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#1 告白とフラグ

-モノローグ-

人には、なんとなく続けるうちに好きになっていることがあったりするらしい。音楽に創られた自分と、音楽を創る自分。俺は今まで、そんな視点を持ったことはなかった。宮内聡志みやうちさとし、この春から高校生になる俺に待っているのは、孤独と平穏が共存する、平凡な学校生活…だと思っていた。


-登場人物-

宮内聡志みやうちさとし

主人公。この春から高校一年生。ピアノが得意で、耳コピができる。オタク気質な一面があり、友達は少ない。自分が陰キャであることを自覚している。


水無瀬茉由みなせまゆ

ピアノ教室の先生。主人公にピアノを10年以上教えている。熱心な教育者である。

今日は月曜日。いつも通り、先生の表情は曇っていた。褒められたことなんて殆ど無いけど、なんとなく続けられる唯一の習い事。その名も「ピアノ」である。ご機嫌斜めの先生を前にして思うのは、型にハマりきったレッスンは自分には合わないということだ。ふとそんなことを思いながら鍵盤に手を置いた俺は、指に意志を委ねる。弦を叩いて生まれる音の数々から、「音楽」になる瞬間。不機嫌な先生の顔さえも忘れて没頭できる、この時間が最も……。最も幸せ…と言いたいところだが、若干調律が狂ってるな…。出鼻を挫かれたような、なんとも言えない気持ちのまま演奏を終えると、先生から雑音が飛び出した。

「だから聡志さとし君!楽譜を勝手に改変するんじゃない!」

甲高い先生の声が響い…てはいないか。防音室だし。でも頭が痛い…。

俺を叱るのは水無瀬茉由みなせまゆ(38)。5歳の頃からこの人に教わっている。なんだかんだ面倒見は良いし、長年お世話になっている。

「私もJ-popならそこまで言わないのよ? でもね、クラシックとなれば話が変わってくるの。」

確かに、クラシックは楽譜通りに弾くのが鉄則みたいな暗黙の了解があるのは知っている。

「すんません…。」

「発表会だって控えてるんだから、まずは楽譜通り弾けるようになりなさい! 最近やけに変な癖がついてるよ?」

実は先生に隠してきたことがひとつだけある。俺は数年前、所謂いわゆる「耳コピ」と呼ばれる技に興味を持ち始めた。好きなアニソンやJ-popを、楽譜というしがらみから解き放ち、思うがままに構築する。それが予想以上に楽しくて、気づけば趣味のような感覚で地道に続けていた。でも普段の演奏に影響が出始めていて、隠せなくなってるのは困るな…。耳コピとか、楽譜至上主義の先生が最も忌み嫌ってることなんじゃないかと勝手に思ってきたけど、放置してても怪しまれそうだし、正直に言った方がいいのだろうか…。

「あの、先生。実は隠してたことがあって……。」

「何?…」

少し棘を感じる返事に、俺は恐る恐る答える。

「実は最近…というかここ数年、耳コピをやるようになったんです…。」

「耳…コピ………?」

あぁこれ怒られるやつだ。怯えながら弁明の言葉を探していると、先生が疑うような口調で話し出した。

「耳コピって、あの耳コピ…? 嘘…よね…」

「あ、あの、やっぱ良くないですよね耳コピとか、楽譜が全てですよね、間違いないです、うん。」

必死に捻り出した早口言葉に対して、先生は意外な反応を示した。

「いや、そうじゃなくて、本当に耳コピができるの?」

「え、あ、はい。聴いたことあるポップス曲なら大体は…。」

「じゃあなんか弾いてみて…くれる?」

何その反応に困るド定番の質問。俺は少し悩んだ末に、コード進行とメロディを思い浮かべて、再び意志を指に委ねた。先生が好きな平成の名曲を披露すると、改まった様子で再び口を開いた。

「私の教え方が悪かったみたいね。」

「……と言いますと…?」

「耳コピってね、誰にでもできる事じゃないのよ。丁度いい、決めた。あなた、YouTuberになりなさい!」

突然何を言い出したんだこの人は。困惑していると、先生が意気揚々と迫ってきた。

「安心して!機材はもう揃ってるから!」

「なんでそんな用意周到なんですか!?」

「実は私、最近動画投稿してみようと思ってて機材コツコツ揃えてたのよ。」

「だからって…僕には荷が重すぎやしませんか?」

「いい?この令和において大事なのは競争率よ! ピアノがただ上手な人なんてネットの世界には山ほどいるの。 でも耳コピができる人ってなんかこう、珍しい感あるでしょ!!」

「耳コピできる人ももう沢山いると思いますけど…。」

「大丈夫よ!多分バズるわよ!絶対!」

「そ、そうですかね…。」

一向にこのテンションの差が埋まる気がしない。あとこの人インターネットの規模感分かってないよな…。

「取り敢えず自信持っていいから、耳コピをもっと磨きなさい。プロのピアニストでさえできる人少ないんだから。その力を育むためなら、教育者として全力を注ぐわ!」

後悔と微弱な期待が入り混じる3月最後のレッスンは、異様な先生のモチベーションに置いていかれるままに終了した。

-あとがき-

はじめまして、茶柱ちゃばしらあおばです。最近初めてライトノベルを読んだのですが、気付かないうちにどハマりしていて「自分も何か小説書いてみたいな」と思い、自分が持っている音楽の知識を使って書いてみることにしました。初心者なので拙い表現も多いかと思いますが、温かい目で読んでもらえるとありがたいです!

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