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機鋼神エイジャックス ー石に転生して異世界に行った俺、わからないことだらけだが何とかやっていくー  作者: 井上 斐呂


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第207話 海狩り

トライクを走らせて海岸に沿って東へ向かっていく。目指す場所は漁港だ。漁港の近くなら良い魚を扱っている店があると踏んでそちらを目指していく。


近くまで来ると適当に開けた場所を探してそこにトライクを駐める。ひとまずは歩いて漁港にいき雰囲気を味わうことにする。


漁港についてみると割と現代的な構造の港がそこにあった。石とコンクリートで固められた船着き場は波が入ってこない様に船の出入り口を一部開ける形で囲われている。かなりの広さがある。


その中には船が所狭しと並べられている。多くは木製で大きさはそれ程でもない。小さな小舟は丘にあげられている。その中で一際大きい船が自然と目に付く。


近くに寄ってみると同型の船がもう一隻あった。船底は魔鉄で覆われている。等級は低いが海水ぐらいでは錆びることはないだろう。


しかし、こんな船でどうするんだろうな?


大量の魚を獲るために大型化をしているんだろうけど沖まで出るつもりなんだろうか? 沖に出てしまったら大型の海の魔物と遭遇することになるだろう。この程度の魔鉄では防ぎようがない。


分厚くしているのか? しかし、等級は低くても魔鉄は魔鉄だ。そんなに大量に使えるとも思えない。安全に漁が出来る海域があると言うことか? それか効果的に追い払う方法があるのかも知れない。


いずれにしても海のことをよく知らない俺には想像することしか出来ないな。まあ、それが面白いんだけどな。あっている間違っているだのはこの際どうでもいい。


一通り漁港を見て回り堪能するといよいよ飯処を探していく。すると、漁港の近くにいかにもと言った風情の店をすぐに発見できた。しかし、漁師を相手にしている店といった感じで一見客が訪れるにはハードルが高い。


もう少し探してみよう、、、


その後、いろいろ歩き回って結構な範囲を探したがめぼしい発見はなかった。まあ、観光地というわけでもないだろうし漁師相手の店ぐらいしかないんだろう。そういう店の方が美味い魚が食えそうだしそこに入るべきなんだろう。入りづらかったとしてもな、、、


再びあの店の前にやってくる。お昼にはちょうど良い時間になったのか店の中からはガヤガヤとした喧噪に活気のある魔力の波動が感じられる。結構強い気配がある。


まあ、絡まれても何とかなるだろう、、、


魔物との威嚇合戦でも負けたことはない。そう思うと軽い足取りで店に入っていく。直ぐに店員が来てくれたのでこの店は従魔が入って大丈夫なのかをまずはじめに確認する。


大丈夫だと言うことだったのでそのまま案内してもらい後をついていく。なかは結構広くて大勢の客がいる。肌が日に焼けた屈強な男達が店内を賑わせているがこちらを確認すると会話を中断してちらちら見てくるもの達も少なくない。


静まりかえると言う程ではないのだが明らかに音量が落ちているのを感じると気まずい感じにもなる。まあ、普通の漁師達はちらちら見てくるだけで直ぐに興味を失ったのか仲間との会話とか食事に戻る。こちらに絡んでくるどころかこちらに絡まれない様にしている感じもある。


問題は普通じゃなさそうな人達だ。店の奥の方にいる集団は臆することなく値踏みする様な眼で見てくる。他の漁師達とは全然違う感じがする。狩人の様な雰囲気がある。魔力もかなり強い。


ひとりひとりが精強な戦闘集団にも感じられる。囲まれたら俺でも本気を出さないと危ういかも知れない。それぐらいには強くて統率が取れていそう、、、


幸い敵意は感じられない。向こうも問題を起こしたいなんて考えていないだろう。無視を決め込んで店員に案内されるがままにカウンター席に座る。


メニューを確認すると若干予想と違うものがそこにはあった。メニューの半分以上が魚介ではなく肉。しかも、肉料理が前の方に書いてあって魚介料理は後ろの方だ。


まあ、漁師なら魚は家でも食べられる、というか家ならほとんど魚なのかも知れない。こういうところに来たなら肉を食べたくなるか、、、


だが、それでも漁師に出している魚料理だ。漁港の近くだし鮮度の良い魚を使っているはず。見たことない名前の料理も書かれているしここの郷土料理もあるのだろう。外れを引いたわけではないと思う。


兎に角、珍しそうな名前の料理を頼んでいく。ジュジュと一緒に食べるなら量は気にしなくていい。大量に注文する。


運ばれてきた料理はブイヤベースのような煮物から焼き物まで様々なものがあったがとりわけ目を引いたのが刺身の様な料理があったことだ。


生魚の切り身にソースを付けて食べるという刺身と同じスタイルの料理だ。ソース自体は醤油とだいぶ印象の異なる味付けだが、魚の生臭さを消すためか清涼感のある香草を使用していてどことなくわさびを思わせる風味を感じる。


そして、しっかりと味わってみると後味にわずかに醤油の様な風味を感じる。おそらく魚醤の様なものを加えているんだと思うがちょっと衝撃的だった。


他には魚をすり身にしたしんじょの様なものとかはんぺんの様なものがありそこにも日本を感じてしまった。涙が出る・・・なんてことはない。味付けはだいぶ異なるしな。ただ、懐かしい気持ちになったのは確かだ。来て良かった。


そろそろ食事も終わりというところで俺達に近づいてくる気配を感じた。例の集団の中にいた人物だ。リーダー格の様で一際魔力が大きい。圧も相当なものだ。


そんな人物が俺の右後ろに立ってこちらを見下ろしている。どこぞの凄腕スナイパーだったら一瞬の内に叩きのめしているところだがべつに敵意を発しているわけではない。こちらに興味があると言った感じだ。叩きのめさない。


でも、「俺の後ろに立つな」っていう科白は一度言ってみたい、、、


しかし、ただその科白を言っただけだと相手は「なんで?」って返してくるだろう。ネタも知らないだろうし。やはり叩きのめすのはマストだ。


そんな俺の胸中を知ってか知らずか男は話しかけてくる。


「すまないがちょっといいか… 話がしたい 」


あんた、命拾いしたな…、などと思いつつ振り返る。


やたらと背の高い男だった。座ったまま見上げると首の角度がキツくなる。男が席に座っていたときも感じていたが相当でかい。カイレンぐらいあるだろう。筋肉もそれぐらいある。


大きく違うところは良く日に焼けた肌とクセのある灰色の短髪と灰色の眼。魔力変異が見られる。騎士団長クラスの猛者だろうな。こんな所で出会うことになるとは、、、


「別にかまわない。なんだろうか? 」


向こうから話しかけているので俺の方は座ったまま聞くことにする。


「あんたは狩人なんだろう? 」


「そうだが、何か? 」


「俺達に手を貸して貰えないだろうか? 」


「? 見たところあんた達は漁師のように見えるが俺に手を貸せることがあるのか? 」


「俺達は漁師ではあるが海の魔物を狩ることを生業としている。普通の魚も獲ることはあるが今回は魔物関連だ 」


魔物と言うことは確かに狩人の領分だな。問題は陸と海でだいぶ勝手が違いそうなところだが、、、


しかし、面白そうな話ではある。魚の魔物をどんな風に狩るのか興味が出てきた。せっかくなのでいろいろ聞いておきたい。


「話を聞こうか 」


とりあえず空いていた隣の席に座ってもらって話をする。男の名前はグラスと言った。なんでも最近、仲間が三人ほど大怪我で漁に出られなくなったらしい。怪我人が出るのはいつものことらしいが今回は手足を食いちぎられるとかいったレベルの怪我で今は自宅で療養しているんだとか。


大量に飯を食いつつ回復術を使って自分で少しずつ生やして言ってるんだろう。一度にやるのはつらいからな。俺は詳しいんだ。


その怪我で脱落した人員の代わりに俺に入って欲しいと言うことだった。海の上での狩りは慣れていないと言うとそれだけの実力があるなら大丈夫だと太鼓判を押されてしまった。


ジュジュを指してそれほど立派な従魔を従えているなら相当な実力者なんだろうと言ってくる。分かってるじゃないか、、、


漁の様子にも興味があったし半ば受ける気持ちでいるがまだ返事はせずに漁についていろいろ聞いてみる。


なんでも彼らは海狩人とも呼ばれる漁師達で海の魔物を狩ることを主な生業としていると言う。漁港で見たあの船体に魔鉄を使った大きな船二隻で沖に出でる。そこから、寄せ餌を使って比較的大きめの魔物をおびき寄せると二隻で協力して魔物を狩るのだそう。


同じ漁場で狩り続けているとそこから魔物がいなくなって狩れなくなる。そうしたらその漁場で普通の漁を開始する。魔物がいなくなれば沖に出ても安全に漁が出来るし大漁が狙えるのだそう。そちらの方が大きな稼ぎになることも少なくないと言う。


普通の漁は漁期が決まっていてそれにあわせて狩りの方をしておきたいらしい。そして、今日はどうしても狩りにいきたい理由があると言う。なんでも月の満ち欠けや季節に影響を受ける魔物がいてその魔物を狩るには今日が絶好のタイミングだそうだ。


ここまで聞いておいて断ることもしたくない。俺は引き受けることにした。


「わかった。引き受けよう 」

「おおっ、引き受けてくれるか。感謝する 」


グラスは俺に右手を差し出してくる。握手か… 一瞬躊躇するが直ぐに手を取って固く握手を交わす。


俺がスナイパーだったら握手を断っていた。他人に右手を預けることはしない。


あんた、命拾いしたな…


などと心の中で良くわからないマウントを取ると一旦そこで分かれて俺はホテルに戻る。


なんでも漁の開始は夕方からだそうで船を出すのは十五時ぐらいになるんだそう。狩りが終わって港に戻る頃には夜になっている。そこから狩りの成果を祝う宴会が始まるからホテルに戻る頃には深夜になっているかも知れない。


帰りが遅くなることを伝えておいた方がいいし、装備を取りに戻るとグラスに伝えておいたからその擬装をしておかないといけない。


直ぐに漁港に引き返して港に着くと海水に触れそうな場所を探す。そして、手頃な場所を見つけると訓練を開始する。約束の時間まで海面に手を付けて魔力操作の練習をしておく。


場所が海上なだけに海水の操作に馴れておくことは必須だ。今回狩ることになる魔物は狩猟ギルドの分類だと上級中位ぐらいだそうだが戦う環境が相手に圧倒的なアドバンテージを与える。完璧に調整する時間はないが最低限やっておかないといざって時に動きが遅れてしまう。


そろそろ時間だという頃に港に引き返す。来てみるとほとんど準備は整っているようで船員の大半は船に乗り込んでいるようだ。甲板の上を幾人かがせわしなく動いている。


「待たせたか? 」


俺は港で腕を組みながら船を眺めていたグラスに声を掛ける。グラスは俺の方を振り返り応える。


「いや、ちょうど良い時間だ。もうすぐ出発するから船に乗り込んでもらうことになるが、レインとジュジュは俺と一緒にこのフリンツ号に乗ってもらうことになる 」


船を指さしながら応えるグラムに俺の方もつられて船を見る。地球と同じように船に名前を付ける習慣はあるらしい。と言っても俺にはこの二隻の船の違いがぱっと見では分からない。船体に刻まれた船名が見分ける唯一の手がかりか、、、ああ、だから名前を付けるのか、、、


得心がいったところで船に乗り込んでいく。ただし、船橋とか付いてないのでジャンプして乗り込んでいく。それなりの高さではあるが飛び移れないような人間ではそもそもこの船に乗る資格はないんだろう。


乗り込むと船は直ぐに出港していく。特に音もなく滑らかに進み出して港から海に出るとぐんぐんと速度を上げる。


二隻とも一定速度になってからグラスに船の構造について聞いてみる。すると、結構丁寧に教えてくれた。


この船には特に動力とかは付いていなくて船底にいる人員が水魔術を使用して推進力を得ているらしい。動力の振動もないばかりか波による揺れもまったく感じない。内海であるから波は穏やかだが水術で進んでいるこの船は、船が動いていると言うより海ごと動いているようなものだ。小舟と同じぐらい小回りが利くそうだし狩りの際には海原を縦横無尽に駆け回れるという。


船底で船を動かしている船員達は船底衆ふなぞこしゅうと呼ばれている。狩りの際には魔物が突進してきたときに船体に魔力を流して強化する役目もあるのだそう。防御と移動を担当するのが船底衆と言うことだ。


対して攻撃を担当するのは甲板衆かんぱんしゅうと呼ばれる集団だ。今回、俺が担当するのが甲板衆になる。甲板の上でロープの付いた銛に魔力を込めて打ち込むことを基本戦術としている。魔術を使用することもあるがそれは専ら防御に使うとのことだ。生半可な水術では魚には太刀打ち出来ないと言う。


やがて漁場に着くとグラスは船室から伝令管を使って船底衆に船を止めるように指示を出す。


「船体、停止。フリンツからライカンへ。停止せよ 」


もう一隻のライカン号へは無線で指示を出していた。昔は手旗信号とか使っていたらしい。


船が止まるとグラスは見張り役の人に声を掛けて対象の魔物を探すように指示を出した。船にはやぐらが設置されていて高いところから肉眼と双眼鏡を駆使して周囲を探っていく。櫓にも伝令管が設置されていて船室と船底に情報を伝えることが出来るという。


しばらく停止していると櫓からグラスに情報が飛ぶ。それを聞いて船を動かしていくと再び止まり海の中に何かが入った桶のようなものを投げ込んでいく。そこから海の中に何やら赤いものが広がっていく。


グラスに聞くと先ほどの櫓からの情報は潮目とか流れの速さらしい。撒いたのは魔物をおびき寄せる撒き餌で海流に乗せて対象がいそうな場所に届かせると言う算段だそうだ。


それから特に何も起きない静かな時間が続く。太陽はもうそろそろ夕日になろうかと言うときだった。波は穏やかでこれから魔物と戦闘が始まるようには思えない。一面の海原を眺めていると心が洗われるようだ。遠くに空と海の境がはっきりと見える。あの先には何があるのだろう?


、、、ちょっと緊張感がなさ過ぎだな

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