表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/174

第51話 オールしちゃいました

買い物に夢中になってて時間忘れてたけど今何時くらいなんだろう。


(くーちゃん分かる?)


(もうすぐ4と半の鐘でございますね。)


そっか、ありがとう。

地球時間ならもうすぐ夕方の5時ごろか。

宿に帰るには丁度いい時間ね。

じゃ、帰ろっか。

陽も高いのであまり夕方って感じはしないけど、何となくざわざわと落ち着かない感じがする。

夕飯の支度をしているのかあちこちから匂いが漂ってくる。

家路を急ぐ人々、依頼を終えて戻って来る冒険者たち。

喧騒と言う言葉がぴったり。

でもこうゆう雰囲気はキライじゃないな。

何となく家族団欒を想像しちゃうから。


「くーちゃん・さくちゃん、晩ごはんは何食べたい?」


(主様から頂ける物なら何でも! 何なら小鬼でも構いません。)

(私も葛の葉姉さまと同じです! 私は何でも美味しく頂けますから。)


何でもいいよって、それ一番困るやつだ。

前世でも


「ルカの作る物なら何でもいい」


って言ったら


「それが一番困るんだよー。」


って良く言われたっけ。 懐かしいな。

まさか同じ事自分が言われる日が来るとはね。


くすっ。


思わず笑っちゃった。


(主様、何か楽しい事でも?)

(ううん、何でもないよ。)


心に温かい物を感じつつも私は宿屋へ戻る。

くーちゃん・さくちゃんに出会えてほんと良かったよ。



「ただいま戻りました。」


「お帰りなさい、買い物は楽しめた?」


カミラさんの問いに満面の笑みで「はい。」と答える私。

くーちゃん・さくちゃんに晩ごはんあげたら夕飯の時間までちょっとゆっくりしますね。


部屋に戻って窓を開ける。

吹き抜ける風が気持ちいい。

窓べりに肘をついて見下ろすように道行く人々をボーっと眺めていた。

どれくらいそうしてたんだろう。

3つの影がこっちに向かって歩いてくるのが見えた。


あっ、アルマさんたちだ。


「お帰りなさい。」


私は窓から声をかける。

向こうも気が付いたようで、笑顔で手を振りながら


「「「ただいまっ!」」」


もうすぐ晩ごはんだよ。

アルマさんたちも早く戻って支度しないと。

私先に食堂に行ってるね。


「「「りょーかーい。 先に行ってて、すぐ行くから。」」」


こうゆう会話が出来る事がすごく嬉しい。

こっちの世界に来たばかりの頃は人と会うのが怖かったものね。

自分が異世界人でこっちの世界の人と何がどうどれくらい違うのか全然分からなかったから。

でもリズさんたちに会って、アルマさんたちに会って。

なんか出会う人たち皆いい人たちばかりだよね、男性を除いて。

少しづつこっちの世界に馴染んで来てるのが自分でも分かるんだ。

これっていい事よね。

元の世界で一度死んで、こっちの世界に転生したらついでに転性までしてた時にはどうしようかと思ったもん。

慣れない女の子の身体に戸惑ってばかりで、最初は苦労したっけ。

初めて月のモノが来た時はあまりのしんどさに動けなかったな。

あれには未だに慣れないけど魔法で何とかなるから今は大丈夫。

くーちゃんに出会ったのも丁度その頃だったな。

くーちゃんとはあれからずっと一緒。

いつも側に居てくれて私を守ってくれてる。

私の保護者?みたいな感じかな。


最近じゃ言葉遣いも所作も何もかもが女性化して来てて精神が肉体に引っ張られてる感あるよね。

いや、いい事なんだけどね、正真正銘の女の子なんだし。

女の子の身体に馴染んで、こっちの世界に馴染んで、私はもう完全にこっちのオルカさんなんだよね。

なんだか今はっきりとそう自覚した。


そんな事を考えてたら自然に笑ってたみたいで、道行く人が私の事を見ていた。

うっとりとした顔で見てる人、頬を朱く染める人、「ほう」と吐息を漏らす人。


ヤダ、ちょっと。 これは恥ずかしい。

そんなに見ないでくれる?

顔を赤くして照れていると


「はぁ、可愛い。」

とか

「萌える。」

「天使だわ。」


とか聞こえてくる。

これはこっ恥ずかしい。

私は慌ててバタンと窓を閉めた。


あ、いけない。 食堂に行かないと!

階段を駆け下りて食堂に入るとアルマさんが笑いながら


「コラー、遅いぞー。」


「ごめんごめん、ボーっと考え事してたら遅くなっちゃった。」


胸の前で手の平を合わせてゴメンのポーズをする。


「アルマってオルカさんには甘いよねー、私たちにはあんなに厳しいのになー。」

「そうだー。私たちにももっと優しくする事を要求するー!」

「アンタたち何バカな事言ってんの。優しくして欲しいならもっとちゃんとしなさいっ!」


あはは、ベルさんとカーリーさん言われてるよ。

なんかリズさんとメロディちゃんのやり取りを見てるみたい。


「ところでオルカさん、貴女明日の予定とかどうなの?」


私? 私は明日はギルドに顔出して、たぶん常時依頼の薬草採取するかスライム捕獲だと思う。

だって私まだFランクだし、討伐依頼出来ないからね。

アルマさんたちはどうするの?


「私たちは明日は家に帰るわよ。明日もう1日だけお休みにして掃除の続きかな。ギルドには明後日から行く予定。」


「そうなんだ、じゃあ明後日の朝ギルドで会いましょう。」


リズさんたち、アルマさんたちと知り合えて、約束でもないけどギルドで会う予定。

こうゆうの何かイイよね。

この後夕飯を食べて、お風呂入って……


まぁそのお風呂でまたまた昨日の再現と言うか何と言うか。

ベルさんとカーリーさんがやってた泡泡サンドイッチを皆がやりたがってね……。

1人30数えるまでで、前が終わったら背中の順番で、全員が交代で泡でにゅるにゅる。

全員って、20人以上居るよ?

マジですか。


えーっとね、何と言うかね。

ひとことで言うと


……凄かった。


お姉さま方がね、顔真っ赤にして「はぁはぁ」してたもの。

みんながね、鼻をくっつけて「すんすん」するのよ。

あ、そんなに匂い嗅がないで……。

頭の中に桃色の霞が掛かったみたいになっちゃってね、お風呂から上がる時みんなトロンと蕩けた目をしてたもの。

この様子じゃみんな今夜もフィーバーするんじゃないかな。

また寝不足確定だね。



お風呂から上がったらお待ちかねの「冷たい果実水」の時間です。

市場で大量のバナナやリンゴなどの果物を仕入れて来たからね、今日はオーソドックスなバナナとリンゴをベースにしたのを作るよ。

お姉さま方の評判も良く、みなさん2杯目もご所望されまして、昨日に引き続き本日も小銀貨15枚の売り上げでした。

毎度ありがとうございます。

でも本当にいいのかな?

荒稼ぎしすぎなような気もしないでもないのよね。

アルマさんはみんな喜んでるからいいんだよって言ってくれるけど……。

そうは言っても、あんまりアコギな真似は出来ないし。

やっぱ程々にしとかないとね。


今日はみんなちょっとソワソワしてる。

早く部屋に戻りたそうだね。


うん、その気持ちは分かるよ。


私も早く部屋に……って、何言わせるのよ。

違うんだからね、あ、違わないけど違うからね。


「あー、アタシ眠くなって来ちゃったなー。」

「私もー。」


すっごい棒読みっすね。

もうバレバレ。

お姉さま方はお互いに目配せして計ったように立ち上がって、


「も もう遅いから寝るね。」

「そそそ そうね。」


太ももをもじもじさせながら言っても説得力皆無ですから。

そうして皆さんいそいそと部屋に戻って行ったよ。


「オルカさん、また明日ね。 おやすみ。」


アルマさん大人な対応だね、ありがとう。


「「オルちゃん今夜は一緒に致さない?」」


「え? ムリムリムリ。」

「流石に恥ずかしいよ。」

「もうちょっと練習してから……。練習してからって、ヤダ、私何言ってるの。」


「し し し 失礼します~っ!」


私は部屋向かって脱兎のごとく逃げたわよ。

もう恥ずかしいったらありゃしない。



……。


…………。



……聞こえる。



そこかしこからお姉さま方の桃色の艶っぽいお声が。




私は結界石と消音石を作動させる。

部屋の明るさをベッドライトくらいの暗さにしてムードを演出する。


無理だよ、もう我慢出来ないよ。

私はお姉さま方の艶声をBGMに没頭する。

みんな今夜は特に激しいのね。

消音石使ってるから声出ちゃっても大丈夫だよね?

なら、声出しちゃおうかな。



ん。




んんん~~~!






おはようございます、オルカです。

ヤバいです。

昨夜は楽しみ過ぎて結局オールでした。

だってあんな大波初めてだったんだもん。

あんなの抗えないよ。

ほんとに凄いんだよ、女の子の身体は神秘の泉だよ。


私思った。これは自宅は必須だと。

ほんとマジで自宅を何とかしないと大変だよ。



朝食堂へ行くと誰も居なかったよ。

みんなもオールだったのね。

一晩中嬌声が止む事なかったもんね、当然か。


お姉さま方、冒険者改め夜の冒険者にジョブチェンジだね。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ