お散歩
むほおおお!
俺は『妖精さんへのお手紙』がボロボロになるまで萌えていた。
空中で良かった。
そうでなければユーナの身体は明日の朝擦り傷だらけになっている。
あまりの喜びに夜風の香りを楽しむ暇もなく天にも飛び上がらん気持ちで飛行魔法発動で大空に飛び出し、萌えでクルクル回転しすぎて吐き気を覚えてやっと止まった。
うげぇえ。やりすぎた。
ユーナに負担がかかるから辞めねば。
ひゅうひゅうと風を切って雲の味に唾を吐き、雲を抜け出すと一面の星空。
高速飛行呪も使えるのだがアレをやると音速超えてしまって風を楽しめない。
流石に雲の上は寒いのでユーナが風邪をひかないように暖房魔法を体にかける。
うむ。一〇〇〇〇〇〇DOLLARの夜景って言うのだろうか。まぁ俺は詩人じゃない。
ふわふわした眼下の雲に術をかけてふんわりとした寝台として転がってみる。
うむ。さすが俺様。万能である。
別に遊んでいるわけではなく、来るべきユーナにまとわりつく悪い虫を追い払うべくここで練習をしている。死体のポーズで寝転がり、関節を伸ばしたら念入りにストレッチ。
岩をも砕くハイキック一〇〇本! 鉄板をブチぬくパンチ! 水を両断する貫手! 秒間一〇〇発の必殺マシンガンパンチ!
よくよく考えたらこれ以上強くなったらユーナが行き遅れる気もしてきたな。まぁ問題はない。あの子は穏やかな性格だしばれないばれない。たぶん。
翌朝、ユーナは母親にこうのたまっていた。
「妖精さんがお空のお散歩に連れて行ってくれたの」と。
うむ。ちょっと夢で見せてあげて良かった。
彼女の言動を楽しむ母親。
必死で空の大きさや雲が頬にあたる感触を説明するユーナ。
「でね。空で『ましんがんぱーんち』とか『カラーテ』って技を見せてくれた」
「???」
ユーナさん。お母さんに変なことを言わないでっ?!