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機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー  作者: 井上 斐呂


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第22話 構築完了 x 服の作成

(別視点)


「私の名はエルセリア・ソル・ランセスと言う。ここより北の魔境に出現した特殊な魔物について聞かせてもらえないだろうか? 」


狩猟ギルドに現れた麗人は堂々とした態度で問いかける。受付嬢は相手の名前からして身分の高さを悟った。


名前の間にあるソルという単語は貴族がその所属を表すときに用いる。この場合はランセス家のエルセリアという意味だ。


感じる魔力の圧からもただ物ではないと伝わる。


「ただ今、支部長を呼んで参ります。少々お待ちください 」


自分では手に余る案件。そう判断した彼女は支部長がギルド内にいることを幸運とばかりに丸投げすることに決めた。貴族の名前を出されたら失礼のないように一番上の人間に応対してもらうのが一番というものだろう。


この国、レイゼルト王国の貴族は言うなれば防衛装置のようなものだ。領地に現れる対処困難な魔物を討伐することが主な役割である。


領主一族が強くて統治は人に任せている者もいれば、強者を集めて魔物はまかせ、自分は統治に専念する者もいる。そのやり方は千差万別だ。いずれにしても幼いころから厳しい研鑽(けんさん)を積んでいる者ばかりである。


平民にとっては目の上のたん(こぶ)というわけではなく英雄視されることが多い。どちらかといえば貴族は気さくな人間が多いだろう。


彼女も別に貴族が苦手というわけではない。


しかし、領主の決まっていない土地に貴族が一人で来るのはどことなくきな臭いものを感じている。早めに支部長に渡してしまったほうがいいと考えた。


(貴族の名前は出すべきではなかったか… )


受付嬢が一礼して席を立つと、その雰囲気から緊張させてしまったことを感じ取り若干後悔した。


一応、国が関係している任務ではあるので正式に名乗ったのだが、狩猟ギルドの組合員でもあるので狩人として名乗ることもできた。そうすれば余計な威圧を与えることもなかっただろう。


それでも、支部長に話をつけたほうが手っ取り早いのも事実であるので良しと思うことに決める。


しばらく待っていると背筋の通った初老の男性が後ろにさきほどの受付嬢を引き連れてやってくる。年齢は百六十歳ほどだろうかと思った。体格や魔力から元狩人だと判断する。


実戦から長いこと遠のいている雰囲気があるがそれでも初級の狩人では歯が立たない程度には力が感じられた。


「お待たせして申し訳ない。このリルゴの町で支部長を務めておりますゼストラと申します 」


挨拶(あいさつ)を済ませると談話室に案内され、そこで対話することとなった。


室内に入ると部屋の真ん中に長方形の座卓が設置され四脚の椅子が前後に二脚ずつ並んでいる。


奥の椅子に通され、腰を落ち着けた。座卓の上にはすでに資料が並べられている。例の魔物についてのものだろう。


案内されるまで時間が空いたのは資料をあらかじめ用意してくれていたからと受け取った。気づかいに感謝しつつ断りを入れてから目を通す。


「なるほど。やはり特殊な純魔力生物(アキアトル)で間違いないようだな 」


資料を一通り確認して感嘆を漏らす。


王都にも報告は届いていたが噂を聞いてすぐに駆け付けたので詳細な情報は確認していなかった。これならば目的を果たせるかと思い顔に笑みを浮かべる。そして、ゼストラに頼みを持ち掛けた。


「実はある目的があってここに来たのだが、支部長にぜひとも頼みたいことがある。そう難しいことではないがあまり公にはしたくない 」


セリアが簡単に頼みごとを説明すると話の主導権はゼストラに移る。


少し逡巡(しゅんじゅん)したが特に断る理由は見当たらなかった。ただ、ゼストラ側から頼みたいことをエルセリアが受けてくれるかが気がかりだった。意を決して口を開く。


「それについては問題ありません。ただ、こちらから一つあなたに頼みたいことがあります 」

「ほう…話を聞こうか 」

「実はこのところ町の周辺の魔境に変化の兆候(ちょうこう)が表れています 」

「大異変が起こると? 」

「いえ、そこまでは… 生態系の揺らぎ程度に納まると考えています。現状は何も起きてはいませんが近いうちにことが起きるでしょう

 なにぶん当支部のような辺境は初級の狩人しかおりませんので対処が難しいのが現状です 」

「なるほどな。そこで起こることを私が解決すればいいのだな 」


セリアの感触は前向きなように見えた。ゼストラは安心して次の言葉を続けられる。


「引き受けていただけますか? 」

「もちろんだ。長ければ二か月ほどこちらにいる。任せてくれていい 」

「ありがとうございます 」


ゼストラは快諾(かいだく)の返答を聞いて深々と頭を下げて感謝の意を示す。この後、エルセリアと依頼の詳細について話し合うのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


肉体の構築を始めてから一月半、とうとう肉体が完成した。予想よりも早く完成したのは後半に構築スピードが速くなったからだ。


作業になれてきたからなのか?

それともコアの潜在能力が解放されたからなのか?


久しぶりにコアの魔力を計測してみる。


現在魔力/最大魔力 9735/13594


おお! 結構上がっている…


戦って魔石の情報を食うよりもこっちの方が上昇しているようだ。相変わらず条件ははっきりとしない。だが、コアに何かしらの処理をさせると上昇するようだ。


いろいろ試していくしかないか…


それはともかく人間の肉体は出来た。


このところの潜入調査により言語はある程度まで習得することが出来ている。日常会話ぐらいなら対応できるはずだ。


これからいよいよ人間の世界で活動していくことになるのだ。


今までの苦労が(しの)ばれる。


あれからずっとイタチを警戒しながら探索をしていたが町中で遭遇することはなかった。


だが城壁の外ではもう一度ヤツと遭遇することになった。遭遇と言っても実際には姿を見られたわけではない。巣穴を発見されて侵攻を受けたのだ。


しかし、俺はあらかじめ迷路のように巣穴を張り巡らせていた。いろいろな場所に開けてある出入り口から別の巣穴に避難して難を逃れることに成功する。


複数の巣穴を広範囲に持っていて正解だった。


これが要らなくなると思うと少々惜しい気もしてくるな…


だが前に進むことを恐れてはいけない。


早速、人間の肉体に憑依して町で生活したい…と思ったがここで新たな問題が浮上した。着る服がないのだ。


服を買いに行くにしても服を着ていなければ買いに行けない。堂々巡りだ。


人類で一番最初に服を買った人間はどうしたんだろうな? 全裸で買いに行ったとか?


まあ、普通に考えれば自分で作るか家族に作ってもらうかだろう。


この世界で遭遇した人間は基本的には布の服を着ている。ズボンにシャツといったスタイルが基本のようだ。


履き物は長旅をするような行商などは革の靴を履いていることが多い。町に住む人間はサンダルを履いていることが多いような気がする。


とにかく服を作らなければ町には入れない。どうすべきか?


素材さえあればコアの能力でなんとかなる。綿花を栽培しているなら綿を少し失敬して糸を作って布にすることも出来るだろう。


だが、あいにくとここら辺では綿花の栽培は行っていないようだ。麻の栽培もしていない。羊の飼育もやっているところは見たことがない。繊維製品はどこからか交易して手に入れているようだった。


町の中で布を失敬してくるか? ばれたらまずいよな… イタチに追われるだけで済むだろうか?


亜空間があればばれる可能性はほとんどない。だが万一のこともある。それに盗むことに慣れるのはよろしくない気がする。


町を見る限り犯罪は少ないように思える。ちゃんとした法律が機能しているようだ。力押しでなんでも解決しようとすると思わぬしっぺ返しが来る。極力この国のルールに従った方が良い。


となると素材を一から集めるしかない。


森に入り片っ端から素材になりそうなものを亜空間にいれ分析していこう。何か服の素材に適したものがあるはずだ。


そうと決まれば早速一番近くにある森に行くとしよう。


俺はウサギに憑依して草原を駆けていった。



森までウサギの足では三時間はかかった。魔力強化をフルに使えば1時間ぐらいで来れたかな? しかし爆速で走り続けているウサギがいたら目立つだろうな。


行動に制限がかかってしまうのはもどかしい。早く人間として行動したいものだ。


森の中では良くわからない植物が多種多様に生い茂っていた。それを片っ端からちぎり取って亜空間に入れていく。


その日は、日が暮れたら巣穴を作りそこで眠った。


夜が明けるとウサギをしまってコアの状態に戻り採取した植物を分析していく。


葉や茎から繊維が取れそうなものはいくつかあったが布にするには繊維が短かったり量が取れなかったりと適当そうなものはなかった。


分析が終わるとまた採取にいそしむ。



採取開始から四日ほどたったとき、ついに有望な植物を発見する。


樹木に巻き付いた(つる)を採取して分析したら細長い繊維をそれなりの量で確保することが出来た。


産業としては有用なものにならないかもしれないが、亜空間の中で加工するのであれば問題にはならない。加工の手間がないと言っていいくらい簡単に加工できる。


この蔓植物を狙って集めることに決めた。



そう決めてからさらに三日ほどがたった。


一人分の衣服を作るにはまだ足りない。六割ほどといったところか。


だいぶ森の奥深くに来てしまった。途中で狩人と思われる人間を見かけて引き返したこともあった。


前に襲ってきた人間より弱そうな感じがしたが新人かな? 新人がいるってことはここはまだ森の深いところではないってことなんだろうか?


もう少し奥に行ってみよう。


数時間ほど採取しながら進むと濃い魔力の気配を感じた。敵意のようなものを含む威圧的な魔力波動…こちらをすでに捕捉(ほそく)しているようだ。どうやら採取に気を取られて索敵や隠形がおろそかになっていたらしい。


このまま逃げるのも一つの手だがなんとなくしゃくに(さわ)る。イタチから逃げ回っていたことにフラストレーションを感じていたからか?


しかし、人目があるかもしれないことを考慮するとウサギのまま戦った方がいい。俺はウサギの魔石を確認した。


現在魔力/最大魔力 324/363


魔力が上がっている。ウサギの体を使用している間に魔石が成長したらしい。


今回は町中と違って魔法の出し惜しみをする必要はない。相手次第だがこれならなんとかなるか…なんとかならなそうなら逃げよう。


このまま相手の到着を待つことにした。


程なくして二匹のオオカミが目の前に現れる。前に戦ったオオカミよりけっこう体が大きい。体高は1.2メートルぐらい。ウサギのまま戦うにはちょっときつい相手か。


だがウサギの魔石をコアで補助することも出来るし、直接コアから魔法を使うことも出来る。やり方次第で十分(じゅうぶん)勝機をつかめるはずだ。


気になるのは相手が魔法を使うのかどうかだがそれは戦いながら確認すればいいことだ。


初手は相手に譲って出方をうかがうことにした。

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