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転生したけど受精卵に負けてしまいました  作者: 鴉野 兄貴
チート主人公ですが受精卵に負けました
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肝試し

 この村は過ごしやすくて良い村だ。


 二〇年ぶりに帰ってきたというトゥリお婆ちゃんの息子さんはそう言ってくれました。



「そう思うなら出ていかなければよかったのに」

「それを言うなよ?!」


 気さくで力持ちで面白いヒトです。



「あの年は不作でな。誰か出て行って出稼ぎしたほうが良いと思ったんだよ。ちゃんと送金もしてたじゃないか。ここにあるこの玩具は俺が送った奴だぞ」


 そうなんだ。


「お母さんが使っているこの鏡だって冒険の戦利品だ。カネにならないから……ごほんごほん」



 ふふ。

 村にある便利な品々はトゥリお婆ちゃんがくれたものが多いのですが息子さんのお蔭だったらしいです。

 畑仕事は親子三人だと結構しんどいのです。


 ブラブラしてないで手伝って来いとトゥリ婆ちゃんに叱られたと彼。



 トゥリお婆ちゃんの息子さんは冒険者というお仕事をしていたそうです。

 ボーケンシャってなんだろう。

 私が聞いてみると彼は楽しいお話を沢山話してくれました。


「こーんなでっかい『ドラゴン』ってのをぶっ倒して、お姫様と結婚してだなぁ」

「お姫様おいてきちゃったらかわいそう」


「お前にはもう話さん!」


 え。違うの?



「え? お姫様と結婚して王様になったのに」

「うんうん。ひとりでも村の水門を開け閉めするだけでも大変なんだからもっと大きい街とかの王様でみんなを束ねるとか大変そう」


「お前ら妙に賢いな。特にユナ」

「自慢の妹ですから。というか私は?!」



「もうお前らには話さん!」

 舌をだしておどける彼。


『あ~。話すの辞めちゃダメダメ。酷いよ酷いよ?!』


 妹と一緒に文句を言う私たちに「どっちが酷いのさっ?!」とふざけて見せる彼。



 じゃれあう私たちをお母さんはミルクを温めながらニコニコしてみています。

 私と妹にはよくしてくれますがお母さんを見る目が。うーん。お母さん大人気。


「ジャックはいつもそうだったわよねぇ。子供好きで私もよく泣かされたし」

「う」



 戸惑うジャックさん。

 ニコニコ顔の母さんと私たちの間でキョロキョロ。


「あ~。昔谷に置いてけぼりにされたっけ

 」「恨んでる?」


「ものすっごく」



 なにしたんですかジャックさん。



「肝試し。お前も一五になるとやると思うぞ。この村の子供は一五になったら谷にある神像に一人でお参りに行かないとダメなんだ」

「ふうん」



「置いてけぼりにするのが掟らしいけど、私はお参りして帰ってきたらジャックがいなくて怖かったんだからッ」

「ごめんなさい。マジごめんなさい。村の掟なんです」



 うーん。年齢から考えたらアルダス君に置いてけぼりにされるのか。気を付けよう。



「『零の女神』に『微笑みの子供神』『勇気の戦神』っていって村の守り神さまなんだぜ」

「あと『知恵の王』『全知の賢者』『愛の剣士』ね」


 ふうん。


「山にいた氷の魔神を倒して、この村に春をもたらしてくれたんだぞ。冒険者の守り神なんだ」

「昔はこの辺は年中寒かったそうよ」


 ホントかなぁ?

 谷は風を防いでくれるし、すっごく暖かくて過ごしやすいと思う。

 冬はちょっと寒いけど。


 母さんが言うには守り神様のお話は子供に教えちゃダメなんだそうだけどジャックさんは関係がないようなそぶり。適当だなぁ。


「お蔭でユーナのお父さんに出会えたんだけどね」


 ぼそっと呟くお母さん。

 じっとお母さんを見ている私に気づいてお母さんは意味ありげにほほ笑む。


「聞きたい?」


 すっごく聞きたいけど取り敢えず首を左右に振っておきます。今のままでも幸せだし。



「うむ。今日から俺をお父さんと」

「やだ」「やだ」「お断りします」



 ふざけるジャックさんに私たち三人は口をそろえて答えました。

※ ジャックさん三五歳 ユリカ二九歳 ユーナ一四歳 ユカ九歳

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