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第27話 炎上系冒険者、マジレスで黙る

「す、すごい……!あの一振りでバズラーズのリーダーの武器を粉砕したぞ!」

「見えなかった……!ただの剣を受ける構えのまま、カウンターで魔法の構造そのものを断ち切ったのか!?」


 静まり返ったコロシアムが、数秒後には割れんばかりの大歓声に包まれた。

 観客たちは大興奮で立ち上がり、俺への賛辞を叫んでいる。


「いや、違うんだ!俺はただ思わず口が滑っただけで……!」

「おのれレイ様を侮辱しおって!しかし、さすがあの程度の下等な挑発など意に介さず、実力をもって黙殺されるお姿……!ああ、尊いです!」

「ふふん、見たか愚民ども。あれがマスターの『概念粉砕』だ。相手の力量を瞬時に見切り、必要な最小限の力のみで絶望を与える完璧な一撃。痺れるな」


 特等席のベンチでは、アリアとセラが完全に「うちの推しが最強!」というテンションで過剰な解説を加えている。やめてくれ、解説されればされるほど、俺のただの悪口が『神業』に変換されていくじゃないか!


「ふ、ふざけんなァッ!」


 武器を失い、顔を真っ赤にしたリーダーの後ろから、魔法使いの女と盗賊の男が飛び出してきた。


「アタシたちの炎上が『サムい』だぁ!?このっ!誹謗中傷全部乗せ・特大ヘイトストライクゥゥ!!」


 魔法使いの女が配信機材を高く掲げると、そこからドロドロとした黒い泥のような魔法が溢れ出した。

 それは、彼女の配信枠に集まったアンチたちの悪意や嫉妬、呪詛といった負の感情の塊だった。


「ひゃはは!これでもくらって精神崩壊しやがれ!!」


 黒い泥の津波が、全方位から俺へと迫り来る。

 観客たちが悲鳴を上げ、アリアでさえ「危ない、レイ様!」と腰を浮かせた。

 ——だが。


「……なんだこれ。ただのクソリプの集合体じゃん」


 俺はそのドス黒い津波を前にして、文字通り巨大な溜め息をついた。

 前世で俺が毎日、朝から晩まで浴び続けるか、あるいは自分から投げつけていたもの。

 匿名という泥の壁に隠れて相手を石で叩く、中身の薄っぺらい悪意の寄せ集め。

 そんなものが、地獄のようなレスバトルを生き抜いてきた元・ネット弁慶の俺に、効くわけがなかった。


「お前らさぁ、炎上してもいいけど、もっと自分の言葉で喋れよ。誰かが言ったテンプレの悪口コピペして、数の暴力で勝った気になってるの、マジで見てて恥ずかしいぞ。……『それって、お前らの感想ですよね?』」


 ————パァァンッ!!


 俺の呆れきった『超特大のマジレス』がコロシアムに響き渡った瞬間。

 俺を飲み込もうとしていた黒い津波は、中心からピキピキとひび割れ、ガラスが砕けるように文字通り一瞬で霧散した。


「えっ……?あ、アタシの……最強のヘイト魔法が……!?」

「ただの感想って……そんな、論破されただけで消えるなんて……!?」

「俺たちの……炎上商法は……終わりだ……」


 バズラーズの三人は、絶望と恐怖で腰を抜かし、その場にへたり込んだ。

 彼らの最大の武器である『群衆の悪意』すら、俺の冷笑の前に完全論破され、意味を成さなくなったのだ。

 それだけでなく、「炎上」という自分たちのアイデンティティそのものをも、根本から否定されて——まるで存在意義を消滅させられたかのように。


『うぉwご主人のマジレス、特効すぎるっすね!あの魔法の前提条件である「相手への精神的優位性」を、一瞬で論理的に破壊したっす!これぞ【冷笑】の真髄!』


 モックの呑気な実況と共に、試合終了のゴングが鳴り響いた。

 俺は額の冷や汗を拭いながら、膝から崩れ落ちそうになるのを必死でこらえていた。


 ……またやってしまった。

 徹底的に無様に負ける作戦だったのに、結果的には相手のアイデンティティすらも完全論破で粉砕してしまう、最強の無双劇を完成させてしまった。


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