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第80話 両手にだんご

いつものように美味しい夕飯を頂いた後お風呂に入る。


「お風呂頂いてきますね。」


カミラさんにそう伝えてお風呂場に行く。

もう慣れたものでそれが当たり前って感じで行動する。

脱衣所で服を脱いだら脱衣かごに服を入れて、下着は『洗浄』と『乾燥』してストレージへ。

いつも魔法で対処してるけどたまにはきちんと洗濯もしたいなー。

何て言うか、魔法で綺麗にするのがイヤとかそんなんじゃないんだけど、気持ちの問題って言うか。

洗濯はやっぱ洗剤で洗ってキレイキレイしたいって言うかね。

濡れタオルで身体拭いて行水したりとかよりお風呂入る方が気持ちいいしサッパリするじゃない?

それと似たような感覚なのよ。

アナログだけど……いや、アナログだからこそイイみたいな。

やっぱ魔動洗濯機作ろうかな……。

そんな事を考えながらお風呂に入る。


カポーン。


浴室に桶の音が響く。

いいねぇ、この音。

銭湯を思い出す。

私が子供だった頃は昭和の終わりでまだ銭湯がそれなりに沢山あった。

勿論家にはお風呂はあったけど、ガスの湯沸かし器が故障した時に家族みんなで銭湯に入りに行ったっけ。

懐かしい。

風呂上がりのフルーツ牛乳がまた美味しくてねー。

腰に手を当てて足を肩幅に開いて腰を入れ胸を反らしながらグイっと飲み干す。


くうぅぅぅ 美味い。


如何にも「ザ・昭和」。

みんなお風呂上がりに冷たい飲み物飲んでたなー。

あと、何気に近所の人たちの交流の場だったりした。

なんせ田舎だから。

今は…


「ほんといつ見てもオルカさん綺麗ね。」

「はうっ。」

「素敵。」


熱っぽい視線を向けられ艶めかしい吐息を吐くお姉さん方。

これが平常運転になりつつある。

なんでこうなったやら。

取り合えず気にせずお風呂に専念しよう。

気にしたら負けだ。


ニコッ。


「見た、見た?今私の方見て笑ってくれたよ!」

「違うわよ、私の方を見たに決まってるじゃない。」

「はぁ、姫さま。」


うん、やっぱ色々と問題ありだ。

さっさと上がろう。

お風呂から上がって部屋に戻る。


今夜は…………しないよ。


結界の魔道具、あれの改良版を作ろうと思う。

アイザックさんが蟲に襲われた時、確かに私の作った結界の魔道具は作動していた。

そして一時的にアイザックさんの身を守ってはくれた。

けど本当に一時的だった。

時間が短すぎたのだ。

クズ魔石を使ったので10分程度しか効果がない。

あれじゃあダメだ。

もっと長く起動出来なきゃいけなかった。

なのでもっと長く起動して1回こっきりの使い切りじゃない物に改良しようと思う。

もっと容量の大きい魔石にして、起動と停止が出来るスイッチの役割をしてくれる魔石も埋め込んで。

時間は鐘1つ分くらい持てばいいかな。

起動はスイッチ若しくは不意の攻撃を受けた時。

魔石は魔力補充型で無くならない仕様で。

デザインは前と一緒でいいか。

これをリズさんたち全員分だから、アイザックさんと念のため予備の分も入れて7人分か。

自分のはまた別だから自分の専用で改良版に置き換えておく。


そうと決まったらすぐやる。

材料はストレージに入ってるから『創造魔法』にお願いしてちゃちゃっと作製。

もうこうゆうのも結構慣れて来た感があるなー。

少しばかりの魔力と引き換えに結界の魔道具が出来上がっていくのを感じる。

出来上がった結界のアクセサリーを取り出して確認。


「うん、問題なく出来てるね。」


私が作るんじゃなくて『創造魔法』さんが作ってくれるんだからミスなんてあるはずが無い。

結界のアクセサリーに魔力を補充してからストレージに片付ける。


さて、次はあれを作ろう。

あれって言うのはガラスで出来た密閉出来る小瓶の事。

ふっふっふっ。

ついに異世界で知識チートを使う時が来た。

こっちのパンは相対的に硬い。

保存の観点から水分が少ない硬いパンが多いのだ。

もちろん柔らかいパンもあるけれど、前世で食べたようなふかふかふわふわのもっちりパンなんてあろう筈が無い。

じゃあ、どうするか?

答えは簡単。

無かったら「作ればいいじゃない。」だ。

と言う事で天然酵母を作ろうと思い至った訳よ。

天然酵母を作るにあたって必要なのが密閉出来る容器。

これについては材料は全部ストレージの中に入っている。

ガラス板ある、コルク持ってる、鉄もある、ファクチスも作った。

うん、バッチリ。

あとはストレージの中で魔法を展開して作るだけ。

イメージは出来てるから多分大丈夫。

作ってみると魔力はそれなりに消費した。

思ったほどでは無かったけどやはりそれなりにって感じ。

まぁ今の私の魔力量からしたら何でもないんだけどね。

出来上がったガラス瓶は一度煮沸消毒したいのでここから後の作業は明日以降だね。



今度アルマさんとアイザックさんの結婚のお披露目会がある。

何か出来ないかなーって考えてたんだけど、ちょっとイイ案を思いついたんだよね。

前世では披露宴なんかでもすると聞いた事がある。

どちらかと言うと日本よりは海外の方がそれをするのは多いんじゃないかって言う話らしいけど。

面白そうなのでそれをしてみようかなと。

日本だと「お二人の初めての作業……」なんて言う台詞でもって二人が「ケーキ入刀」だったり「キャンドルサービス」ってのが一般的だよね。

それの代わりにしてみようかなって。

ちょっとゴージャスでみんなの度肝を抜くような記憶に残るイベントをして盛り上げてあげたいな。

その為に必要な物があるんで、それを今から作ろう。

でも何をするかはまだ秘密。

明日現地に行って場所の確認もしないといけないし。

お披露目参加人数がどれくらいか分からないけど取り合えず余裕を見て140個くらいあれば大丈夫でしょ。

材料のガラス板ならいっぱい持ってるから大丈夫。

私の魔力が持てばいいだけの話。

じゃ、さっさと終わらせるとしますか。

イメージは出来てるからそれをしっかりと頭の中に描いて、『創造魔法』を展開する。

魔力が…魔力が……どんどん減ってく。

あー、これは結構きてる。

思ったよりもかなり多くの魔力を消費した感じがする。

それでもまだまだ余裕はあるけどね。

ただもう時間的に他の物を作る程の時間はないかな。

残念。

さっき5の鐘が鳴ってたからもうそろそろ寝ないと明日に響くしね。

作業的には大体目途はついたので今日はこれで終わり。

残りの作業はおいおいやっていけばいいよね。

って事で今日はこれでおやすみ。




「おはよう。」


1人ベッドで目覚めたんだけど一応ね、何となく。

これはいつもの癖みたいなもんだから。


ん~っ ん。


ぐぐーっと伸びをする。


んはーっ。


さっ、お仕事服(冒険者の恰好)に着替えて朝ごはん食べに行こうかな。


ふんふふん♪


寝間着を脱ぐ。

下着だけだとちょっと肌寒い感じがするね。

昼間は暑いんだけど朝晩はまだ少しひんやりする。

パパっと着替えて下に行かなきゃ。


トットットットッ


階段を降りて食堂へ。


「おはようございます。」


カミラさんに挨拶する。


「あら、おはよう。 いつも丁寧なのねぇ。」

「空いてるとこならどこでもいいから好きなとこに座って待っててね。」


そう言われたので昨日と同じ場所に座る。

すると今朝も同じ子が食事を運んで来てくれた。


「おはようございます。」


「おはよう。」


二人でにっこり。

朝の挨拶と可愛い女の子の笑顔は1日の活力の源よね。

これがあれば今日も1日頑張れる。

食事を受け取って


「貴女も頑張ってね。」


そう言ってグッと力こぶを作るようにしてガッツポーズをする。

給仕の女の子はそれに応えるように満面の笑みを返してくれた。

んー、いい気分。

朝食を食べ終えるとくーちゃんたちに朝ごはんをあげて、ギルドに出かける前にまた迎えに来るからと言って一旦部屋に戻った。

部屋に戻ったはいいけど特にする事もなかった。

何か作るには時間が足りないしなー。

毎朝の日課だけ済ませて、ちょっと早いけどもうギルドに行こうかな?

くーちゃんたちを迎えに行って、


「お待たせー、ちょっと早いけどもう宿を出ようか。」


(御意。)

(はい。)


くーちゃんたちを連れてギルドまでてくてく歩く。

空が青いな。

今日もいい天気だなー。

街は朝の喧騒に包まれ、朝食のいい匂いが漂っている。

路行く人は足早にスタコラと歩いてるね。

けれど私たちはゆっくり歩く。

街を眺めながらゆっくり、ゆっくりと。

ギルド前に着いたけどリズさんたちもカーリーさんたちもまだ来てないか。

流石にちょっと早かったね。

今何時ごろなんだろ?


(くーちゃん今って何時ごろか分かる?)


(3と半の鐘と4の鐘のちょうど間くらいかと思われます。)


そっか、って事は大体7時半ごろって事だ。


(ありがと、助かるよ。)


くーちゃんの尻尾がふわんふわんと揺れている。

ふふ、ご機嫌さんだね。

愛い奴じゃ。

くーちゃんとさくちゃんを愛でながら撫で撫でする。

くーちゃんの背中を優しく撫でると、目を細くして気持ち良さそうにしている。

耳はペタンと寝て尻尾はぶんぶんと大きく振られてる。


可愛い。


反対の手でさくちゃんの身体をぐにぐにと撫でる。

するとさくちゃんはみよんみよんして喜びを表してくれる。


さくちゃんも可愛い。


ひとしきり撫で撫でを堪能していると、通りの向こうからこちらに向かって歩いてくる女性4人組の姿が見えた。

あ、あれかな?


やっぱ、そうだ。

リズさんたちとカーリーさんたちだ。

別々に来るのかと思ったら一緒に来たんだねー。


「おはよう。」


「「「「おはようー!」」」」


「今日は別々じゃなくて一緒に来たんだ。」


私がそう言うと


「そこで会った。」


カーリーさんがそう答える。

相変わらず口数が少ない。

カーリーさんは普段長々と喋る事は少ない。

いつもこんな感じの受け答えが多い。


「カーリー、端折り過ぎ。そんな言い方してたらまたいつもみたいに機嫌悪いのかと勘違いされちゃうよ? オルカさんに嫌われてもいいの?」


ベルさんがカーリーさんにお小言を言っている。

きっとカーリーさんの性格上仕方ないんだろうけど、やはり友達として気になるよね。


「それはイヤ!」


「だったらちゃんと分かるように喋らないと!」


「あぁ、私は大丈夫。全然気にしてないし。」


「んもう、オルカさんったら、カーリーを甘やかせ過ぎです。」


「オルちゃん!」


ひしっとカーリーさんが抱き付いてくる。

むにむにと柔らかい双丘が心地良い。

カーリーさんてリズさん並みの慎ましやかなお胸なのよね。

けれど張りがあって弾力がすごいの。

これはこれでイイものよ、むふ。


「こらー、どさくさに紛れて抱きつくんじゃありません!」


ベルさんに怒られてるカーリーさん。

平和な平和な日常の風景だね。

見目麗しい女の子5人が天下の往来でキャッキャッウフフ♪してる。

いいわー。

ここは桃源郷ですよね?


「はーりーふぁん、ふふいふぇふ。」


メロディちゃん、食べながら喋るのヤメようね。

リスみたいに頬っぺたを膨らませてもっきゅもっきゅと食べてるメロディちゃん。

安定の可愛らしさだ。

ちなみにさっきのは「カーリーさん、ずるいです。」だそうだ。

もぐもぐしてたのをゴクンと飲み込んで、


「オルカさんも食べる?」


右手に持った串焼きを差し出すメロディちゃん。

左手にはそば粉で焼いたガレットのような軽食を持っている。

両手にだんご。

普通は花なんだけどメロディちゃんは食い気が勝っている模様。

それがまたメロディちゃんらしい。

思わず笑ってしまう。


ぷ。


「ううん、朝ごはん食べてきたから大丈夫、ありがと。メロディちゃん全部食べて。」


「そう? じゃあ食べるね。 ホントにホント食べちゃうよ?」


あはは、大丈夫だから。

ほら食べて食べて。


「もー、メロディったらぁ。」


リズさんが苦笑してる。

カーリーさんもベルさんも笑ってる。


乙女の朝は姦しいのです。







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