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機鋼神エイジャックス ー石に転生して異世界に行った俺、わからないことだらけだが何とかやっていくー  作者: 井上 斐呂


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第226話 不穏

全身のシルエットは猿のような感じだった。器用に梯子を登ったり蓋を開けたのもうなずける。体長は一メートルちょっとぐらいだ。魔力の大きさから言って下級中位でも下の方だろうがこんなやつが自由に街を出入りしていいわけがない。


《やるぞ 》


ジュジュに指示を出して飛び出していくと相手を前後から挟む形で対峙する。暗視強化と魔力視を併用して魔物の詳細を確認していく。


顔はなんか口が前に伸びていて爬虫類っぽい。眼もどちらかと言えば爬虫類だ。両手の指は猿というよりか猛禽類のようでゴツゴツとした皮に覆われた指の先端に鋭く伸びた爪がついている。他の部分はすべて茶色っぽい毛で覆われていて全体的にはやはり猿の様に見える。


どんな魔物だよ?


変異が進んでいるようで見た目からだと良くわからんがなんか気味の悪い見た目をしている。そして、それだけでなく見ているとなんだが妙な違和感を感じる。


ふむ、、、なんだろうな、、わからん


まあ、いいか。とりあえず狩ることにしようか。だが、ここで問題が発生する。この街ではほとんどの人間が武器を携帯していない。それで俺も今は武器を携帯していない。


街の中に狩人が住んでいないらしい。魔境に近い集落に集団で暮らしているという。騎士団すら町の外だ。この都市は相当に平和であるようだ。ここの住人は平和に慣れ切っていると言っていい。


さらに言うと街中で攻撃魔術を使用するのは御法度だ。今は緊急事態だから別に使ってもかまわないとは思うが使う必要がないのに使用すると後で何か言われるかも知れない。実際、徒手空拳で制圧することは可能だ。ただ、、、


殴り殺すのか……


そんなことをしたことがない。ちょうど良い加減が出来るだろうか?本気で殴ったらぐちゃぐちゃになってしまいそう… ほどよく一撃で仕留められるように調整したいところだがデータが足りない。


コアで演算しようにも相手の情報が足りないからな、、、


躊躇していたら相手の方から飛びかかってくる。とりあえず魔力を込めずに腹部を蹴りつけて押し返してやる。


猿?は地面に背中から落下して打ち付けられるがすぐに起き上がるとこちらを警戒しながらも飛びかかる姿勢を見せる。両手両足を地面に付けてバネのように折り曲げた恰好だ。


このまま適当に叩いていけばデータが集まるか、、、


しばらく適当に相手をしてやろうと決めてファイティングポーズを取ったら相手は再び飛びかかってきた。打ち落とす… そう思って拳を繰り出そうとした刹那、閃光が走る。


―バシッ…

「ギャウッ! 」


猿は全身を硬直させて地面に倒れ込むように落下するとそのまま動かなくなる。こりゃ死んだな… ジュジュの放った電撃によって心臓を止められたようだ。


《・・・・》


ジュジュは俺の様子を見て、何かやっちゃった? みたいなことを聞いてくる。


《いいよ、ありがとう 》


事前に指示を出してなかった俺が悪い。最悪お客さんの相手は俺がやればいい。


複数の気配が俺達を囲むように接近してくる。様々な方向からこの場所にやってくると俺達を遠巻きにする。


全身黒ずくめの衣装を身に纏い顔まで隠している。武装までしていて怪しい感じにも見えるが敵ではないようだ。魔力から敵意は感じられない。警戒はされているけど、、、


ここの治安を維持している組織の人間だろう。帝国では衛兵団よりももっと近代的な組織運用をしている。ここオルバン公国でも同じ運用をしているはず。言わば警察機構だ。


この人達は警察、それも特殊部隊に所属しているのではなかろうか?


俺達を囲んでいるのは六人。状況が飲み込めたのかその中でもリーダー的な立場の人なのか一人が進み出て話しかけてきた。


「すまないが、話を伺ってもよいだろうか? 」


いいかどうか聞かれているけどこの状況じゃ俺に選択肢はないんだろうな、、、


「かまわない、いいところに来てくれた 」


これは半分本音だ。この後どうすればいいのか良くわからないからな。警察の方から来てくれて助かる部分もある。まあ、雷術を使用したことを詰められるかも知れないけど、、、


「そうか、助かる… それでは起きたことを順を追って説明してくれ 」


声の感じは女性だな… それでどうなるって訳でもないんだが。相手の性別が何であれ無用なトラブルは避けておきたい。俺は公園で起こったことから今に至るまでの流れを説明していく。


おとがめありませんように…


「…と言うわけで魔術で仕留めたんだが問題はあるだろうか? 」


「、、、特にないな。周りに被害はない。正当防衛の範囲だ。ご協力感謝する 」


良かった、セーフだったようだ。相手が魔物ならこんなものか。心配して損した、、、


「すまないが調査のためにこの魔物の死骸をこちらで引き取らせてもらっていいだろうか? 少ないが謝礼金はでる 」


「ああ、かまわない 」


「そうか、感謝する。もう少しだけここで待機していてくれ。直に調査員が来る 」


この後、少しして制服を着た警察官が何人か来るとその人達に身分証の提示や泊まっているホテルを伝えてから開放された。


去り際に警官の一人に聞いてみる。


「この街ではこういう事はよく起きるのか? 」


「う~ん、言っていいのかな? まあ、狩人だしいいか、、、ここ最近増えてきているんですよね。行方不明になった人もいるんですよ。まだ、調査中ですがね。あなたも気をつけ・・・って八ツ星狩人に言うことではなかったですね 」


「そうか、ありがとう 」


結構口の軽い警官だな・・・ まあ、この程度の情報は新聞とかにも書いてあるのだろう。暇なときにでも買って読んでみるか、、、


ホテルに戻るとその日はすぐに寝ることにする。嫌な話を聞いたときはさっさと寝るに限る。


翌日の朝は朝食を取ってからこの都市の狩猟ギルドへいく。預金を下ろすついでにこの周辺の魔物の情報でも仕入れておくためだ。


街の雰囲気に合わせて狩り着ではなく普通の服装をチョイスして出かけている。これぐらいの都市になると武装している人はほぼいないらしい。街を歩いている人もどことなく繊細な気がしてくる。


ええと、、、ここだな


地図を見て大きめのビルにたどり着くと中に入っていく。このビルが狩猟ギルドの建物というわけでなく一部をオフィスとして間借りしているだけのようだ。別の団体も入居している。


エレベーターがあるのか、、、


デザインはなんか古めかしい感じがする。扉は手動で開け閉めするタイプのようで地球では博物館にもないような気がする。操作は手動で行うようだ。


階段でもいいのだが面白そうだったので乗ってみることにした。手で開けて籠の中に入ると締める。レバーを操作して四階に合わせると昇降ボタンを押す。すると上昇し始めて四階で自動的に停止する。機械式の制御か、、、電子制御の方が良かったんだけどな、その方がロボット技術に期待が持てる。


だが、レバーを動かす感触は機械を動かしているって感じでなかなか良かった。地球ではナビをセットしておくだけで自動的に動いてくれたから何一つ操作する必要がなかった。ボタンの一つも押さなくていい。便利ではあるがこうしてみると味気なさが際立ってくる。


エレベーター一つに大袈裟か、、、


扉を開けて出ると忘れずに締めてギルドのオフィスに入っていく。


狭いな、、、


今までになく小さなギルドだ。これでも北オルバンの中核を担っている場所のはずだが大丈夫なんだろうか?


受付に行って会員証を提示して確認してもらう。受付嬢は一度目を通してハッと驚いた表情をするともう一度確認する。するとこちらに待っているように伝えるとどこかに行ってしまう。


なんだろうな、あまりいい予感はしないのだが、、、


やがて戻ってくる。後ろには多分エライ人なんだろうなって人が控えている。帰っていいッスかね・・・


「お待たせして申し訳ございません。こちらは当ギルド支局の代表を務めているブラントです 」


「初めましてレイン殿。あらためましてブラントと申します。早速で申し訳ないのですが私と少し話をさせて頂けないでしょうか? 」


ブラントは顔ににこやかな笑みを浮かべて対話を所望してくる。別にいいのだがこの笑顔にはどこか既視感を覚える。なんだろうな・・・? ああっ、そうだ! キリアムが俺に頼み事を持ちかけてくるときの笑顔にそっくりだ。これは厄介ごとのにおいがするな。


だが面白そうではあるな… 話だけでも聞こうじゃないか


「いいだろう 」


「ありがとうございます。それではあちらに… 」


ブラントの案内で個室に通される。お互いソファに座ると特に世間話などなくいきなり本題から入る。


「単刀直入に申し上げますと魔境の調査を依頼させて頂きたいのですがいかがでしょうか? 」


こちらを狩人と鑑みての対応だろう。いいね、話が速い。いいよって言いたいところだが流石にこれで即答はまずいだろう。もうちょい聞いておこう。


「詳しく聞いておこうか。結論はそれからにしよう 」


「はい、実は… 」


ブラントの話はこういうものだった。ここ一年ぐらいの間、魔境で狩猟者が行方不明になることが何件も起こっているという。単に魔物に殺されたと言うのであれば問題ではあるが仕方のないことだと割り切れる。だが、魔物が原因だと言うには不審な点がいくつかあるという。


行方不明者の多くは初級狩人であり、表層で何者かに襲われたものと考えられる。しかし、相手が表層の魔物であれば死体が残る場合が多いという。人を食い尽くせるほど巨大ではない。クマやオオカミの群れと言ったものなら食い尽くせるがそれでも痕跡ぐらいは残る。いずれの場合も痕跡を残さず消えたように行方がわからなくなっているという。


もしも大型の魔物が表層に入り込んでいるならば魔境のそれなりの範囲に異変が表れるはずだがそれも確認されていない。そう言う場合がないこともないらしいがその場合でも何かしら痕跡は残るし中級以上の狩人ならそんな魔物に気がつかないことはないという。


そして、中級狩人が数人姿を消している。そのレベルの狩人が信号笛も吹けずに、なんの痕跡も残さずに魔物に消されることはまずあり得ないという。


こういう事が起きているので人間の仕業を疑う者も出始めている。狩人達の間がギスギスしているとか、、、






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