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機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー  作者: 井上 斐呂


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第69話 学院との接触 x シャーリーン

最後の狩猟からそれなりに時間が経ったのでそろそろ狩りにでもいこうかと思っていたら郵便受けにギルドからの手紙が入っていた。


開けて読んでみると都合のいいときにギルドに赴いて欲しい旨が書かれていた。


どうするか?


あまり引っ張っても意味はないしな。なんの用か知らないが早めに済ませたほうが狩りに集中できるか…


すぐにギルドに向かい話を聞いてみる。


対応してくれたのは半ば俺の担当になりつつあるキリアムだ。


「どういう用件だろうか?」


送られてきた手紙を渡して聞いてみる。


「王立魔術学院の方から例の巨鳥の魔物についての問い合わせが来ていまして、先方は直接お会いして話が出来ないかと要望を出しています 」


学院からか…


俺の正体がバレるリスクもあるがこれを乗り切れば安全性はかなり確保できていると判断できるのではないだろうか?


知識人との繋がりがあればこの世界を知る上で有利になるかもしれない。万一正体がバレたときも顔が利く方がダメージを最小化できるのではないか?


断ったときのメリットとデメリット、受けたときのメリットとデメリット。それらを天秤にかけて考える。


「……受けることにする 」


とりあえず受けてみることにした。普通に人と会うことは出来ている。その中でも狩人は鋭い方だと思うがバレている様子はない。せいぜい変わった人間だなと思われる程度だろう。


研究者は研究者で独特の鋭さはあると思うが狩人とそこまで変わるものではないだろう。


気がかりなのは賢者と呼ばれる存在だがそう気軽に出向いてくるような立場でもないだろう…


……だよな?


「……そうですか。意外ですね 」

「意外というと? 」

「狩人は普通、学問的な交流は好みませんから。狩りの役に立たないこともないですがその時間があるなら自分の狩りに集中したいものでしょう 」


なるほどね。理論より実践というタイプの人間が多いのだろう。書庫のラインナップもそういう偏りがある感じだ。


「自分が狩人としては変わったところがあるのは自覚している 」

「こちらとしてはありがたいので大歓迎ですけどね 」

「歓迎するとはどういうことだろうか? 」


ギルド的には何かあるんだろうか…?


「狩猟ギルドと学会は協力関係にあります。ギルドは元々魔物の脅威に対抗するために出来た組織ですから魔物の詳細な情報は重要です。ギルドが情報を学会に渡し学会は分析してギルドに返す。その逆もあります 」


ギルドの成り立ちか… あまり考えていなかったが当然設立された経緯もあるわけだ。いろいろ調べてみるのもいいかも知れない。


「学会から依頼を受けてそれを狩猟者に回すことも少なくはないのですが依頼が成立することはあまり多くありません 」

「どうしてだ? 」

「依頼の多くは上級狩猟者に向けてのものです。依頼をこなせる人材が限られる上に都合がつかない場合も多く残念ながら大半をこちらから断らざるを得ないのが現状です 」


ふむ、ギルドとしては依頼を受けたいと…


「それで困ることがあるのか?」

「学会との良好な関係の維持にも繋がりますし依頼料も高額ですから…ギルドとしてはなるべく受けたいのが本音です。依頼の危険度はある程度事前に審査しますが未知の部分が伴います。こちらから狩猟者に対して無理に勧めるわけにもいきません 」


そうか…話が見えてきたな…


「なるほど。俺がその依頼を受けるかも知れないと?」

「そう受け止めてくださってもかまいません。ただ依頼を受ける際はくれぐれも自身の判断を優先してください。ギルドに気を遣う必要はありません 」

「心配しなくても自分の命を優先させてもらうさ 」


伊達に一度致命傷を負っているわけじゃないのさ。人一倍生きることに貪欲なんだよ。


「……本当ですか? 」


キリアムは急にジト目になって俺を見てきた。疑いの眼差しだろう。


あれ? 信用されてない?


「ま、まあとにかく一度会って話をしてみよう。いつ会えばいいだろうか?」

「こちらで調整します。希望の日時はありますか? 」

「俺はこの件が片付くまで王都にいるつもりだ。いつでもかまわない 」

「わかりました。では可能な限り早急に予定を組ませていただきます」


そこまで急がないんだけど。まあ、早いほうがいいのは確かか。


「よろしくお願いする 」


ギルドを後にして自宅に戻る。


いつものように過ごそうかと思っていたがそれだけだと流石に飽きてくる。


何をしようかと考えていたら思い出した。そろそろロボを作り始めよう。


電子系の部品を作る目処は立っていないが金属繊維を魔力で収縮させる人工筋肉方式ならコアで制御することが可能だろう。


人体を構築した時と同じやり方で進めていけばなんとか形にできるはずだ。


魔鉄は十分にストックがある。完成した後でも等級を上げる事は出来るから気軽に加工していこう。やり直しも亜空間の中なら容易だ。


まずは魔鉄製の骨格から製造していく。


自分の人体データから作っていくとそれなりに時間がかかるな。まあ、気長にやっていくか…


~~~~~~~~~~~~~~~~


ギルドに調整を任せてから二日目の朝、郵便受けに手紙が投函(とうかん)された。二階にいても手紙の配達に気付けるのは便利だ。


タイミング的にギルドからだろうと思い封筒の送り主を見ると案の定ギルドからだった。


中を見てみるとやはり学院の研究者とのセッティングの件だ。


明日の午前か……って早いな


これだけ早く決まるならそこまで上の立場の人間は来ないだろうと考えられる。偉い立場ならそうそう時間が取れるとも思えない。


気楽に魔物について語り合えばいいか…


そういう軽い気持ちで会見の日をむかえることになった。


指定された時間にギルドにいくとすでに相手は来ていると言うことだ。話し合いが出来るような部屋があるらしくそこに案内される。


部屋の近くに来るとかなり大きな魔力を感じた。大きさからいって俺よりもずっと大きいな。セリアより大きいかも知れない。


想定よりだいぶ上の人間が来ているのか?


かなり警戒して部屋の中に入る。


部屋に入った瞬間、目に飛び込んできたのは鮮やかな赤っぽい桜色だった。


落ち着いた色調の部屋の中で異彩を放つそれを両サイドにまとめた所謂(いわゆる)ツインテールという髪型をしている。


こちらが部屋に入るなりむこうは立ち上がり近づいてきていた。


背は低く幼さの残る顔立ちも相まって中学生ぐらいに見える。


妹……梓のことが思い出されるな


と言っても見た目が中学生だからといって実際の年齢も中学生というわけではないだろう。この世界の人間は年の取り方が地球とは異なる。


着ているものはかなり高そうな金の刺繍(ししゅう)が入ったローブだ。魔力の大きさもある。ただの学生などと言うことはないだろう。


こちらの前までやってくると相手は握手を求めてきた。


こちらにも握手はある。地球と違うのは左手の平を腹部に付けてお互いの右手を握り合うと言うところだ。狩人は握手の習慣はないのだけれど。


差し出された手をこちらも同じように握ると表情に多少の驚きが表れた。


こういう挨拶もできるのだよ、私は…


握手が終わると彼女から名乗りが始まる。外見から想像する通りの若々しい弾むような声だった。


「私はシャーリーン・シス・プラムゼフゼリアといいます。リーンとお呼びください 」


今度はこちらが返す。


「私はレイン・シス・プラムゼフレルドです。狩人名はそのままレインです。レインと呼んでください 」


名乗りが終わると手を離し向かい合って席に座る。


しかし、ゼフゼリアか。上級の学者って意味だよな。やはり只者(ただもの)ではないな。流石に賢者とやらではないと思うが… 見た目で年齢を判断しにくいとはいえ若い部類に入るはず……だよな?


リーンは机の上に資料を広げる。書かれている内容には見覚えがある。


俺が書いたやつだ…


「これはあなたが書いたものですよね? 」


疑問をぶつけてくるが不審がっている様子はない。ただの確認だ。そう思うが詰問されているように感じる。冷静になれ…


「ええ、そうですが… 」

「いくつか質問をさせていただいてよろしいですか? その際にいろいろと意見の交換が出来れば幸いです 」

「それはいいですね。遠慮なくどうぞ 」


嘘だよ、遠慮してくれ…


表面上お互いににこやかではあるが、なんとなくやりとりに緊張感があるな。こちらが勝手にそう思っているだけかも知れないが…


「まず、この巨大な鳥の魔物ですが学会では魔属種名をジェナスドルガ・イルスフォルと名付けました。長いので以後ドルガルスと呼ばせていただきます 」


「それはかまいませんが魔属種名とはなんでしょうか? 魔物学には(うと)いものでして 」


「魔属種名とは普段あなた方狩人達が呼んでいる魔物の名前と認識してくださってかまいません。魔力変異がある場合、元々の生物種とはかけ離れた外観をしますよね? それを考慮して外見や能力を主体として生物を言い表す名前を魔属種名と呼んでいます 」


魔物の名前は難しいってのはこういうことか。進化論にプラスして魔力的な変化も考慮しなければならないと言うことか。どこからどこまでが魔力変異として認められるのかもわかり(がた)いだろう。


「なるほど、狩人を含めた一般的な名称と言うことですか。素人には外観で判断するしか方法がないですから 」


そうか、そういうものだよな…勉強になる

こんな感じで終始何事もなく穏やかに進んでいけばいいんだけど…


「理解が早くて助かります。ところで……お互いしゃべり方をなんとかしない? 堅苦しくてやりづらいのよね 」

「……… 」


同感ではあるのだけれど早すぎないかな? まだ話し始めて大してたっていない。キリアムの反応が見たかったが彼は案内した後、戻ってしまっている。


「そっちも狩人なんだし遠慮してしゃべるなんて嫌いでしょ? 」

「話がわかる方ですね… 俺も少々肩が()ってきたところだ。こういう感じで行こうか 」


リーンは口元に笑みを浮かべると話を進めてきた。


「まず、鳥の巣の形状だけど推測の割には詳しすぎないかしら? まるで巣の中に入って見てきたように詳細な絵が描かれているのだけれど、どうしてここまで精密に書いてあるのかしら? 」


やはり何かしら疑っているところがあるということか…だが、そのぐらいは想定済みだ。


「それについては報告書に記載したとおり遠くから望遠鏡で何日も観察して雛や親鳥の動きなどから構造を推測しただけだ。形状が似た他の鳥の巣を参考に想像も交えて描いてある。途中で描くのが楽しくなってきたんで筆が走りすぎた嫌いもあるのかもな 」


楽しくなったのは本当だ。これで納得しちゃあくれまいか…


「ふ~ん、なるほどね。他の鳥の巣を参考にしたって言うけど他に鳥の魔物を見たことがあるの? 」

「いや、普通の鳥だ。鳥の魔物は他に知らないな。鳥系の魔物は珍しいんじゃないか? 」

「そうね、あまり多くはないわね。体が大きくなると飛びにくくなるから魔物にまで変化しにくいなんて仮説もあるけど本当のところはわからないわ 」


そういうものか。深層を探せばそれなりに見つかるかも知れないがなかなか難しいんだろうな。偵察体に換装できる俺はともかく。


「次にいこうかしら。ドルガルスが使う魔術についてだけれどあなたが戦って得た情報なのかしら? 」


「いや、他の魔物を狩っているときを観察して得た情報だ。魔術を食らった魔物がどうなったかは遠すぎて良くわからなかったが… 」

「獲物に雷撃や圧縮空気砲なんて放ったら可食部がなくなりそうだけど? 」

「加減ぐらいはしていたと思うがな。それも遠すぎて確認は出来ていないし近くで観察するのは無理だろう 」


威力を過少申告して正解だったな。地形を変えることが出来るなんて書いたら何と戦っていたのか聞かれるだろうしな。俺だよ。


「ふむ、なにと戦ったのか気になるところだけれど聞いても無駄そうね 」


完全には信じてないな。こちらが何か隠していると思っているんじゃないだろうか……その通りだよ。


「深層のかなり奥で拠点を作り上げたみたいね。そこで長々と観察していたようだけど他の魔物に良く襲われなかったわね。どうしてかしら? 」


そこ聞いちゃうか……まあ気になるよな。もう少し遠慮して欲しい。でも俺も気になるよ…俺がこれからどんな嘘を言うか。


「昼はドルガルスのお陰で他の魔物は活動しないからあまり警戒しなくてもいい。夜は夜で魔物の知覚をだます方法があるんだ。拠点を作る場所の選定にもコツがあるんだが詳しく言うつもりはない 」


俺には黙秘する権利がある。弁護士を呼んでくれ。


「まあ、詳細まで言うとは思っていないわ。でもいつか教えてね、タダで 」

「無理だ 」


有料でも無理。そもそもないからな。


「教えてくれるまで帰らないって言ったらどうする? 」

「どうもしないな。ここは俺の家ではないからな。俺が帰るだけだ 」


そういえばギルドって何時に閉まるんだろう。残業とかはなさそうだけど…


「冗談よ 」


冗談じゃなかったら困るな。キリアムが。


「やっぱり狩人はあまり他人と距離を詰めないのかしら? あまり打ち解けてきている感じがしないのだけれどどう思う? 」


どう思うって言われてもな…


「初対面ならこのぐらいの距離感でいいんじゃないか? そこまでする理由はないだろう 」

「う~ん、できるだけ詰めておきたいんだけど… 」

「? 」


良くはわからんが俺にとってはあまり良くないことに感じるな。親しくするほど油断が生まれる気がする。関係性は築きたいがそれは馴れ合いとは違うものだろう。(さじ)加減は難しいな。


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