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第88話 コンソメを作ろう ①

私はストレージからストックしておいた桃を出してあ げた。

それもどっさりと。

メロディちゃんが目をキラキラさせてさっそく齧り付いてる。


「ん~、美味しい~♪」


両手に桃を持ったまま交互に食べてる絵図は元世界にあった漫画そのまんまだ。

微笑ましいって言うか何と言うか。

メロディちゃんらしいっちゃらしいんだけどね。


「オルカさんのアイテムBOXって何でも入っててすごい容量大きいんですね。」


「ほぉ」って、ドロシーさんが感心したように呟く。

尊敬の眼差しで見られると嬉しいような恥ずかしいような。

ちょっとくすぐったい。

まぁ、私がスゴイんじゃなくて神様から頂いた物なんだけどね。

それは言わないけどさ。


「まだまだこんなモンじゃないよ、オルカさんの非常識は。」

「そうそう、オルカさんの常識は非常識!」


人がせっかくいい気分になってるのに即否定ですか。


「二人して何よー。わ 私だって最低限の常識くらいあるわよ。」


「最低限ね。」


ジト目でリズさんが言う。


「ホントに最低限ですもんね。」


身体の横あたりで両手のひらを上に向けて「やれやれ」って感じでメロディちゃんが呆れたように言ってる。


「メロディちゃんまで何よー。 二人ともちょっとヒドくない?」


「いやー、褒めてるんですよ。一応。」


「……一応なんだ。」


なんか納得いかない。

それのどこが褒めてんだか。

全然褒めてるように聞こえないんですけど?


「まぁまぁ、その非常識さのおかげでみんな助かってる訳だしさ。」

「そうですよー。自信持っていいんですよー、非常識だけど。」


「いや、非常識非常識って連呼しないで。 自信持っていいって言ってくれるのは嬉しいんだけど、私そこまで非常識じゃないよ?」


「「あー、はいはい。そうゆう事にしときましょうね。」」


むぅ。

可笑しいなぁ、私は模範的な常識人のつもりだったんだけど。


「それより、何か飲み物ないですかぁ? 桃食べたら口の中が甘くなっちゃって、スッキリさせたくって。」


「メロディ~。」


「もー。 仕方ないなぁ。 今お茶出すからちょっと待って。」


魔法鞄(マジックバック)から取り出すような振りをして、ストレージから魔動コンロを取り出す。

見た目は元世界のあれだ、まんま携帯ガスコンロ。

ちゃんと五徳があって直火にかけれるヤツ。

ティーポットに水を入れて温める。

茶葉は街で買ったちょっとお高いの、これが美味しいのよ。


「ほえー、すごい。大容量のアイテムBOXにも驚きましたけど、オルカさんほんとに何でも持っててビックリです。」


「あれ? オルカさん魔動コンロなんて持ってたんだ? 結構高かったんじゃない?」

「あ、いいなぁそれ。私も買っちゃおうかなー。 ねー、リズ。お金出し合って買っちゃおうか?」


「ん?これ? これは私が作ったの。私の手作りだよ。」


「「「は?」」」


3人の声がピタッと重なる。

私何か可笑しな事言った?


「いやいやいや、手作りって……」

「リズ。 だってオルカさんだから……。この人規格外だから。」

「へぇー、オルカさんて冒険者かと思ってたんですけど錬金術師だったんですねぇ。」


「ドロシー、それは違うよ。前にも言ったけど、オルカさんはれっきとした冒険者でテイマーだよ。オルカさんが魔道具を作れるのは普通の冒険者じゃないから!規格外の更に外側に居るからだよ!」

「そうそう、オルカさんには私たちの常識は通用しないから。」


「そ、そうなんですね。」


ドロシーさんが困惑顔でこっちを見てる。

ねぇ、二人ともさっきから随分な言い草じゃない?

ドロシーさんが勘違いしちゃったらどうすんの?


「取り合えずお茶出すね。」


人数分のカップを出して、そえにお茶を注ぐ。

トポトポトポ。

爽やかな香り高い匂いが広がる。

このお茶は果物との相性がいいね。

元世界のアールグレイに似た味わいかも。


ほぅ。


ほっとひと息。

うん、これは美味しいね。

果物と良く合うよ。

皆の反応はどうかな?

口に合うといいんだけど。


「美味しい。」

「うん、こんな美味しい紅茶飲んだ事ないですよー。」

「なんかお貴族様になった気分です。」


良かった、概ね好評みたいだね。

それじゃ今日やりたかった事をしようかな。



(主様、我らはそろそろ楽し……こほん、鍛錬に行こうかと思うのですが……)


(そうだったね、ごめんごめん。 二人で楽しんでおいで。出来たら途中で1回戻って来て無事な様子を見せてくれると嬉しいかな。)


(御意! では行って参ります。くれぐれも結界石をお忘れなきよう。 さっ、さくら行きますよ。)

(はい、葛の葉姉さま。)


「行ってらっしゃーい! いっぱい獲物獲って来てねー、待ってるよ。」


くーちゃんとさくちゃんは嬉々として駆け出して行った。

きっとまた信じられないくらい大量の獲物を狩って来るんだろう。

私はぶんぶんと手を振ってくーちゃんたちを送り出した。


「あれ、くーちゃんさんたち行っちゃいましたよ?」

「オルカさん護衛なしで大丈夫なんですか?」


リズさんたちがちょっとだけ心配そうに、主に私の身の安全だけど、聞いて来る。

けど大丈夫、結界石を持ってるもの。


「大丈夫、これがあるから。」


コトリ。

ストレージから結界石を取り出して起動してからテーブルの上にそっと置いた。

これでもう安心。

この結界は物理・魔法両方を防いでくれて、大体鐘4つ分くらい持つしね。


「それって結界の魔道具ですね。」


ドロシーさんが呟く。


「ええ、亡くなった両親が遺してくれたの。」


「え、ごめんなさい。」


ドロシーさんが申し訳なさそうに謝って来るけど、私は特に気にしない。

気にしてないって言うか孤児ってのはあくまで設定だからね、けどこっちにやって来た時点で天涯孤独は間違いないから。

それにさ、


「今の私には貴女たちが居る。大切な仲間であり友人である貴女たちが居てくれれば寂しい事なんて何もないわ。」


「「「オルカさん……」」」


「あー、もう。はい、この話はこれでお終い。」


ちょっと湿っぽい感じになってしまった雰囲気を変えるように務めて明るくグッと力こぶを作って


「さっ、作ろっか! まずは……」


ドドン!

元世界の飲食店の厨房とかで良く見るような平たくて背の低い大きなガスコンロって分かる?

それのガスが魔石に置き換わった大型の魔動コンロだと思って貰えばいいかな。

しかも強力な直火が出るやつ、その特大の魔動コンロを取り出す。


「「「デカッ!」」」

「なにこの大きいの。これってこの大きさで魔動コンロなの? 一体いくらしたの?……って、オルカさんだから自分で作ったのか。」

「で、これで一体何を作るんですか?」


んふふー。

まずは見てのお楽しみ。


「お嬢さん方よーく見てなさい。 取り出だしたりますは、何処のご家庭にも1つくらいはある……寸胴っ!!」


ガシャンガシャッ!!!


ラーメン屋さんなんかで良く見るようなアレ、スープを取る時に使うあの大きな大きな超大型の寸胴。

あれを2つ、ドン!ドン!と大型魔動コンロに乗せる。


「「「ないないない! そんなのどこの家にも置いてないし!!」」」


「料理屋でも開くつもりなんですかっ?!」


んー、ナイスな反応ありがとう。

そうゆう期待通りな反応貰っちゃうと嬉しくって笑っちゃうじゃない。

で、これに~、


「まずは鶏ガラを軽く下茹でしてーっと。」


と言っても只の鶏ガラじゃあないよ。

くーちゃんたちが獲って来る鶏だからそんじょそこらの鶏とは訳がー違う!


「じゃーん、コカトリスの鶏ガラ~♪」


「ええぇぇーっ! それって只の骨じゃーん。ゴミでしょゴミ。」

「そうですよー。骨なんて捨てるトコじゃないですかー。それをお湯で洗ってどうするんですか!」


「二人とも何言ってんの。鶏ガラっていい出汁が出るんだよ?それも只の鶏ガラじゃなくてコカトリスの鶏ガラだよ?。めちゃ美味しい出汁が出るんだから!美味しいの確定だよ?頬っぺた落っこっちゃうんだよ?」


「鶏ガラスープ作るの?」


おっ、ドロシーさん惜しいっ!


「さっすがドロシーさん、かなり惜しい! でもちょっと違う、これから作るのはコンソメスープだよ。」


「ああっ、コンソメ!そっかそっか。」


「なになに、コンソメって何なの? ねぇ、教えてよ。鶏の骨で何作るって?」

「んー? またオルカさんとドロシーだけで分かり合ってる感出してぇー。」


メロディちゃんがちょっとぷくっと頬を膨らませてる。

んふ、カワユス。

ぷっくりと膨らんだメロディちゃんの頬っぺたをツンとつつく。


「うりうりうり。」


はぁ~。小動物を愛でる気持ちが良く分かるわー。

ほんとメロディちゃんて小動物系よね。


「で、骨茹でて何するの?」


リズさんが聞いて来る。

そうだね、遊んでたら進まないもんね。


「せっかくだし、みんなに手伝って貰おうっか。」


大量のコカトリスの鶏ガラを一旦水でキレイに洗う。

なんせ特大の寸胴2つ分に入れる鶏ガラだから量が半端ない。

コカトリスの鶏ガラをリズさんたちに洗って貰ってる間にドロシーさんにはお野菜を切って貰う。

玉ねぎは皮つきのまま半分にカット。

皮つき玉ねぎを使う事でスープに綺麗な色がつく。

人参もざっくりと半分、セロリは1本丸のまま、葱の青いとこにニンニクなどの香味野菜、ローリエ等ハーブなど。

ワイルドカウの骨付き肉や牛すじも入れる。

水で洗ったコカトリスの鶏ガラは一度下茹でして再度キレイにする。

材料が用意出来たらお野菜・コカトリスの鶏ガラ・水を寸胴に投入して軽く煮立たせる。

この時に沸騰させてしまうとスープが濁ってしまうので弱火でじっくりコトコトと煮る。

ここ大事ね。


「でね、これでこうやって出て来る灰汁を取るの。」


メロディちゃんにお玉を手渡して灰汁取りをお願いする。


「大体鐘1つの半分くらいかな。水が少なくなったら適宜足してね。で、時間が来たら火を消して。」


「りょーかーい!」


「私は何すればいい?」


リズさんにはこっちを手伝って貰おうか。

本当は野菜のみじん切りと鶏ひき肉を作らなくちゃいけないんだけど、それをイチから手で作るのは大変だからここはちょっとズルをしてストレージの中で『創造魔法』さんにお願いする事にした。

大きいボールを何個も出してその中にみじん切りにした玉ねぎ・人参・セロリ・コカトリスの鶏ひき肉を入れていく。


「よっ。 ほっ。 ほいっ。」


ダンッ! ダンッ! ダンッ!

ボールの中にみじん切りされた材料が次々と投入されていく。


「じゃあ、リズさんはこのボールに入ってる具材に卵白を入れて粘りが出るまでよーく混ぜ混ぜしてて。」


これでメロディちゃんが作ってるブイヨンが完成するまで待つだけ。

ブイヨンが出来ても熱いままだとすぐには使えないので冷まさないといけないんだけど、冷ましてる間待ってる時間が勿体ないので魔法で冷ます事にする。

こうゆうトコが魔法のいい所だよね。

メロディちゃんとリズさんが頑張ってる間に今度はドロシーさんにこれをやって貰おう。


「ドロシーさん顆粒コンソメ要る?」


「要る! 要るけどそんなの作れるの?」


「うん、手間暇掛かるし根気のいる作業だけど作業自体は簡単だよ。」


そうなんだよね、作業自体は簡単なんだけどとにかく手間が掛かるのが難点で。

まずは必要なお野菜を用意する。

玉ねぎ

セロリ(葉付き)

人参

じゃがいも

トマト

ニンニク

コカトリスのお肉(なければベーコンでも可)

お好みのハーブ(今回はパセリ・タイム・ローズマリーを使用)

塩(お野菜を計量してその20%にする)

胡椒

これらを一口大に切ってミキサーに掛けなきゃなんないんだけど、私とした事がミキサーの魔道具を作ってなかった!

だから仕方なし、ストレージの中で『創造魔法』さんのお力を借りる事にした。

またも『創造魔法』。

あると便利だね『創造魔法』。

そんな訳で大きな大きな平鍋にさっきの材料をペースト状になるまで細かくドロドロにしたの入れる。

この時に野菜の塊が残っていると綺麗に仕上がらないので野菜が細かーくなるまでしっかりとミキサーにかける。


「あ、危ないからちょっと下がってて。」


ドロシーさんを手で制して少しだけ後ろに下がって貰う。

そしてストレージから魔道キッチンをズドンと取り出す。


「よいしょっと!」


まるで最上級のアイランド型のキッチンかと思うほどの豪華で大型の魔道キッチン。

コンロは3口、グリルにオーブン付き。

さらに中華にも対応出来るようにドラゴンも付いていると言う超豪華仕様。

どうだっ! ふふん♪

私の渾身の自信作だ。

シンクも大きめにしてあるから洗い物もしやすいよ。


「すごい! なにこれ。」


ドロシーさん目をキラキラさせて食いついてる。


「へー、ほー。」

「大きいオーブン。これなら結構大きいお肉でもイケちゃいそう。」


上から見たり屈んで横から見てみたり、すごく楽しそう。

きっとそうじゃないかと思ったんだ。

まだ聞いてないから確定じゃないけど、ドロシーさんて前世の記憶持ちだよね?

だったらさ、女の子なら使いやすそうなキッチンて憧れるでしょ?

私は憧れるよ。

まぁ、女性ではなくて元男性だけど、それでもマイ包丁とか見てると気分アガルし。

ちょいちょいっとドロシーさんを手招きして


「ここでこれをパラパラになるまで煮詰めて乾燥させて欲しいの。量が量だから結構時間掛かっちゃうから根気よく丁寧にしないといけないけど大丈夫?」


「私、頑張るっ!」


ギュッと力こぶを作って頑張るのポーズを取るドロシーさん。

そうゆうポーズも可愛い。

もう何するにも一々動作が可愛いんだからー。

後ろからハグして包み込むようにしながら両手を取ってお手伝いしてあげたい!


「ドロシー、ここはこうやるといいのよ。私が教えてあげるから。」


なーんて言ったりしてさ、いやん、どうしよう。

想像しただけでドキドキして来ちゃった。


「オルカさん、声漏れてますよ……。」


顔真っ赤にして俯き加減で私を見つめるドロシーさん。

ダメよ、そんな表情見せられたら私……


「おおーい、そこっ! 堂々とイチャイチャすんなーっ! 甘ったるい雰囲気がドッパドッパ出てるよー!」

「そうですよー。私たちに作業させておいて二人だけ楽しい事するなんてズルいですよぉー。」


いや、別にイチャイチャしてた訳じゃないよ。

ちょっとだけ…ちょっとだけ妄想が暴走してただけだから。


「むむ、まさかこんな伏兵が居たとは……ドロシー恐るべし。」


リズさんが眉間にしわを寄せてぐぬぬって難しい顔をしながこっちを見てるよ。

私も何でか分かんないんだけど、ドロシーさん見てたら放っておけなくてねぇ。

ついつい構っちゃうのよ。

庇護欲って言うの?

分かる?


「所でさ、この大量に余った卵の黄身はどうすんの?」


細かくみじん切りされた野菜に卵白を入れたのを混ぜ混ぜしているリズさんが卵の黄身の入ったボールを指さして聞いてくる。

うん、普通に大量にあるね。

こっちの卵黄はあまり黄色くないんだよ。

なぜだか知ってる?

若干白っぽいと言うか薄い薄い黄色って感じ。

元世界の卵って黄身が綺麗な黄色だったけど、あれは鶏に与えてた餌の影響らしいね。

こっちの世界では養鶏なんてのがどうなのか良く知らないけど、少なくとも私が見た卵の黄身は元世界の黄身とは違って色が薄い。

けど、色が薄いだけで栄養的には問題ないはず。

元世界ではそうだった。

白っぽい卵黄で作る物は同じようにやはり白っぽくなるって事だ。

この大量に余った卵黄を有効に使うにはどうすればいいか。

答えは簡単、あれだ。

子供からお年寄りまで男女関係なくみんなが大好きな調味料。

そう、ご存じ「マヨネーズ」だっ!

ついに私も異世界において知識チートをする時がやって来たのだ。


「ふははははは。」


3人が私の事を変な人を見るような目つきで見ている。

ふふ、後で驚くんじゃないわよ。


私はこれからマヨネーズを作るよっ!







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