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第116話 たこ焼き

夕方ぐらいに家に戻ると早速たこ焼き作りに取り組んでいく。


まずはたこ焼きプレートを製作することにしよう。


地球でみたプレートを脳裏に思い浮かべてみる。鉄製のプレートは黒くてざらざらしていたように思う。


黒いのは表面処理をしているからだろうがどういった処理なのか? おそらく酸化皮膜を作り出して錆びないようにしているのだろう。であるならば魔鉄を使用すれば酸化処理は必要なくなるな。


ざらざらしているのは焦げ付き防止のためだろうか? 表面は全体をざらついた感じに加工する。


裏面は表面の形をそのまま反映して半球が並んだ形をしていたのだがコスト状しかたがないことではあるが温度ムラが生じるのではないかとも思う。


裏面をヒートシンクのようにフィンがつらなった形にすれば温度ムラが生じにくくなるのではないだろうか。


分厚い魔鉄の板の表面に適度な大きさの丸いくぼみを整然と並ぶように作っていき表面を細かくでこぼこにする。裏面にいくつものフィンを付けていく。


これでプレートは完成した。最高等級ではないものの質の高い魔鉄をふんだんに使用した逸品。材料費だけで30万エスクはするだろう。こだわりすぎたか? だが今更止められない。


次は出来たプレートにあったガスコンロを作っていく。プレートが上にハマる箱を作る。素材は何にしようか。なるべく熱伝導性が低い素材にしたい。


土で作ることにしようか。亜空間なら寸法を保ったまま陶製のものが作成できる。本当は石で作りたかったがまだ石に魔力を通すのは難しいんだよな。今度カイレンに教えてもらおうか。、、、無理か。立場がある。他に候補はいないだろうか。


知ってる人物だとバックス君がいるか。しかし、連絡先は知らない。ただの学院の生徒だしな。リーンかリオンに誰か紹介してもらうのが一番だがあんまり頼るのもどうかな?


陶製の台が完成すると内部にガスが通る金属製のパイプを通す。そこに火を出すための穴を無数に空ける。パイプを箱の外のガスボンベとつなぐために穴を空けて伸ばしていきそこにガスと空気の調整弁を付ける。


これでたこ焼き器が完成した。


さて、、、ここからが本番だ


タコは手に入れたし、小麦粉と卵はこちらにもある。主要な材料はそろっていると言える。


しかし、鰹や昆布の出汁はない、紅ショウガもない。ソースがない。

こちらで手に入る食材でなんとかそれっぽい味に仕上げていかなければならない。


レシピの開発をしていこう。


まずはタコの処理をしていくか。これもやったことがないからわからないんだよな。一般的な男子高校生に丸のままのタコを加工する機会はないだろう。少なくとも学校の授業で習うことはない。


とりあえずなんかぬめるからこのぬめりを取ろう。塩で揉んでみるとするか。大きめのざるにタコを移してそこに結構な量の塩をぶち込んで揉んでいく。塩のざらざらがぬめりを落としてくれそうな気がする。


こんなものでいいか?


次はこの大量の塩を洗い流すか、、、いや、待てよ


塩を水で洗い流そうとして手を止める。


真水で洗うとタコの身を痛めそうな気がする。大量の塩で揉んだから今更かもしれないが。それに大量の塩を流すと配管が傷みそうだな。環境にも悪そう。


亜空間に入れて塩と塩で分離したぬめり成分を除去することにする。塩は再利用できるしな。あまり使いたくなかったが今回はしょうがない。もっと上手いやり方があるのかもな、、、


だがタコは全部で二匹しかない。いろいろ試して行くには心許ないな。状態を記憶して亜空間でやり直すか? いや、なんか冒涜的な気がするな。おば、、、お姉さんに処理の仕方を聞いておけば良かった。地球の料理だと切り離して考えていたのが失敗だったか。


寸胴鍋に水を張ってお湯を沸かすと塩を適当に入れてタコを茹で始める。塩揉みで少し小さくなったものが熱変成により足が丸まって更に小さくなったように見える。実際に小さくなっているのだろうがどの程度かはわからないな。


沸騰したお湯の中に手を入れて触りながら火の通りを確認し、茹で上がると足だけ切り離してみる。小さくなったと思ったがこうして見るとまだまだ大きいな。一本だけ水糸をつかって適当な大きさに切ってみる。試しにその一欠片を口に入れる。


歯ごたえはなかなかあるな。味もちゃんとする。これでタコは何とかなった。


次はネギだな。日本で見るような長ネギは売っていないようだが小ネギみたいなものは売っていた。それを細かく小口切りにして食べてみる。けっこうネギに近い味だ。これならいける。


その次は紅ショウガに挑戦しよう。これはなかなかの難問だ。作り方がまったくわからん。ショウガ自体は売っているしゴールはわかっているから近いものは作れると思うのだが正解の食材が果たしてこちらに存在するのか? 兎に角やるか。


まず形からやるとしよう。水糸を使ってショウガを紅ショウガの形に刻んでみる。短く細い角柱状になる。一本つまんでみるが堅くピンと張ったようになる。


紅ショウガはもっと柔らかいよな。加熱してみれば柔らかくなるんだろうか?


ちょっとかじってみる。


生姜そのものの味だ。刺激的な香りと味が口いっぱいに広がり鼻に抜けていく。これをそのまま使用したらこの味にしかならないような気がする。紅生姜はもっと抑えめな風味で酸味とか塩味とか甘味とか合ったように思う。


生姜の風味を抑えて味を足していかないとダメなのか?


一回塩水で少し茹でてみるか。細切りをちょっと茹でて少ししなったところで引き上げてみる。ちょっと味がマイルドになり塩気がほんのり付いたか。


これをベースに蜂蜜とか酢とか塩とかに漬けてみるとするか。時間がもったいないから亜空間で浸透させることにしよう。


浸漬液の配合を変えつつ味を見ていく。そして何とかそれっぽいものが出来上がる。


これ以上は難しいだろうな。生姜も他の素材も日本とは違いがあるだろうしやり方も正解かわからない。


しかし、今のままだと赤くないからまったく紅生姜には見えない。あの赤はどうやって付けているんだろう? そもそも赤く染めるのはどういう意味があるんだろうか? 彩りのためという理由はわからなくもないがそれ以外に何か効果のようなものが有るのか? 、、、考えたところでわかるわけもない。


妥協は必要だな、、、


紅生姜は赤くなることなくとりあえずの完成となった。


次に行こう


次は揚げ玉を作るか。これは簡単にできるな。小麦粉はあるし油も菜種油とかあるから日本と同じようなものが出来る。


小麦粉を水でといて熱した油に垂らしていく。垂らしていく、垂らす、垂らす、、。面倒だな。箸でちょっとずつやっていくのは効率が悪い。方法を考えよう。


魔術を使うか。水術で小麦粉液をまとめると油の上に持って行き粒状にしたものを雨のように降らしていく。スピードが速すぎると玉同士がくっついたりするな。一度に大量にやると油の温度が下がるかもしれない。効率は上がったがこの鍋でやる以上は限界があるか。まあ、地道にやっていこう。


すべての小麦粉液を揚げ玉に加工し終わるとけっこうな量が出来た。


それなりに時間を食ってしまったな。もう日が完全に落ちて夕食時も過ぎている。


この際だからこのまま続行しよう。


周辺食材は準備出来たのでいよいよ生地作りに入ろう。


小麦を水で溶くだけでもそれっぽくはなるがそれだと味が足りない。出汁っぽいものが入っていたと思うがこちらで手に入るものじゃない。鰹節も昆布もないこちらでどうやって出汁の複雑なうまみを再現したものか。


こちらで手に入るのは固形のブイヨンぐらいしかない。これを使用するとしてもひと味足りてないような感じがする。


、、、どうしたものか?


鰹節のうまみはイノシン酸だったか。チキンブイヨンを使えばイノシン酸は満たせると思う。昆布はどうだ? グルタミン酸か。グルタミン酸を含む別の食材を使えばいいのだが何があったか?


、、、トマトか


トマトは在庫がある。乾燥させたトマトもいつか使うかと思って買っておいた。生のトマトを使うと青臭さが出てしまうような気がする。乾燥トマトを煮だして出汁を取ってみよう。どのぐらいの温度でどのぐらいの時間煮ればいいんだ? とりあえず沸騰させたお湯でグツグツと煮だしていくか。兎に角うまみがでてくれればそれでいい。


味を確認しながら加熱していきだいぶ時間がたったところで火から上げて出し殻を取り除く。冷ましたら小分けにして再加熱してチキンブイヨンを入れていき合わせる比率を調整していく。


、、、こんなものかな


調整を重ねてもやはり限界があるな。うまみは十分だがトマトやチキンの甘さが勝って風味の方向性が違った感じになっている。魚の風味が欲しいかも知れないな。


西海岸で買ってきた魚をおろして骨だけを取り出す。それを火であぶってカリカリにした後、砕いて沸騰させた鍋に入れる。単体で出汁を取って試してみよう。ある程度煮たら味見してみる。魚の風味と香ばしさが感じられる。まあ、このぐらいなら十分か。合わせ出汁で同じ作業を行い一応の完成とした。


この完成した出汁を使って小麦粉を溶いていき生卵を加えて生地を完成させる。


さて、焼いていくか、、、


たこ焼き台に火を入れてプレートを熱していく。ある程度暖まったら油を引いて適温になるまで待つ。


もうそろそろいいか


魔術でくぼみに生地を注いでいくとジュウゥゥ、、と心地のいい焼ける音が響き部屋に小麦の焼ける香ばしい匂いと出汁の香りが広がっていく。


流石に腹が減ってきたな。もう一息だ


ネギと紅生姜、揚げ玉を振りかけていきメインのタコを中心に沈めていくともう一度トッピングをタコの上から振りかけていく。


周りが固まってきたらアイスピックみたいな道具で周りを剥がしつつ反転させていく。


反対側に少し火が通って固まったら次々と回転させていききれいな球体状に成形させていく。中心部分まで火を通すか迷ったが今回はとろとろの食感にしてみよう。


追加でプレートに油を撒いて転がしていき表面をカリカリに仕上げていく。火が中心に通りきる前に皿の上に上げていきたこ焼きが完成する。


ようやくだな、、、


時刻はもう12時を回っているだろうな。今度時計を買ってくるか。感覚でそれなりに正確な時間はわかるからそこまで必要性を感じないが、地球での感覚が染みついているのか時計を見て確認しないとなんかスッキリしないものが有るな。


さて、完成したもののどんな風に食べるとしようか。ソースはないからな、、、


まあ、最初は塩で食べるか…


箸でつまんで塩にちょんちょんと着けて口に入れる。噛むと中から熱々のとろとろが出てくる。この身体なら火傷するような熱さでも平気だ。咀嚼していき表面のカリカリとタコの食感を楽しむと口の中にタコの風味や出汁の風味、ネギや紅生姜、小麦の味が一体となり一つの味として感じられる。


たこ焼きだ。出汁は洋風な感じがするが確かにたこ焼きを食べている


こちらにもマヨネーズはある。次は塩とマヨネーズで食べてみる。よりたこ焼きに近づいたような味わいになる。しかし、クリーミーなマヨネーズに対してソースの苦みが欲しくなるな。これはいかん。


ソースはいずれ作るとしても今回は無理だな。時間のあるときにじっくりと試行錯誤していきたい。それまでマヨネーズは封印だな。


今度は明石焼きのように出汁で食べてみよう。作った出汁を小皿に移し塩を入れて調整する。それにたこ焼きを漬けて食べてみる。出汁を吸ってふやけた感じが意外においしい。


噛むとジュワッと出汁が溢れてきて癖になるような心地いい食感だ。今までやろうとは思わなかったがもっと早くに試しても良かった。こう言う状況だからやったことではあるけれど。


残りをすべて出汁で平らげるとだいぶ遅くなったのですぐに眠りについた。

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