第55話 薬草って安いのね
街に戻ったあと買い物を楽しんだ私は冒険者ギルドに向かった。
夕方という事もあって通りは沢山の人が行きかっている。
冒険者ギルドの中に入ると帰還した冒険者たちが依頼達成報告や買取依頼などでやって来ていて、窓口は長蛇の列となっている。
メイジーさんやもう一人の職員さんも忙しそうにしてる。
もう一人見た事ない男の人も窓口に居るね。
朝と夕方の一番忙しい時間帯だから職員さん総動員だ。
うーん、何かこんな状況で並ぶのも申し訳ない気もするんだけどどうしよう。
私は薬草の買取だけだからすぐ済むとは思うんだけどね。
薬草採取の値段は、薬草10本の束1つで銅貨5枚。
安っ!
ほんとに初心者向け。
子供でも出来るようになってるんだね。
勿論私も初心者だから薬草採取からよ。
私はストレージにたんまりと入ってるからね。
全部出したら大変な事になるからそんな事はしないけど、10本の束を10個出すくらいなら問題ないでしょ。
それでも大銅貨5枚だもん。
労力の割りに稼ぎが少ないよね。
まぁその分危険度もぐっと下がって安全ではあるんだけど。
みんな大変な思いをして新人時代を過ごしてたんだなぁ。
そう思ったら私は恵まれすぎだね。
うん、くーちゃん・さくちゃんに感謝ね。
そんな事を考えてたらポンポンと肩を叩かれた。
誰だろうと思って振り返るとリズさんたちが居た。
「お疲れさま。 薬草採取はどうだった?」
「うん、大猟。 くーちゃんたちが魔物をいっぱい狩って来てくれてね、すんごかった♪」
私はとびっきりの笑顔でそう答えると
「薬草採取よね? なんで魔物なの。」
「何か美味しいの狩れた? オークは? オークは?」
メロディちゃんオーク好きねー。
オーク居たよ~3体も。
それと初めて見たんだけどハイ・オークも居たの。
「「はぁ? ハイ・オーク?」」
「うん、さくちゃんが狩ってくれたんだよー、エライでしょ。」
「エッヘン。」
「なんでオルカさんが得意気な顔してんですかぁ、もう。」
「ハイ・オークを狩るスライムって……何なの一体。」
「そりゃ、オルカさんの従魔だもん、従魔も規格外に決まってるよ。」
うわー、酷い言い草だぁ。
何か毎回ディスられてるような気がするよ。
さくちゃんみよんみよんしてるけど、今のは褒められてないからね。
あ、私の番が来た。
窓口はメイジーさんだ。
私は右手をちょこんと胸の横辺りまであげて手を振った。
メイジーさんも笑う。
可愛いお姉さんの笑顔は良いねぇ。
じゃあちょっと薬草の買取お願いして来るね。
薬草10本の束を10個で〆て大銅貨5枚。
少なっ。
メイジーさんも「あれ?」って感じで意外そうな顔してこっちを見てるけど、
「今日はこれだけで十分です。 ホントはもっと持ってるんですけど出しちゃうとおお事になりそうだから。」
「はぁ、宜しいのですか? こちらは別に構いませんが……。」
ううん、いいのいいの。
だって本当にとんでもない量なんだもの。
全部出したらこの部屋全部薬草で埋もれちゃうかも……。
だからちょっとづつ出してくつもり。
あ、それかポーションにして買取して貰うって手もあるわね。
それにしたって相当な量になるのは間違いないから出すタイミングが難しいか。
取り合えず買取は終わったのでリズさんたちの買取が済むのを待つ事にする。
リズさんたちは小さめの獣を狩ってた。
「まぁ、今日の日当分くらいは出たかな。 今日はちょっと稼ぎがアレだったね。」
「明日はどうする? オルカさんと一緒に行動する?」
「オルカさんは明日はどうするの?」
「私は明日は草原の方へピクニックにでも行こうかなって。」
「何よそれー、ちゃんと仕事しなさいよー。」
って、リズさんとメロディちゃんがコロコロと笑った。
二人とも可愛いわ~。
癒される。
やっぱり可愛い子の笑顔って最高ね。
けど明日は別々の方がいいかな。
まだまだ作りたい物とか一杯あるし、第一『創造魔法』使ってるとこ見られたらヤバそうだもん。
「そっかー、草原かぁ。草原は微妙だねー。」
「草原ってスライムか兎くらいしか居ないしねぇ。」
「そうそう、見つかればオイシイけど見つけるのが大変って言うね。」
リズさんとメロディちゃんが相談している。
スライムは上手く捕まえられると金額的にオイシイけど、見つけるのが大変。
兎も然り。
だったらまだ森の方がマシって事なんだろうね。
確かに森は魔物が多いから狩りしてても楽しいもんね。
「んー、ゴメン。 やっぱ明日も森にする。」
「そう? 分かった。」
でも朝は一回ギルドに来るよね?
また明日の朝会いましょ。
じゃね、バイバイ。
私たちはお互いに手を振り合って別れた。
あ、リズさんたちのお家の場所聞くの忘れちゃった。
ま、いっか。 明日聞こう。
夕方3の鐘の少し前くらいに宿屋に着いた。
「ただいま戻りました。」
「はい、お帰りなさい。 みんなが待ってるわよ。」
なんで? 特に約束とかしてないけど?
くーちゃんたちを厩舎に預けてから取り急ぎ食堂へ行ってみる。
「みんなー、オルカさんが帰って来たよー。 果実水欲しい人は注文してねー。 1杯大銅貨3枚だからね。」
あ、そうゆう事ですか。
了解しました。
果物ならいっぱい持ってるから色んなの作れるよ。
ちょっと割愛。
だって毎日の事だよ?
そうそう変わった事ばっかりある訳ないじゃない。
夕飯を頂いてお風呂にする。
お風呂ではキャッキャッウフフのし過ぎに注意しながら入った。
特ににゅるにゅるは要注意。
あれね、やり過ぎると心と身体が火照っちゃって、一度点いた火を鎮めるのが大変なのよ。
だから程ほどに。
まぁ、ちょっとくらいはするよ。
実験は毎日の地道な積み重ねが大事だからね。
うふっ、今夜はあの下着穿いて……
あ、いけない妄想が暴走だわ。
お楽しみは後にして、まずは物作りから。
お風呂から上がって果実水飲んだら早々に部屋に戻る。
さて、まずは一口の携帯型魔動コンロを作ろう。
これは『鑑定』『分析』でこっちの世界の魔動コンロの設計図は入手済みだから私の考える設計図もすぐ出来るね。
材料は全部ストレージに入ってるし、必要なスキルもあるからね、あとは多少の魔力を引き換えにして作るだけ。
イメージは前世のカセットコンロのまんまあのイメージで。
魔石がエネルギーを溜めておく所、火の魔法陣組み込みで直火で火力調節機能付き。
ちゃんと五徳があってフライパンを煽る事が出来る。
これ実は結構大事。
IHコンロだとコンロ上面とフライパンが接してないと熱が伝わらない。
けど直火なら少し離してもちゃんと熱が伝わってくれる。
特にチャーハンのように煽る動作をする場合IHでは上手くいかないのよね。
これは魔動コンロも一緒。
原理は魔動コンロでも直火で加熱ならちゃんと熱が伝わる。
だから私は直火派。
『創造魔法』さんお願いね。
ん~
ストレージ内で組み上がって行く感覚がする。
あー、どうも出来たっぽい?
ストレージから取り出すと私のイメージ通りの、前世のカセットコントまんまのが出来ていた。
素晴らしい!
流石『創造魔法』はチートね。
魔石に魔力を満タンまで補充して動作確認をしてみる。
カチン。
スイッチを回すとポワッと火がつく。
スイッチを回す位置によって火の加減が変わるのが確認出来た。
うんうん、良い出来ね。
これは使い勝手が良いね。
これから活躍してくれそうな予感。
携帯型魔動コンロをストレージに仕舞って次の作業に取り掛かる。
次はクズ魔石を使った1回こっきりの使い切り型結界アクセサリーを作ろうと思うの。
イメージとしては、ブレスレットタイプのと、ペンダントトップ型の2種類作ろうかなって思ってる。
アクセサリーには小さい魔石が組み込まれてて、生命の危機に瀕するような攻撃が加えられそうになると結界が発動して約10分程持続して魔石は壊れて無くなってしまう。
魔石は壊れたら新たに魔法陣を組み込んだ魔石を填め込めば結界型アクセサリーとして使えるし、魔石が無くなった場所に普通に宝石類や綺麗な石を入れるだけでもアクセサリーとして使える。
これは私の分の他に、リズさん・メロディちゃん・アルマさん・カーリーさん・ベルさんの分を考えている。
リズさんたち、アルマさんたちには良くして貰ってるしお世話になったからね。
だからお礼も兼ねてプレゼントしようかと思ってね。
私のは皆のとは別にオープンハート型のネックレス仕様で可愛いらしい魔石3連仕様にデザインしたのを作った。
これは3回まで攻撃を受けても大丈夫っていうやつね。
他に一粒型のイヤリングタイプのや、バレッタ型の結界アクセサリーとか。
バレッタ型のは小さなお花を連ねてあしらった様なデザインのやシダみたいな小さな葉っぱを並べたようなのとか、リボンを付けたタイプのも作った。
うん、我ながら上手く出来た♪
みんな喜んでくれるかな?
喜んでくれるといいな♪
ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン
5の鐘が鳴ってる。
明日も色々と沢山作る予定だからもう寝なきゃ。
では……
いそいそ
ワクワク
消音石 オン。
結界石 オン。
今夜のオカズは………………
あんっ。
んん~っ!!
ッゥゥゥゥ~~~ッ!!!!!
ちゅんちゅん。
3の鐘で目が覚める
朝ね。
昨夜も凄かった♪
ヤバいよ、私えっちな女の子になっちゃった。
あれは止められないよ。
だってホントに凄いんだもん。
泉って溢れちゃうんだね、自分でもビックリだよ。
でもね、いくらえっちな私でも6の鐘聞いた時には流石にヤメて寝たわよ。
おかげで今日は昨日よりは随分と体調いいよ。
消音石と結界石に魔力を補充して、お米を創ってストレージに仕舞っておく。
下へ降りて食堂へ行くと今朝は……あ、ちゃんと人が居る。
まだ降りて来てない人も居るけど大体のお姉さんは朝食食べに来てる。
まぁね、流石に連日連夜オールしてたら仕事どころじゃなくなるもんね。
一部まだ起きて来てないお姉さんが居るけどそれは私のせいではないから。
そこは自己責任よね。
朝食を頂いて部屋に戻って仕事服(冒険者の恰好)に着替えて、早速昨日作ったリュックをと思ったけど、思いとどまった。
なぜか?
うん、まだ特許の登録をしてないから。
登録も済んでない内からリュックを背負って、それで真似されて先に特許取られたら目も当てられないもんね。
だから今日はリュックは使わない。
使うのは特許を取ってから。
それにまだまだ作りたい物もあるからね。
それらの設計図を書いて特許を取ったら自分でも使うようにするつもり。
ストレージに私の分も含めたみんなの分の結界型アクセサリーをお片づけ。
みんなでお揃い。
なんかイイじゃない、こうゆうの。
準備が出来た所でくーちゃんたちの朝ごはんをあげに厩舎に向かう。
「くーちゃん・さくちゃん、おはよう。」
((おはようございます。))
くーちゃんは尻尾をばっさばっさと振ってるし、さくちゃんはみよんみよんして喜んでくれてる。
すぐ朝ごはんにするね。
どのくらい食べる?
昨日昼間に沢山食べたから今朝は少しでいい?
ほんとに? 大丈夫? お腹空かない?
お腹空いたら狩りしながら食べるから大丈夫って?
そう? それならいいけど。
じゃ、それ食べたらギルドに行こっか。
まだ時間あるからゆっくり食べてていいからね。
慌てなくていいよ。
作りたい物いっぱいあるから、今日も張り切って作るよー。