かみさま。日々の恵みを有難うございます
「神様。日々の恵みを有難うございます」
「私たちをお導きください」
「えっと。えっと。おかあさんとおねえちゃんが頼りないので助けてあげてください」
ユーナです。
というか何ですかユナ。そのお祈りは。私はもう成人しています。
小さな畑を女三人で耕すのは骨が折れます。
時々村の人が手伝ってくれますがそれは私たちも持ちつ持たれつというものでして。
領主様の畑をみんなで耕し、自分たちの畑を耕して仕事が終わる前、すっかり陽が沈もうとする処にいつものお祈りを沈む夕日に行いながら一日の恵みと感謝を神様に捧げます。
中央から先日派遣されてきた領主様のウェル様はとてもいい人で、自分でも鍬を取って政務の僅かな合間を領民の畑を耕したり治安維持に勤めてくれます。
酷い殿様じゃなくて良かったとはお母さんのユリカ含め皆の意見の一致するところです。
というか、ウェル様ってすごく賢くて農作業について長老様はだしの知識なのよね。
剣を取っても物凄く強いし若くて美男子でモテモテだけど誰もお館に連れていこうとかしないし、どういう女の人が好みなんだろ。気になります。
最も、領主様のことを気にしているのは私と言うより私の足元でちょろちょろと走り回りながらウェル様の事を延々と喋っている我が妹、ユナのほうなのですが。
「そうね。ウェル様は本当に素敵ね。お母さんも再婚したいな」
お母さん。確かにお母さんは人気者ですが歳を考えてください。ウェル様ってはたちくらいだと思います。
その横でお手伝いに来ていたジャックさんがガックリと肩を落とすので私たち姉妹は彼の逞しい背中をぽんぽんと叩いてあげます。
「ジャックさん。今日は本当にありがとうね」
「ジャックのおいちゃん。ふぁいとふゃいと」
春の香りを放ちだした土を踏みしめながら私たちは家路につきます。
泣き言をいいそうなジャックさん。
「今日は野草くずを入れたシチューよ。ジャックさんもお母さんとどうぞ」
お母さんがニコニコ笑いながらジャックさんに告げます。
「なんでお袋込み」
「ダメ?」
あ。あの目が来た。でも引っかかるジャックさんもジャックさんだよねぇ。
こういうところではうちのお母さんは魔女です。魔法が一切使えない『人間』なんだけどなぁ。
トゥリお婆ちゃんとジャックさんを交えて団らんを楽しむ私たちを空にかかる『輪』とお月様と星たちが今宵もそっと見守っています。
「ユーナはまだお酒はダメ」
「え~~?!!」
「お酒は子供が生まれて乳離れしてからだ」
「なんでっ? ジャックさん?!」
「というか、お酒は乳飲み子がいる間は飲んじゃダメね」
「トゥリお婆ちゃんそれなんで?! アルダス君は呑んでいいのにッ」
「お姉ちゃん。そんな美味しくない物よく飲めるね」
「むー!」
神々よ。天にかかる魔王の道よ。天に登って星となった魂よ。
我らを見守りたまえ。明日の糧を恵みたまえ。我らの勤めを見守りたまえ。