第6話 『鑑定』って微妙だったりする?
ストレージから干し肉と果物を取り出す。
手を合わせて「いただきます。」
スキルってのがどう言う物なのか確かめる意味で『鑑定』をしてみる。
干し肉を『鑑定』すると、干し肉の上に重なるように『干し肉』と文字が出た。
……そのまんまやん。
なんの干し肉なのか知りたいのに肝心の情報が分からない。
果物を『鑑定』してみたが同じように『果実』と表示された。
ちなみに地面を『鑑定』してみると『土』と出た……。
なんなのか分からない雑草を『鑑定』すれば『草』と出る。
なんなのこれ。
えーっと、もしかして私やらかした?
『鑑定』スキルって実はあんま良くなかったりする?
LV1だから?
LVが低いと相応に効果も低いのかもしれない。
そこらに落ちてる石を『鑑定』したら『石』と出た。
もう何も言うまい。
これは地道に『鑑定』せよと神様は仰せなのだ。
干し肉を齧りながら……硬いな、この干し肉。しかもかなり塩辛い……目についた物を片っ端から『鑑定』だ。
森の中に向かって『鑑定』してみたら
『木』『木』『木』『木』『木』『木』『木』『木』『木』『木』
『草』『草』『草』『草』『草』『草』『草』『草』『草』『草』
『石』『石』『石』『石』『石』『石』『石』『石』『石』『石』
頭痛っ。
結果、有意な情報は得られず。
ま、なんだ。 これから頑張ればいいんだから。
リンゴに似た果物をナイフで半分に切る。
見た目はまんまリンゴ。
齧ってみるとちょっと酸味が強いがそれなりに甘さもある。
なにより瑞々しくて塩辛い干し肉を食べた後には口の中がさっぱりとして良い。
干し肉を少しとリンゴに似た果物を食べ終えて手を合わせて
「ごちそうさまでした。うん、美味しかった。」
可愛らしい私の声が聞こえる。
異世界の食べ物も悪くないな。
こっち、異世界に来て最初の食事を摂った私の率直な気持ちだ。
小腹も満たされたので持ち物の確認などを。
一旦ストレージから取り出して地面に並べて順番に『鑑定』してみる。
ぴっちりとした革製のパンツ 『パンツ』
ごわごわした麻糸のような厚手のパンツ 『パンツ』
ごわごわした厚手の生成り色の服&濃い茶色の外套 『シャツ』、『外套』
手触りの悪い生成り色の下着 『下着』
くるぶしまで隠れる革製のショートブーツ 『ブーツ』
指先の開いた革製の手袋 『グローブ』
ごわごわした布 『布』
テント 『テント』
毛布 『毛布』
魔石 『魔石』
木で出来た皿 『皿』
かなり残念な結果だ。 まぁ分かってたけどな。
『鑑定』した中で気になる物がいくつかあった。
1つ目、『下着』。
これがダッサいの。 とにかくダサい。
これがこっちの世界の普通なのかも知れないけどちょっと ね。
この世界にはまだブラはないようで、上はごわごわした手触りの悪いキャミみたいなの。
下に至ってはカボチャパンツだったりする。
ゴムが無いからか紐で縛るタイプのやつ。
いや、誰かに見せるとかある訳じゃないけどさ、って言うか男に見られるとか考えただけでゾッとするわ。
けどさ、そうじゃないよな。 下着は見えないお洒落じゃないか。
もうちょっと何とかならなかったのか?
ない物は仕方ない?
いやいや、それは違う。
ないなら作ればいいんだよ!
折角『創造魔法』があるんだから活用しない手はない。
材料が手に入ったら、本能の赴くまま可愛いのからエロエロなのまで多種多様な下着を作るんだ!
私は手をギュッと握り込み拳を作り、可愛らしく「頑張るぞ」のポーズをする。
2つ目、『テント』。
これは嬉しい。 まだ広げてないので分からないがまぁまぁ大きそうなのがまた良い。
ただ、ここは異世界。
地球の、それも平和な日本の常識が通じるか分からないのだ。
日本なら女の子1人でソロキャンもアリだろうけど日本以外の外国ならナシだ。
ましてやここは異世界である、気をつけて気をつけ過ぎる事はない。
油断してテントの中で熟睡してしまって、獣に襲われたりでもしたらたまったもんじゃない。
悪意を持った人間、盗賊とかに狙われたりしたら最悪だもんな。
だから勿体ないけどテントは暫くは使わないでおこうと思う。
3つ目、『魔石』。
私の握りこぶしくらいの大きさで、薄緑色の透明な綺麗な魔石。
これは何の用途に使うんだ?
魔石とあるから魔力の篭った石ってのは分かるんだが??
下手の考え休むに似たり。
『鑑定』のレベルが上がれば何か分かるだろう。 それまで一旦保留だな。
持ち物の中に調理道具がひとつもなかったのに気が付いた。
まな板は木で作ればいいし、水を飲むコップなんかも木でいいだろう。
問題はその木材をどうやって調達するかなんだが、私が持っている刃物は腰に下げているナイフのみ。
これで木を切れと?
どう考えても無理。 ならばどうするか。
木材を伐採出来る道具を作ればいい。 その為には材料となる金属が必要だ。
包丁や鍋と言った調理道具も同じく金属が要る。
材料があれば『創造魔法』で調理器具や武器やその他金属製品とか何とかなる可能性がある。
では、その金属 例えば鉄鉱石とか銅とか鉛とか、あるかどうか分からないがあるならボーキサイトとかどうやって採掘する?
そもそも論としてどうやって鉱脈を見つける?
あ、砂鉄なら製錬しなくていいからもしかしたらイケるかも。
この世界が日本と同じように砂鉄溢れる世界だといいんだが。
砂鉄の採取って事ならやっぱ川だろう。 ならば川を探そう。
川と言う水場が見つかれば水浴びも出来るようになる。
目覚めてからまだ1日も経ってないがお風呂にも入らず水浴びも無しなど日本人の私には到底許容できない。
日本人の綺麗好きを舐めたらイカンよ。
ごわごわのタオルも、替えの下着もある。
私の衛生面の充実と言う事を考えても水場は確保したいものだ。
今いるこの場所は安全なようだからここを拠点に活動範囲を拡げていって川を探せばいい。
ただ、すぐに動くのは早計だとも思う。
衣食住の内、衣と食は押さえた。 住は今はまだ使わないがテントがある。
だったらなぜ? なぜすぐ行動に移さない?
それは私がスキルや魔法の事を何も知らないから。
スキルや魔法の検証と言うか、練習?訓練?をしたいなと。
いや、だって魔法だよ。 魔法があるんだよ。
だったら試してみたいよな。
異世界物の定番! 魔法をドッカンドッカン撃ちまくるとか憧れない?
ファイヤー何ちゃらとか、アイス何ちゃらとかさ。
ここは異世界。 獣とか襲ってきたら戦わなきゃいけないだろ?
ところが今の私はか弱い女の子なんだよ。 カラダを張った戦闘なんてとても無理。
だから自衛の為にも魔法は必須って訳。
と、ゆう事で 今からスキルや魔法の試し撃ち……もとい、検証をします。
んふっ♪