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第7話 魔法のご利用は慎重に

みなさん、おはようございます。

オルカ先生の魔法のお時間ですよ。

(クイッ。 左手で眼鏡を上げる真似。)



魔法の検証と言えば聞こえはいいが、実のところ自分がどんな魔法が使えるのか分からないからこれからそれを調べるのだ。

今の私のおかれた状況を考えたら、飲み水と火熾しは必須だ。 死活問題である。

水は女神様のプレゼントの中にもあったが、飲み水は飲んだら無くなってしまう。 だから水を確保する手段は要る。

なのでまずはこの2つをどうにかしないと。


…………


結論から言うとあっさり出来ました。

たぶんユニークスキルの『魔法の才能』が働いたのだと思う。


飲み水は頭の中でイメージしたら目の前に水の玉が出てきた。

そのまま両手で掬うように形作って目の前の水を手の中に落とす。

綺麗な水が手の中でさざ波のように揺らいでいる。

口をつけて飲んでみる。 すごく美味しい。


「水」


すると手の中にまた水が出てきた。

一度出来た魔法は次からは簡単に発動出来るらしい。

手の中の水が綺麗だ。

その水鏡に自分の顔が映っている。

黒髪黒目のものすごい美少女だ。

髪の長さは肩口より少し長く肩甲骨辺り。

黒目と言っても真っ黒ではなく茶色に近い色。

切れ長の瞳、ほっそりとした顎のライン。

凛として、そして妙に色っぽいと言うか艶っぽい。

少女以上大人未満、幼さと大人の狭間の危うい色気がそこにあった。

うわ~ 我ながらこれはマジでヤバいわ。

気をつけなきゃ。

これってあの駄女神様の好みだったりするんだろうな、きっと。

ホント色々やらかしてくれる女神様だわ。


続いて死活問題の2つ目、火熾しの魔法。

着火と言うんだけど、チャッカマンから出る細い火をイメージしながら人差し指をピンと伸ばして

「着火」

と言うと人差し指の先から細い火が出た。

あっさりと出来た事に内心驚いたが、ま、スキルの優遇もあるから。

優秀すぎるスキルってのもアレだね、なんか申し訳ないわ。

試しに指5本全部から火が出るかやってみたら出来てしまった。


次に火の球、水の球それぞれ前に飛ばしてみる。

所謂ファイヤーボールとかウォーターボールって言われている魔法だ。

これらは火の球、水の球を作るのに最低限必要な魔力と、それらを飛ばすための魔力が必要になる。

飛ばす距離と速さで必要魔力が変わる。

距離が遠ければ遠いほど、速度が速ければ速いほど必要魔力が増える。


他にも色々と試してみた。

風を起こす魔法。

込める魔力により風力が変わる。

また風の塊を飛ばす事も出来た。

風の塊は相手をよろけさせたり、一瞬動きを止めさせたりと応用範囲も広い。

風と言う目に見えない攻撃は戦闘においてとても役立つと思う。

真空の刃、風の特性を最も活かした攻撃だ。

「風刃」

そう言って腕を振ると目に見えない攻撃が飛んでいく。

ザシュッ! 見えない空気の刃が木の枝を切り落とす。

うわ、すげっ。

人間の腕ほどもある大ぶりな枝を簡単に切り落としたぞ。

これは使える。 万が一にも獣と遭遇しても何とかなるかもしれない。


火の魔法と風の魔法を組み合わせると『乾燥』と言うドライヤーのような魔法が使えた。

これはきっと前世の知識があったから出来たんじゃないかと思う。

他には火の魔法と水の魔法で『温水』が出来た。

火の魔法に込める魔力を増やすと『温かいお湯』からどんどん温度を上げて『熱湯』になった。

さらに魔力を込めていって、込める魔力の力を大きさではなく温度を上げる方へと意識する。

すると蒼い炎、『蒼炎』が作れた。

そこには熱エネルギーが凝縮された青白く光り輝く火の球があった。

じりじりと肌を焦がすような熱量。

あちち。 いったい何℃くらいあるんだろう。

私は10m程離れた所に水の球を出し、そこに超高温になった『蒼炎』をぶつけてみた。


ドガァァァァァアン!!


耳をつんざくような轟音が辺り一面に鳴り響いた。

耳痛っ。 すんごい音。

あんなちょびっとの水でこんなすごい爆発が起こるのかよ。

ヤバい ヤバい ヤバい。

水蒸気爆発、まさかこれ程とは。

これは破壊力がすごすぎて逆に使いどころの難しい魔法だわ。


次は土魔法で簡易かまどを作ってみることにした。

煮炊きするにはかまどは絶対必要だし。

直径60㎝、高さ30㎝くらいの円筒形で中は中空、上は穴あき。

下には大きく口を開けた穴が開いていてそこに薪をくべると言うものだ。

地面に手を置いて簡易かまどをイメージしながら魔力を流すと地面から土がぐもももっと盛り上がって来た。

初めてだったので勝手が分からなくて少し時間が掛かってしまったが何とかかまどを作る事が出来た。

うむ、我ながら良い出来だ。

手で触ってみたらグニャリと変形して潰れた。

あれ? なんで?

強度が全然足らない。

うん? どうゆう事なんだろうか。

私は確かに()()簡易かまどをイメージしたハズなんだが……。

もう1回やってみる?

いやいや、待て待て。 よーく考えろ。

何が悪かった? 私は土でかまどを……土か!

そうか土をイメージしたから土で出来たかまどになったんだ。

ならば、土よりももっと硬い石とか岩をイメージすればいいはず。

んで、再チャレンジ。

地面に手を置き硬い硬い岩をイメージしながらかまどを作る。

ぐごごごご。 硬い岩がビキビキと上に伸びていってかまどの形になる。

やった、出来た。

これで今後は火を使う煮炊きも大丈夫だな。 鍋があればだけど……。

……早く鍋作ろう。


辺りを見まわしてかまどにくべる木の枝を探す。

女の子の細腕ではあまり重いのは運べないのでちょっと細めの乾燥した木の枝を探す。

あっちウロウロ、こっちでウロウロ。

きょろきょろと視線を動かしつつ木の枝を探す。

あるねー、良さそうなのがいっぱい。

それらをささっと集めてかまどの側に纏めて置いておく。

もう少し薪が欲しいかな。

そう思い探していると大人の太ももくらいありそうな丸太が転がっていた。

これいいんじゃないか?

生前の、男だった私なら頑張れば運べただろうが今の私はか弱い女の子なのだ。

あんな重そうな丸太を運ぶなど到底無理な注文だ。

と言う事で、木魔法を使って薪を作ってみることにした。

丸太に手を置いて薪をイメージしながら『製材』してみると、うん 出来ました。

しかも程よく乾燥したのが。 なんなのこの便利な魔法は。

ついでにお箸とまな板も作ってみた。

木で出来た素朴なお箸とまな板だけど中々いいんじゃなかろうか。



……っ!

あぃ、イタタタ、頭痛い。 眩暈がする。 気持ち悪い。

体もだるいし重くなってきた。


「ステー タ ス」


いきなりの体調不良で喋るのも辛かったが我慢して声を出しステータスを表示させてみると魔力が 8/500 になっていた。

魔力がほとんど残ってない?!

そうか、そうゆう事か、魔力切れで体調不良に陥ってたんだ。

これはしんどい。

回復するまで少し休もう。


異世界に来て実際に魔法を使ってみて検証するのが楽しかったのもあって遊び過ぎたのだ。

それで魔力切れを起こしたと。

反省反省。

私はまだ自衛能力が低いのだから無理はダメ。 油断もダメ。 慢心はもっとダメ。

気をつけなきゃ。


それからしばらくジッとして休んでいると体調が回復してきた。

思いのほか早く回復したなーと思ったけど、そう言えば女神の祝福 HP/MP 自動回復(小)があったんだっけ。

適度に回復した所で、かまどの周りをぐるっと囲むように土魔法で背の高い土壁を作った。


かまどに火をくべて暖を取りつつ異世界最初の夜はここで野営する事にした。

獣がやって来てないか周囲の様子を窺いつつ野営の準備をする。

空の青と夕焼け色が綺麗なグラデーションを作る薄明の刻。

こうゆうのは地球の夕焼けと変わらないんだな。

なんだろう、ちょっとホッとしたような気持ちと同時に寂寥たる思いに捉われる。

夜になり静寂の中、パチパチと薪が爆ぜる小さな音とリンリンと鳴く虫の声が聞こえる。

ゆらゆらと揺れる炎を眺めていると少し落ち着いてきたような気がする。

やはり焚き火と言うのはいいものだな、改めてそう思う。


塩辛い干し肉を齧りながら晩ごはんにする。

果物はリンゴに似たのやオレンジに似たの、マンゴーみたいなのや葡萄そっくりなのとかあった。

今夜のデザートはオレンジもどきにしてみる。

少し厚めの皮を剥いて果汁たっぷりの果肉を口に放り込む。

じゅわっと弾ける甘い果汁が口いっぱいに広がって幸せな気持ちになる。


「ん~♪」


美味しい、これ好きだな。


「はぁ~♪」


満足満足。 この世界の果物も美味しいんだなぁ、楽しみが出来たわ。


満天の星。


「すごいっ! こんなの見た事ないっ!」


まるで星が降ってくるみたい、圧倒される。


夜空を眺めていると私の意識がゆっくりと沈んでゆく。

こうして私の異世界最初の夜は更けてゆくのだった。




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