転生者と悪役令嬢の関係。
俺の名前はイスカ・エマートル。
騎士の家系に生まれた三男にして、この魔法が溢れた世界に生まれた地球からの転生者である。
赤ん坊の頃から前世の記憶というものはあった。目の前で母親が魔法を行使した時の興奮といったら語りつくせないほどだ。地球の転生ものでいう主人公のように赤ん坊の頃から魔力を使い切って魔力量を増やすぜ! というのをやってみたり、折角転生したんだから何かやろう! と思考し続けていた俺である。
ちなみに魔力量は、魔力量の検査を行う六歳の頃に身体に定着してそれ以上増えなくなるみたいだ。俺の経験によると。だってきっかり六歳を過ぎる日からそれまで増えてた体内魔力量が増えなくなったから。生まれてから六年間ずっと魔力切れ状態まで自分を追い込んで、魔力量増やしていたから俺の魔力量化け物になっていた。
最も俺の両親や兄貴二人は「凄いな」で済ませてくれて、俺としてみれば恵まれた家族に生まれたことを感謝した。
異世界に転生したからには強くなりたい、何かやりたいというのが地球で二次元にはまっていた男の普通の思考だろう。魔力量はあるものの、魔法制御の才能などについては平凡もいいところだった。剣技だって最初から全部こなせるぜ、なんていうチートはなく、正直それを知った時はへこんだが、それも仕方がないと割り切った。
魔法も、剣技も、磨きたい。
やるならば、徹底的にっていうのが俺の主義だ。前世からそうだった。やると決めた事はやりきりたい。途中であきらめるなんていやだった。だからずっと来る日も来る日も鍛錬を続けて、だけど、九歳の時に「本物の天才」を見て流石に挫折しかけた。
一度見ただけで魔法を行使し、すぐにどんな武器でも使いこなす子供なんてガチでチートがいたのだ。
教会の裏、人気のない場所で情けない事に泣いてしまった俺。そこに、彼女はやってきた。
前世では珍しくもないありふれた黒い髪。だけれども、この世界では悪魔とののしられる異常な真っ黒な髪を持つ少女。
涙を流す少女は、美しかった。
思わず息をのんだ。前世を含めて、これほど綺麗な少女を見たことがなかった。
人形のように完成された美しさを持つ少女が、大粒の涙を流していた。
泣いていた彼女の目と、彼女の美しさに固まった俺の目が合う。
「え、あ」
人がいると思っていなかったらしい彼女は、驚いたように、戸惑ったようにこちらを見る。
――その姿は驚くほどにかわいくて。前世を含めて精神年齢はそれなりにいっているというのに、惚れてしまった。多分一目ぼれだった。
「どうして、泣いているの?」
「え、いや、それを言うなら貴方こそ、男なのにこんなところで泣いていたのですの?」
問いかけたら逆に問い返された。
「……情けない話だけど少しへこんでしまって、泣いてたんだ。君は?」
知りたかった。どうしてこんなに綺麗な少女がこんな風に泣いているのか。だけど少女は口を割らなかった。
それならば、それでいいと思った。
だけど、少女とこれからも会いたかった。
「なぁ、時々、ここで話さないか?」
「え、な、なんでですの!」
「俺が君と話したいから。それじゃ、ダメ?」
素直にそう口にすれば、少女はカァアアと効果音でもつきそうなほどに顔を真っ赤にさせて狼狽していた。可愛すぎる。
「ダメか?」
「だ、ダメなんて一言も言ってないですわ。そ、そんなに私と話したいっていうのなら来てやらないこともないですわ!」
ふんっとした態度ながらも、話したいといわれたのが嬉しかったのか頬が緩んでいる。可愛い。
「俺は、イスカ・エマートル」
「まぁ、あのエマートル家の方なのですね。私はエミリア・ミシュカンダルですわ!」
そんな自己紹介をして、俺たちは次に会う約束をして別れた。
―――そして、エミリア・ミシュカンダルっていうのか。とニマニマしている中で、彼女が、エミリア・ミシュカンダルが妹に勧められた少女漫画の悪役令嬢であることを知った。
少女漫画の題名は覚えていない。だけど、面白いからと勧められた。実際に読んでみて男の俺でもそこそこはまるほどの面白さではあった。恋愛漫画なんて興味はなかったけれど、お気に入りのキャラはいた。
それが、悪役令嬢『エミリア・ミシュカンダル』であった。
漫画の中の彼女は、異母姉妹であるヒロインを苛め抜く役どころであった。メインヒーローの婚約者で……、っていうか、あのリアルチート野郎メインヒーローかよ。そりゃあ、チートなはずだよ。
『エミリア・ミシュカンダル』は―――、当初は読者に最も嫌われていたが、彼女サイドのストーリーが語られるにつれ、彼女に同情する声のほうが大きくなるぐらいであった。結果的に処刑された彼女の墓標の前で、真実を知ったヒロインは異母姉を救えなかった事実に涙を流すシーンもあった。
彼女を悪役令嬢にしたのは、彼女の環境にある。
まず黒髪であったこと。『悪魔の子』を産んだとして、彼女の母親は夫からの寵愛を失った。母親は彼女を恨んだ。
ミシュカンダル公爵は狡猾な男であった。『悪魔の子』を『悪魔の子』としてさげすむよりも、『悪魔の子』に優しくするほうが体裁的には良いと考えたのだろう。外では”悪魔の子にも手を差し伸べる優しい公爵様”を演じながらも事実は違う。二人っきりの時に親子の情などなかった。
そしてヒロインはそんな彼女とは違い、まさしく公爵が真実愛していた子供であった。ヒロインの母親は男爵令嬢であった。身分の低い令嬢に夫を奪われたということで彼女の母親が、ヒロインの母親を排除しようとしたのもまずかったのだろう。それもあって彼女の母親は殺され、彼女はますます疎まれるようになった。
悪役令嬢の母親の死によって、ヒロインは公爵家に住まうことになる(それまで彼女の母親が何をしでかすかわからないため本邸にはいなかった)。彼女はそれから別邸に閉じ込められることとなる。父親の手によってだ。ヒロインとその母親に何かしでかすと思われたのだろう。体が弱いという建前の元だ。
黒髪とはいっても魔力量の高かった彼女を公爵は家のための手ごまとした。彼女が十一歳の時に、同じ公爵家の長男であるメインヒーローと婚約させるのだ。彼女は彼に一目ぼれをした。そして一生懸命ふさわしくなろうとした。しかし、それが仇となった。
婚約当初は彼女に好感を抱いていたヒーローは貴族らしくなる彼女の思いがわかっていなかった。寧ろ父親が外に出さないこともあって自由に会うこともできず、勉強ばかりしている彼女に不信感を持ち出した。彼女が十三歳の時に、騎士に襲われそうになったことがある。しかし彼女を嫌う父親は「自分から誘ったのだろう」などと口にし、ヒーローもそれを信じてしまう。父親は彼女が襲われたのを知っておきながらも、あえて自分から誘ったなどといったのだろう。それで「娘には強く言う」なんてヒーローに告げて、ヒーローに謝る心優しい父親を演じていたらしい。彼女を駒とするならばヒーローに対する彼女の好感度を下げる行為をすべきではない気もするが、それほど彼女が嫌いだったのだろうか。なんて性格が悪い。それからもロリコン騎士(襲った当時36歳)は彼女の傍にいることになる。彼女が魔法の腕があったからこそ、一線を越えることはなかったものの、”腕に覚えのあり公爵の信頼も厚い騎士”の言葉のほうが信じられ、その場にいる侍女たちでさえも彼女が誘ったという言葉を信じた。
味方が誰もいないのが彼女であった。
信じてもらえなかったのにヒーローを愛し、いつか誤解が解けると頑張っていたのだ。
学園に入学してからも誤解はとけない。必要以上にヒーローに接触することも父親の監視がいてできなかった。真実を話すこともできなかった。そんな中で一歳年下の妹が学園に入学し、いとしい婚約者の心を奪う。それに耐えられなかった彼女は強行を行ってしまうのである。その結果、処刑される。
後日談でその真実が明かされ、ヒロインは父親を責める。父親は「――私はなんてことを」とヒロインの説得で悔やむことになる。そして悪役令嬢に対して、「すまない」と口にするのだ。誰もが。
なら最初からするんじゃねーよ。しかも、いなくなってから真実知れてハッピーエンドとか、彼女にとってハッピーエンドじゃねぇし。
というのを思い出した俺は、一目ぼれした彼女がひどい目に合うのはいやなので行動に移すことにした。つか、たぶん彼女が泣いていたのはヒロインが本邸に来たからだな。あれ、ってことはもうすぐ彼女、別邸に閉じ込められるんじゃねーか! もう会えなくなるとか絶対嫌に決まってんじゃねーか!
と、思った俺はすぐに行動に移した。
まずやったことといえば、親父に「女の子に一目ぼれした」と告げることだ。今まで女の子に興味なんてなかった俺がそんなことを言い出したため、家族は食いついた。俺の家、王家からも信頼が厚い騎士の家系だったのだ。正直そんな家系に転生できた事を感謝したい。
だからこそ、彼女を救うことができるのかもしれないのだから――――。
―――「エミリア・ミシュカンダル」に恋をしたと告げた俺に、親父は驚いた顔をして、そうかそうかとうなずいた。
そもそも公爵が彼女をヒーローの婚約者にしたのは、つながりを求めてである。公爵家よりは目劣りするかもしれないが、俺の実家も実績的にはなんとかできるはずだ。
第一、よくよく考えれば俺と弟は漫画にいた。俺はヒーローに対する噛ませだった。ヒーローの実力をねたんで何かやらかすやつ。で、弟はヒロインの同級生で、ヒロインに恋をするけれども「友達」といわれ振られる役。
まぁ、でも漫画と違うとか関係ない。心は現実なのだから。俺はかわいい彼女を、不幸にしたくない。
親父は親ばかだから、良いほうに持って行ってくれることだろう。
次にやったことは、同年代のヒーローと仲良くなることだ。彼女を不幸にする原因の一人と思い出したから良い感情はなかったけれど、ヒーローと仲良くしたほうが彼女を不幸にせずにすむ。
それによくよく仲良くしてみればヒーローは、悪いやつではなかった。ただちょっとまじめで、純粋だからこそ、色々と彼女に不信感を持ってしまったようだ。まっすぐなのは悪い事ではないだろうけれども、馬鹿だなと思う。
彼女を守るためには力も必要だろうということで、俺は頑張った。頑張った結果ヒーローの親友にして好敵手になった。10歳以下の子供の大会でも、ヒーローに勝てた。ふふん、漫画ではヒーローが優勝してたけどな。
ちなみにそこで何度教会にいっても会えなかった彼女が見学に来ていて、久しぶりに彼女を見ることができた。漫画では別邸に閉じ込めているものの、適度にこうして外には出していたようだからその日はたまたま彼女を外に出すことを公爵が決めた日だったのだろう。なんて、幸運だろうかと思った。
俺が彼女と目があって手を振る。わざとだ。俺と知り合いだということを公爵が理解したほうがやりやすい。なんせ、俺は大会で優勝した(貴族とか騎士の子供の)優良物件として映っているはずなのだから。
彼女は驚いた顔をして、公爵に視線を向ける。手を振り返すことが公爵の機嫌を損ねないかと思っているのだろう。
「……イスカ、知り合いか?」
「前に教会であった。可愛いだろー?」
「惚れてるのか? 悪趣味だな。あんな黒髪の――」
「今度同じ事を言ってみろ。お前とは喜んで縁を切ってやる」
「……す、すまんっ!」
子供にしては大人びているヒーローは、その天才的な才能のこともあって俺以外に友人がいない。俺が口にした言葉に泣き出しそうな顔をした。まったく、そんな顔するなら彼女を侮辱しなければいいのに。
視界には公爵とこそこそと会話をする彼女が見える。ああ、かわいい。やっぱり誰よりも綺麗で、可愛い。もう、だめだ。漫画で知っているとはいえ、現実では一度しか会ってないのに一目ぼれしてこんな気持ちになるとか、俺ってこんなにチョロい奴だったのかと思う。でも可愛いものは可愛いのだ。
後日、俺と彼女に縁談話が上がった。俺は喜んでうなずいた。
「あ、貴方が私の婚約者……」
「うん、俺が婚約者だよ。エミリア」
「わ、私なんかと婚約を結ぶなんて……。ど、どうしてそんなににこにこしているのですの!」
一度泣き顔を見られているからもあるだろう。エミリアは俺と二人っきりの時はそんな感じだった。取り繕ったような外面はない。なんて可愛いんだろう。
「全然、だって俺エミリアの事好きだし」
「なっ!」
顔を真っ赤にして、キッとこちらを睨みつける彼女。可愛すぎる。
「わ、私みたいな『悪魔の子』にそんなことを言うなんて何を――」
「『悪魔の子』じゃないよ。エミリアは。そんな子じゃない」
「でも、私はこんな黒い髪を、不吉な――」
「ううん、不吉じゃない。とっても綺麗」
こんなに綺麗な髪が不吉であるわけないじゃないか。こんなに綺麗で可愛い女の子が『悪魔の子』なわけないじゃないか。
俺の言葉に、エミリアは驚いたように固まる。ああ、もう可愛いなぁ。てか、俺可愛いしか思ってない気がする。
「き、れい?」
「うん。綺麗」
断言して、エミリアの髪に触れる。もっと自信を持てばいい。こんなに綺麗で可愛いのだから。自分を卑下する事なんてないのだ。黒髪だから色々いってくる奴もいるかもしれないけれども、黒髪であることは珍しいって逆にそのことを楽しめばいい。
そうやって前向きになったほうが、楽しいに決まっている。その前に、ちゃんと言っておこう。俺が君をどう思っているのか。言っておかなければ信じてもらえないだろうから。
「俺はね、エミリア。君が好きだよ」
信じてほしい。俺の言葉に偽りがないってことを。
「一目ぼれだった。一目みた時、こんなに綺麗な子本当にいるのかって思ったんだ」
きっかけは一目ぼれでも、エミリアって存在の事本当に好きになっているんだ。じゃなきゃ、近くにいるだけでこんなに心臓が高鳴ったりなんてしない。
「だから俺は君の婚約者になれて嬉しい。こんなに綺麗で可愛い子が、俺のものなんだって嬉しいよ」
笑いかければ、顔を真っ赤にしたまま固まっている彼女がいて可愛すぎて悶えるかと思った。
「で、でも一目ぼれってことは。わ、私の外見見て好きなんでしょう! 私の事知ったらきっと――」
ああ、もうどうしてこんなに彼女は自分を卑下するのだろう。公爵がなんて言おうともそんな必要はないのに。
「そうだね、そうなるかもしれない。でも俺は今、君と話していても君のことがやっぱり好きだと思う」
「で、でも、これから――」
「これからの事はわからないよ。でも、今、俺は君が好きっていうのは事実だよ」
そう口にするけれども、往生際の悪い彼女は最後に言った。
「好きな人ができたら私との婚約なんて解消していいんだから……」ってそんな風に。
漫画の世界での彼女はヒーローがヒロインにとられそうなときあんな風に暴走していたのに俺ではそんなことないのかとがっかりした。けれど考えてみればあれだけ彼女が暴走したのは、ロリコン騎士とか、これから悪化していく関係とか色々あったからだろう。
っていうか、いま現在俺と彼女は十歳。彼女がロリコン騎士に襲われるのは十三歳。あと三年しかない。それまでの間に、どうにかしなければ。てか、こんな可愛い婚約者を襲う変態とか許せない。いや、まぁ俺も精神年齢を言えばロリコンって言われるかもしれないけれど!
―――それから俺は親父の権力を使ったり、彼女の父親をうまく言いくるめたりと努力を重ねて、最終的に彼女を俺の家に住まわせることに成功した。
公爵はヒロインとその母親の傍に彼女をやりたくないというのが、彼女を別邸に閉じ込めた一番の理由なのだ。ならば、もっと離れた俺の家にいても構わないだろう。
それが実現したのは十二歳の時だ。ぎりぎりだった。その頃には心を許した彼女から家の現状を正しく聞いていたから、余計に頑張った。俺、頑張った。
家には両親も兄弟もいるけど、彼女と一緒に暮らせるとか幸せすぎる。
「……ありがとう、イスカ」
家に住まうことが決定した彼女は、そういって笑った。
「俺が君を助けるのは当たり前だよ。俺はエミリアの事、本当に好きだから」
何度も何度も、俺は好きだと口にする。彼女が俺の思いを信じてくれるように。いつもそれに彼女は「そう」とか口にして終わりだった。でも、その日は違った。
「……私も」
「え」
それに驚いたのは俺だ。
「わ、私も、イスカの事好き。大好き……」
恥ずかしそうにそんな事を言ってのけた彼女は可愛すぎました。顔を赤くしてそんなことをいう彼女に、俺まで顔が赤くなった。可愛すぎて思わず顔をそむけてしまった。
やばい、何この可愛い生き物。
なんでこんなに俺の婚約者可愛いの。可愛すぎる。
「イ、イスカ?」
顔を手で覆う俺を不安そうに彼女が見てる。
「や、やっぱり私なんかにそんな思われるの気持ち悪――」
「違うから!」
なんか勘違いをしだした彼女に、思わず叫んだ。
「でも、ならなんでそんな顔をそむけるの?」
「……エミリアが可愛すぎて直視できなかっただけ」
「な、何を言っているんですの」
本音を口にすればまた可愛い姿を見せるエミリア。やばい。可愛い。我慢できなくなって思わず彼女の口をふさいでしまった。
ああ、幸せすぎる。
―――そんな様子を兄二人に見られて、その詳細を両親や弟にまで知られたのは恥ずかしかったけれども。
はやく結婚をしたかった。ちなみにこの国、結婚の年齢制限はない。平均は十五~二十ぐらいかな。
十三歳の時に、その溢れんばかりの思いを口にすれば、家族にあきれられ、彼女の父親にまで呆けられた。公爵も彼女と距離を置いていたのもあって、彼女に対するくらい感情も少しはなりを潜めているようだった。
むしろ、こちらに対して申し訳なさそうな視線を持っていることから今更ながらに彼女にした仕打ちに罪悪感を感じているらしい。
それを見た俺は彼女と公爵を仲直りさせようと思った。それはうまくいった。ヒロインとその母親とも彼女は仲良くなった。なぜかヒロインに俺はなつかれたけれど、まぁ、将来の義妹になるのだからと可愛がった。彼女はそれに嫉妬したようで、嫉妬した彼女はどうしようもないほど可愛すぎて、思わず手が出そうになった。でも、結婚するまでにそういう事をするのは……と悶々としてしまった。
まぁ、結果的に結婚前に彼女に手を出しちゃうんだけどさ! だって、可愛い彼女が「わ、私そんなに魅力ない?」って顔して迫ってくるんだよ、無理だよ! 可愛すぎるよ。しかも母さんが用意したとかいう寝着はやばかったよ! あれで我慢できる奴はいないと思う。
この国では十五~十八歳まで貴族とかは学園に通うようになっていて、大体それを卒業してから結婚が多いんだけど。それか、学園にいるうちにとか。でも、俺の場合、彼女に手を出しちゃったし、いや、もうそれで彼女妊娠しちゃったし学園に入学前に結婚式した。ドレス姿の彼女はとってもかわいかった。やばい。
学園に入学前に第一子が生まれた。女の子だ。彼女に似た黒髪の子で、エミリアはそのことにショックを受けていた。私と同じ目にあわせてしまうかもしれないと。優しい彼女が可愛すぎる。
大体、俺の娘にわけのわからない言いがかりつけてくるやつは俺がぶちのめす!
学園に通う間は、公爵の手配してくれた侍女たちに娘の世話を任せて放課後とかで思いっきり可愛がった。ああ、もう俺の娘天使。エミリアとともに並ぶ姿とか見ただけで幸せすぎる。
「イスカ、大好き」
「俺も」
俺の隣には、エミリアがいる。幸せそうに笑う彼女がいとしくて仕方がない。
ああ、俺はとっても幸せだ。
―――学園に入学して二年目、入学してきた義妹が俺に迫ってきたり。
転生者らしい少女が色々と騒動を起こしたりするのは別の話。
最もそんなことが起きても、俺とエミリアの関係は変わらないけれども。
――――転生者と悪役令嬢の関係。
(転生者と悪役令嬢は誰もが憧れる仲の良い夫婦となりました)
突然書きたくなった話。基本的に溺愛ものは書いてて好きです。
勢いで一気書き。誤字脱字あると思うので報告してくだされば助かります。