表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機鋼神エイジャックス ー石に転生して異世界に行った俺、わからないことだらけだが何とかやっていくー  作者: 井上 斐呂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

219/241

第219話 暗躍

「グッ… ハ… 」


そのまま押さえつけるように地面に叩きつけるとリカルドは苦悶の表情を浮かべる。口からは血が流れていた。


十分な手応えはあったもののルシウスにはこれで仕留められたとは感じられなかった。だが、しばらくは動けないはずだとは思えた。この隙に逃げて助けを呼ぶ。そう考えて走り出そうとする。そんなルシウスの目が驚愕に見開かれる。


いつの間にかリカルドは起き上がっていた。一瞬で跳ね起きた様にも感じられた。攻撃を食らわせた胸の部分は服が弾けてなくなっているがそこから除くのは肌ではなく黒く艶のある板のようなものであった。それで衝撃を軽減させたようだ。


感情がすっぽりと抜け落ちたような表情でリカルドはルシウスに迫っていく。右手を手刀の形にして指を揃え、そこから黒い刃物のようなものが真っ直ぐ伸びていく。


ルシウスにはその様子が低速再生のようにゆっくりとしたものに見えていた。自分はここで死ぬのだなと思った。思いのほかあっさりと死を受け入れている自分に思わず苦笑をしそうになるほど落ち着いていた。自分を殺すリカルドの顔を最後まで見てやろうと眺める。すると急に黒い塊が目の前に現れた。


なんだろうかと観察するとどうやら人であるらしい。一瞬レインの姿が脳裏をよぎったがまったく違う人物だった。魔力から受ける印象が似ても似つかない。むしろリカルドに似ていると感じられた。


―ガキィィィ……


硬質な物と物がぶつかり合う音が響き、それを聞いてルシウスはようやく我に返る。目の前にいる謎の人物がリカルドの攻撃を受け止めたらしい。


(助けに来てくれたのか・・・? )


どんな人物なのかわからないがリカルドと敵対している以上味方と考えても良さそうだと思う。命が助かると思うとほっとして観察する余裕が生まれる。ルシウスは突然現れたこの人物をまじまじと見る。


その体はとても大きい。大柄なルシウスと比べてもなおのこと大きく、全身を真っ黒な衣服と軽鎧で覆っている。後ろからでは見えないが黒い兜を被っていて顔を見えないように面防で覆っているのではないかと思える。正体を隠しているようにルシウスには感じられた。


謎の闖入者に攻撃を防がれてリカルドは一旦距離を置くために後ろに跳んだ。何者かはわからないが身のこなしといいかなりの手練れのように感じる。面倒なことになったと思った。それでも今の段階では殺せないとは思わなかった。問題は別に有る。


(全力を出して殺すのは目立ちすぎる。だがやるしかないようだ… )


とりあえず二人とも殺せば何とかなると算段を付け魔力を高める。両者の間に緊張が高まっていく。


《《《《《《《


ルシウス邸からホテルに戻る。寝る準備を整えてベッドの上に横になると今回の事件について考えを巡らせる。ルシウスからアルゴルの魔石が盗まれたと聞いてから気になることが出てきのだ。


学院の警備は俺の目から見てもかなりのものだった。外部の人間が気付かれずに入り込むことはほぼ不可能だろう。となると内部の人間の犯行である可能性が高い。


そう思って研究室の人員を見ると怪しい人物が何人かいる。遅刻してきたヘイワーズや調査中に逃げて学院に戻っていたランツとかな、、、


だが、一番怪しいと思うのがリカルドだ。あいつは普通じゃない感じがする。


魔境に入るならそれが表層であれ普通は魔力に乱れが出るものだ。強い人間ほど乱れは小さくなるものだがなくなるわけではない。なのにあいつにはまったくそれがない。


オオカミに襲われたときの反応も今思えばおかしかった。表面上落ち着いているというだけならおかしくはない。スオムだって落ち着いてはいた。だが、魔力になんの反応もないというのはやはりおかしい。


仮面を被っているかのように平坦なんだよな、、、表情が通常に固定されているようなそんな感じがする。


怪しいと思うまではそのことは大して気にならなかった。そういった人もいるんだなぐらいにしか思っていなかった。普通の人なら気にも留めないだろう。


だが、一度怪しいと思うと疑念がどんどん膨らんでいく。リカルド以外には考えられなくなる。


、、、それでいいんだろうか?


別に確証が有るわけでもない。ただ単純にそう言う人だったという可能性ももちろん存在している。俺は探偵でも刑事でもなんでもないからな、、、シャーロックホームズとかの名探偵のようにピッタリ当てるなんて到底無理な話だ。


しかし、リカルドを警戒すべき理由がある。あれが生来の物で普通の人間であるならば問題はない。だが、もしも訓練によって身についた物ならばどうだろうか?


ガッチガチの犯罪者であるのかも知れない……


そうだったらルシウスや他の研究員達が危険だ。もうすでに人が死んでいるという話だしな。下手に刺激するとどう動くかわからないしそうでなくても証拠を消しに動いていく可能性もある。


リカルドの動きを影から監視する、、、それがベストな方法に思える。何も起こらなければそれでいいし、起こったなら介入すればいい。確実と言えば確実だ。


だがこれには問題が二つある。一つは何も起きない場合いつまで続ければいいのかってことだ。


、、、これはもう俺が納得するまで続けるしかないか、、、起きるなら早く起こって欲しいところだけどな、、、


もう一つの問題は俺が関わっていると知られたくないということだ。この手の犯罪に関わるのはリスクが大きいと思っている。これはこちらの司法にも関わることだ。


こちらにも刑務所のような場所は一応ある。普通の人であれば分厚い石壁や魔鉄製の格子や扉を破壊することは出来ない。出来たとしても時間がかかるし看守に取り押さえられるだろう。


問題は強い人間や魔術の得意な人間を収監する場合だ。強いだけならお金をかけて監獄を丈夫にすれば閉じ込められるが莫大な費用がかかる。そして、魔術が得意なら簡単に鍵を開けて脱獄出来る。


昔はある程度以上の力を持った犯罪者は罪状にも拠るけど簡単に処刑されていたと言う。刑場で処されるという意味ではなく、専門の人狩りが放たれて始末を付けると言う意味でだ。


殺せない理由がある場合は四肢を切断して弱らせたうえで最低限の食事しか与えず状態を維持し続けたという。


今はどうかというと魔導具のお陰でそう言うことは減っていると聞く。魔力の発動を抑える首輪や枷があって、それらは魔封帯と名付けられている。それを嵌めることで魔術の使えない常人以下に出来るんだとか。さらに扉の錠前も魔導具の物は魔術でも容易に開けることが出来ない。そうやって犯罪者を安全に収監出来ると言う。


ただ、それにも限界があって強力な人間ほど上質な魔石を使った強力な魔封帯を必要とする。金がかかるしそれを用意するにはタイミングも必要だ。それに見合った魔物を見つけて狩らねばならない。


未だに犯罪の程度にも拠るけどその場で殺さなければならないような自体は有り得ると言うことだ。


俺に殺せるのかと言われればおそらくノーだ。狩りで生き物を殺して来ている分、抵抗は少ないだろう。激しい戦闘の流れで殺すところまで行くことは十分に考えられる。だが、積極的に人殺しが出来るとは思えない。


殺せずに、取り押さえることも出来ずに逃がしてしまったら逆恨みでつきまとわれかねない。取り押さえることが出来て収監しても死刑になる前に脱獄されるかも知れない。組織的なものだったら俺が報復の対象になるかも知れない。


、、、面倒だ


俺は返り討ちに出来るだろうが周りに迷惑がかかるかもしれないしな。俺がやったとバレないように関わるのが一番良い。


、、、作るか


レインとしての顔を隠しつつ人間として活動し戦うことが出来る体。擬装戦闘体を開発しよう。


その要の部分になるのは魔石だ。人工魔石に人間が放つ魔力波を模倣させて誰でもない人間として認知させるようにしよう。魔力波以外にも人間としての特徴を模倣出来るように機能を組み込んでいく。


コアの力は怪しまれないように極力使わない方向でやりたい。ボディの材料は土にするから肉体と違って変化がわかりやすそう、、、


出力のほとんどを人工魔石に頼るとそこまで高出力にならないのが問題だな。場合によってはサブでいくつか人工魔石を仕込んでおこうか。


魔石が用意出来て方針も決まるとボディの作成に入っていく。


まずは骨格だ。死蔵してある魔物の骨を材料にして人間の骨格を作成していく。これは出来るだけ大きく作る。身長は二メートルぐらいにしておこう。


俺との関連を疑われないようにするためには俺よりずっと小さくした方がいい。小さく見せる方が大変だからな。だが、それだと戦闘力を引き出すのが難しい。材料が土だと特に。魔力格を上げたいところだが上げすぎると土で出来てるってバレそうだし、、、


まあ、今はいいか


出来た骨格に土を盛り付けていき心臓部に魔石を埋め込む。魔石の人体データをいじって調整してそれにそって形を整える。その後、レインメーカーに搭載したような眼球や肺、声帯を取り付けて基本構造は完成する。


魔力波と全体的な形、呼吸を含めた動作なんかは人間そっくりだ。全身土色でとても人間には見えないけど、、、


これにガワを付けて土人形であることを見破られないようにしなければならない。


とりあえず全身に包帯を巻いてみることにした。兎に角、皮膚?が見えないようにしなければならない。何重にも巻いていく。


しかし、これだと心許ないな、、、


考えた末、包帯にレザニュームから回収した炭素を含ませて強化していく。土にも炭素を混ぜて強化する。魔石に刻み込む魔術も炭素術だけにして特化させる。この方が無理なく戦力を上げられるだろう。土のにおいも誤魔化せるし違和感もある程度は消せるはず。


そこにチェインメイルを着せて上から黒く染めた服を着せる。軽鎧を身につけさせて最後にフェイスガードで顔の隠せる兜を被せて完成する。


いきなり本番では心許ないな… 試運転をするか…


換装チェンジ


ベッドから起きて体を換えるとこちらを興味深そうに見ているジュジュと少し遊んでみる。軽く相撲のまねごとをしたり音を立てないように追いかけ合ったりしてみた。


それで課題がはっきりと見えてくる。


身体的な強度はジュジュにだいぶ負けているな。魔術無しなら中級中位ぐらいの魔物となら渡り合える程度、、、


魔術の使い方が強化の鍵だ


再び亜空間で手直しを行っていく。魔石に刻み込む魔術回路を中心に調整していきサブの魔石も魔術に特化させる。


これで一応は完成だ…


擬装式戦闘体、擬人ギヒトと名付けよう。


戦いにならないのがベストではあるが戦いの予感はひしひしと感じている。


翌日はまたファムの朝練で起こされるが今日はファムのところには行かない。ジュジュにはホテルで留守番をしてもらい一人で学院に向かっていく。


と言っても真っ直ぐに向かうわけじゃない。ホテル近くの森の中から入っていき誰にも見られないように大きく迂回していく。


途中で谷だったり茂みだったりと、通りにくい場所もあったが体術と魔術を駆使して風のごとく山林を駆け巡る。


あいつが何時に学院に出勤してくるのかわからないがその前に姿を確認しておきたい。


学院の表門を見渡せる場所までやってくる。少し離れた森の中にある木の上に陣取る。太い枝の上に座り幹に背を預ける恰好だ。木の葉の中から魔術で空気を圧縮してレンズを何枚も作り出すと組み合わせてはっきりと門が見渡せるようにする。


まだ、警備以外は誰も来ていないようだな、、、


しばらく待っているとちらほら人がやってくるようになりその中にルシウスの姿も見られた。さらに待っていると人波は増えていきそこに紛れるように歩いているリカルドを発見する。


怪しいと思うとすべてが怪しく見える・・・


しかし、まだ断定は出来ない。冷静にならないとな… 冤罪になってしまう…


リカルドの動きを追っていくと建物の中に入っていき姿が見えなくなる。


さて、ここからどうしようか、、、流石に学院の中で大事は起こさないと思う。何かをやるならプライベートな時間だろうし、帰宅の時間を狙って尾行をするのが確実だろう。


しかし、学院での行動パターンも重要な参考になりそうだ。もしも協力者がいるなら休み時間とかに外部の人間と接触するかも知れない。


学院のすべての出入り口を監視したいところだな・・・


大規模に遠視魔術を展開すれば可能かも知れないがそれをやるとリカルドに気付かれるだけじゃなくて学院の警備に引っかかって大騒ぎになるかも知れない。


監視場所を絞らないとな、、、


ギリギリまで学院に接近して外からグルッと学院全体を見回していく。全体的な構造を把握して可能性が高そうな出入り口に目星を付けていくためだ。


その作業が半分過ぎまで終わったところで建物から外に出てくる気配を感じた。この時間は最初の講義とか始まった時間だし外には一部の警備ぐらいしかいない。そのため、目立って感じられはっきりとわかった。


注意深く気配を探っていくと二人分の気配がある。


ルシウスとリカルドだな… どこにいくんだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ