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第9話 ほんと魔法ってチートだよね

「おっさかな おっさかな♪」


簀子を作る為の資材を確保すべく私は意気揚々と森へと足を踏み入れる。

適度に太い直径50~60㎝くらいの木を選んで木の根元の方へ向けて魔法を放つ。


「風刃」


ザシュッ! 木の幹の表面にザックリとした傷がついている。

しかし魔法が付けた傷はごく浅いもの。


「風刃」

「風刃」

「風刃」


木の幹に次々と傷が出来ていく。

しかし正確に同じ場所へ「風刃」を当てるのは難しい。

どうしてもズレて当たってしまう。

こんな調子では木を切り倒す前に魔力切れで私が倒れてしまう。

ならばいっそ込める魔力量を増やして、通常の「風刃」の必要魔力量の10倍まで増やしてみる。

右手を手刀の形にし意識を集中させて魔力を右手に集める。

そして 「風刃(強)!」 と木の幹に向けて右手を振りぬく。


ズギャシュッ!!


木の幹に1/3ほど抉り取られたような深い傷が出来ていた。

「これでもダメか」

木って意外と硬いんだな、ならばもう1回。

「風刃(強)!」


メキ メキメキメキ!

木が此方に向かってゆっくりと倒れてくる。

バキバキバキ ボキャ!


やった! 倒れた!

ばんざーい。 私もやれば出来るんだ。

これは嬉しい。 ものすごい達成感だ。

でもおかげでかなり魔力を消費してしまったので、しばらくは休憩かな。

お昼を挟んで魔力がある程度回復してからまた作業再開だな。


それにしても太い木だなー。

これを私が魔法で切り倒したのか、なんとも感慨深い。

幹の切り口を見てみると2/3辺りまで綺麗に抉られていて、残り1/3がささくれだったようにキザギザに割れていた。

切り倒した木に手を当ててストレージに収納する。



私は川べりまで歩いていき手で川の水掬い口に含む。


「冷たくて美味しい。」


水を手で掬い『鑑定』すると、「川の水」と出た。

相変わらずの鑑定具合である、私は苦笑する。

ついでに河原の石も『鑑定』すると「石」、「石灰石」と出た。

えっ、石灰石だと?

マジか、ラッキー。早速回収だ。

辺りを『鑑定』すると至る所に「石灰石」が転がっている。

これ全部を手で拾って回収するのか? 

うわぁ~ 気の遠くなる作業だな。

どれだけ時間がかかるんだろう。

ちょっと考えたくないな。

これ、視ただけでストレージに回収出来たらすっごく楽なんだがな~。

漠然と考えながら「石灰石」を回収……と考えたら「石灰石」が目の前から消えた。


えっ?!


消えた? なに、何が起こった?

私はすぐにストレージの中身を確認するとそこには「石灰石」があった。

これでだいぶ楽出来るな、それでもこの大量の石灰石を回収するのは重労働に違いない。

ふぅむ、どうしようか。

もっと効率よく回収出来る手立てはないものか。

人差し指ピント伸ばし下顎に当てるようにして考える。


「あれ、出来るかな?」


私はスキルの合わせ技というのを思いついた。

こうだ、まず『探索』スキルで「石灰石」を『探索』する、結果が表示されたら後は一気に『ストレージ』で根こそぎ回収するって寸法だ。

もちろん出来るか分からない、が 出来たら儲けもの。


「『探索』 石灰石」


すると視界いっぱいに周りじゅうそこかしこに「石灰石」が小さな点で表示された。

よしよし、ここまでは順調。

その状態を維持しつつ


「ストレージ」


と呟くと辺りの「石灰石」が一気に全て消えた!

よしっ! 出来たっ♪

ストレージを確認すると大量の石灰石があった。


ふふふ♪ 私って天才かも。


楽しくなった私は河原に沿って端から端まで歩き、全ての石灰石を取りつくした。

同じ要領で「砂利」と「粘土」と「砂」も回収しておいた。

流石に「ケイ石」はなかったか。

あればセメントの材料になったんだがなー。 残念。



ちょっと小腹も空いてきたのでお昼ごはんと言う名の「干し肉」と葡萄のような果物を軽く食べる。

手を合わせて


「ごちそうさまでした。」


川の水を掬い口をゆすいで指で歯磨きをする。

前世の現代日本の医学でも歯周病は全身に害を及ぼすと言われていたからな。

歯周病は健康の大敵である。


食後の散歩がてら川沿いに歩いていく。

明るい陽射し、キラキラと光る川面、さえずる小鳥の声。

マイナスイオンを胸いっぱいに吸い込む。


「空気が美味しい♪」


プチ森林浴を楽しみながら上流に向かって歩いてゆく。

川幅がだんだんと狭くなってくる。

歩きながら随時『鑑定』していく。

スキルレベルを上げたいので、『鑑定』と並行して『警戒』や『探知』、『索敵』も使っておく。

どれくらい歩いただろうか、川幅が3mくらいにまで狭まったところである植物が目についた。


「あれって、まさかアレ?」


私はブーツを脱ぎ川の中に入っていく。

水がめちゃくちゃ冷たい。

これは期待出来そうだ。

目当ての植物をじっくりと観察する。

見れば見るほど日本のあの植物にそっくりなのだ。

日本人には無くてはならない故郷の味。

刺身に必ず付いているあれだ。

そう、「山葵」だ。


やっほい、山葵ゲットだぜー。

これは嬉しい。

では、早速回収させて頂きますか。

根こそぎ採ってしまうとアレなので大きい物だけを選んで採取させて貰った。

それでもストレージの中には山葵が200本ほど入っているが。 テヘッ。

ちなみに鑑定してみると「山葵」と表示された。

んん? こっちの世界でも山葵は山葵と言うのか?

おそらくだが、『言語理解』さんがお仕事を頑張ってくれて日本語に変換してくれているのではないかと思う。

だから本来のこっちの言葉だと何と言うのかは不明だ。



山葵を収穫してホクホク顔で私は来た道を戻る。

んふふ~♪

嬉しくなって帰りの足取りも軽くなる。

ついついスキップなんかしたりして転びそうになったのは内緒だ。


拠点2の元の河原に戻って次の行動を考える。

今日は色々と有益な物を採取出来たからな~。

かなり満たされてはいるんだよね。

別に急ぎでもないし簀子を作るのは明日でもいいかな。 お魚がどこかに逃げる訳でもないしな。


と、言う訳でさっき採取した粘土の一部、ほんのちょっとだけ、それでも軽トラックの荷台いっぱいくらい出したんだけど、それを使って食器を作ることにした。

まずは粘土をストレージからズドンと取り出す。

それを土魔法でマグカップを取っ手付きと取っ手なしをそれぞれ10個づつ、サラダボールやスープ皿、土鍋や大小の陶板なんかもそれぞれ10個づつ作っておいた。

あと、小皿を10枚にフォークとスプーンも10本づつも作った。

地面に並べられた粘土製の食器の数々。 中々に壮観な眺めではある。

しかしこれだけではただの粘土細工と同じだ。

次はこれを乾燥させる工程が必要になる。

これはもちろん魔法の「乾燥」を使う。

通常は乾燥させるのに非常に気を遣うのだがそこは魔法の有難さ。

短時間で上手く乾燥してくれた。

一旦全部ストレージに回収して次いこ、次。


さて、ここからが問題。

なにが問題かと言うとどうやって焼成するかと言う事だ。

前世では私は焼き物、とある陶磁器の生産地が居住地だった。

なので子供の頃から陶磁器に慣れ親しんでいたし作り方も知ってはいる。

窯なんかも実際に見て知っている。

しかしここは異世界、電気窯なんかありはしないのだ。

だから昔ながらの薪窯にしようかと思う。

うろ覚えだが窯の形を必死で思い出す。

ここでも土魔法が大活躍だ。

まずは基礎になる部分を作らないといけない。

ガッチリと固めた形にしたいなっと。

ここは河原なので材料になる石なら沢山ある。

小石をまとめてストレージに回収して、窯を設置する場所へまとめてドドンと取り出す。

あとは土魔法で小石と土を混ぜるように意識しながら硬く硬くなるように魔法を使う。


魔法でポンッ!っと出来上がり。

我ながら上手く出来たんではなかろうか。

まるでそこに切断した真っ平な岩を置いたかのようだ。


と、ここで魔力切れが近いのか頭痛がしてきた。

身体もだるいし、時間も夕方近いので今日の作業はここまでかな。

少し休んで減った魔力が回復したら最初の拠点に戻って今日は終了だ。


拠点1に戻った私はすぐに焚火の用意をする。

薪は昨日作ったのがまだ沢山あるから今夜は安心だが明日は大量に薪を用意しないといけない。

さぁ、明日は木材加工と木魔法で簀子と薪を作って、魔力が余ってたら薪窯も作ろう。

あと、お風呂も入りたいし木製の風呂桶も欲しい所だな。


そんなこんなで色々思いを馳せながら異世界2日目の夜は更けてゆく……。





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