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悪魔の求婚

私は、今日起こった人生初の出来事をきっかけに、日記をつけようと決めた。


そこで、奴との出会いから今日の悪魔的なプロポーズまで記した。なぜ悪魔的かというと……




そこまで書くと、可奈子は深いため息をついた。彼女は今自宅のソファで、今日買ったばかりの日記をしたためていた。


そして、藤城の昼間のプロポーズを思い出していた。


「僕と結婚してくれませんか?」


この台詞に憧れを抱かない女性はいない。今まで、自分の趣味に夢中で、恋愛にも縁がなかった可奈子でもそうだ。


藤城のような素晴らしい容姿と能力をもった魅力的な男性にこんなことを言われれば…可奈子だって、全くときめかなかった訳ではない。


しかし、その後の藤城の台詞はそんな女心を踏みにじるには十分だった…


「二年間でいいんだ。そうしたら離婚してくれていい。金も払う」


急によくわからない展開になって、可奈子は混乱していた。


恐ろしい存在だった藤城に、急に子供の頃から憧れていた愛の言葉を告げられ、即時に怪しい話になってきた。


「な、なに言ってるの?意味がわかんないっ!会ったばっかりだし…目的はなんなの?」


あわてふためく可奈子を見て、藤城は、次は優しく微笑む。


「僕には親が勝手に決めた婚約者がいるんだが、彼女とは結婚したくない。しかし、まだ学生の身分で親に刃向かうのは些か面倒だ…」


藤城は、長くしなやかな指でうっとうしそうに髪をかきあげた。


「そ、それと私がどういう関係が…」


可奈子は話が見えず、口をひらいた。


「だから、先に結婚するんだ。流石にそうなったら親は何も言わないだろ?」


藤城は、にっこり可奈子に微笑んだ。この笑顔に、くらっとこない女はいないだろうと、可奈子は思ったが…


(な、なにその訳のわかんない話、絶対おかしいっ)


「そ、そんなことしたら結局逆らってるじゃない!そんな話、おかしいよっ!」


大人しくしていた可奈子が、急に反論してきて藤城は幾分目を丸くした。しかし、彼はそのぐらいの反論は想定の範囲だ…


彼は、少し悲しそうに微笑む。可奈子は、一瞬心が傷んだ。魅力的すぎる…


(うっ、いかんいかんっ!騙されるな可奈子!)


「婚約の契約書には、お互いに社会人になるまでに結婚相手がいなければ、という除外事由がついている。流石に子供の時の契約だからね。婚約が成立しない除外事由があるんだ。」


藤城は、椅子にもたれかかって腕をくみ遠くを眺めている。そのキラキラした瞳は、憂いをおびていた。


「全く何のための契約やら…下らない契約だろ?」


藤城は、可奈子の目を見つめ、困ったような表情で苦笑した。


しばらく、二人のテーブルは沈黙が流れた…


藤城が何か言おうとしたとき、可奈子が口を開いた。


「確かに大変そうだけど、私には関係ないわっ!」


可奈子は、面倒に巻き込まれたくないと必死だ。話もやはり納得できないし、まして会ったばかりだ。今まで気づきあげた生活が、訳のわからないことで変わるのは嫌だし、意味不明な理由でバツイチになる必要はない。


(そ、そうだ私には何のメリットもないっ!)


可奈子は、必死に考えるまま藤城に訴えた。


そして、必死に自分に言い聞かせた。


…こんなに可奈子が必死なのは、藤城の魅力にどこか惹かれている自分がいるからだ、ということに、彼女自身気づいていなかった。


藤城は、黙って可奈子の話を聞いていた。可奈子は一通り話終えたが、あまりのことで息が上がっている。


(…わ、わかってくれた?な、なんか言ってよ)


沈黙が流れた…しかし、急に藤城が立ち上がった。


その顔にはあの悪魔のような笑みが浮かんでいた。


そして、おもむろに可奈子に近づき、可奈子の腕を掴んだ…


「きゃっ!」


可奈子は、声をあげるが…



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