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第72話 ギルバート商会

お待たせ致しました。

また再開します。

以前同様隔日掲載の予定をしております。


今回からNolaノベル様と交互掲載にしました。



冒険者ギルドを出て商業ギルドへ向かう。

ギルドやお役所系の建物は全て近い位置に集まって建っている。

他には食品関係、工業製品や材料・問屋関係、一般の小売店も近い業種や職種が集まって建っていて分かりやすい。

こうゆう所は実に合理的だなぁと思う。

なので冒険者ギルドから商業ギルドまではほど近い場所にある。

歩いてもすぐに着いてしまう。

商業ギルドの前まで来た。


「私が行って来る。オルカさんはここでちょっと待ってて。」


「え、私も行くよ?」


そう言ったんだけどリズさんは


「いいからいいから。 アイツの店の名前と場所を聞いて来るだけでいいのよね? 簡単よ。」

「じゃ、行って来る。」


リズさんはそう言って足早に商業ギルドの中に入って行った。

私の用事の事なのにリズさんに聞きに行って貰ったけど良かったのかな?

なんか悪い事しちゃった。

メロディちゃんとそんな事を話してたら、


「気にしなくていいと思うよ。オルカさんに迷惑かけちゃったからってリズ気にしてたから。だからお詫びのつもりなんだと思う。」


メロディちゃんはそう言うけどさ、


「それこそ気にしなくていいのに。リズさんいい人過ぎだよ。」


「そこがリズのいいトコなのよ。そんなリズだから私も一緒に居るんだしね。」


メロディちゃんがにっこりと笑う。

リズさんの一番近くに居て、一番よく理解しているメロディちゃん。

お互いがお互いを信頼し合ってるからこその台詞なんだろうね。

ちょっと羨ましいよ。


あ、リズさんが戻って来た……


…………ええっと、 なんか怒ってる?


肩を怒らせてプリプリした顔で不機嫌そのものって感じ。


「リズどうしたの? そんなに怒って。」


「あったま来た! ちょっと二人とも聞いて!」


あいやー、リズさんご立腹ですな。

これは一体何があったのやら。


話を聞けば、中に入って奥に進んで窓口まで行った。

他にも人が居たので並んで順番を待っていたと。

リズさんの番になったので窓口のお姉さんに話しかけたら


「それまで愛想良く話してたのに私の番になったとたんニコリともせず不愛想な顔で一言”……で?”って、それだけ。」


「は? 何それ。何かヤな感じね。」


「でしょ?そう思うでしょ? 私もちょっとムッと来たけど一応我慢してマルクさんの店の名前と場所を聞いた訳。」


先だっての護衛依頼の時のお礼を言いたいのだけど、うっかり忘れてしまったのでマルクさんのお店の名前と場所を教えて欲しいと。

本当の事なので素直に謝りながらそう聞いた。

すると


「貴女バカにしてるの?依頼人のお店の名前くらいちゃんと憶えておきなさいよ。これだから学のない冒険者は……っち。」


と。

確かにその通りなのだけどそこまで言われなきゃいけない程の事?

学があるとかないとか関係なくない?

いくら商業ギルドと冒険者ギルドが仲が悪いからって一介の冒険者に対して当たりが強すぎでしょ。

話をしているリズさんの肩がわなわなと震えている。

思い出してまた腹が立って来たのだろう。


「それでも一応下手に出て丁寧に聞いたつもりだったんだけど……」


リズさんとのやり取りを聞いていたのか、窓口の奥から男性職員が出て来て


「お、なんだ? マルクの新しい女か? アイツも好きだねぇ。今度は冒険者か? まだ子供じゃねーかよ。ったくアイツは見境ねーなー。」

「悪い事ぁ言わねぇ、嬢ちゃんアイツはヤメときな。」

「別にいいんじゃないの? 遊ばれて泣きを見るのはこの子なんだしさ。勝手にすれば?」


「いえ、本当にそうゆうのじゃないんですけど。」


そう言ったけれど信じて貰えず、女性職員にはボロクソに言われ、男性職員には懇々とお説教されたと。


「うわっ、マジで最悪。」

「ほんとほんと。なんでリズがあんな男なんかに……」


申し訳ない。


「私の用事だったんだしやっぱり私が行けば良かったね。 ほんとゴメン。」


私は両手を合わせてゴメンねのポーズをする。


「いいのいいの。オルカさんが悪い訳じゃないから。」

「そうだよ、悪いのはぜーんぶマルクさんです!」


メロディちゃんもお怒りのご様子。

けど肝心のマルクさんの店の名前と場所は?

ちゃんと教えて貰えたのかな?


「お店の名前は教えて貰えたの? 何だったら私が聞いて来ようか?」


そう言うと、


「女性職員の方は意地悪して最後まで教えてくれなかった。」


うわっ、どこまで性悪なんだか。


「けど、お説教と引き換えに男性職員が店の名前だけは教えてくれた。ギルバート商会だって。」


うーん、それも何だかなぁ。

どうせ教えるんならちゃんちゃんと教えてくれたらいいのに。

しかも中途半端に名前だけって……。

あーあ、器の小さい男ってサイテー。


「ウジウジしててもしゃーないしね! さっ、行こ行こ。」


パンパンと手を叩いて行動を促すリズさん。

リズさんったら男前。

すっごくカッコイイよ。

リズさんは近くに居た辻馬車のオジさんに声を掛けている。


「ねぇ、オジさん。ギルバート商会って知ってる?」


「ん? 知ってるぞ。まぁまぁ大きな商会だな。今の当主の先々代に当たるギルバート氏が興した商会だったかな?」


「じゃあ、そこまで乗せてって。料金は3人分払うから。」


「よし、乗ってけ。」


「ほら、二人ともボーっとしてないで乗った乗った。」


馬車ゲット。

場所は辻馬車のオジサンに聞くのが一番だね。

前世で言うところのタクシーの運転手に聞け!って言うのと同じだね。

でも馬車代までリズさんに出して貰うのは何か違う。

ここは私がお金出さなきゃいけない場面よね。


「あ、お金は私が出すから。元々は私の用事だし。」


「あー、いいのいいの。気にしないで。」


え、でも。 そんな訳には……。


「ホントに気にしなくていいのよ。オルカさんにはいつもお世話になってるし。」


お世話になってるのは私の方だよ。

じゃあ、


「お昼ご飯は私に奢らせて、ねっ! 絶対よ。」

「好きな物食べていいからね。」


「やった♪」


メロディちゃん大喜び。

リズさんはちょい申し訳無さそうにしてたけど一応納得してくれた。

よかよか。

くーちゃんは馬車の後ろを歩いて付いて来る。


「嬢ちゃんたち、着いたぞ。」


「オジさんありがとう。」


辻馬車のオジサンにお礼を言って降りる私たち。

へー、ここがマルクさんのお店なんだ。


「思ったより随分と大きいのね。」


私もリズさんと同じ事思った。

店構えもしっかりしてるし、何より綺麗だ。

わりと高級店なのかな?

取り合えず、中に入ってみよう。

マルクさんが居るかどうかも確認しないといけないしね。


私の用事で来たんだし、ここは私が先頭で行くね。

そう言って入り口のドアを開ける。


「いらっしゃいませ。」


中から女性店員の声が掛かった。

従魔が居ても大丈夫か確認してから中に入る。


(くーちゃん・さくちゃん、隅の方で大人しくお利口さんしててね。)


((御意。))


「冒険者の方ですね。本日はどういったご用件でしょうか?」


話が早くて助かるね。

私たちはお姉さんの方まで歩いて言って出来るだけ丁寧に


「マルクさんはいらっしゃいますか?」


そう聞いたんだけど、そうしたらサッと顔色が変わってキョドり出した。

あれ?

何この態度……私何か変な事言ったっけ?


「若旦那で御座いますか? 若旦那は只今不在でして戻りは夕刻になるかと。」


若旦那?

って事はマルクさんのお父さんが現当主って事なのか。


「あら、そうなの? どうしようかしら。特に急ぎでもないしまた今度でもいいんですけど。」


「でもほら、この間の依頼のお礼の事もあるし出来たらきちんと会ってお礼したいなぁってね。」


リズさん追撃。


「今日は午後から予定が入ってるので、明日のマルクさんのご予定は如何かしら?」


「えぇ、ええぇぇぇぇっと……。」


お姉さん困ってる?

それ程までにマルクさんに会わせたくない理由でもあるの?

んん?

意味分かんないんだけど。

私が頭の中に「???」を飛ばしてると奥から壮年の男性が出て来た。

恰幅が良く見るからに偉い人って感じ。


「お嬢さん方何か問題でもありましたかな?」


にこやかに笑いながらそう声を掛けて来た。

威圧感は感じないけど威厳はあるわね。


「あっ、旦那様。 実は……」


旦那様……この人がマルクさんのお父さんか。

へー、ほー。

二人は私たちからちょっと離れた所でチラチラとこちらを見ながら会話している。

お姉さんは困り顔で、マルクさんのお父さんの方は険しい顔をしてる。

私たち何かとんでもない厄介事を持ち込んだ?

なんで?


「あのバカ………………うむ……………………ご苦労、後は私が対応する。」


えええ、私たちクレーマー扱い?

むうぅぅ。

これどうなんの?

私は単に特許の登録を手伝って貰いたいだけなんだけど……。


「ハンナ、お茶を4つ、応接室まで頼む。」

「では、お嬢さん方こちらでお話を伺うとしましょう。」


そう言って応接室に通された。

もちろんくーちゃんたちも一緒。

万が一は無いとは思うけど、一応念の為。


入ったそこはとても豪奢な部屋だった。

ギルドで入った部屋など問題にならないほど贅を凝らした部屋だった。


「うわぁぁぁ、すごい部屋。」


メロディちゃんが感嘆の声を上げている。

確かにすごい。

お金が掛かっているのが素人の私でも分かる。

これ、前世なら役員室とか社長室とかってレベルよ。

お金のかけ方が段違いだもの。

さすが現当主。


「さ、どうぞお掛け下さい。」


手で促されてふかふかのソファに腰掛ける。

ふわりと身体を包み込む極上の座り心地。

なにこれ?

こんなすごい物がこの世界にもあったのね。


「ハンナです、お茶をお持ちしました。」


さっきのお姉さん、ハンナさんだったっけ。

ハンナさんが良い香りのするお茶を運んで来た。

きっとこれも目が飛び出るほど高いのだろう。

なんかメチャクチャ丁重に持成されてる気がする。

どうゆう事?


「申し訳ない!」


いきなり謝ってきた?!

なんで? どうして?


「えっ? えっ?」


私たちが戸惑いを隠せないでいると、


「不肖の息子が大変な失礼をしてしまったようで申し訳ない。」

「これは慰謝料と言う事でお納め頂きたい。」


そう言って差し出されたトレイには小金貨3枚が乗っていた。

1人小金貨1枚。

日本円に換算すると約100万円……おうふ。

なんかとんでもない事になってるんだけど。

私たちは何が何だか分からない物だから固まっていると、


「やはりこんな物では許して貰えないか、それも当然と言えば当然。」


いやいやいや、何を言ってるの?

マルクさんも褒められた人ではなかったけどそこまで言われなくちゃならない程悪人でもなかったよ?


「あんな不出来な息子でもこの商会の跡取りなのだ。お嬢さん方は冒険者なんだね? なら、武器でも防具でも好きな物を1つ用意するがそれでどうだろうか?」

「勿論費用は全てこちら持ちでいい。値段もいくらでもいい。」

「どうか、それで許しては貰えまいか。」


「「「えっ……。」」」


もうね、ビックリし過ぎて言葉も出ないよ。

何がどうなっているのやら。


「「い い いくらでもいい? ええええぇぇぇぇっ?!」」


リズさんたちが大声で叫んだ。

それでやっと私は再起動する事が出来た。

私はそっと右手を上げて


「あの~、宜しいですか?」


「なんだね? 何でも言ってごらん。」


ふう、やっとまともに話が出来る。

私たちは文句を言いに来た訳ではない事。

前回マルクさんの護衛の依頼を受けた時に「力になるよ」と言われたのを思い出したので立ち寄ってみた事。

「常識的な範囲内でなにか1つお願いをしてもいい権利」なんて事は言わない。

そんな事を言ったらきっとマルクさんは怒られてしまうから。

だからそれは言わない。

あと、実は私は色々な便利な物を作っているのでそれを特許登録したいと思ったけど、特許の申請の方法が分からないのでマルクさんに指南して貰いたいと思っている事など。

私の一番の目的はそれで、決して怒っている訳でも文句を言いに来たのでもないと言う事を伝えた。


「あのマルクがそんな事を?………………信じられん。」

「しかし、マルクはそんな事ひと言も……。」


「いえ、本当ですよ。 ねっ?」


そう言ってリズさんたちに同意を求める。


「「ええ、その通りです。」」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」


とても深い深いため息をつき身体から力を抜いていた。

身体を弛緩させソファに身体を沈めながら


「は ははは ワシの勘違いだったか!」


そう言って笑いだした。

そしてさも楽しそうに


「分かった、では商業ギルドへは私が案内しよう。その時に特許の申請を手伝ってやろう。 それでいいかね?」


「えっ? 忙しいのではありませんか? ええっとご当主様ですよね?」


「ああ、まだ名乗って無かったか、私はランドルフ。この商会の長でマルクの父親だ。」


ランドルフさんね、覚えた。


「私はオルカ。オルカ・ジョーノです。」


「っ! 貴族の出か?」


「いえ、私ヤパーナなので。」


安定のいつものやり取り。

もうすっかり慣れちゃった。


「私はリズで、こっちがメロディ。私たち3人はここメイワースで冒険者をやっています。」


お互い自己紹介を終えてやっと場が落ち着いた感じがする。

誤解、主にマルクさんに関する誤解だけど、も解けてやっと穏やかな空気が流れ出した。

これでやっとひと息つける。

少し世間話などをした後、商業ギルドへ向かう事になった。

そのタイミングでさっきリズさんが受けた意地悪をランドルフさんに話した。


「それは本当なのか?」


「はい、本当です。」


意地悪された当の本人のリズさんが言うんだから間違いない。


「馬鹿どもが! そんなだから冒険者ギルドと険悪になるのだ。 どうして共存しようとしない!」

「商業ギルドと冒険者ギルドは持ちつ持たれつ、共存共栄が基本だと何故気づかん!!」


うわぁ、ランドルフさんメッチャ怒ってる。

これはマジもんだ。

顔を真っ赤にして激高してるよ。


「お嬢さん方、申し訳ないが一緒に商業ギルドへ来てくれんか?」



そうして私たちはランドルフさんと一緒にあの胸クソの悪い商業ギルドに向かうのだった。





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