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機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー  作者: 井上 斐呂


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第194話 接触

ガエルは前へ進みながら魔境を支配している重苦しい空気に歓喜していた。


(確かにこれはあの時と似ている、、、)


自然と地面を踏みしめる足に力が入る。歩く速さは徐々に上がっていきそれと比例するかのように周囲への警戒は疎かになっていく。


「ガエル、焦りすぎだ。一度止まるとしよう 」


それを危惧したレインが後ろから静止の声をかける。声をかけられたガエルはハッとして立ち止まると周囲を確認して自分の状態に気付く。


指摘された通り気が急いていたことは否めない。大きく息をついて気を落ち着かせる。


「ああ、すまんすまん。ここいらで一旦休憩にするか 」


「そうしよう 」


二人と一匹は今一度周囲に魔物がいないか索敵を行い安全を確認すると地面に座り携帯食料を食べつつ水筒から水を飲む。


疲労があったわけでも空腹を感じていたわけでもなかったが心の状態を調整する意味で休息を取ることは魔境では常識的なことだ。


そのことに思い至らないほどガエルは焦燥に囚われているのかとレインは危惧を抱いたが、同時に直ぐに持ち直したあたり長いこと魔境で生き残ってきただけのことはあるとも思った。


(それ程に執着するものがここにあると、、、)


ガエルのただならない様子を見てレインは探りを入れてみることにした。様子を見ながら差し障りのなさそうな質問をするために会話を試みる。


「なあ、、、いると思うか? 」


森を見回しながら訪ねる。不気味なほど静かである事を除けば柔らかな日差しが差し込むのどかな場所であると感じられる。魔力を感じることが出来るなら締め付けてくるような圧力を感じるだろうが。


「いる、、、だろうな。この空気はあの時に似ている、、、いや、同じと言っていい 」


(あの時、か、、、)


レインはそれについてまだ深くは聞かないことにした。代わりにもっと軽い質問をしてみる。


「空気、、、人によって魔境の空気は感じ方が違うようだな。あんたは今どんな風に感じている? 俺は少しぴりっとした感じを受けているんだが 」


「少しぴりっとか、、、流石だな。ワシはさっきまで気分が悪くなるような嫌な圧力を感じていた 」


「今はどんなだ? 」


「一休み入れたおかげかだいぶ落ち着いた。今は少し肌寒く感じるぐらいだ 」


「それは良かった 」


「ああ、、周りを見渡せる余裕が出来てきた。一人ではどうにもならなかっただろう。感謝する。おまえさんと組めて良かった 」


「、、、そうか。それなら先に進めそうだな 」


「ああ、任せてくれ。おまえさんにも絶対会わせてやる。どんな魔物か気になるだろう? 」


「当然だな。どんな魔物なんだ? そろそろ教えてくれ 」


「もう休憩は終いだ。移動しながらにしよう 」


一行はゴミを片付けて立ち上がると探索を再開する。


~~~~~~~~~~~~~~~~

(別視点)


境界区域に向けて一組の男女が森の中を歩いている。ロイドとリリーアンだ。


今回はロイドを先頭にして行動している。いつもならリリーアンに着いていく位置取りをするのだがロイドの方が索敵は得意なためロイドから申し出て先頭を行くことになった。


普段からそうするべきではあるが、ロイド自身にあまりやる気がないことやリリーアンの能力を伸ばすためにあえて任せていると言う事情もある。それにリリーアンもその性格から他人を前に行かせるのは性に合わない。


ロイドが先頭を行くのは二人ともそれだけこの調査に危険を感じていて慎重を期しているためだ。


互いに無言のまま進んでいくと昨日と同じように嫌な気配を感じる場所までたどり着く。


位置的には狼と戦った場所よりも深い位置にある。ロイドが考えた調査経路は先に深い場所から境界区域に入っていき表層に向かっていくというものだ。


最初に許容出来る限界の危険を感じておくことで後を安全にすると言う狙いがある。リリーアンの性格を考慮してのことだ。


彼女はどんどん危険な方向を目指して加速していき一線を慣性で越えていく嫌いがあるとロイドは思っている。それならば低い初速で一線の上を歩いてから戻ればいいと考えた。


そのまま進んで境界区域に入った頃には魔境から相当な圧力を感じるようになった。


位置的には中層の半ばから少し深い場所に行ったぐらいであるが二人は深層よりもずっと嫌な気配を感じている。


これにロイドは自分の見積もりが甘かったかと思い始める。許容出来る限界を既に超えてしまったかと思った。


ただ、彼の目論見は十分以上に達成されたようで流石のリリーアンも当初の勢いをなくし、不安からかしきりに周囲を警戒して目線を泳がせている。


「お嬢、、、、、お嬢? 」


「、、、えっ、ええ。聞こえているわ。何かしら? 」


ロイドは音響術で周囲に聞こえないようにリリーアンに呼びかけるが彼女は余裕がなかったのか遅れて反応を返す。それでも何とか音響術を使って返すことが出来た。


「予定通りここから表層側に進んでいく。異論はあるか? 」


「ないわ、、、早く行きましょう 」


手短に済ませると慎重に気配を消しながら進んでいく。


ロイドはリリーアンに気付かれないように境界領域の反対側、つまり狩人ギルドが管理する側へ寄っていくような道筋を辿っていく。


狩人達がここに入ってきているならそちらの方が安全であると踏んだ。運が良ければ狩人と出会えるかも知れない。その狩人の腕が立つなら協力を要請してもいい。


そう考えて経路を修正した。危険は避けたいがリリーアンを納得させるにはある程度危険を承知で結果を出さなければならない。


この境界区域に強力な魔物がいると考えているがそれに直接接触したいとは思わない。一番理想的なのはこのまま大きなことが起きずに自然に異変が収まることだ。


だが、魔物の動きは予想が付かない。この場所から別の場所に移動しないとも限らない。そこにばったり出会ってしまったなら二人とも死ぬだろう。


次善は何かしらの情報を掴んで報告し、大規模討伐隊が結成されて倒すか追い返すかすることだ。それに二人共参加しないことが望ましい。参加したとしても立ち回りでどうにでもなると考えている。


理想的な運びになるという楽観論はロイドの頭にはなく次善の状況になるように動くしかない。魔物がこの場所に留まっているうちに何とかある程度安全を確保した上で情報を得たいと思う。


そのためにもリリーアンが慎重になっている今、狩人と接触して協力を得たいと考えていた。普通の状態ならそんなことは許さないだろう。


(ここに気がつかなければ遠ざけることが出来たんだがな、、、)


幸いにして歩を進めるごとに嫌な気配は徐々にだが薄くなっている。何かからは遠ざかっているらしい。


確固たる証拠が無くても騎士団が動いてくれるならここまで思い悩むことはなかった。そんな思いを心の奥底に抱えながら進んでいく。


痕跡を探しながら、周辺を警戒しながら南東方向に向かって足を動かす。そんなときロイドの後ろから声がかかる。


「ロイド、、、予定の調査経路から外れていないかしら? 」


( 、、、やはり気付かれたか )


リリーアンに気付かれはしたもののだいぶ狩人側に来ている。もう、十分とも言える。このまま予定経路と並行して南下するだけでも接触出来る可能性はある。


だが、この後の遣り取りによってはリリーアンが激高し、来た道を引き返すことになりかねない。


(どう答えたものか? )


ロイドが迷っているとちょうど良い時に人の気配が接近してくるのを感じた。


「人?、、、狩人よね 」


リリーアンも同じように察知した様だ。ロイドにとって都合がいいことに話が中断される。


「お嬢、ここで会ったのも何かの縁ですぜ。話を聞いてみましょうや 」


(話の分かる狩人ならいいが、、、)


自分の希望通りに狩人と接触できたことに喜びつつもこの後が自分の希望通りにやれるのか不安を抱えつつ相手の到着を待つことにした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~


ガエルの後について進んでいくと前方から人の気配を感じる。


「ガエル 」


「ああ、人だな 」


ジュジュはまだ気付いていないがガエルは気付いているようだ。これはどうしたものか?


「一応、話を聞いてみよう。何か情報を持っているかも知れない 」


「そうだな。何を狙っているのかぐらいは聞いておこう 」


進路を少し変更して人がいる方向へ進んでいく。


魔境の中で人の気配は良く感じられる。姿は木々に邪魔されて当然見えないし距離は離れている。おまけに相手は魔物に察知されないように気配を絶っているというのに。


同種の生き物であるからお互いの魔力波を感じ取りやすいというのが一応の説明だがそれだけだろうか? 魔境にあって人の気配はどこか異質に感じられる。他と比べて浮いているという感じかな。それも同種だからこそか?


距離が縮まってくるにつれて相手方の詳細が分かってくる。


どうやらこちらの到着を待ってその場を動いていない様子。そして二人いる。


狩人であれば一人でやっていく自信のないものは安全マージンを取って通常は四、五人。少なくとも三人の組を作って活動することが多い。二人というのはあり得なくはないが少ないように思う。


凄腕が何かを目的に組んだんだろうか? あるいはもともと二人組で活動をしているのか?


、、、夫婦とか兄妹の可能性もあるか


「二人いるな 」


ガエルに確認を取ってみる。長いらしいから何か心当たりがあるかもしれない。


「そのようだな。今いる位置から言ってあちら側から来た可能性もある。騎士団員、、、特務騎士かもしれんな、、、」


「特務騎士とはなんだろうか? 」


「ん? ああ、そうか。流れのおまえさんは知らんか、、、


 特務騎士はこの北部地域特有の騎士だ。広大な北部大森林を管理するには規模の大きい騎士団活動では限界があってな。ある程度実力のある騎士達を小隊に分けて魔境の中を自由に調査させることにしたんだ。その自由な調査権限を持つ騎士を特務騎士という


 基本的に領地の境界やギルドと騎士団の管轄の違いも関係なく動くことが出来る。特務騎士なら境界区域に入ってくることも納得出来る 」


「ほう、そういう騎士がいるのか、、、」


地球で言うならレンジャーのようなものか? 境界関係なく動けるところはFBIのような感じもあるか、、、


「と言ってもどうしても遠慮のようなものはあるがな、、、。境界を越えるときはそれなりの理由付けや事前の通知をすることが多いな 」


、、、その物言いから言ってガエルは元々特務騎士だったようだな


他人の過去を詮索するのは狩人として野暮ってものだから聞かないが、、、


「そうか、、、」


適当な相槌を打って会話を打ち切るとちょうど相手の姿が見えてくる。


あれ? 、、、どこかで見た二人組だな


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