5日目 知らない人
買い物に行ってしばらくが過ぎた。
相変わらず、あの人間は仕事と言って外にでかける。
そんな俺も
『あ…、マナお弁当忘れてる』
それに先に気づいたのは光輝だった。
『ねえ、どうしよう…きっと困るよね…』
『…そうだな。』
あの人間のことだ。
弁当がないわかるとコンビニで弁当を買うかも知れない。
そう思ったが時計を見ると10時過ぎている。
『届けに行ってもいいよね…』
『………。』
……、……。
どれだけ懐いたんだ。
『ねえ…行こう……?』
『………はぁ…、わかった。』
『!じゃあ行こう!』
コイツは、嬉しそうに服を来て、リュックに詰められ玄関を出た、が、
今更だがあの人間の勤め先を知っているのか?
あ、おい鍵を閉め忘れてるぞ。
『…………。』
『…、……はぁ。』
案の定、迷子になっていた。
はぁ、とため息をつく。
『……ふぇ』
『……泣くなっ』
『マナ、マナマナっ…!』
心細くなったのか、はたまた迷子になったからなのか、
ついに泣き出した。
何度もあの人間の名前を呼ぶ、なんであの人間の名前を呼ぶんだ。
「どうしたんだい?」
『……ふぇ…?』
その時だった、知らぬ人間の声が聞こえてきた。
あいつは涙で潤んだ瞳をその人間に向けた。
しかし、その人間は宥めるようにあいつを撫でた。それは慣れた手つきで。
『マナの勤め先知らなくて……。』
「なるほど…迷子か。」
少し考える素振りをして、
「ここじゃあれだから私の店においで、話を聞こう。」
『……はい』
手を差し出して、話した。
恐る恐る手を握るこいつ。
だが人間は信用ならない。何かあれば噛み切ってやるために息を潜めた。
店の中に入るとそこはモダン的な雰囲気を出していた。
……まあこういう雰囲気は嫌いじゃないが。
「たしか、ここに……。」
男はキッチンの方で何かを探していた。
冷静になって周りを見てみるとまだ客は来ていないようだった。
時計を見ると11時半に差し掛かっていた。
「すまないね、お待たせしたよ。」
『………』
ぐすぐすと泣き出しているこいつに人間の男はケーキなるものを差し出した。
「そのリュックに入っている君にも食べられるものを用意したよ」
『……っ』
驚いた、どうやらミルクを用意したらしい。
「住所はわかるか?」
こいつはふるふると首を振る。
人間の男は困ったように笑っていた。
「困ったなぁ…」
そう呟いた瞬間、ドアについていたベルがなった。
しかし、入っていた匂いに見覚えがあった。
「こんにちわ!」
「いらっしゃい伊野さん」
『マナっ!』
「うおっ!?」
案の定、その匂いはあの人間だった。
「光輝がどうしてここに…?」
『マナにお弁当届けようとして…それで……』
だんだんと声が小さくなっていくあいつ。
それを聞いた人間は一瞬キョトンとしてふわりと笑った。
「大丈夫、それって私のためにやろうとしてくれたの?」
そういう人間にあいつは静かに頷いた。
そしたら笑いながらあいつを撫でていた。
あいつは照れ臭そうに、嬉しそうに笑っていた。
「誠さん、お世話になってしまったようでなんかすいません。」
「いや、謝ることじゃないよ。可愛い子たちだったよ?」
”誠”という人間は爽やかな笑みを向けていた。
あの人間は頬をほんのり紅くした。
なんかムカつく、
『がうっ!』
「えっ黒い竜くん?!」
「おっと」
威嚇すると二人は驚いた。
誠という人間は、「怒らせちゃったかな」と余裕な笑みを浮かべていた。
「さて、と。話はこれぐらいにして卯月さんはどうしたんだい?」
「あっ!そうでした、実は……。」
そういうと人間たちは話し込み始めた。
イライラする。
『ねえ、もしかしてヤキモチ妬いてる?』
『……別に。』
『ふーん』
なんだよ、こいつニコニコして。
『べっつにー?』なんていいやがる、なんだよコイツ。
別にあの人間が気になるわけじゃない…、気になるわけ…。
そんな事を考え人間たちを見ていた。