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機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー  作者: 井上 斐呂


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第62話 Ⅹ木々を跳ねるもの

ギルド支部に着くと受付で支部長を呼び出す。だが間の悪いことにレドは出張ででているとのことだった。こちらに帰ってくるのは二日後になるらしい。


しょうがないので町のホテルに滞在して待つことにする。


二日後の午前中に再び訪ねてみると出張から帰ってきているようだ。少し待たされてから支部長室に通される。


レドは俺が部屋に入るなり上機嫌で声を掛けてくる。


「よお、レイン。調子よく狩れているみたいじゃないか。おかげでうちの職員も腕をみがけているようで張り切っているよ、、、って、そんな雰囲気でもないようだな 」


俺の魔力から深刻さを感じ取ったのか挨拶あいさつを途中で打ち切る。


「何があった? 」


勘が良くて助かるね。


「悪い知らせがある。考え方によってはそう悪くはないかもしれないが、、、 」


俺はかいつまんで鎧ゴリラグマについての情報を伝える。


「そんな魔物がいるのか? ギルドの情報にはない魔物だな。見た感じどうだ? 」


「相当強いな。かなり危うい相手だ 」


勝てないとは言わないが、、、


地図を広げて見せてレドに説明をしてやる。


「これが発見場所と移動経路だ。横に書いてあるのが日時だな。こんな風に近づいてきている。この速度だとおそらくあと1週間ほどで中層に到達するだろう。絶対に来るとはいえないが 」


「たぶん近くまでは来るだろうな。中層まで降りてくることはないだろうが、、、。経験則でいえば中層手前で1,2ヶ月は居座ることになるだろうな 」


「わかるのか? 」


「だいたい、、だがな。他の魔物の動きから言えばそうなる。ただ原因がこいつだとは断定できねぇ。こいつが村まで降りてこないって保証はないな 」


しゃべりながらレドの顔が苦渋に満ちたものになってくる。


「すまねぇがこいつを討伐してもらえないだろうか? 正式な討伐依頼は魔物をギルドで確認できていないから出せないが報酬は何とかしてみる 」


「もともと討伐の必要性は感じていた。引き受けよう 」


「ありがとうな。なんだったら俺も討伐に参加しようか? まだまだ十分にやれるはずだ 」


「いや、遠慮しておこう。一人でもそれなりに勝算はある 」


いざとなったら切り札を切るつもりではある。だがそれには人がいてはもらっては困る。はたっているあいだは戸を開けて見てはなりませぬ、、、


「そうか、、、。無理はするなよ。勝てそうになかったら迷わず撤退しろ。臭い玉は持っているか? 熊系の魔物なら効果の高いものがある。こちらで用意しておこう 」


「いや、すでに用意してある。気遣いだけで十分だ 」


熊用のは持っていないけどな。使うことはないだろうと思ってまったく調べていなかったが臭い玉にも種類があるらしい。今度調べてみるか。


「それではすぐに討伐に向かうとしよう。そちらも対処をたのむ 」


「ああ、任せておけ 」


レドの帰還を待っている間に物資の補給は済ませてある。俺はベースキャンプまで一気に駆け抜けるとトレーニングを行い魔術回路の見直しをして細かい調整をする。


ハードな戦いになるだろう。やれるだけの準備はしなければならない。相手の能力を予想して大まかな作戦を立てておくが相手の情報がほとんど無い状況ではあまり役に立たないだろうな。


やれるだけのことをやって翌日の戦闘に備えて眠りに就いた。


翌朝、朝食を食べているときに事態は起こった。かなり近くにヤツの気配を感じる。距離は150メートルぐらいか。想定より早すぎる。俺の痕跡をたどられた可能性もあるな。人間には感じないものも感じられるのかもしれない。


ネズミかウサギに憑依して観察するべきだったか、、、


それはそれで問題が出てきそうだな。なにより狩人らしくない。そういうこだわりは持つべきだろう。


ともあれ俺の痕跡をたどられたならもう戦闘は避けられない。相手は俺に気づいた上でこちらにアピールしている。そんな感じがする。


それに乗ってやるとしよう。俺はすぐに朝食を平らげるとがたなで向かっていく。


向かっていく途中で気配が感じ取れなくなる。


やっぱり気配を消せるじゃないか


できるなら普段からやれといいたくなるがそれが出来るのは強者の特権か。接近は気づかれているだろうが場所の特定まではさせまいと慎重に隠密歩行で物陰ものかげに隠れながら進む。


ある程度進むとなんとなくだが近くにいるような気がする。さらに慎重に進むと足跡を発見する。


このおよんで足跡を消さない理由はなんだ?


足跡が向かう方向に迂回うかい気味に進んでいく。直接、足跡の上を追うことはしない。


気配は濃くなっている気がするが姿をとらえることはできない。


真っ黒な体は森の中で視認しづらいことはないように思うが木の上を含めて周囲を見回しても発見できない。あれだけしていた獣臭けものしゅうも感じられない。清発を行いにおいを消したのだろう。


そのうち足跡が途切れる場所にくる。ここで足跡が消えるのはどういうわけだ?


木の上に飛び乗ったのか? 隠密歩行をここで開始したのか? あるいはここから後ろ向きに足跡を付けていったのか?


足跡の向かう先には熊がいる。おそらく生態系で上位の存在。それより弱い生き物は逆に向かうだろう。それを待ち構えて狩る。


自分を追うものがいるなら足跡を追ってきたものを後ろから狙う。


あり得る気がする。ヤツは後方にいる可能性が高い。すでに俺を追う形になっているかもしれないな、、、


ここでコウモリの討伐時に訓練して試みた索敵を行ってみようという考えがむくむくとき起こってくる。かなりリスクがあるようにも思えるがこのような緊迫きんぱくした実戦でなければうまくいかない気もする。


決断すると極限まで魔力を低下させて目を閉じる。残っている魔力を体の中心、魔石に集めるようにして魔力の空白を作り出す。周辺の環境から魔力が自分に向かって集まるように感じる。錯覚かもしれないがなんとなく周囲の状況が把握できるようになってくる。


、、、いるな


ヤツの気配の中心を捉えることができた。木の上にいる。こちらに接近してきている。どうやら木の上を移動しているらしい。その割に音がしないな。何かの魔術だろうか。


気配は俺の真上に近い場所まで来ている。そのまま降りてきて攻撃するつもりだろう。だがいまいち攻撃に踏み切れないでいるようだ。


俺が棒立ぼうだちで動かないことを不審ふしんに思っているのか。頭がいいというか勘が鋭いというかだな。


さそってみるか


俺はヤツに背を向けて歩き出そうとする。すると相手の攻撃が始まった。


木から飛び降りると一直線に俺に向かってくる。熊はその長い腕の先にある爪を繰り出してくる。


落下のスピードが乗った速くて重い一撃、インパクトの瞬間に魔力を十分に乗せている。爪が突き刺さると地面が爆ぜる。


攻撃が当たる瞬間に転がって後ろに回り込んだ俺は無防備な背中に向かって衝撃魔術を乗せた拳をたたき込む。


熊は背中まで装甲で覆われているが衝撃は内部まで浸透したようだ。痛みに耐えかねたのか前方に転がりながら倒れていく。


口からは血を吐きだしている。最初にしてはまずまずの戦果と言ったところか。


だが、すぐに起き上がりこちらに向き直る。起き上がりながらもほとんど回復されてしまった。流石のタフネスだな。フィジカルは圧倒的に向こうが上か。


正対するのは初めてだ。くっそデカいな。こちらの倍を優に超える身長だ。黒い壁が立ち塞がっているようなそんな錯覚を覚える。


威嚇いかくするように吠えると周囲の大気が震える。こちらの全身も震えてくる。


なんてデカい声だ


耳を塞ぎたくなるが我慢する。その代わりに魔力を高めてこちらからも威嚇し返す。


リーチは圧倒的に向こうが上。至近距離の方がこちらに有利か。そう考えてこちらから接近する。


地面をうように高速で向かっていく俺に大振りの一撃を放ってくるが難なくかわすとがら空きのボディに再び衝撃魔術をたたき込もうとする。


だが、熊は長い腕を支えにして短い足で蹴りを放ってくる。のけぞるようにギリギリでそれを躱すと拳に乗せた衝撃魔術を放つ。衝撃波が飛んでいくと腹部の装甲に当たり波立たせる。


直接当てるよりだいぶダメージは少ないようだ。軽くのけぞるぐらいで平気な顔をしている。


熊は蹴りを主体に細かい攻撃を仕掛けてくる。そした、距離を取ると腕を振り回した強力な攻撃を繰り出す。


俺はそれを躱しつつ衝撃波を両手から放っていくが装甲や足に阻まれてたいしたダメージを与えられないでいる。


魔力消費の高い大技を使えば十分に通りそうだが魔力を感知されて避けられる可能性が高い。それに装甲が高く売れそうだから仕留めるためとはいえあまり傷を付けたくない思いもある。


余裕のある相手ではないが狩人としての思考で考えてしまうところがあるな。


熊はれたのか俺が蹴りを避けて少し下がった瞬間、息を溜めて口から衝撃波を放ってくる。魔力でガードしてダメージはほとんど無かったが数メートルほど後ろに後退させられる。


そこにすかさず腕の振り降ろしが頭上から迫ってくる。さらに後ろに飛んで躱す。


振り抜かれた腕は地面を爆発させちょっとしたクレーターを作り出してしまう。


かなりの威力だ。全力で溜めを作らせたら一撃で殺されるかもしれない。溜める隙を与えないように攻撃するか魔術を駆使して躱していくしかないか。


そう考えていると熊は飛び上がって手で枝をつかみそのままぶら下がる。


どう考えても枝が体重を支えられずに折れると思うのだが細い枝は大してしなりもせずに熊の重量を支えている。


魔術か、、、


どういう魔術かはわからないがこれを使って樹上を移動していたのだろう。ここから何をしてくるか予想できない。とりあえず様子を見るために相手の魔力を注視しつつ足に魔力を込めてかわす準備をする。


警戒していると熊に動きがあった。枝から枝へ反動を付けて飛び移り徐々に速度が上がっていく。枝のしなりを利用して反発力で加速していってるようだ。


速度が上がるとより太い枝に移り最後は幹を足場に飛び回る。太い幹が折れることなくグニャリとゴムのようにしなって巨体を空中に飛ばしている。


魔術で木を操作しているのか、、、


さしずめ樹木魔術と言ったところか。スピードが乗り切ったところで攻撃を仕掛けてくるつもりか魔力の圧が高まっていく。


全身に魔力をたぎらせて自分自身を弾丸にして突撃してくる。軌道を読んで横に跳んで回避するが飛んでいった先でまた木を足場に折り返して飛んでくる。


なんとか躱すがすぐに反対側から攻撃が飛んでくる。横に跳び地面を転がり前に飛んだり何とか避けている。ラリアットのように手を広げた攻撃を混ぜてきたり飛行中に長い手で木の幹をつかんで変則的な挙動を加えてくる。


避けっ!、、、切れんっ!


後ろから高速で迫ってくる熊の腕を上に跳んで避けてしまう。着地する瞬間を狙ったかのように熊の頭突きが襲いかかってくる。


腕を交差させてガードするが後ろに思いきり吹き飛ばされる。飛ばされながらもとにかく全身を魔力で防御してダメージが減るようにいのる。


幾本いくほんもの木の幹にぶつかり軌道を変えながら飛んでいき最後は地面を転がって止まった。


すかさず身を起こして相手の姿を確認する。遅ればせながら何本かの木が折れて倒れてくるとその間に黒い固まりを見つける。


倒れた木でヤツの姿は見えなくなるが何を思っているんだろうな?


攻撃を喰らわせてやった喜びか、思ったより飛ばし過ぎてしまった後悔か、、、


追撃は何をしてくるだろう?



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