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出会いは突然に☆

私、水口可奈子(27才、独身、OL)は、いわゆる腐女子である。


高校生の頃、友達に借りたBL…それから私の人生は変わった。まさに薔薇色の人生が始まったのだ。


中学、高校と女子校で、しかも進学先は女子大。あまりに男っけがない人生だが、かといって周りの女の子女の子した連中にはついていけない。


服は基本ジーンズで、髪は短くしていた。合コンなんてもっての他で、誘われても一度も行ったことはない。


中学・高校・大学と、ゆる~くハンドボールをしたり、漫画喫茶で好みのアレを読み漁った。これが私の青春だ。


今痛い…と思ったそこのアナタ!!



まったくもって悔いはない!!私は、根っからのポジティブシンキングだからだ。


大学を卒業し、行きたかった新聞社に入社できた。そこそこ成績はいいのだ。それに小学生の頃は、アメリカにいて帰国子女というやつでして、英語がペラペラ。まったく就活に不便はしなかった。


入社して5年になる。未だにアレはやめられない。ましてやめる気など更々ない。


ここ最近では、読むに飽き足りて同人誌まで書き出した。なかなかの評判で、その業界では「神」と言うやつもいる。自分の才能がこわいとはこのことだ。


まぁ最近厄介なのが、実家の両親が、早く結婚しろやなんやかんや言い出したことだ。私には妹が二人いて、彼らには先をこされてしまい姪っ子甥っ子合わせて三人もいるのだから仕方がない。


私にだって彼氏がいたことぐらいある(一回だけだけど)。


会社の同僚で、まぁ見た目は普通だけど中々優しい人だった。


しかし、交際が会社にばれ、彼は海外に飛ばされてしまう。まぁしばらく遠距離恋愛が続いた…と言いたいが、2週間で自然消滅した。


付き合ってあまりたってなかったし、そんなもんだろうと思った24才の冬だった。


しかし、私には『読書』と同人誌の作成という大仕事があるので、取り立てて問題なかったし、彼にバレるのではとヒヤヒヤしなくてすむようになった。


まあ、普段は友達と騒いだり、一人の時間を楽しんだりしているが、時々精神不安定になる(女ならみんなそうだろう!)。


その時は、近所のやぶ医者こと黒髭の黒ちゃんという怪しいオッサンにひたすら愚痴る。


オッサンは、医者のくせにあんまり人の話を聞かない。しかし要所要所で相づちを打ったり、ハンカチをくれたりする。


一通り愚痴り泣き叫ぶと私はすっきりして、黒ちゃんに鼻水と涙に濡れたハンカチを返し、颯爽と立ち去るのだ。



私が腐女子だということは、『仲間』しか知らない。


あまり人の評判を気にするような性格ではないが、まぁ別にわざわざいうのもなっ、て感じで結果的に隠している。

特に会社の人にはバレたくない。


BL好きな女の子はいっぱいいるし、本屋にはそれ専用のコーナーまであって、日本経済に貢献していることがわかる。


何も隠す必要はないが…


やっぱりちょっと、恥ずかしい。


別に悪いことをしているわけではない。男子がエロ本を買ってるのを見られるのが嫌なのと似てると思ってくれたらいいだろう。まあ、皆はどうか知らないけど私の場合ね。


ということで、今日の私はサングラスに、マスクをしスッポリ身体が隠れる普段はあまり着ないベージュのコートを着ている。ロングヘアをまとめて帽子までかぶっている。怪しいが…仕方がない!


今日は、大好きな『メロメロ・僕らは騎士団』(もちろんBL)の発売日なのだ!!


会社が終わり、早速私は、新宿の駅近くにある○×書店へ直行した。


(あぁ、早く早く♪♪)


階段をかけ上がり、例のコーナーへ向かう。


(おお!あったあったぁ~やっほ~)


私は、周りの知り合いがいないことを確認する。


そして、誰もいないことを確認するとさっと一冊持ちレジに向かった。


カモフラージュと言うわけではないが、普通の雑誌も一冊もっていった。


レジを済ませ私はホクホクする気持ちで書店を後にした。


(わーい♪♪早くお家に帰ろうー)


スキップしながら、地下鉄に向かう。嬉しいことがあると景色まで輝いて見える。鼻歌なんて歌っちゃおうかな。


信号がちょうど青になった。


(渡っちゃおー)


と思い、歩を速めたその時ー


ドンッ


「きゃっ!」


私は、横から来た人とぶつかってしまった。


(いたたー)


相手は背の高い男性で、私はよろめいて転んでしまった。



男性はびっくりしたのか、私を見下ろしている。


「…あ、大丈夫?」


私はその言葉に少しイラっとした。その言い方が、あまりに他人事だったからだ。声が若く子供っぽかったから尚更ムカついた。


「あのねぇ、確かに私も周りを確認しなかったの悪いよ。でも、一応、女性を転けさせたんだからさあ、その言い方ないんじゃない。」


私は立ち上がりながら、彼に向かっていった。


立ち上がる時に気がついたけど、私の荷物は、バックも名刺も散らばっていた。


「あ…」


そして、さっき買った「アレ」も…


ぶつかった男をちょうど目に捕らえた時。彼は私の言葉などお構い無しに、私の大切な『メロメロ』を拾いあげていた…


そして…彼と目があった…


私は、大切な秘密を見られた思いで赤面していたが…


彼の顔をみて更に赤面した。


(な、なんてイケメンなんだ…!)


彼のイケメンぶりに一瞬私は夢見心地だった。


しかし、彼は天使のような甘いマスクとは裏腹に私を地獄に叩き落とす。


彼の美しい口元が、酷く歪み冷酷な微笑をたたえた。


一瞬ゾクッとした次の瞬間ー


「あんた腐女子なんだ」


男は、悪魔のような邪悪な冷笑を浮かべ、へたりこむ私を見下ろしていた。


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