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第52話 お薬を作ろう ①

食事時間だと言うのに誰も降りて来ないねー。

どうなってんだろ。

カミラさんは……けっこう寝不足みたいね、ふら付いてる。

目の下にクマ作って朝からお仕事お疲れさまです。

てか、原因の一端は私だからね、ホントごめんなさい。


暫くするとポツリポツリと降りて来た。

みんな目の下にクマを作ってる。

ここはクマ牧場か!


ふわぁ~


っ!


あくびが止まらないみたいだね。

みんな眠そうにしてる。

うん、今夜はお風呂では大人しくしよう!

お姉さま方とは致さないように細心の注意で持って対処せねば。

ここで隙を見せるとなし崩し的に昨日のようになっちゃう恐れがあるからね。


「オルカさん、おはよう。」


「おはよう、大丈夫?」


アルマさんたちが降りて来たけどもうふらふらじゃない。

そんなんでホントに大丈夫?

3人ともクマ出来て酷い事になってるよ。

今日休みなんでしょ? ゆっくり身体休めたら?

その方がいいよ。


「オルちゃんが添い寝してくれたらすぐ治る。」


「ダメ。」


カーリーさんもメゲない人ね。

ダメよ。


「悪い子は嫌いになっちゃうよ。」


「それはイヤ。」


「じゃあ、いい子にしてなさい。」


「分かった。」


「カーリーってば、子供か。」


ほら、アルマさんやベルさんに笑われてるじゃない。



朝ごはん食べたから私はもう行くね。

冒険者ギルドでリズさんたちと待ち合わせしてるから。

じゃあね、明日ギルドで会いましょう。

そう言って食堂を後にしてくーちゃんたちの居る厩舎へ向かった。

くーちゃん・さくちゃんがお腹空かせて待ってるかも知れないもんね。

足早に向かうと、尻尾をばっさばっさと振るくーちゃんと、みよんみよんと伸び縮みするさくちゃんが嬉しそうに迎えてくれた。

ああ、やっぱりこの子たちは私の癒しだよ。

すぐごはんにするね。


(主様なにやらお疲れのようでございますね。あまり無理はなさいませぬように。)

(ご主人様大丈夫? 今日はお仕事休む?)


うっ、言えない。

こんなに親身になって心配してくれてるのに、オールで検証(むふふ)してたなんて口が裂けても言えない。

斯くなる上は、アルマさんたちとお喋りしてたって事にして誤魔化そう。


(大丈夫よ、お喋りが楽しくって時間が経つのも忘れちゃってね。 気が付いたら空が明るくなってたの。)


アルマさん、ごめんよ。

この埋め合わせはこっそりお返しするから。


じゃ、私お仕事服(冒険者の格好)に着替えてくるね。

ちょっと待ってて、そしたらギルドに行くから。

部屋に戻ってワンピースを脱ぎながらふと思った。

私昨日はお買い物が楽しすぎて冒険者用の服とかパンツとか買うの忘れてた。

もう少し女性らしいのってあるハズだから買わなきゃって思ってたのに。

仕方ないね、また今度にするか自分で作るかだね。


くーちゃん・さくちゃんお待たせ。

さ、行こうか。 リズさんたちが待ってるかも知れないし。


通りを歩いてギルドの前に着くと沢山の冒険者が出たり入ったりしている。

朝のこの時間はどうしても混む時間帯だからね、仕方ないね。

ドアを開けて中に入ると一斉に冒険者たちから視線を向けられる。

あー、やっぱりこの瞬間は慣れないなぁ。

なーんかイヤな感じだよね。

薄ら笑いと言うかニヤニヤ笑いと言うか。

男たちのいやらしい視線が気になるわー。


「おい、見てみろ。 今噂のおっぱいテイマーだぞ。」

「まだ新人なんだろ? 俺たちが教えてやろうか?」


おっぱいテイマーって何よ。

そんな変な二つ名なんか要らないよ。

ほんとに男どもって懲りないよね。

そんな事ばっかり言ってるとくーちゃんたちが黙ってないよ。


(主様、ひと噛みして参りましょうか?)

(葛の葉姉さま、それは名案です。)


気持ちは嬉しいけど無用のトラブルはヤメようね。

くーちゃんたちの気配を察してか遠巻きに見てるだけで誰も近寄って来ない、ううん、来れないと言う方が正しいか。


グルルルル。


くーちゃんが低い声で軽く威嚇してる。

あー、相手は只の人間なんだから、そのくらいでいいよ。

どんな依頼があるのか確かめに奥に向かってると


「おーい、オルカさん。 こっちこっち。」


あ、リズさんたちだ。


「おはよう。 遅れちゃったゴメンなさい。」

「もー、そんなの気にしなくていいのに。」


気にしなくていいって言われても、そんな訳にいかないじゃない。

なんか朝から変なのに絡まれちゃってね。 時間くっちゃった。


「あー居る居る、ゴミみたいのが。」


リズさんの目が笑ってない、マジもんの目だ。

リズさんホントにその手の男には容赦ないもんね。

それはそうと、リズさんたちは今日はどうするの?

私はほら、初心者冒険者だから。


「初心者向けの常時依頼の薬草採取にしようかなって思ってる。」


「初心者ねぇ、私たちより強いくせに?」

「ホントですよ、オルカさんホブゴブリンを魔法一閃だったじゃないですか。」


「そんな事もあったわね、懐かしいわ。若い頃の話よ。ふぇっふぇっふぇっ。」


「若い頃って……なんでお婆ちゃんなんですか、もう!」


ぷ。

あはは、気が置けないリズさんたちとの会話はやっぱり楽しいな。

ほんとこうゆうのいいよね。

リズさんたちなら一緒に住んでもいいかなって思うもん。


「なんか今日はいい依頼が無くってねぇ。」

「だよねー、森にでも行って適当に狩りでもして買取して貰う?」


薬草採取はしないの?って聞いたら、メンドイから嫌って。

初心者の頃って薬草採取くらいしか出来ないから散々採取やって飽きたんだって。

一応私も森へは行くけど、今日は別行動だね。

夕方またここで会おうね。


「くーちゃん・さくちゃん行こっか。」


草原に行くなら南門、森に入るなら東門、森自体は東から北側一帯にかけて広がってるから一旦東門から出て北の森でもいいんだけどちょっと遠くなるのが難点かな。

でも普通の冒険者は効率重視だから東の森へは行くけど、そのまま北の森までは行かないから北の森は人が少なくて穴場なんだそうよ。

で、ギルドから各門へはそこそこ離れてるのよね。

門の所まで歩きで行くのが普通の冒険者なんだけど、高ランクで稼いでる冒険者だと辻馬車に乗ったりするみたいね。

私は……昨日オールでむふふして寝不足だから馬車にしよっかな。 エヘッ。


「オジさん、東門までお願いね。」


コトコトと揺られて気持ち良くなってうつらうつら。

はっ。

いけない、寝ちゃうとこだった。


(お可愛いらしい寝顔でございましたよ。)

(ご主人様、寝顔も天使なの。)


(ヤメて、恥ずかしい。 んもう。)


馬車が東門近くに到着する。

うわー辻馬車がいっぱい停まってる。

門の側って出てゆく人を乗せて来た馬車がそのまま残って、入って来る人を待っている。

駅に停まってるタクシーと全く同じだね。


「オジさん、ありがとう。」


そう言って馬車を降りて歩いて東門をくぐる。

門を出る時は市民カードを見せるだけで良かった。

これは楽でいいね。


「見ない顔だな、新人さんか。 気を付けてな、あんま無理するんじゃないぞ。 まだイケるはもう限界の合図だぞ。」


門番さんが何気に優しい。

へーこっちの世界はバカばっかりかと思ってたらまともな男性も居るんだね。


「はい、心配して下さってありがとうございます。」


(でも私にはくーちゃんたちが居るから大丈夫、だよね?)


(勿論でございます。)

(当然です。)


ふふ、ありがとう。思わずニッコリ。


それにしても人が多いね。

森の浅い所は年若い初心者の子供冒険者たちが薬草採取してる。

この子たちの稼ぎを奪うなんて可哀相よね。

そう思って森の中へ少し入って行く。

周りの冒険者たちの顔ぶれが変わり、大人の、それもそれなりのいっぱしの冒険者風の若者が増えたような気がする。

森の中程に居る冒険者たちは大抵獲物を探して狩りをしている。

私の探知さんには森の中のそこかしこに反応を捉える。

複数人でのパーティーが多いけど、たまにソロで動いてる人も居るね。

んー、なんか落ち着かないな。


(ねー、くーちゃん。 人の居ない所どこかない? 探せる?)

(私の探知よりくーちゃんの探知の方が性能いいからね、お願い出来る?)


(御意。お任せを!)


さくちゃんを背に乗せくーちゃんが動き出す。

私も身体強化をしつつくーちゃんについて行く。

くーちゃんの探知って一体どの辺りまで届くんだろうか?

私の探知LV7は大体半径120mくらいまでなんだけど、くーちゃんの探知は確実に私より遠くまで探れてるんだよね。

すごいね、ホント。

え? 私は探知持ってないって?

さくちゃんはまだ生まれたばっかだから仕方ないよ。

でも周りを探るようにしてると探知スキルが生えるかもよ? 分からないけど。

けっこう走り回ってるけど人の居ない所って中々ないもんだねぇ。

あ、あの辺誰も居ないよ。


(ね、あそこはどう? なにか問題ありそう?)


(森の深い所なので強い魔物が居る可能性はございますが、周りには特に気になる反応はございませんね。)


だよね、私の探知でも一緒だ。

なら、そこにしよっか。

少しばかり開けたそこで今日の作業をするとしようかな。

何をするのかって?

ふふーん、あれよあれ。

前々から色々と作りたい物があったのよ。

それで昨日は材料もたんまりと買い込んだ事だし今日はガッツリと製作に勤しもうかなって。

今の私の規格外の魔力量と『創造魔法』があれば力技で何とかなるんじゃないかと思ってね。


まずはHP回復用のポーションを作ろうと思う。

なぜかって言うとバカほど薬草を採取してるのでストックが大量にあるから。

それに回復薬があれば人前で『治癒』魔法とか使わなくても良くなるからね。

『治癒』魔法なんてレアなのを人前で使うリスクがね。

リズさんたちには使っただろって?

うん、あれで学んだのよ。

相手がリズさんたちだったから事なきを得たって言うかね。

あれが知恵のある悪人とか貴族とかだったら捕まって取り込まれて遣い潰されてさ。

絶対に碌な目に遭わないだろう事確定だよ。


それと解毒のポーションもあるといいかな。

今のとこ毒持ちの魔物には遭遇してないけど今後はそうゆうのが出現するかも知れないじゃない。

もし万が一に毒にやられた時に解毒の魔法を持ってない私じゃ対処出来なくなるからね。

そうゆう意味でも解毒のポーションは必要だよ。

安全第一、命大事に、石橋は叩いても渡るな!が基本よ。

前世では妻のルカは「吊り橋を見たら走って渡れ」って言ってたけど、それ絶対にやっちゃダメなやつだからね。

それとは対照的に私は「石橋は壊れるまで叩け」が信条の慎重派だから。

どんなに頑丈な石橋でも叩き続ければ壊れちゃう事があるかもしれないでしょ?って言う教えだよ。

え、それは違う?

まぁいいじゃない、安全が何より大事ってのは変わりないんだから。



材料をストレージから取り出して、ポーション作りに必要な器具類も出して と。

ポーションの他にも作りたい物あるからさっさと始めようかな。


よし、やるぞ!





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