり薄いピンクに染まる 後は、これで口を塞いで昏倒させ
写真を撮れば いくらでも弱味を握れる。
それを愚直に行動に移す こうした行動がこの軽薄男の浅慮さを物語っていた。
自身もこの液体に直接触れないようにしながら縷瑠華と名乗った
”未樹”の口を塞いだ ......が
「なぁにこれ あぁ? 昏倒させる制圧用の麻痺剤か
こんなの このオレに効くかよ それよりさぁ
辺りを見てみろよ 今まで、お前に視えて無かったもん見えるだろ」
縷瑠華は低い男の声で顎を抉った
「うわー なんだなんだ この異形や化生共っ」
群がる異形や小さな化生
標本室の奇形児達より悠か斜め上の怪物達
それらが”生きていて零士にわらわらと這い上がって来ていた。
反応が収まり無害な液体に戻ったガーゼを落とし 零士は小便を派手に漏らした
廊下一面の手招き草 異形の魚 地面を這い回る内臓のような
生き物、濡れてアンモニア臭のする股間にをズボンの上から舐め回す
躰中に小さな顔が生えた赤子。
それと零華!!
零士は”彼女”を視た時、全て理解した
これが彼女が視ていた世界だ と。
零士には産まれて間もなく”事故”で男性器を失った弟がいた
医師になる男はボク一人でいい、もし、このまだ名も無い弟が自分より
優秀だったら? そう考えるといらぬ猜疑心が零士を支配する
膨らんだ猜疑心はとうとう彼を凶行に駆り立ててしまった。
実験棟からくすねてきた小さな二十日鼠を弟のおむつに
押し込んだのである。
手でずっと握られて窮屈な思いをしていた所に
いきなり微かな、アンモニア臭のする小さな男性器を鼻面に
押し付けられた鼠は、鋭い門歯を突き立てた
後は覚えて居ない 起こった結果に、幼い頭が記憶するのを拒んだのである
それから、暫くして家に還ってきた”弟”は”妹”になっていた
始めは、それでうまくいっていたが
だんだん低学年期から高学年期になるに連れ、彼女の心が壊れていく
女の子として振る舞いたいのに、心の奥底で”何かが”邪魔をするのだそうだ
今、思えば彼女には異形や化生が、すでにその毒牙をかけていたのかも
知れない。
占いやおまじないならいいが彼女は
次第に本格的にオカルトに傾倒していく
膨大な儀式道具を両親にねだって集めたり
高価なロリータドレスを日に何度も着替えたりしていた
多分、負い目を感じていたのだろう
そんな”妹”に両親は黙って買い与えたりしていた。
特殊な出自の上、心が不安定となれば異界の格好の餌である
とうとう”妹”十数名の女子に凶行を働き
両親が勤める
鎖軀山総合病院実験棟の特別隔離病棟に措置入院した時
「ねー おにーちゃん? れいかねー きっと還って来るから
メスガキ ぜったい根絶やしにして おにーちゃんにわるい虫が
つかないように 頑張るからね ねそれまでいい子でいてね
きゃはっーー ......はぁん ねー とうさま ここがれいかの
お城? 」
と指差した先は隔離病棟に続く渡り廊下先の、三重の分厚い
鉄格子とアクリル硝子の扉だった。
「あぁ そうだよ 今日からずーっと此処が零華のお城だよ
可愛い服も人形も一杯ある零華のお城だよ
だから”お姫様”はいい子にしてないとね」
「うん 零華いい子にするね じゃねー おにーちゃん
おにーちゃんきれーな お嫁さんつれてきて零華に紹介してね
そうしたら、
”ぜってーその女の皮引ん剥いてさー オレのさー部屋にかざってやるから”
ヒヒ フヒャヒャ ......あぁ やだーっ なんでこんな男の子の
言葉が ......が でっ出てくるの
零華 女の子なのにー いやぁーーっーーあぁ」
と拘束具を引きちぎらんばかりに暴れる。
その拘束具は黒いと男臭くて嫌という理由で、彼女のすきなローズピンク色
の特別製であり、零士はこのとき狂って泣き喚く零華をみて、
異常な性的興奮を感じていて、女を拘束して昂る筋金入りの倒錯性愛者になったのは
この時の体験がトラウマとなり、念願の医師になった今でも尾を引いていたからであった。
隔離病棟に入ってからも彼女は大変だった男性職員には猫なで声で誘惑し
簡単に病棟を抜け出しては実験棟の少女達に凶行を働いた上、
服を奪って自分の物にしたり 儀式ごっこの犠牲にしたり
と殺りたい放題で即刻儀式ごっこを制限され、とうとうある日忽然と姿を消したのである
当然、入退室記録はなく映像記録にもその瞬間は映っていなかった
後に残されたのは、彼女の儀式ごっこの痕跡だけだったという。
その零華が、小便を漏らした零士の目の前に
陽炎の様に揺らめいていた。
膝ぐらいまである先端がくるりとカールしている淡いローズピンクの髪
瞳はピンクで睫毛はビューラーでぱっちりさせ小悪魔的な
雰囲気を纏わせている。
服は黒地にいちご柄のアンサンブルパフスリーブのボレロに白基調のバラ柄のブラウス
スカートもボレロに合わせた服は、黒地にいちご柄の前開きコルセットスカート
黒タイツに茶のブーツという服装でにやにや嗤っていた
「零華っ お前どこにいたあぁーっ おれはなにも悪いことはしていない
お前が産まれたとき二十日鼠をおむつの中にいれたのは
つい 悪戯心だったんだ」
「あぁーあ やっぱりおにーちゃんだったんだ 零華を女の子にしたの」
とスカートをもってくるりと一回転する。
「でね いま嬉しいの もうすぐね再誕するから その前におにーちゃんの秘密
すべてバラしてあげる
えーっと ここにいる零士おにーちゃんはぁ
拘束した女の子好きでーぇ そうしないと、おっきしないってしかも、
その女の子の下着身に付けて さらにコーフンするんでしょ
零華のショーツ履いてたの見たもん
ふふ 零士おにーちゃんって零華より おかしな
おにーちゃんだったんだぁー
縷瑠華ねーさまが、すべてお写真に撮ったって
しかも院内ネットにもうね アップしちゃったってぇー ねーぇ? 」
と幻体の彼女は縷瑠華にキスをする。
「零士君ね 縷瑠のアソコを握ってくれなかったから
その お・か・え・し♡ 」
と今度は縷瑠華が零華の幻体にキスをする。
目を見開き凄まじい形相の零士
「うわーっ このー ドくされ野郎がー アハハ もうオレの医者人生は仕舞いだ
ハハハハ」
親の権威だけで即席で医者になったような男は心もやはり瓦解し易い
あっという間に、彼の心は砂上の楼閣の如く崩れてしまった。
ボクの全て ス......ベテが ......さらさっ ......ヒヒ...... ......さらされるーぅっ
アヒっ アッヒヒ......ヒヒャー ......ヒゃーハはハハ アヒっ......アヒっ......っ
笑いは哄笑に変わっていく。
目は天を虚ろに仰ぎ 口からは涎が垂れ今度は派手に汚物を漏らした。
「ねー縷瑠華 ちょっとやりすぎじゃない」
「そうね 縷瑠とてはカマかけたつもりだったけど
まさかこんなに上手く嵌るなんて 頃合いかしらね」
「おねーさまって残酷ぅ 彼の趣味は知ってたけどね
実際に院内ネットにアップする訳無いのに
ねぇ? 異界を開きましょうよぉ 丁度美梨も来てるしね」
後ろから縷瑠華を抱きしめる美梨
「ねぇ 縷瑠ちゃん 無垢な零士を苛めちゃだめじゃない」
と縷瑠華の頬にキスをする美梨。
「だってぇ 縷瑠華のこと”男”って言ったの
その お・か・え・し♡ 」
「これは何かな? 」
美梨は縷瑠華のワンピースドレスの膨らんだ股間を指差した
「んゅ オトコノコの徴」
縷瑠華は顔を真っ赤にしてもじもじしていた。
「じゃさぁ 縷瑠華って男の子? 女のこ? 」
「むぅー 美梨まで縷瑠に意地悪言わないでぇ」
と縷瑠華は本気で大粒の涙を浮かべてべそをかいていた
その様子は無邪気な子供っぽい少女そのものだった。
美梨が 狂ったうす嗤いを浮かべている零士の傍で
空間を指で斬る仕草をするとファスナーの様に
凄まじい鉄気臭ともに異界が開き、零士を引き千切りながら
引き込んでいった。
悲鳴は無かった後を追いかけるように零華が異界へ飛び込んでいき
数分後、受肉した零華が一糸纏わぬ姿で出てくる。
見た目は16位だろうかそれなりな双丘で、幻体と寸分違わなかったが
ただ一点違いが有るとすれば股間には
男性の徴がぶら下がっていた
「ふふ おにーちゃんたら どんな願望かと期待してたら
”世界中の女を拘束したい”ですって
そんなゴミのような願望で再誕出来る訳無いじゃない
だから零華が失ってしまった徴ね”おにーちゃん”から
奪っちゃったの これでようやく おにーちゃんに擦り寄ってくる
メスガキ共を 嬲れるわぁ それを思うと
可笑しくて可笑しくてアーハハハァー ウーフフッフッフ」
と狂った嗤い声を立てる。
零華は行方知れずになって異界に喰われるも
その強すぎる願望は消滅しなかった。
兄の肉体を贄に、産まれて直後失ってしまった
心の奥底の男性性をこれから、満足させるための徴
一方、精神がこわれた零華の女性性は
贄にしながらも兄に懸想しており
既に存在しないはずの兄に近寄ってくる少女達を赦せないという狂った嫉妬心が
”拘束した少女を嫐って昂るという倒錯性愛癖”を贄になって消えた兄から奪ってきた。
そして今、この場に”零華”として現世に再誕した。
「ねー 零華の特別隔離病棟はぁー? 」
「えぇまだあるわ 今日から”全て”貴女のお城
好きにしていいわ」
「うん うれしい それとお気にのお洋服はぁ 裸は嫌」
「大丈夫、さっきの幻体の時に着てたのなら美梨の権限で持って来て
貰ったわ さぁ着替えてらっしゃいな」
と特別隔離病棟の備品倉庫の一角にある控え室で
零華は
膝ぐらいまである先端がくるりとカールしている淡いローズピンクの髪
瞳はピンクで睫毛はビューラーでぱっちりさせ小悪魔的な
雰囲気を纏わせていて見た目は可愛らしかった。
服は黒地にいちご柄のアンサンブルパフスリーブのボレロに白基調のバラ柄のブラウス
スカートもボレロに合わせた服は黒地にいちご柄の前開きコルセットスカート
黒タイツに茶のブーツという服装に髪には丁寧にリボンを散らしていた
そしてかつて拘束されていたときの手首の拘束を右手に、
左手にはそれに加えて、150センチメートルくらいのベルトが付いたそれを
同じ左手で握り込むとベルトはしゅるりしゅるりと蛇の様に自在に動いた。
「それいらないんじゃないの? 」
と美梨が言うと
「美梨ねーさま これがないと零華落ち着かないの
いわゆる、暗示用の小物ってわけ
左は暗示用の小物も兼ねてるけど、
実用目的かな これでおにーちゃんに寄ってくるメスガキを嬲るヤツ
色もお気にの、ローズピンクで素敵♡ きゃはッ」
見た感じはパンクファッションに見えなくも無い。
只のパンクファッションと違うのは
この拘束具が実用品であり自在に動かせる事であろう。
「はやく お家帰りたい」
「今、開けてあげるわ」
と美梨は専用端末から経営者用アカウントにログインして
セキュリティブロックの
実験棟の特別隔離病棟に続く渡り廊下先の、三重の分厚い
鉄格子とアクリル硝子の扉を端末経由で開放した。
「じゃね 全部 ”きれい” にするまで三時間くらいかな」
と不穏な値踏みをして扉の向うに消えていった
再び稼働音共に厳重なロックがなされて彼女は古巣へ還っていく。
中に入った零華が中の患者全てを始末して
たった一人の少女のための専用特別隔離病棟になったのは
翌日惨事が発覚して彼女に永久措置入院が法的機関から
決定が下されてからのことである。
以後、中に立ち入るときは
女性職員は縷瑠華か美梨の同伴か
男性職員でも、彼女の猫なで声の甘言に惑わされないように
常に二人一組の行動が基本となり
彼女が扉の向うに行ったその時から
棟の建屋全てが零華の居住区となった。
紗理は、決して良い子では無かった。
母親は大病院の経営者であり、叔父もまた数々の医師の栄誉を授与されている。
父親は行方不明ではあるが、工学博士の博士号の所持者で
工学の手解きも受けている。
父:咲人は放任主義で教える事を教えたらある日、ふいっと東欧に
”真理”を追い求めていった それっきり帰って来ていない
母曰く「あの男は、ロマンチスト過ぎたの だから好きなようにさせてあげて」
とそれっきり父の話題は、家庭内でも暗黙の禁忌となっていた。
紗理としては、躾に厳しい母より奔放な父の方が性に合っていた
男性としては、女顔で非常に女性的な雰囲気も併せ持つ不思議な魅力があり
むしろ、経営者として業敵に常に晒されている母よりも”母親”らしい。
しかし、母子家庭になってから一挙一動が母の言う通りにしないと
「佐奇森に相応しく無い」
とそればかり、たしかにショッピングやお小遣いについては
不満はないが過干渉過ぎる位”女性”らしさに拘るのである。
だから、名門お嬢さま学園と言われる
鎖軀山総合病院 付属鎖軀山女学園では
家庭内での不満を晴らすかのように性格の歪を増大させていった。
即ち
女らしく、お淑やかに・言葉使いは丁寧に・仕草も一挙一動を
......らしく ......らしく ......らしく。
その積み重ねを意図的に崩したいと願望実行した
結果、学園内では、狡猾・短気・粘着・汚い言葉・等等
校則の範囲内でそれらを行使し続けていた
母に対する無意識の抵抗だったのかも知れない。
当然、周囲には外観に相応しい名家のお嬢さまを徹底して振る舞う
最初は窮屈だったその切り替えも、母親の厳しさが増すほどより自然なものになっていき
ついに性格の一部として完全に定着した
母のパーティーで業敵の汚いやり口を
嫌になるほど見せられて、その手法をそのまま
応用するのである。
まずは金で興味を惹かせ、次にそれをネタに甘言を囁き誘導
シンパにする。母の蔵書で心理誘導法を学び、
足りない実経験は、独自に開発したAIで補う
インターネットやSNSには
心理誘導や、効果的な言葉や煽り文句等
その手のサンプルは無限にあった。
ソースコードをゼロから組んだネットBotに収集させ傾向を分析させ
応用する
紗理にとっては至極簡単な事であった。
学園の制服も紗理だけ豪華なフリルやレースが付いていて
存在が浮いていても、そんなのは母の医療関係者の総会パーティーで
そうやって権力者に取り入る娘をいくらでも目にしているし気にもならならなかった。
擦り寄ってくる友達には、高待遇・反発したら徹底的な論理武装で
確実に追い込む
そうして追い込まれた敵対? 者が自滅していく様を愉しむ
全て大人達が法域内でやっていることだ。
当然実犯罪には一切手を出さないネットでの書き込みは一切しない
ネットであるのはメールくらいである
ともかく学園のそういった大人の汚い世界を真似た”ごっこ”遊びは退屈だった。
映画は、好きではあったが退屈で 先程、未樹センセから貰った
”特製ジュース”を飲んでいた。
色は赤黒くアメリカンチェリーの様な甘い味が口腔に広がっていく
でもほんの少し鉄気臭さもあるそれは、今まで味わったことの無い新鮮さがあった。
「あ〜ぁ クソつまんねぇな これまるでガキの遊びかと
それに なんかクソ暑くなって来やがったぜ」
と少女趣味丸出しのピンクのリボンパンプス
フリル付きのソックスに白いストッキング、
フリルやレースたっぷりのワンピースドレス、チュールのオーバースカートと見た目は
清楚なお嬢様だったが出てきた言葉は汚い男言葉だった。
アニメ自体は嫌いではない、時に空想に身を委ねるのも悪くはないが
現実よりは平坦で面白味がない
必ず、最後に陰謀や小汚い策略は潰され明るみになり
因果応報とばかりにそれを行なった者が痛い目に合う
紗理にとってそれはあまりに非現実的で退屈な世界
に感じていた。
躰が火照った雛壇状の前の鑑賞席のネックレストに乱暴にパンプスを履いたまま
足をのせスカートとペチコートを捲りあげショーツ丸出しでバタバタ扇ぐ
「こりゃ きもちいいぜー だれもいねぇしこのままでいいかぁ〜」
と腕を組み脚をそのまま交差させ上を仰ぎ見た瞬間、
そこににっこり微笑む美梨の顔が視界に入った。
「あっ ママ? 」
「ムフフ ねぇ紗理 そんなに暑かった? 」
何か母親の様子がおかしい。
いつもならすごい形相で腕をひねられる位の”お仕置き”が飛んで来ない
むしろにっこり微笑んでいて汚い言葉使いにも言及してこなかった。
「マっ ママ? こっこれは」
あわてて脚を、降ろそうとした時美梨は
「よっこらせっと」
と聞き覚えのある口調で、パンプスを脱ぎ隣の座席に放り背もたれをフレアスカートの
裾を摘まみめくり上げ、跨ぎ越えて座面にストッキングの素足を着き
腰掛けて脚を組んで放ったパンプスを履き直した。
「そのままで、いいぜ どうせ言いたいことは分っている」
美梨の指が
優しく、ネックレストに乗せたままのパンプスの上からつつーーッと指一本で
撫で上げてきた。
この時点でこの女は美梨ではないと、聡い紗理は確定した
では誰なのか、もう答えは決まっていた。
「パパ? 」
「んー? 聡いね 流石は”オレ”の愛娘だぜ どうして”こうなった”かは
先ず脚を降ろして ”ママ”にちゅーしてからね さぁいらっしゃい紗理♡ 」
紗理は脚を降ろし隣の美梨にもたれる様に
顔を近づけて美梨の方から紗理の頬を手に添えて紗理の唇を奪い、
母娘とは思えない濃厚なキスをした。
美梨の紅いルージュ
紗理のパウダーピンクのルージュが唾液と混じり合う
......ぃやぁぁ ......ぁあぁっ んんっーーっ
紗理は初めての”大人”のキスに翻弄され 頭がぼんやりしていた
「ホントのパパ? 」
「えぇ そうよ 貴女にすべて教えてあげる ホントの事」
美梨の口から触手の生えた幼虫が紗理の喉へ滑り込んでくる
んッグクゥ ......ぃやぁぁ ......ぁあぁッ
それがお腹で弾ける感触とともに、紗理の脳裏には紗理の知らない
美梨の記憶や行動が早回しの様に焼き付けられる
「あぁ パパ大好きぃ 紗理を窮屈な現世から開放してくれるの? 」
気が付けば辺りには異形や小型の化生が
蠢き、自分の首にも無数の膿汁を垂らした肉色のヤモリが張り付いていた。
それを、”普通”に払う紗理の可愛い口はすでに醜く歪んでいて
涎が垂れて舌舐めずりをした。
「あぁ なんて可愛くて素敵な世界なのこんなに素敵な世界に
もっと早く踏み入れたかったわぁ んんーーッ 」
恍惚の表情で激しく失禁する紗理。
そして、弟の女装に狂気のような嫉妬を燃やす紗理
「あぁ あの璃依奈よりもっときれいに可愛く成りてーっ クソっ」
とギリリと歯軋る。
「こりゃ たまげたぜ 流石のオレもここまでとは思っても見なかった
ニリアに感謝感激だぜ」
紗理の心は今壊れたのでない、とうの昔に、既に壊れきって歪みきっていて
改めて、壊れる必要性など全く無かったのであり、
先程の”特製”ジュースは狂気を喚起させる物ではあったが
元から壊れていた紗理には単なる甘いジュースだったのである。
「ねぇ ”パパ”? 早くニンゲンという軛から紗理を開放してお願いっ」
「えぇ そのために此処に来たのよ さぁ 欲望のまま
生まれ変わってらっしゃい」
「うん 嬉しい ママになったパパ」
喰べても喰べても太らない躰、
男の徴、
自在に動く髪
今よりも美しく、いい子ちゃんを続けなくとも済む歪んだ心をもった永遠の美少女
醜い異形や化生を屈服させ従わせるカリスマ
すべてが欲しい ホシイ ホシイ ホシイ
異界から伸びた細い手に、髪を引き千切られ皮膚を裂かれ剥かれて
目を、えぐられ腸を引っ張り出されても
尚、恍惚の表情を絶対崩さない紗理
フフフ ......ぁあぁッ ......あははっ わたしは ーーこれを ーーま......って
......ぃ ......た ......の
嬉しそうな紗理。
跡形もなく異界に消えて数分後、
自ら異界の”内側”から
躰の正中にある縦の裂け口で喰い破ってでてくる
大魔女の予告通りに紗理ともニリアとも違う美少女。
股間の徴をだらしなくぶら下げて、それを体内に隠すと
見目麗しい一糸纏わぬ美しい少女が蠱惑的なおねだり顔で立っていた
大魔女:トニリアーニの特質をすべて引き継ぎ
元の姿と新しい”獣の”姿を使い分け
異形と化生を喰らい別の異界すら喰らい尽くす
貪欲な異界の獣。
”魔女洗礼真名:サリナーシア”こと
紗璃菜が、いま此処に再誕・受肉し”魔女洗礼真名:サリナーシア”を
美梨の魔路より
授かった。
歩く度、下着やワンピースドレスや蜃気楼から徐々に実体化していく
これが人外の極致を極めた少女の能力の一端で、それをまざまざと
美梨に見せつけていた
淡いオールドローズピンクの髪に右側の頭の大きな蝶の髪飾りがあり、
スカイブルーのリボンを散らしていて、一部元の紗理の淡い茶色の髪の部分は
璃依奈の様に前に垂れていてウネウネ蠢いていた。
髪と同色のオールドローズ色を基調とした
オールドローズ柄の豪華なワンピースドレスを着て
チュールのオーバースカートが更に少女性を彩る。
瞳は右目は金翠色で、左目はピンクのオッドアイ
髪型も顔付きも元の紗理と大魔女:トニリアーニの正にいいとこ取りのようだった
「パパ 紗璃菜の大好きなパパぁ」
「おいで 紗璃菜」
と美梨は優しく声を掛ける。
実は美梨はこの我が愛娘を非常に恐れていたのだ
魂を交換しただけの美梨では絶対打ち勝てない相手だった
「はい、紗璃菜の大好きな美梨」
と紗璃菜は椅子に脚を組み座っていた美梨の前に
頭を垂れ、浮いていた足のパンプスを脱がし
黒いストッキング越しにねちっこいキスをする
元の美梨では無く美梨お気にの黒いペディキュアだった
「んむ んむ わらひ 紗璃菜はぁ ......あぁん お父様の
......んぁ お力に ......んんっ」
「うふ くすぐったいわ 分ってる さぁそんな獣みたいな真似しないで
お口に頂戴♡ 」
「うん ママになったパパぁ でも紗璃菜って少女の姿をした異界の獣よ 」
「そうだったわね でも紗璃菜は紗璃菜わたしの愛娘で
貴女はその愛娘 そうでしょ少女の姿をした獣さん」
紗璃菜は涎がついたままパンプスを履かせそのまま椅子に座り
美梨と女同士のキスを交わす。
「いつも、紗璃菜っておねだり上手ね
あぁ好き紗璃菜 わたしの紗璃菜」
美梨が時折紗璃菜の胸の粘液で濡れた
ピッタリ閉じたピンクの裂け口をなぞると
あ、... ...あ、 ...あぁ、やぁ... いやーっ
相当”敏感”な所らしい
と紗璃菜は嬌声を一際高く上げ 涙目になる
茶色の部分がしゅるりと美梨の首に巻き付き
凄まじい膂力で締め上げて来る
「ちょ ゴホッ ゲホッ ...っ」
と
むせると
「ご ごめんなさいパパ ここ”弱いの”」
と慌てて髪を緩める。
「そう これからは気を付けるわ でもまだ おねだり顔ね
何か欲しい物あるでしょ? 言ってみて? 」
「うん 紗璃菜ね おなかすいたの
餌喰べたい 喰べたいのっ どうしても喰べたいのっ」
彼女の食性については魔路を通じて知っていた
「いまなら、遺体安置室に二体ね 事件絡みで腐乱した少女の遺体があるわ」
「そう! ねぇ 喰べていい? 喰べて ...ねーっねーったらっ! いいの?
それに ママのイヤリングがない 紗璃菜のプレゼント
”くそー どこのどいつだ オレの手作り奪いやがって”」
と急に目を細めてニリアそっくりの顔付きに変わり
語尾は口汚い男言葉に変わり ルージュが濃いローズピンクにかわる
「あの これは ね」
「いいいえ ”ママ”は黙ってって 絶対喰い殺す」
「ま まって これね 叔父さんが持っていったの 壊れて修理するからって」
「あんの ガキぃーーぃ メシ喰ったら 次はテメェだ」
と声は紗理だが自然と口汚い言葉が出てくる
「あーぁ オレは知らねえぞ」
と紗璃菜が血相変えて飛び出していった
紗璃菜は心が壊れて歪んでいる
美梨の耳に無い以上、例え魔術触媒で消滅した
と伝えても、永劫に”奪った相手”を探し
腸をかき分けてでも探すだろう
彼女は、そこまで壊れて歪んでいて
本気と歪んだ狂気の一端を垣間みた美梨は
心底恐怖して、ショーツを濡らしてしまった。
美梨は
「ふふ 早急に錬金魔術でレプリカを製作する必要があるわね」
幸い美梨には膨大な術式の知識がある
スーツに合わせた可愛いショルダーバックから
簡易錬金魔術の為の準備をした。
緊急の夜間外来の処置を終え熱いシャワーを浴び
録画していたテレビを見始めた
義邦。
緊急外来の医師控室は一階、遺体安置室とは真反対の位置にある
遺体安置室に入った紗璃菜は、くんくん形のいい鼻をひくつかせ
かすかな腐敗臭に早くも普通の口から涎が出ていた。
紗理の時は顔の口から普通に”人間用”の食物を摂るが
量は少なく味が非常に薄く感じるので周りからは小食に
見える
これは欺瞞用の口でここからでも食べ物は取る事が可能ではあるが
紗璃菜形態のときは胸の正中の裂け口が本来の口
である。
彼女は逸る気持ちを押さえて丁寧にワンピースドレスの前ボタンを外していく
上見頃を開けて前ホックブラを外すと、喉元から臍上まで
鋭い牙が生えた裂け口が涎を垂らすが不思議なことに濡れてはいなかった
上の口で下品に舌舐めずりながら、
手で腐敗死体を手づかみしつつ裂け口に放り込んでいく
グッチャグチャ ......ゴリッ ......ゴキリゴキリ
手に付いた腐敗汁を丁寧に上の口で舐め取り
紗璃菜はご機嫌だった。
「んーっ ウんメェ これでいくら喰っても”太らないって やっぱ最高じゃねえかよ」
最後に裂け口で下品にゲップをして
もう一体に取り掛かる。
「ん? まだ新鮮じゃない、これ こんなのまだ食べ頃じゃないわね
でも紗璃菜の取っておき使おうかしら? 」
と右側の頭の大きな蝶の髪飾りからローズピンクの蝶が多数飛び出して来ていた
その蝶は”新鮮”な遺体に群がると急速に腐敗が進んで行き頃合いで
髪飾りに戻っていった
これは腐死蝶という、腐肉食の紗璃菜の為の物で
”新鮮”な”屍体”を頃合い迄
腐敗させるもので、命ある生物全般に有効な一種の武器であった
元は、大魔女トニリアーニの武器だったが再誕の際、このように変化したのである
”食事”を終え、手を洗いまたフロントホックブラを付けて上見頃の
ボタンを掛けていく紗璃菜 上の口からも腐敗臭のゲップをした。
安置室横の御手洗でスカートをめくり
口に咥えて徴を出して少用を足す。
幼い尊の男性器を見て、引っ張っていたずらして派手に尿を飛ばさせたとき
こんな便利なモノが男には付いてるんだと
羨ましくなった時があり、再誕の際ついでに欲しくなって願ったらあっさり
叶ってしまいこれは紗璃菜にとって嬉しい誤算だった。
朧げな記憶によれば異界に居た時に、よく理解出来ないが
既に対価は支払われているんだそうだ。
幼い頃の弟がそうしたように ぷるぷる して雫を切り
体内に隠すと見た目は少女のそれと全く変わらない。
「すげーな やはりションベンはこれに限るぜ」
と嬉しそうだった
ショーツを戻し人外の少女は
緊急外来の医師控室に向かう。
歩きながら紗璃菜のワンピースドレスが蜃気楼の様にに薄れていって、
髪型も色も全て紗理のものに代わり、
今度は元着ていたワンピースドレスが蜃気楼から実体化していく
彼女の変身願望がこのような形で叶っていた。
こうして”元”の姿になった紗理は叔父の居る緊急外来の医師控室の扉をノックした。
「おう って紗理ちゃん!! だめじゃないかっ こんな夜更けに姉貴 いや
君のお母さんに怒られるぞ あぁ 今日は夜更かしOKだっけか あぁすまん
高山と一緒だったけか でやつは? 」
「店舗棟の映画館に でも映画みてたら 未樹さんとどっか行っちゃって
戻ってこないの だからお願い 一緒に来て」
「あぁ せっかくこれから非番だったのに 高山の奴、後でたんまりメシ奢ってもらうとするか
いいぜツケは全て奴持ちでしょうがないな 女の子一人まともに面倒見切れんのかよ」
と部屋の明りを消し廊下の調光ライトを最低照度にする
「紗理ちゃん 負ぶって行くけどいいかい」
「えぇお願い 足おそいから」
「ははは どうぞ姫様 お背中を御貸し致しましょう いざ」
とさっきまで見ていたファンタジー映画の影響か叔父は芝居がかった口調で
紗理を負ぶった
「はは 軽いな 我が姫君は」
「叔父さんの莫迦♡ 」
と笑いながらはしゃぐ二人
「それじゃ行くぜしっかり捕まってな」
「うん」
と
紗理を負りながら義邦は、店舗棟に走って行く。
途中紗理から紗璃菜に変わったのも知らず。
堂々巡りをさせられているにも知らず。
左手首が既に無くなっていて少しずつ壊死の侵襲が進んでいるのも知らず
紗璃菜が上見頃のボタンを外しているのも知らず。
フロントホックブラを外して裂け口が半開きになっているもの知らず。
紗璃菜の上の口から涎が垂れているのも知らず。
義邦はただまっすぐ目的地に走っていると思っている
此処で紗璃菜は自分の固有異界の堂々巡りを解いた
「おっ そろそろだな
おーっ 高山居るかー この馬鹿たれ 未樹さんといちゃついんじゃネーよ
紗理ちゃん 放っぽいて何してやがる
さぁ 紗理ちゃん 付いたぜ どうぞ我がひっ ......めぎ ......み」
義邦の芝居がかったセリフは途中で幕切れとなり
後は
グッチャグチャ ......ゴリッ ......ゴキリゴキリ
と肉と骨が”何か”に噛み砕かれる音が響くのみだった。
続く?
鎖軀山怪異奇譚考_佐奇森 紗璃奈
鎖軀山怪異奇譚考_佐奇森 零華
彼女の固有異界は”狂気感染”です
次回、
奇譚ノ終 ゆがんだ家族と漆つの狂気のものがたり
後で、語句のニュアンスの変更はあるかも知れません楽しみに
後ほど、登場人物は挿し絵として挿入いたします。
2019/08/19 二人の挿し絵を挿入しました
固有欺瞞結界 を 固有異界 に用語を変更しました
紗璃奈の漢字を紗璃菜に変更しました 意図していたのは ”紗璃菜” です