神様なんているのかなぁ
神様ねぇ。
ユーナたちが言うにはこのボロい神像がそうなんだろうけど。
総計六体の神像は村人たちに篤く崇拝されている割には管理が甘い。
仕方ないので俺が磨いている始末だ。ちゃんと詣りに来い。
ユーナが『寝ぼけてフラフラ』する癖は周知のことで、
本人に自覚は無いが妹のユカにはバレている。
何処に行くかまではユカは興味が無いらしく寝てくれているが。
この祠、地味に隠れ家に良いんだよな。たまに悪党や魔物が住み着こうとするので駆除している。
「しかし、神像六つも要らんだろ。一つにしろよ」
悪態をつきながら浄化魔法でチョチョイのパッパ。
御供え物を軽く入れ替えたり、掃除をしたり。
なんでこんなバカなことをって? 周囲にほどいい隠れ家が無いんだ。
毎回毎回空の上で訓練でも悪くはないが飽きが来る。
この祠である洞窟は妖精達の言う『風小屋』っていうものだったらしい。
集音魔法を使うと世界中の人々の声が流れてきて、ちょっとしたラジオのニュース番組を聴いている気分になる。
この世界、新聞ないからな。死ぬ前はテレビ欄しか見なかったがそのテレビもないし。
そうして解ることだがこの世界、意外と情報伝達が早い。
最新情報は悉く吟遊詩人が歌にしてくれるからだが。
そうやって周辺諸国の情報を集め、村に役立ちそうな話を適当にノートに記帳。
このノートも祠の奥の隠し扉にあった。使い勝手が良いんだ。
指でこすると文字が消えるし、指先で何故か字が書け、不明な言葉は検索までできてしまう。
六人の神様の装備と思しき武器防具が出てきて、コレが結構いい装備なんだよな。
少なくとも素手や棒切れで戦うよりよっぽどいい。普通の武器だと俺は壊してしまう。
「しかし、ここに武具があるってことは、神様たちって実在の人物だったのかな?」
その割には妙に新しい武具だ。保存の魔法がかかっているのだろうけど。
青一色の女物の装備は今のユーナの身体にはちょいと細い。
てか細すぎる。人間と骨格その物が違う気がする。
もう片方の男物の装備は着てみようとしたら女の体形でなければ着ることが出来ない代物だった。持ち主は男装してたのか?
ユーナが着るには胸が大きすぎて腹が辛い。ユーナだってまだまだ発育途中とはいえスタイル悪くないんだけどこれを着ていた奴ってどんな奴だったのだろう。
結果的に男物の装備に行きつく。
一つはデカすぎる。
黒一式の装備の持ち主は女並に細い体型だったようで体に合わない。
こいつはモデルだったのかよ。
もう一式は幼児サイズ。
結局最後の一式のちょっとブカブカする男物の服で我慢するしかない。
革によく似た謎の素材で出来た鎧は軽くて動きやすい。
ベルトを調整すればユーナでも装備できる。
確かめてみたら防御力だけで鉄鎧並の性能があるみたいだ。
それでも魔物どもには気休めなのだろうけど。
幼児サイズの革のブーツはどういう理屈かユーナの足がすんなり入った。
茶色の可愛い半長靴だ。俺が全力で走っても発火したり壊れたりしない。
蒼いマントは二式。片方は防御効果が高い。
もう片方は気配を消すような効果があるっぽい。
男女の装備一式に入っていた銀色の短剣を腰に。これは使い勝手がいい。
ズボンは着丈が高すぎて使いにくいが黒一色の装備の男の着ていたらしい白いズボンが裾をまくれば何とかなりそうだ。なにより肌触り最高。
この世界の着物って地味に肌触りが良くないからな。貴重である。
盾は幼児の装備一式に付属していた黒い小さな盾を鍋蓋のように持った。
色々弄ってみると針を射出したり集音装置になっていたりどうなっているのか解らない危険な盾と判明。こんなの実戦に使えるのかね?
剣は幅広で刃が短く、柄が妙に長いものがユーナの体格に合っている。
そう思って手に取るとしゅっと音が鳴って細身の剣に変貌した。
所持者に最も使いやすい形状と重さになる魔力を持っているようだ。
あと、今のユーナの身体に合わない装備は適度に直して装備する。
弓とかもあったが古い弓なんて使ったらユーナたんの可愛い顔に傷がつくかもしれないので無視した。弓が使えないなんて言うな。馬も乗れないよ!?
しかしなぁ。俺は祠の中を見渡す。ここって地味に隠れ家以上の機能あるよなぁ。
もし六人の守り神が実在したならば、氷の魔神とやらもいたのかもしれない。