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第87話 はい、ストーップ! そこまでよ!

勢いよく右手を突き上げて「出発!」と言ったけど、歩みはまったりだ。

身体強化をしていない女の子の脚なんてそんなもの。

お喋りしながらのんびりゆっくりなのだ。

南門は東西南北ある門の中で一番大きい門だからか流石に混んでいる。

けれど荷物のチェックが必要な商人の荷馬車と違い歩きの冒険者は比較的軽めのチェックだけで済む。

少し待ち時間はあったものの程なくして自分たちの番になってすんなりと通過出来た。


南門を出てなだらかな丘陵地帯を歩く。

うーん、人が多い。

いつもより人が多い気がする。

今は例の蟲騒動のせいもあって森へは入れない為みんなが一斉に草原へと繰り出しているからだろう。


「なんか人多くないですかぁ。」


メロディちゃんがちょっと顔を顰めながら言う。


「ホント、今日はいつもに増して人が多いわね。」


リズさんがうんうんと相槌を打ちながら首を縦に振る。

このまま街道を進んでも他の人と一緒。

どこに行っても、どこまで行っても人が多いのは変わらないだろう。

だったらどうする?って話。

人の比較的少ない所に行きたかったら人の流れに逆らって行かないと。

って事で私たちは街道を外れて丘陵地帯のただ中を進むことにした。

下草の長くないなだらかな草原地帯は眺めも見晴らしも良く、歩いていてもとても気持ちが良い。

そこをひたすらに只ひたすらに歩く。

歩きながらも私はいつものように『探知』と『鑑定』は欠かさない。

けど『探知』はLV7、『鑑定』はLV8から上がらなくなったなぁ。

流石にここまで来るとそう簡単にはレベルは上がらない。

ま、仕方ない。地道にコツコツと努力して積み上げてくしかないか。

『探知』をしていて気が付いた事が1つ。


「小さい魔力反応が沢山?」


「どうしたの? 何か異変でも? まさか蟲っ?!」


リズさんがちょっと慌てたように訪ねてくる。


「あ、ううん、違うの。 多分スライムか兎か何かの魔力だと思うんだけど、小さい魔力反応がそこいらに沢山あるもんだからつい。」


(主様もお気づきで御座いましたか。この辺はとても穏やかな空気に包まれていて蟲のような強い魔物は居ないものと思われます。)


(流石、くーちゃんなら当然気付いてるよね。)


(勿体ないお言葉で御座います。)


ふふ、そんなに畏まらなくてもいいのに。

くーちゃん相変わらずだなぁ。


「くーちゃんによるとね、この辺は蟲のような強い魔物は居ないから安心なんだって!くーちゃんの探知能力って私なんかよりぜーんぜんスゴイんだから。当てにしていいと思うよ。折角だからこの辺でゆっくりしない? みんなもそれでイイ?」


私はみんなにそう説明する。

ここなら見晴らしもいいし、街道から少し外れてる分人もあまり来ないだろうしね、ちょっとゆっくりするには最適じゃないかな。


「どう?」


私の問いに


「いいんじゃないかな? メロディは?」

「いいんじゃない? くーちゃんさんがそう言うんなら間違いないでしょうしね。」

「メロディはOKっと。ドロシーは?」

「は はい、私も大丈夫です。 オルカさんがそう言うんなら問題ないかと。」


「OK! 決まりね。 くーちゃん、そうゆう訳だからどこかイイ場所まで誘導お願いね。」


(御意。)


「あ、あそこなんかどう? 小川も流れてるしちょっとした広場みたいになってて平らだし、木陰もあって何より見晴らしもいいし。 ね、くーちゃんあの辺は大丈夫そう?」


くーちゃんは耳をぴこぴこ、鼻をすんすんさせて周囲を警戒していたけどすぐに私の方を向いて


(はい、宜しいかと。問題ないと思われます。)


「そっか、ありがと。 くーちゃんのお墨付きだからバッチリだよ。 あそこにしよ。」



小川から少しだけ距離をあけたとこに腰を落ち着ける事にした。

まずはテーブルと椅子が要るよね。


「ほいっと。」


何も考えずにいつも通りストレージからテーブルと椅子を取り出す。


「ええっ?! 何もない所からいきなりテーブルと椅子が出て来たっ?!」


ドロシーさんが驚いたような声をあげてる。

あ、そっか。 ドロシーさんは私がストレージ持ちって知らなかったんだっけ。

いきなり見たらそりゃビックリもするか。


「ああ、オルカさんアイテムBOX持ちだからねー。」


リズさんが説明してくれる。

私が何も言わなくても、私が不利にならないようにちゃんと考えて言ってくれている。

感謝、感謝。

ドロシーさんは目をパチパチさせながらも「なるほどー、アイテムBOXかぁ。」とか「いいなー、それ。」とか言っている。


「でもビックリするのはまだ早いんだよー。 こんなのは序の口、これからもっともっと驚く事が起こると思うよ、にひひ。」


メロディちゃん、それ全然フォローになってないから。


「……オルカさんてホント規格外だから。 はぁ、ドロシーも気をしっかり持ってね。」


リズさんも何気にディスってるよね。

私って気をしっかり持たなきゃならないほど非常識だっけ?

全然心当たりないんだけど?


「私そこまで非常識じゃないつもりなんだけどなぁ……。」


「「気づいてない?!」」


「な、なによー。二人して声揃えて言う事ないじゃない。失礼しちゃうわ。」


ぷんすか。

頬っぺをぷくっと膨らませてちょっとだけ怒ったふりをしてみる。


「あはは、ごめんごめん。」

「怒ったオルカさんも素敵。」


「んもー。」


くすっ。

私たちのやり取りを見ていたドロシーさんが笑った。


「3人は本当に仲が良いんですね。 リズさんやメロディさんがこんなに楽しそうに話してるの初めて見ました。」


「そう? ……そうかもね。」


リズさんがちょっとだけ伏し目がちに優しく笑いながら言う。

そしてすっと顔を上げてドロシーの方を見て


「オルカさんには魔物に襲われてる所を助けて貰ったし。 オルカさんて損得抜きで行動出来る人だから。そんなオルカさんだからこそ私たちも損得抜きでオルカさんと付き合えてるんだと思う。」

「だね、オルカさんて困ってる人が居たら助けずには居られない人なんだよ。 じゃなかったらアルマを助けたり、孤児院にまで一緒に付いて来てくれるなんてしないよ。」

「オルカさんは優しくて、可愛くて、強くて、しっかりしてるようで時々どこか抜けてたりね。」

「そうそう。でもそれがまたイイんですよー。」


「そ そんなに褒めても何も出ないんだからね!」


恥ずかしいったらありゃしない。

顔が熱い。

うう、これはきっと顔が真っ赤だよ。

照れまくる私を見て二人は微笑みながら


「そんなオルカさんが私たちは……」


「「大好きっ!」」


そう言って両側からギュッと抱き付いて来る二人。

あっ、柔らかい双丘がふよんと当たってる。

ぷに。 ふよっ。 つんっ。

ヤバッ! 顔がニヤける。

頬が緩む、口元が緩む。

むふっ、今日も桃源郷よ有難う♪

私が二人の柔らかさを堪能しているとリズさんがドロシーさんをちょいちょいと手招きしながら


「ドロシーもちょっとこっち来て。」


「え、私?」


「そうよー、いいからいいから。」


おずおずと近づいて来て私のすぐ目の前にまでやってくるドロシーさん。

私よりほんの少し背が低いドロシーさんが上目遣いでこちらを見ている。

ドロシーさん顔ちょっと赤い?


ヤバッ!

めっちゃ可愛いんですけどーっ!

うー、ドキドキするー。


そのままスススっとすり寄ってきて身体をピトッてくっつけてくる。

そしてまた上目遣い。

可愛いーっ!

ヤバい、これは堪らん。

私を悶え殺す気かっ!

そうなのか? そうなのね? 

私を悶え死にさせようとしてるのね。

ドロシーさん恐ろしい子。

まさか貴女が一番の刺客だったなんて。


「オルカ……さん。」


そんな潤んだ目で見つめないで。

そうなの? それって誘ってるのよね?

これはもう両想い確定なんだから遠慮しなくてもいいよね?

ってか、私が我慢出来ないかも。

も もういいよね?

いいに決まってるよね?

じゃあ……


「ドロシーさん……。」


二人の顔がゆっくりと近づいてゆく。

互いに顔を少し傾げるようにする。

あっ、息が掛かりそうな程ドロシーさんの顔が近い。


あと、ほんのちょっと。

目の前にドロシーさんの顔が……


ああぁ。



「はい、ストーップ!!! そこまでよっ!」


リズさんの声と共に私たちの目の前に手が差し込まれた。

一瞬何が起こったのか分からなかったけど、二人の間にリズさんの手が差し込まれたと理解してガッカリした。

あーぁ、ざーんねん。


「あとちょっとだったのにぃ……」


ドロシーさんを見ると熱に浮かされたように真っ赤な顔をしている。

照れてもじもじしている。

あーん、この子ほんとに可愛いわ。

まるでルカを見てるみたい。


「危なかったー! もうちょっとでドロシーにかっ攫われるとこだった!」

「二人とも、不純同性交遊禁止です!」


ドロシーさんて何気に凄腕のスナイパーよね、「恋のスナイパー」。

この私が一瞬で持ってかれそうになったもん。

油断ならないわー。


それからメロディちゃん、それ言ったら私たちみーんなそうだから。

私たち全員女の子だよ?

美目麗しい花も恥じらう乙女なんだから。


「メロディ、それじゃここに居る4人全員女子だから当然ダメだね?」

「……あ、そっか。」


リズさんの的確なツッコミが入る。


「でもでも……」

「なに?」

「私たちは不純ではなくて真面目なので『不純同性交遊』ではなく『純真同性交遊』なのでセーフです!」


「「「ええええぇぇぇぇ?!」」」


また可笑しな事言ってる。

ほぼほぼ真っ黒に近いグレーってやつだね。

メロディちゃん、自分で言ってて苦しいって思わない?


「ふふん、どうだっ!」


たわわに実ったお胸さんをグンと反らしながら勝ち誇ったような顔をするメロディちゃん。


「メロディ、無理ありすぎ。」

「そうですよぉ、今のは苦しすぎですよぉ。」

「詭弁ね。」


「そぉんなぁ……。」


しょぼんと項垂れるメロディちゃん。

そんな様子も可愛いなぁ。

思わず頭を撫で撫でしちゃった。

目を細めてうっとりとした顔をするメロディちゃん。


「んふー、オルカさんの撫で撫で、幸せ~♪」


「オルカさんもあんまりメロディを甘やかさないで。」

「リズのイケズ、ちょっとくらいイイじゃない。」

「ダメよ、私だって我慢してるんだからメロディも我慢なさい!」


「ほんと二人は仲良しね。」

「ほんとお二人は仲良しですねー。」


あらま、ドロシーさんと声が被っちゃった。

二人で顔を見合わせて笑いあう。


「「ぷ。 あははは。」」


「なあによー、二人だけで分かりあったような顔で笑っちゃってさ。」


「「何でもないよーっだ!」」


舌をチロッと出して「ベーッ」ってする。

私たちが話してるのを見て


「ちょおっとぉー、私を仲間はずれにしないで下さいよー。」


メロディちゃんが慌てて会話に入ってくる。

こうゆう何気ない会話って楽しい。

まさか元男の自分がガールズトークをするなんてね。

元世界だったら夢にも思わなかっただろうなあ。

しかもすっかり馴染んでるし。

人間慣れってすごいなーって実感。

気の置けない仲間とのお喋りは楽しい。

折角なんでお茶と果物でも出そうかしらね。


「みんな果物食べる?」


「「食べるーっ!」」

 「食べます。」


「じゃ、用意するからちょっと待って。」


それじゃあ一丁やりますか!

私は腕まくりして「ふんす」と気合を入れる。

今日はコンソメ作りに挑戦しようと思ってたんだ。

コンソメって手間暇かかるし結構大変なんだけど、でもねぇ、美味しい食事の為には必要だよね?

私の食の充実のためには欠かせない。

コンソメってそのままスープにしても良し、お料理のベースにしても良しの優良食材? ん? 食材でいいのかな?

ま、いっか食材みたいなモンでしょ。

コンソメがあれば使い勝手が良くてお料理の幅も広がるしね。

これを大量に作り置きしておく事で咄嗟に何か作らなきゃいけない時でもすぐに対応出来るようになるしいい事尽くめだよ。

1人で作ろうと思うと大変だけど今日は強力な助っ人が3人も居るからね、一緒に手伝って貰えば大量に作るのも問題ないでしょ。


てな訳で早速作るよー!





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