このままどこか遠くへ
俺は粗末な寝台から身を起こした。
しかし注意しないとお母さんに婦女暴行を働こうとする不貞者扱いになるよな。あぶねえあぶねえ。
ユーナたん、お母さんに絡み酒とかあり得ないわ。うええ。まだ頭痛いし。
取り敢えずユーナの衣服は俺の体形には致命的に合わない。背中回りとか特に。
胸? 察しろ。お母さんのほうがずっとデカい。形も凄くいい。
この熟女独特のむっちりとした形がまじでヤバい。
腰回りもいいんだよな。こう程よい脂肪がぷっくらついて自然に大きくくびれた感じが最高に男を誘うというか……っていかんいかん?!
そう言えば実家のお袋すいません。息子の死亡がムスコで死亡とかやかましいわ。
ユーナが超暴れたのでユカなんか脅えて泣いていたし。
お母さんは見事に受け流してユーナを寝台に誘うとめっちゃ怖い昔話を聞かせながらユーナを寝かしつけてみせた。とても凄い。
と言うか、最後は鬼婆を窯に寝かしつけて燃やすとか最悪に怖えよ。なんでそんな昔話知ってるんだよ。異世界になんでそんな似たような話あるんだよ。俺まで怖かったし。ホント。
俺はユカの協力を得て隠していた神様の祠の装備品を手早く身に着けていく。
そうさ。その気になればこういうことも出来るんだ。出来たんだ。
この二人が悲しむし何よりユーナの人生に良くないのは解っているんだが。俺がその気になったらユーナ自身いない人間だったと言うことも出来るのだから。
『ユーナには永遠に幸せな夢を見続けてもらって俺は旅立つ』
そういうシナリオもあるっちゃあるんだよな。
むしろその方がユーナには良いかもしれない。この世界の真実を知るよりは。
俺は装備を整え、扉を開けるとアルダスが待っていた。
俺は眉をしかめる。この子供の姿をした男は正体が掴めない。実力も計れない。
「明日カズヨたちと遊ぶ約束だろ」「約束破っちゃうよね」
「そうだ。いけないだろ」「ボクはユーナと一緒に行く」こんにゃろ。気づいていたか。
俺が嫌そうな顔をしていると彼はニコリと笑う。
「彼女が幸せな夢を見続けるならそれはそれで良いけど、ぼくは彼女のそばにいたいからね」
それ、本人を前にして言えよなぁ……。
俺は静かに扉を閉める。ふふんと鼻息を出すアルダスの鼻をちょっとつまんでやると彼は子供のように憤慨してみせるが茶番だ。
俺たちはあぜ道を歩き、結界を示す村の柵を越えて町まで続くという道を歩いていく。
「どうする? 戻る? 」「どうしようかなぁ。このままユーナを浚っていくつもりだったけど」「うん」
「お前と一戦するのはキツイな」「ははは。無理無理。キミには敵わないって」良く言うぜ。
「というか、朝は早いよ」「そういえばパンを持ってくるのを忘れたな」
「何故だろう。ボクはパンを持ってきたけどトーストしていないんだ」
「奇遇だな。俺もミルクを忘れてきた」俺たちは視線を交し合う。
「戻るか」「だねぇ♪ 」
どうにもこうにも。ユーナたんの婚約者は曲者である。
まぁ、只者なら娘はやらんのだが。マジで。




