第48話 ミックスジュースもあるよ
お風呂から上がって身体を拭き拭き。
そんなにジーッと見ないでくれる?
めっちゃ恥ずかしい。
身体を拭くのなんて皆一緒でしょ。
みんなが食い入るように見てる。
ね、近い近い。
近づきすぎだって。
「あの……見られると恥ずかしいんですが」
一応やんわりと言ってはみるが
「はうっ。」
とか言って胸を押さえるお姉さまや
「女神って本当に居るのねぇ。」
「色気がムンムンムン。」
「お願い、私の妹になって!」
「可愛いのに美人で、清楚なのに色気があって……」
はい、もうバッチリ聞こえてますけど。
みなさん百合族さまですか?
顔を朱に染めたお姉さまたちが熱い視線を投げかけて来る。
ベルさんとカーリーさんは胸の前で指を組み蕩けた表情で私の側で見つめてきてる。
ふぇぇん 視線が痛いよー。
とにかくさっさと拭くもの拭いて着替えよう。
身体を動かせばそれに伴い当然胸も揺れる。
ぷるん。
ぷるるん。
揺れるたびにお姉さま方の目線も同じように揺れる。
「見た? 重力に逆らって揺れてる。」
「見たわ。 若いってイイわねぇ。」
「まさにバインバインね。」
あはは は もうそればっか。
持って来ていた非えろ下着を付ける。
清楚系紐パンを穿いてキャミを着る。
「はぁ、清楚な下着と溢れる色香のアンバランスが……」
「お姉さんもう何でも許しちゃうから」
もうね、欲望がだだ漏れですよ。
周りのざわめきが止まらない。
えっと、ごめんさい。
もう勘弁して下さい、心がいっぱいいっぱいです。
オーバーフロー寸前です。
今夜は刺激強すぎて流石のオルカちゃんもまいっちんぐ。
そろそろ食堂に行かない?
長風呂のし過ぎでみんな顔が真っ赤だよ。
みんな暑いよね?
この暑い時に冷たい果実水ってめちゃくちゃ美味しいよ。
先に戻って作ってるから遅くならないように食堂に来てね。
そう言い残して私は食堂に戻った。
食堂に戻るとカミラさんが忙しそうに働いている。
「お風呂頂きました。 すごく気持ち良かったです。」
「相変わらず丁寧な子ね。 それより随分と騒いでたみたいだけど大丈夫だった?」
「あはは、何とか無事でした。 ギリギリでしたけど。」
ほんとマジでヤバかった。
もうちょっとで我を忘れて身を委ねそうになっちゃったもの。
あれは危険よ、気持ちいいんだもん。
「やっぱりね、あの子たちに後で注意しとくわ。」
「キツくならない程度にほどほどでいいですよ。」
みんなも悪気があった訳じゃなし、別に私も怒ってないしね。
そう言って厨房へ入ってジュースの準備に取り掛かる。
寸胴に入ってる氷水が冷えているか確認する。
ちょっと行儀が悪いけど、さっとコップで掬って口に含む。
「冷た、うん、イイ感じだね。」
厨房の人にお願いしてみんなの分のコップを並べておいて貰う。
私の分のコップを入れると26個だね。
これからこれ全部に氷を入れるんだけど、面倒臭いから一気にやっちゃうかな。
魔力マシマシで氷礫魔法発動。
それぞれの上に氷の塊が出来始める。
「ほいっ。」
手を上から下に振り下ろすとカランカランといい音を立てて氷がコップの中に落ちてゆく。
次に果汁を入れるんだけど果物は何にしようか?
沢山ストックの残ってるものは……
ストレージを覗いて確認すると、梨みたいなのと柑橘系のが多かったのでそれで半分づつ分けて作る事にした。
『創造魔法』さんの力を借りて果汁を絞ってコップに注ぎ込む。
さて、これで皆のは準備OK。
私のはどうしようっか。
うーん、ちと悩む。
今日の気分はミックスジュースかな。
ストレージの中のリンゴ・人参・桃・レモンをチョイスして水で少し伸ばしたら出来上がり。
私のは「オルカさん特製ミックスジュース」よ。
ざわざわ
「さっきの子顔真っ赤にしちゃって可愛いかったね~。」
「ほんとほんと、私なんか滾っちゃって今夜は萌えるよー。」
「私も、今夜は捗るわぁ♪」
またまた意味深な台詞が聞こえてくる……
さっきの子=私
みなさんの良いオカズって訳ね。
この世界の女性ってみんなお盛んなのね。
お集りのみなさーん。
美味しい美味しい果実水ですよー。
爽やかな甘さの梨味と酸味と甘味のバランスが絶妙な柑橘系のどっちにします?
半分づつ用意してあるから選んで下さいねー。
「んー私は梨にしようかなぁ。」
「じゃあ私はこっち。」
みなさん選んで選んで。
選んだらそこの冷水を入れたら出来上がりですからね。
あ、アルマさんたちも選んで選んで。
「「じゃあ、私たちはこっち。」」
そう言って艶っぽく笑いながら私の腕を取るベルさんとカーリーさん。
まったくもう、懲りない人たちねぇ。
アルマさんも呆れて苦笑いしてるじゃないの。
ベルさん・カーリーさんは何を飲むの?
ほら、早く取って来たら?
みんな待ち切れなくてうずうずしてるよ。
アルマさんが右手に果実水の入ったコップを持ち高々と上げて、
「じゃあ、みんな行くよー。 カンパーイ!」
「「「「「カンパーイ!!!」」」」」
ごきゅごきゅごきゅ。
ぷはーっ!
はぁ、美味しい。
お風呂上がりの火照った身体に染みるわぁ♪
「っ!! なにこれ!」
「冷たくて美味しいっ!」
「冷たい果実水が喉を通り抜けると身体の中から冷やされて美味しくて気持ち良くて。」
「すごいすごいすごい。」
「これヤバいくらい美味しいんですけど?」
「ふっふーん、私の言った通りでしょー。 このアルマお姉さんのいう事に嘘はないのよ! みんな感謝しなさい。」
「なんでアルマが威張ってんのよ。 すごいのはオルカさんでしょー。」
「オルカさんに謝れー。」
あはは、アルマさん性懲りもなくまた同じような事言って突っ込まれてるよ。
おっかしーの。
「あーん、もう無くなっちゃった。」
「もっと飲みたい~。」
冷たい水なら沢山作っておいたからそれ飲んでいいからね。
くぴ。
はぁ、美味し。
「あれ、オルカさん何飲んでるの? なんかちょっと違うくない?」
あー、アルマさん気が付いた?
これね、リンゴ・人参・桃・レモンを混ぜた
「ミックスジュースよ。」
「っ!! なにそれっ! 私も飲みたい。」
「飲んでみる? はい、どうぞ。」
アルマさんが一口こくりと飲む。
一瞬ぴたりと動きが止まった、と思ったらゴクゴクと喉を鳴らして飲み干してしまった。
「ぷはーっ! なにこれ、美味しすぎて一気に飲んじゃった。 オルカさんこれもっと作れる? お金なら払うから。」
あー、手持ちの果物じゃあここに居るみんなの分は無いかも。
明日時間があったら市場の方へ行く予定だから、何か良さげな果物があったら買っとくね。
「味は少し違っちゃうけど、それで良かったら作れるけど、どうする?」
リンゴはもう残り少なかったので全部と、人参・トマト・桃・レモン・それと葉野菜を少し足して野菜ジュース風味にしてみた。
みんなーコップ出して、そこに並べて。
タンタンタンタン。
トントントン。
コップが次々と並べられてゆく。
さっきしたのと同じように魔法で氷を入れていく。
カコンカコン。
氷が入ったら魔法で絞った果汁を入れる。
トポトポトポ。
「果物と野菜のミックスジュースよ。 水で少し薄めて飲んでね。」
みんなお金を払って、
「「「「「ありがとー。」」」」」
とってもいい笑顔。
コップを持って椅子に座ってジュースを飲んでいる。
結局みんな2杯目も買ってくれて大銅貨75枚の収入。
今日1日で大銅貨150枚の売り上げ、小銀貨で15枚分。
ここの泊り代10日分稼いじゃった。
「こんなにお金いいのかな?」
「いいのいいの。」
「ほら、みんな笑顔でしょ。 だからいいのよ。」
そっか、そうだよね。
笑顔なんだからいいんだよね。
そう言って貰えるとすごく嬉しいかも。
アルマさんたちと一緒に食事した時と同じテーブルに着く。
ここからは暫く歓談タイム。
依頼情報や他の街や森の様子などの情報交換の時間。
それらが済めば後は女子ばかりなので必然的にガールズ・トークで盛り上がる。
アルマさんが真面目な表情で話しだす。
「ねぇ、オルカさん、相談なんだけど……」
あ、この感じはリズさんたちと同じパターンかな。
一緒に住まないかって言うんだろう。
「私たちと一緒に住まない? 実はね……」
アルマさんたち3人は一軒家を借りて一緒に住んでるんだけど、彼氏さんの居るアルマさんは彼氏さんと一緒に住む家を探してて近々引越しする予定なんだって。
そうすると部屋が余るから私に一緒に住まないかって。
ベルさん・カーリーさんも私の事は気に入ってるみたいだから大丈夫そうだし、アルマさんが抜けると二人の負担が増えるけど、そこに私が入れば負担は変わらずに済むから。
それに宿屋住まいよりも借家の方が圧倒的に安上がりだからとも。
それは、理解した。
けど私はまだ誰とも一緒には住まないかな。
「実は……リズさんたちからも誘われてるの。」
「そっか、先にリズたちが……」
「あの子たちもこっち側の子だもんねー。分かる分かる。オルカさんと同衾、是非お願いしたいもんねぇ。」
「同衾、プリーズ」
ちょっと待って、同衾てなに同衾て!
私はいろいろと調べ物したいの。
いや、本当の理由は勿論言わないけれどね。
だからベルさんたちとの同居も丁重にお断りさせて貰った。
「リズさんたちにフラれたら、その時はお願いするかもね。」
少し前屈みで上目遣いにしながらコテンと小首を傾げて
「それじゃダメ?」
って言ったら二人とも顔をブンブンと横に振って
「「それでもイイから!」」
って快諾してくれた。
良かった、物分りのいい子は私好きよ。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎて行く。
一人また一人と部屋へ戻ってゆく。
冒険者の朝は早い、夜更かしすると次の日の依頼に響くのだ。
だからみんな名残惜しそうに去ってゆく。
私もそろそろ部屋へ戻ろうかな。
「私もそろそろ部屋に戻って寝ようかな、おやすみなさい。」
そう言ってその場を後にした。
部屋に戻った私は結界石を発動させる。
さ、アレ作ろう。
上手くいくといいな。
そう思いながら私は『創造魔法』を発動させた。