第64話 ブラ作ってみた
アルマさんの煽りに乗せられて大声を上げる男たち。
なーんでそんな楽しそうなのかな。
なんか今まで以上に声を掛けられそうで何だかなぁな気分。
私としては殿方とは積極的に関わり合いになろうとは思わないから、そっとしておいて欲しいのだけど。
「姫!」とか呼ばれて近寄られても ねぇ……。
ま、リズさんたちと居ればある程度は回避出来るからいいけど。
それにしてもアルマさんて皆を纏めると言うか煽ると言うか扇動すると言うか……
そうゆうのが上手いよね。
気がつくといつの間にか輪の中心に居るのよ。
男女関係なく人気があるの。
人望? 人徳? そんな感じ。
「オーイ、姫!」
なっ!!!
今ここでそれを言う痴れ者は誰よ!
拳をグーに握り右手を振り上げて
「ぶっ飛ばすよっ!」
勢い良く振り返ったらそこには
……っ!!!
「ギルマス?!」
ニヤリと笑うギルマスが居た。
ええっと、この右手はなにかなぁ……あはは。
私は挙げた右手に左手をそっと当てて手を下に下ろした。
なんでギルマスが姫を言うのよー。
貴方ここの管理者でしょ、総責任者でしょ。
そんな子供みたいな事してないでちゃんと仕事しなさいよー!
「おいおい嬢ちゃん、ぶっ飛ばすって穏やかじゃないな。」
まだ笑ってるし。
「ギルマスぅ~遊んでないで仕事して下さい。」
私はジト目でちょっとキツ目に言ったつもりだけど……たぶん効いてないね。
それはもう朗らかな笑顔で
「まぁそう怒るな。 ま、嬢ちゃんは怒っても可愛らしいけどな。」
っ!!
またそんな余計な事を言う!
べ 別に照れてなんかいないんだからね。
わ 私は言われ慣れてないだけよ。
このオヤジ何気に油断ならないわね。
「「「「そうそうオルカさんは怒っても可愛いんですよねー」」」」
そこ! いちいち反応しないの。
私たちがバカな事言い合ってる間にアルマさんはギルマスに近寄って何か話している。
「……そうですか。」
「まだ、先発の調査隊が戻って来とらんのだ。だから何も情報がなくてな。」
ああ、そうか。 アイザックさんの心配してたのか。
そりゃそうだ、愛する恋人の身を案ずるのは当たり前。
明るく振舞ってるけど心配に決まってるよね。
「所で嬢ちゃんたちは昨日話してた通りでいいんだな?」
「はい、私は北の草原と森を、リズさんたちは東の森を、アルマさんたちは領都付近の警戒に当たってくれます。」
「そうか、スマンが宜しく頼む。」
神妙な顔つきでギルマスが言う。
情報がない今の時点では楽観視出来る要素が何も無い為ギルマスも慎重にならざるを得ないのだ。
皆それが分かっているから情報集めが喫緊の最重要項目だ。
兎に角今は何でもいいから情報が欲しい段階。
「じゃ、行って来ます。」
「「私たちも。」」
「夕方またここで集合で情報交換ね。」
私を含めた6人は連れ立って東門の所まで一緒に歩く。
私だけなら辻馬車に乗るんだけど皆が一緒だとそうゆう訳にもいかないもんね。
東門を出てリズさんたちは街道に沿って真っ直ぐに森へと向かう。
アルマさんたちは領都の周辺を東から南へ反時計回りにぐるっと見回る予定みたい。
時間があればでいいので西の草原もついでに見れたら見て欲しいと頼む。
私は人のあまり行かない北の草原と北の森へ。
これで領都から遠い所から近い所まである程度満遍なくフォロー出来ると思う。
私たちはお互いに手を振り合って
「「「じゃ、また後で!」」」
そう言ってそれぞれの向かうべき方向へ動き出した。
私はお堀に沿って歩き出す。
一応『探知』と『警戒』はデフォで発動中。
時々なにか変わった物があったりすると『鑑定』したりしながら北の草原へと向かう。
この領都のお堀だけど、深さもさる事ながら幅がすごいあるのよね。
それこそ、戦争とかになっても各門に掛かっている橋を落とせば容易には領都の城壁の中へは入れないと思うくらいにはね。
領都の飲料水は井戸水を汲んでいるのでこのお堀の水は使っていない。
だって、お堀の水に毒とか入れられたらそれで一巻の終わりじゃない。
このお堀は飽くまで防衛の為に使用されている。
しばらく歩くと北門に着いた。
私たちは街道に沿って草原の中を歩く。
今日は北の森へは行く予定はないから草原の見晴らしの良い場所を探す。
普段はあまり人が居ないって聞いてたんだけど、今日は冒険者がちらほらと居るね。
ここじゃゆっくり出来ないかな、どこかいい場所ないかなー。
(くーちゃん・さくちゃん今日も狩りするでしょ?)
((はい、狩りのついでに見回りもしておこうかと。))
(そうして貰える助かるよ。 じゃ、何処か人の居ない安全な場所ってある?)
(でしたら、あちらは如何で御座いましょう。)
(いい場所見つかったんだ? 早速案内してくれる?)
(御意)
くーちゃんに連れられてやって来たのは、北の森の近くの草原のかなり端っこの方。
ここまで来ると西の領地のラザロムとメイデンウッドの両方までかなり近づく事になる。
よし、今日の物作りはここでしよう!
私は結界石使うから、くーちゃんとさくちゃんは
(安心して狩りを楽しんでおいで。)
(では行って参ります。)
(行って来ます、沢山狩って来ますね!)
二人は楽しそうに狩りに向かった。
うんうん、私の従魔は素直で可愛いのう。
あの子たちいつもシレッととんでもない魔物を狩って来るからねぇ。
今日はどんな魔物を狩ってくるのやら、楽しみなような怖いような。
実はさっきからちょっと気になってる事があるんだけど、それは後でくーちゃんとさくちゃんが戻って来た時に確認でいいかな。
今は作りたかった物を作らないとね。
まずはテーブルと椅子を用意する。
それから魔動コンロを出してティーポットに水魔法で水を入れて火に掛けて、コップを出してお茶の準備をする。
今日作る予定してたのは、スニーカー・植物油ベースの石鹸とシャンプー・ブラとショーツだったよね。
じゃ、まずは石鹸とシャンプーにしますか。
材料はストレージにあるし、更に前世の知識があるから魔力消費も比較的少なくて済むんじゃないかな。
香りはハーブと花の香り。
花は森の中で咲いてたのを大量に確保してあるからね。
シャンプーは汚れを落ち易くする為にはスクラブが入っていた方がいいよね。
うん、入れておこう。
入れ物は素焼きで、差し口のない醤油差しみたいなのでいいかな。
要は蓋が出来ればいいだけだから。
細かい所まで良く分からなくても大体でOK。
あとは『創造魔法』さんが何とかしてくれるからね。
と言う訳でストレージ内で『創造魔法』を展開、石鹸はハーブとフローラルの各種10個づつくらい、シャンプーは取り合えずハーブとフローラルの各5本の合計10本ほど。
無くなったらまた作ればいいしね。
さして魔力も消費せずに思った物が出来た。
これは楽だったね。
さぁ、この調子でドンドンいこう。
あ、お茶をクピッと。
はー美味し。
次はスニーカーいこうか。
スニーカーはちと悩むね。
イメージとしては、仕事用には革と布のコンビでくるぶしまで覆って保護してくれるトレッキングシューズっぽいのと、それ以外の時用に普段履きに使える布製のカジュアルなの。
どちらも衝撃吸収用と底の部分をファクチスで代用。
底の部分はちゃんとギザギザの滑り止め付き。
靴紐の両端はファクチスでくるりと巻いてある。
紐を通す穴は、トレッキングシューズっぽい方は金属製の通し穴で、普段履きの方は淵を刺繍する。
トレッキングシューズっぽいのは踵部分と足先は固めのファクチスで保護してあって、布は分厚く柔らかいので。
普段履きのは軽く歩きやすい仕様で踵部分は固めの布で分厚くしてあるタイプ。
色は仕事用のは無難に茶色ベースにして、でも差し色で赤とか入ってるとお洒落かも。
普段履きの方は黒にオレンジ色のライン、白に紫色のラインなんか入ってるとカッコイイんじゃないかな。
ま、個人的にはだけど。
他にはワンピース用にパンプスなんかもあったらいいかな。
色はどうしよう。
無難に黒とかベージュでいいか。
取り合えずあればいいよね、あれば。
そんな感じで石鹸同様ストレージ内で『創造魔法』を展開する。
材料があるので魔力バカ喰いって事もなく作る事が出来た。
あー今日は順調だなー。
休憩とか特にいらないや。
勢いついでにこのまま下着もやっちゃおうか。
やっとブラが作れるよ。
ブラがないもんだから胸がふよんふよん揺れてねぇ。
不安定だし走ると痛いしさ。
前世の私には只の目の保養だったのに、いざ自分がその立場になってみるとこんなにも大変だったのかってね。
女の子ってマジすごいわ、ほんと。
尊敬だよ。
ってか、今は私も女の子なんだけど、どこか自分じゃないみたいな他人事みたいな感じだったりしてね。
ところでブラってどうゆうのがイイの?
私元男だから良く分かんなくて。
今の私は胸大きいからフルカップで保持力高めのがいいんだよね?
それでいてお洒落、レースとか使ってゴージャス仕様とかさ。
そもそもの話、自分のトップとアンダーが分からない。
だってメージャーがないんだもん。
仮にメージャーがあってもこの世界にはブラがないんだから測る意味もない。
胸の形って人それぞれ違うよね?
私自分の胸の形ってイマイチ良く知らない、自分のなのにね。
あと致命的なのは実際にブラを着けた事なんかない!
ま、これは当たり前なんだけどね。
前世でブラ着けた事あったらそれこそ別の意味ですんごいわ。
流石にそうゆう趣味ではなかったので、ルカの下着を見た事あるくらいね。
取り合えずまずは作ってみないと分かんないね。
『分析』さんにお願いして私の身体を隅々まで計測して貰う。
これが今後の全てのベンチマークとなるから。
自分の中のイメージのブラを思い浮かべる。
こんな感じだったかな?
まずは1回『創造魔法』さんにお任せでやってみよう。
お、うおっ。
意外と魔力要った感がある。
それでも難なく作れたみたい。
ストレージから取り出して見てみると。
色はまだ付けてなくて生成り色で樹脂ワイヤー入りでサイドにも入ってる。
肩紐は後ろで調整出来るようになってて、後ろホックは3段3調節。
うーん、何て言うか……デザインが残念過ぎる。
これが私のイメージだったとは……。
なんかザ・オバちゃん!て感じって言えば分かる?
あんな感じ、色・デザイン共に実用性重視でお洒落感全くなし
ま、まだ最初の1回目だから。
デザインは後でまた考え直すとして、まずは着け心地を確かめてみないと。
と、言う訳で試着タイムです。
パチパチパチー。
結界石使ってるから万が一は無いので、土魔法で四方を3m程の高さの壁を作ればいいかな。
そう言えば久しぶりに土魔法使うなー。
ウーズの森に居た頃は良く土壁作ってたもんね。
地面に手を置いて魔力を流していくとグモモモモッと壁がせり上がっていき立派な土壁が出来上がる。
脱いだ服を掛ける突起を壁に作る。
私の『探知』さんには人の反応はないね、オッケーオッケー。
『探知』さんと『警戒』さんには常に稼動して貰わないとね。
けど……壁があるとは言え真昼間に服を脱いで裸になるって恥ずかしいね。
上を見れば青空が見える。
それなのに一人服を脱ぎ上半身裸になる美少女。
ヤバすぎでしょ!
私ただの変態じゃん。
うわー、急にすっごく恥ずかしくなって来た。
でもこれ着けてみないと分からないもんね。
迷うー、けど迷う。
すっごく迷う。
ドキドキするよ。
意を決してシャツを脱ぐ。
そのままの勢いでキャミも脱いでしまう。
乙女は勢いが肝心よ、女は度胸!
ぷるん。
重力に逆らうようにまろび出る魅惑の双丘。
シミひとつない神秘の頂。
はぁぁぁ、やっぱ綺麗だわ。
惚れ惚れするよ。
って、見蕩れてる場合じゃない!
端から見たらただの痴女じゃないの。
こんなの誰かに見られたら恥ずかしくて死んじゃう。
さっさとブラの着け心地を確かめなきゃ。
ブラの正しい付け方は……知らん。
だって私元男だもん、ブラなんて着けた事ないもん。
確か……ルカの言うには、
前屈みになって胸の下のラインにワイヤーを合わせてカップの中に胸を入れて、後ろのホックを止めるのよね?
次にカップの肩紐の付け根を少し浮かせてバスト全体を持ち上げてバストを納めたら肩紐を調節する。
それを左右それぞれやる。
大体合ってるよね?
多分大丈夫ような気がする。
特に痛くは……ないね。
窮屈な感じもなしと。
腕を動かしてみる。
身体を捻ってみる。
もしかして良いんじゃない?
一発でピッタリなのを作れちゃうんだもん、魔法ってすごいよねホント。
軽くジャンプしてみる。
すごいっ。
今までと違って揺れが少ない!
身体を動かしても支えられてる感があって今までと安心感が全然違う。
あ、これイイわ。
うん、デザイン以外はすっごく良いよ♪
もう今日はこのままこれ着けてようっと。
なんか急にすっごいウキウキしてきたよ。
新しい下着ってやっぱテンション上がるね。
いいベースが出来たので次はお洒落なデザインのを考えてみよう!