僕の事
この先、希望なんて何も無いのに生きていってどうするんだ。以前こんなことを考えるようになっていた。
考え始めると止まらない。僕の意思とは別に、勝手に頭が働いてしまう。特に寝る時が酷い。
電気を消し、ベットの上で横になる。真っ暗な部屋の中、うっすらと浮かぶ天井の輪郭を眺めている。すると、来るのだ。何処からともなく、途方もない絶望感や孤独感。
目を閉じると、瞼の裏に見えるのは真っ黒に塗られた未来。途方もない四次元の闇が足元に迫って来ているような気がした。
一時期は軽い不眠症のようになっていた。ずっと考えて眠れず、気が付くと朝日が昇っている事すらあった。
なんでこんな事になっているんだ?いつの間にか前にも後ろにも進めず、闇に押し潰されそうな感覚。
僕は社会に上手く適応できず、何をやるにもやる気が起きなかった。だから時の流れに身を任せてきたが、闇は濃くなるばかりだった。
僕は苦しみ続けてきたが、僕にはこの苦しみを語り合える人がいない。誰も僕の声に耳を傾けてくれないのだ。
親は僕の叫びを聴いてくれない。いつも僕の顔色を伺ってばかりだ。きっと僕の事を異常だと思っているに違いない。
学校の教師は腐った連中ばかりだった。頭ごなしに叱る事しか知らない単細胞ばかりだ。
僕には友達らしい友達はいなかった。誰も僕を相手にしてくれない。適当に相槌を打って流す奴ばかりで、真剣に僕の声を聞いてくれる奴など一人もいなかった。空気に話してるんじゃねえんだぞ、畜生。
結局、僕は孤独だ。自分の傷を自分で舐めて癒すしかない。周りはバカばかりだ。僕がこんなに苦しんでるのは他人のせいだ。
ある日、僕はこの苦しみから一時的に和らげる方法に気付いた。それは物語を想像すること。日本中のバカをぶち殺す。肉をちぎり、骨を砕き、はらわたを引き裂き、脳みそをぶち抜く。バカにつける薬は無い。そして最後に、バカ共の屍の上で日本一のバカ、つまり僕が、自分の頭に拳銃をぶっ放す。そこで僕の物語は幕を閉じる。
初めてこの物語を想像した日の夜は気持ち良く眠れた。しかも楽しい夢まで見ることができたのだ。鳥のように自由に空を飛ぶ夢。久しく夢を見てなかった僕は、とても幸福な気分になった。
そして、僕は毎晩、この物語を想像するようになった。想像した後は、いつも決まって気持ち良く眠れた。そしてあの夢も見る事ができた。僕は毎晩寝る時が楽しみになっていった。
物語の内容も日を追う毎に鮮明になっていった。
チラチラと横目でこちらを伺ってくるバカな親をぶち殺し、偉そうに見下してくるバカな教師を叩き殺し、作り笑いを浮かべながら、あーそうだよねー。うん、わかるわかる。なんてほざいているクソバカ共を虐殺する。
そしてそいつらの死体の山に僕は佇んでいる。真っ赤な夕日をバックに、辺りは血の臭い。僕はこめかみに銃口を当てる。陽の光を全身から感じて、僕は目を細める。そして僕は引き金を引く。短く響く銃声、その瞬間、僕は鳥になり夕日に向かって飛んでいく。
いつの間にか、僕は眠ってしまっていた。僕はこの時、この物語が生きる糧になっていた。