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3/3

3話 出会い

晴子


「さ、拠点を決めよう」

今日は遠回りしたせいで、チェックインした時間が遅い。

早く場所を決めて設営をしないと日が暮れてしまう。

 

 父と2人でベストポジションを探す。

上段の土のサイトにはファミリーテントの夫婦が一組とコンパクトなテントのソロキャンパーが一人いる。

下段には誰も居ない。

せっかくなら海沿いでキャンプしたいので下段まで降りてみる事にした。平らな所があればラッキーだ。

問題は傾斜だ。

海辺への階段を降りてみると、降りてすぐ左壁際に5メートル四方位平らな所があった。

海から距離も高さもあるので、ここなら安全に宿泊できそうだ。

 

本日のテントは父のお気に入り、ノルテントのギャム6だ。

中型のドーム型テントで高さ180cm位直径4m近くある。

軽量で風に強いテントだ。

 このテントは設営も簡単だ。一人でも出来ると思うが、今日は二人でサクッと設営した。

黒い生地に赤いポールがカッコイイ。名前もアニメに出てきそう。ガンダムとかポケモンとかに。

 

それから父が言い出した。

「それじゃ、今日はコット2個作ってね」

本日の課題だ。

ウチの父はキャンプに行くと必ず私に何か課題を出す。

テントの設営、椅子の組み立て、テント内のレイアウトだったり調理だったりと毎回だ。 

今回はコットの設営2個だ。

コットとは簡単に説明すると組み立て式の一人用ベッドだ。

今まではエアマットを使用していたが、コットなら地面の底冷え対策にもなるし地面の凹凸対策にもなる。

父からコット2個を渡される。

例によって父は何も教えてはくれない。

袋を開けると中に説明書が縫い付けられている。

それを見てやってみることにする。

袋の中身を全て出してみる。

紐で繋がったパイプが沢山と、布が1枚。

うん。何これ。全然分からん。

説明書を見てみる。

日本語じゃない。

中国語?っぽい。

イラストが書いてあるのでソレに沿ってやってみる事にする。

パイプの脚の部分はは紐で繋がっているので完成図を見れば簡単だ。

布の中に太いパイプを通して、それにさっき組み立てた脚をはめる。

脚はレバーが付いててはめやすくなっている。

20分ほどで一つめのコットが完成した。簡単簡単。

 

二個目は10分かからなかった。

父は大部分の設営を終わらせて既にビールを空けていた。

私はテントの中両サイドにコットを設置して、シュラフを上に乗せた。

 

 やる事が終わったので父の隣の椅子に座った。

「晴はさ、高校入ったらホントに中免とるの?」

中免とは普通自動二輪免許の事だ。

「そのつもりでお年玉とか貯金してるんだけど。」

「ほう。すげぇな。乗りたいバイクあるの?」

「何か可愛いのが良いんだけど、あんまり無いんだよねぇ。」

「可愛いバイクは…少ないなぁ。」

「50ccのスクーターは可愛いんだけどねぇ。カブに可愛い色のが有ればなぁ」

「ヤフオクとかメルカリとかに良いの無い?調べてみ」

そう言って父は釣竿とカバンを持って海辺へ行ってしまった。

あの限定されたキャンプ道具の中に更に釣具を入れるとは驚きだ。

ヤフオクでカブを検索してみる。スタンダードな色から個人でカスタムされ尽くされたオリジナルカラーのカブが所狭しと並んでいる。

ほうほう、カブも色んな種類がある事を知った。

スーパーカブ、クロスカブ、ハンターカブ、リトルカブ。

リトルカブは50ccみたいなのでダメだ。


 私は最初キャンプアニメの女の子の影響で原付免許を取るつもりだった。

母が乗っているビーノに乗ってキャンプに行こうと思っていたのだ。

「高校生になったら原付の免許取っていい?」

そう両親に聞くと、2人は否定した。

反対ではなく、否定。

あのアニメでは原付で150kmとか走ってるかもしれないけど、現実的じゃない。と。

「私は通勤でビーノ乗ってるけど遠くへ行くのは本当に嫌だなぁ」

しかも母は原付ならではの恐怖を時々味わっているらしい。

「中免取っちゃえばいいよ。ほら、車の免許とる時も楽になるし。原付は30kmしか出せないからね。現実的に俺とツーリングするのも難しい。」

あぁ、バイク危ないからダメじゃなくて普通自動二輪の免許を取れ、と。

それから1年と少し私はほぼ、無駄遣いすることはなく、母に貯金してもらっている。

高校生になったら、バイトして足りない分は稼ぐつもりだ。


スマホの画面を見ながら呟く

「高いなぁ。バイク。」

普通に40万円を超えるものが並んでいる。

 高校生になってアルバイトを始めたとしても買える金額ではない。たまに10万円位で見つかるが、ボロボロだったり、不動車だったりする。

ふと1台のカブが目に止まった。青緑に塗装されたカブ。

随分とオシャレにカスタムされている。

値段も大分お手頃だ。

 …私には買えないけど。

これに乗って湘南の海沿いを走ったらー

山梨や長野のキャンプ場まで走って行けたら!

と、想像してワクワクする。

 

父の姿を探して海の方を見ると、岩場の向こう、静かな水平線に夕日が沈み始めていた。

水面が朱に染まり波がキラキラと輝いている。

これだからキャンプは辞められない。




 

 

 


 

 

 晴子


「さ、拠点を決めよう」

今日は遠回りしたせいで、チェックインした時間が遅い。

早く場所を決めて設営をしないと日が暮れてしまう。

 

 父と2人でベストポジションを探す。

上段の土のサイトにはファミリーテントの夫婦が一組とコンパクトなテントのソロキャンパーが一人いる。

下段には誰も居ない。

せっかくなら海沿いでキャンプしたいので下段まで降りてみる事にした。平らな所があればラッキーだ。

問題は傾斜だ。

海辺への階段を降りてみると、降りてすぐ左壁際に5メートル四方位平らな所があった。

海から距離も高さもあるので、ここなら安全に宿泊できそうだ。

 

本日のテントは父のお気に入り、ノルテントのギャム6だ。

中型のドーム型テントで高さ180cm位直径4m近くある。

軽量で風に強いテントだ。

 このテントは設営も簡単だ。一人でも出来ると思うが、今日は二人でサクッと設営した。

黒い生地に赤いポールがカッコイイ。名前もアニメに出てきそう。ガンダムとかポケモンとかに。

 

それから父が言い出した。

「それじゃ、今日はコット2個作ってね」

本日の課題だ。

ウチの父はキャンプに行くと必ず私に何か課題を出す。

テントの設営、椅子の組み立て、テント内のレイアウトだったり調理だったりと毎回だ。 

今回はコットの設営2個だ。

コットとは簡単に説明すると組み立て式の一人用ベッドだ。

今まではエアマットを使用していたが、コットなら地面の底冷え対策にもなるし地面の凹凸対策にもなる。

父からコット2個を渡される。

例によって父は何も教えてはくれない。

袋を開けると中に説明書が縫い付けられている。

それを見てやってみることにする。

袋の中身を全て出してみる。

紐で繋がったパイプが沢山と、布が1枚。

うん。何これ。全然分からん。

説明書を見てみる。

日本語じゃない。

中国語?っぽい。

イラストが書いてあるのでソレに沿ってやってみる事にする。

パイプの脚の部分はは紐で繋がっているので完成図を見れば簡単だ。

布の中に太いパイプを通して、それにさっき組み立てた脚をはめる。

脚はレバーが付いててはめやすくなっている。

20分ほどで一つめのコットが完成した。簡単簡単。

 

二個目は10分かからなかった。

父は大部分の設営を終わらせて既にビールを空けていた。

私はテントの中両サイドにコットを設置して、シュラフを上に乗せた。

 

 やる事が終わったので父の隣の椅子に座った。

「晴はさ、高校入ったらホントに中免とるの?」

中免とは普通自動二輪免許の事だ。

「そのつもりでお年玉とか貯金してるんだけど。」

「ほう。すげぇな。乗りたいバイクあるの?」

「何か可愛いのが良いんだけど、あんまり無いんだよねぇ。」

「可愛いバイクは…少ないなぁ。」

「50ccのスクーターは可愛いんだけどねぇ。カブに可愛い色のが有ればなぁ」

「ヤフオクとかメルカリとかに良いの無い?調べてみ」

そう言って父は釣竿とカバンを持って海辺へ行ってしまった。

あの限定されたキャンプ道具の中に更に釣具を入れるとは驚きだ。

ヤフオクでカブを検索してみる。スタンダードな色から個人でカスタムされ尽くされたオリジナルカラーのカブが所狭しと並んでいる。

ほうほう、カブも色んな種類がある事を知った。

スーパーカブ、クロスカブ、ハンターカブ、リトルカブ。

リトルカブは50ccみたいなのでダメだ。


 私は最初キャンプアニメの女の子の影響で原付免許を取るつもりだった。

母が乗っているビーノに乗ってキャンプに行こうと思っていたのだ。

「高校生になったら原付の免許取っていい?」

そう両親に聞くと、2人は否定した。

反対ではなく、否定。

あのアニメでは原付で150kmとか走ってるかもしれないけど、現実的じゃない。と。

「私は通勤でビーノ乗ってるけど遠くへ行くのは本当に嫌だなぁ」

しかも母は原付ならではの恐怖を時々味わっているらしい。

「中免取っちゃえばいいよ。ほら、車の免許とる時も楽になるし。原付は30kmしか出せないからね。現実的に俺とツーリングするのも難しい。」

あぁ、バイク危ないからダメじゃなくて普通自動二輪の免許を取れ、と。

それから1年と少し私はほぼ、無駄遣いすることはなく、母に貯金してもらっている。

高校生になったら、バイトして足りない分は稼ぐつもりだ。


スマホの画面を見ながら呟く

「高いなぁ。バイク。」

普通に40万円を超えるものが並んでいる。

 高校生になってアルバイトを始めたとしても買える金額ではない。たまに10万円位で見つかるが、ボロボロだったり、不動車だったりする。

ふと1台のカブが目に止まった。青緑に塗装されたカブ。

随分とオシャレにカスタムされている。

値段も大分お手頃だ。

 …私には買えないけど。

これに乗って湘南の海沿いを走ったらー

山梨や長野のキャンプ場まで走って行けたら!

と、想像してワクワクする。

 

父の姿を探して海の方を見ると、岩場の向こう、静かな水平線に夕日が沈み始めていた。

水面が朱に染まり波がキラキラと輝いている。

これだからキャンプは辞められない。




 

 晴子


「さ、拠点を決めよう」

今日は遠回りしたせいで、チェックインした時間が遅い。

早く場所を決めて設営をしないと日が暮れてしまう。

 

 父と2人でベストポジションを探す。

上段の土のサイトにはファミリーテントの夫婦が一組とコンパクトなテントのソロキャンパーが一人いる。

下段には誰も居ない。

せっかくなら海沿いでキャンプしたいので下段まで降りてみる事にした。平らな所があればラッキーだ。

問題は傾斜だ。

海辺への階段を降りてみると、降りてすぐ左壁際に5メートル四方位平らな所があった。

海から距離も高さもあるので、ここなら安全に宿泊できそうだ。

 

本日のテントは父のお気に入り、ノルテントのギャム6だ。

中型のドーム型テントで高さ180cm位直径4m近くある。

軽量で風に強いテントだ。

 このテントは設営も簡単だ。一人でも出来ると思うが、今日は二人でサクッと設営した。

黒い生地に赤いポールがカッコイイ。名前もアニメに出てきそう。ガンダムとかポケモンとかに。

 

それから父が言い出した。

「それじゃ、今日はコット2個作ってね」

本日の課題だ。

ウチの父はキャンプに行くと必ず私に何か課題を出す。

テントの設営、椅子の組み立て、テント内のレイアウトだったり調理だったりと毎回だ。 

今回はコットの設営2個だ。

コットとは簡単に説明すると組み立て式の一人用ベッドだ。

今まではエアマットを使用していたが、コットなら地面の底冷え対策にもなるし地面の凹凸対策にもなる。

父からコット2個を渡される。

例によって父は何も教えてはくれない。

袋を開けると中に説明書が縫い付けられている。

それを見てやってみることにする。

袋の中身を全て出してみる。

紐で繋がったパイプが沢山と、布が1枚。

うん。何これ。全然分からん。

説明書を見てみる。

日本語じゃない。

中国語?っぽい。

イラストが書いてあるのでソレに沿ってやってみる事にする。

パイプの脚の部分はは紐で繋がっているので完成図を見れば簡単だ。

布の中に太いパイプを通して、それにさっき組み立てた脚をはめる。

脚はレバーが付いててはめやすくなっている。

20分ほどで一つめのコットが完成した。簡単簡単。

 

二個目は10分かからなかった。

父は大部分の設営を終わらせて既にビールを空けていた。

私はテントの中両サイドにコットを設置して、シュラフを上に乗せた。

 

 やる事が終わったので父の隣の椅子に座った。

「晴はさ、高校入ったらホントに中免とるの?」

中免とは普通自動二輪免許の事だ。

「そのつもりでお年玉とか貯金してるんだけど。」

「ほう。すげぇな。乗りたいバイクあるの?」

「何か可愛いのが良いんだけど、あんまり無いんだよねぇ。」

「可愛いバイクは…少ないなぁ。」

「50ccのスクーターは可愛いんだけどねぇ。カブに可愛い色のが有ればなぁ」

「ヤフオクとかメルカリとかに良いの無い?調べてみ」

そう言って父は釣竿とカバンを持って海辺へ行ってしまった。

あの限定されたキャンプ道具の中に更に釣具を入れるとは驚きだ。

ヤフオクでカブを検索してみる。スタンダードな色から個人でカスタムされ尽くされたオリジナルカラーのカブが所狭しと並んでいる。

ほうほう、カブも色んな種類がある事を知った。

スーパーカブ、クロスカブ、ハンターカブ、リトルカブ。

リトルカブは50ccみたいなのでダメだ。


 私は最初キャンプアニメの女の子の影響で原付免許を取るつもりだった。

母が乗っているビーノに乗ってキャンプに行こうと思っていたのだ。

「高校生になったら原付の免許取っていい?」

そう両親に聞くと、2人は否定した。

反対ではなく、否定。

あのアニメでは原付で150kmとか走ってるかもしれないけど、現実的じゃない。と。

「私は通勤でビーノ乗ってるけど遠くへ行くのは本当に嫌だなぁ」

しかも母は原付ならではの恐怖を時々味わっているらしい。

「中免取っちゃえばいいよ。ほら、車の免許とる時も楽になるし。原付は30kmしか出せないからね。現実的に俺とツーリングするのも難しい。」

あぁ、バイク危ないからダメじゃなくて普通自動二輪の免許を取れ、と。

それから1年と少し私はほぼ、無駄遣いすることはなく、母に貯金してもらっている。

高校生になったら、バイトして足りない分は稼ぐつもりだ。


スマホの画面を見ながら呟く

「高いなぁ。バイク。」

普通に40万円を超えるものが並んでいる。

 高校生になってアルバイトを始めたとしても買える金額ではない。たまに10万円位で見つかるが、ボロボロだったり、不動車だったりする。

ふと1台のカブが目に止まった。青緑に塗装されたカブ。

随分とオシャレにカスタムされている。

値段も大分お手頃だ。

 …私には買えないけど。

これに乗って湘南の海沿いを走ったらー

山梨や長野のキャンプ場まで走って行けたら!

と、想像してワクワクする。

 

父の姿を探して海の方を見ると、岩場の向こう、静かな水平線に夕日が沈み始めていた。

水面が朱に染まり波がキラキラと輝いている。

これだからキャンプは辞められない。




 

 

 


 

 

 

 

 








 


 

 

 


 

 

 

 

 








 


 

 

 

 








 


 

 

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