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第46話 追いかけて領都

ウーズの街の宿屋で一緒だった3人組の女性冒険者さんたち。

なぜか今彼女たちに囲まれている。


「私を探してた?」


「そうなの、実はね……」


ごくり。 うん。



「あの果実水の味が忘れられなくて追いかけて来ちゃったの。」



はっ?



「お風呂上りに飲むあの甘露水が忘れられなくてね。」

「そう、あれがないとお風呂の楽しみが半減しちゃうって言うか。」


ええぇぇ、そんな理由でわざわざここまで追いかけて来たって言うの?

そこまでする?

自分で作っておいて言うのも何だけど、味の薄い果物ジュースだよ?

そりゃあ飲みやすくて美味しいのは美味しいけどそれだけだよ?

そんなに息きらせてまで……

ホラこれでも飲んで落ち着いて ね。


「はい、これでも飲んで一回落ち着きなさい。」


そう言ってコップを3人の内の1人に手渡す。


「こ これはまさか!」

「キタコレー!」


ぶっ! こっちでもそれ言うんだ。

オルカさんちょっとびっくり。

もしかして私の他にも日本からの転生者って居るんじゃないの?


「「「はぁぁぁぁぁ 美味しい♪ これよこれ。 この甘露水があれば生きていける。」」」


この人たち極端すぎ。

そんなに飲みたいならまた作ってあげるから。

今日お風呂入るよね? じゃ、その後でね。


「ちょっと、アルマ。 なに騒いでるの? お嬢さんに迷惑かけてないでしょうね? その子に迷惑かけるとトリシャに怒られるわよ。」


この人アルマさんって言うんだ。


「だだだ 大丈夫よ、迷惑掛けてないわよ。 ね そうよね?」


すんごいビビってるけど、パトリシアさんてそんなに怖い人だったかな?

確かに快活な人ではあったけど怖いって感じじゃなかったけどな。


「ええ、私は特に迷惑ってほどでは……」

「ねねね、この子もそう言ってるし。」

「貴女たちと違ってそのお嬢さんは出来た子だから、気を遣ってるのかもしれないでしょ。」


気を遣うとかそんなんではないですよ。

別に迷惑とは思ってないですし、本当に大丈夫ですよ。


「大人ね……誰かさんたちとは大違い。」


そう言って3人の方をチラリと見るカミラさん。


「ええー、私たちもう18歳だしれっきとした大人ですよー。」

「18歳? ホントに?」


思わず聞き返しちゃった。


「そ そうよ。 ホンのちょっと落ち着きはないかも知れないけど。」

「ちょっと……ねぇ。」

「えー、カミラさんそれどう言う意味ですかぁ。」

「ところで貴女はいくつなの?」

「私は13歳です。 もうすぐ14歳になりますけど。」

「うそ……私より大人っぽい。」

「ね、やっぱりお嬢さんの方が大人じゃない。」


そう言って「あらあら、うふふ」な感じで笑うカミラさん。


「そそ そうだ、自己紹介がまだだったよね。 私はアルマで、」

「カーリー。」

「ベルです、ヨロシクね。」


アルマさんが青みがかったアッシュブロンド、カーリーさんが赤毛のレディシュ、ベルさんがブルネットって感じ。


「私はオルカ。 オルカ・ジョーノよ。」


「っ! 苗字持ち。 お貴族さま?!」


やっぱりその反応になるよね。


「違う違う、私ヤパーナだから。」


だからこう言って返すと


「な なんだ、びっくりした。 お貴族さまだったら失礼とかあったら大変だもん。」


と、こうなると。

女神様のおかげで今回も無事上手くいったよ。

ちょい悔しいけどこればっかりは感謝だね。


ゴーン ゴーン ゴーン


あ、3の鐘なった、ごはんの時間だ。


「夕飯の時間ね、さぁ皆さん席に着いて。」


「オルカさん、相席してもいい?」


「はい、どうぞ。」


アルマさんたち3人と相席する事にして私たち4人は席に着いた。


「そろそろ皆さんお揃いかしら? 今日はねーいいお肉が手に入ったのよー、楽しみにしててね。」


ん? 前にも似たような台詞を……アルマさんたち3人がこっちを見てる。

あははー、たぶんきっとご想像の通りじゃないかな。


「なになに、いいお肉ってなに? すごく気になるんだけど。」


あちこちから歓声が上がっている。

冒険者って身体が資本だからみんなガッツリ食べるもんね。

だからお肉大好きの健啖家さんが多いのよね。


「いつものお肉やさんに行ったの。そうしたらね、捌きたてのピッカピカのヘラジカのお肉がいーーーーっぱいあってね。」


カミラさんがニコニコ顔でみんなに説明している。

ヘラジカね、間違いないね。

そのお肉の提供元は私だよ。


「オルカさん、今日もしかして魔物の買取依頼出した? それも沢山。」


「うん。」


「「「やっぱりね! だと思ったー。」」」


ウーズの宿屋の時とまったく同じだね。


「みんなー ちゅーもぉーく!」


アルマさんが急に立ち上がって私の手を取って私を立ち上がらせる。

ちょ、待って待って。

一斉にこっちに視線が集まってちょっと焦る。


「見て見て、すっごく可愛い子。」

「照れてる~」

「すっごい綺麗な子だけどお貴族さまかな?」

「お貴族さまがアルマたちと一緒に居る訳ないじゃない。」


「今日のお肉はねー、この子が買取依頼出したの。 そんでね、こんなに可愛いのに実は今売り出し中の凄腕新人テイマーなのよ!」


ええっと、あはは。

売り出し中って意味分かんない。

なんでそうなるの。


「オルカ、オルカ・ジョーノと言います。 若輩者ですがご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」

「んもー、オルカさん固いよ。 ここはパーッと」


そう言うとアルマさんが右腕を振り上げて


「みんなー お肉は大好きかーっ?!」


「「「「おーっ!」」」」


「お腹いっぱいお肉を食べたいかーっ?!」


「「「「おーーーっ!!!!」」」」


これってどこかの大陸を横断するクイズみたい。


「ね、こうするの。 みんな盛り上がってるでしょ。」


そう言ってにっこり笑うアルマさん。

まぁ、いっか。 みんな楽しそうだし。


パンパン


「はいはい、それくらいにして。 夕飯出来たわよ。」


カミラさんが合図をすると給仕の女の子たちが食事を運んできた。

今日のメニューは鹿肉のローストと鹿肉のシチューだ。

どちらも美味しそうな匂いがしてる。

パンは薄茶の白パンって感じ。

山盛りになってるから好きなだけ食べていいみたい。

私は1個で十分かな。

どちらかと言うとパンよりごはん派だから。


「ありがとう。」


料理を運んで来てくれた給仕の女の子にお礼を言ってにっこりと微笑みかける。

それだけで給仕の女の子はポーっとした様子で顔を真っ赤にして俯いている。

んふふー 可愛い女の子は大好物よ。


「見ました? 奥様。」

「見ましたわ、奥様。」

「オルカさんが女の子を誑かしてますわ。」


ええっと、何の茶番ですか?

誑かすって何よ誑かすって。

給仕の女の子は私の側から離れないでもじもじしてる。

何かを期待するかのような熱っぽい視線を私に向けている。


「堕ちたわね。」

「うん、堕ちてるね。」

「完堕ちだね。」


3人とも変な事言わないの。

私は給仕の女の子の顔を両手で挟んで


「お仕事に戻って、ね。」


女の子は首をふるふると左右に振ってイヤイヤをする


「ダメよ、ちゃんとお仕事しなさい。 ほら、いい子だから。」


女の子はこちらを見ながらもなんとか仕事に戻っていった。

ふう。

なに?


「たらしね。」

「うん、たらしね。」

「間違いなくたらしだね。」


ヤメて、変な称号増えたらどうすんのよ。

そんな事より食事よ、食事。

ほら、温かい内に食べましょ。


鹿肉のローストは脂身が少なくきめが細かくてしっとりとした肉質で中はほんのりローゼピンク。

塩胡椒とハーブの香り。

粒マスタードが添えてある。

山葵も合いそうだなって思ったけど、出したりしないよ。

ほんとは山葵で食べたかったけどそれは今度にする。

いくら私でもそこまで空気の読めない子じゃないからね。

薄切りにされた鹿肉を口に放り込む。

しっとりとした肉質、さっぱりとした味わい。

それがシンプルな塩胡椒と良く合っている。

粒マスタードを付けるとそれがいいアクセントになってこれはこれで有りだ、とっても美味しい。


鹿肉のシチューは赤ワインを入れたトマト風味の煮込み料理だった。

これもすごく美味しかった。

お肉は柔らかく口の中でふわりと解けてゆく。

さっぱりとした鹿肉がトマト風味のスープと良く合っている。

これは食べやすくてついつい食べ過ぎちゃいそう。

パンをちょんちょんとスープに浸して食べると……うん、予想通り美味しい。

ちょっとだけパサつくパンがぐっと食べやすくなるね。


アルマさんたちは物凄い勢いでガッついている。

こっち世界の女性冒険者はみな健啖家だって知ってるけど、いつ見ても感心するばかり。

みんなあの量のごはんがどこに入って行くんだろうね。

私はもうお腹いっぱい。


けぷ。


はぁ、満足満足♪

お腹が満たされたなら次はお風呂ね。

お風呂は3の鐘から5の鐘って言ってたからもう入れるはず。

なら、先にお風呂頂いちゃおうかな。

席を立とうとしたらアルマさんに呼び止められた。


「オルカさんお風呂入る?」


うん、一回部屋に戻って着替えとか取って来てお風呂に行こうかなって。

そう言うと、


「みんなー 再度ちゅーもぉーく! 今から大事な事言うよー。」


食事中のさなかアルマさんがまた立ち上がってみなの注目を集めさせる。


「なになに?」

「アルマどしたの?」

「ついに彼氏と結婚でもする気になったの?」


アルマさん彼氏さん居るんだ。

へー、ちょっと見てみたいかも。


「違うわよ。あ、違わないけど違うの。」

「あはは、どっちなの? 結婚するの、しないの?」


「彼と結婚はしたいけどまだプロポーズされてないし……って何言わせんのよ。 だからそうじゃなくて。」

「ごはん食べ終わったらみんなお風呂入るよね? お風呂入ったら暑いよね?」


「当たり前じゃない。」

「最近は暑くなってきたから私はお風呂はヤメて水浴びだけにしようかなって思ってるよ。」


「そこでっ!」


私の方を指して


「このオルカさんが作る冷たぁい果実水が美味しいのよ!。」

「お風呂上がりの火照った身体にキンキンに冷えた果実水が染み渡るのよ♪ 生き返るよー。」

「騙されたと思って1回飲んでみて。 ほんとマジで美味しいから。 1杯大銅貨3枚だけど、それだけの価値はあるからね!」


おうふ、アルマさん売り込みしてるよ。

そこまで気に入ってたんか。

いや、私はお金入ってくるから別にいいけどさ。

ここに居る人全部で何人?

ひぃ ふぅ みぃ…………私入れて20人以上居る。

カミラさんや給仕の女の子、厨房の人とか入れると25人くらい?


「1人大銅貨3枚だから〆て大銅貨75枚って……果実水だけでここの泊り代5日分が出ちゃった。いいのかな。」


「いいのいいの。 稼げる時に稼げるだけ稼ぐ! これ商売の鉄則よ!」


「そんなもんなの?」


「そんなもんなの!」


ま、いっか。


「皆さん、お買い上げ頂き誠にありがとうございます。」

「私はこれから一旦部屋に戻って着替えを取って来てお風呂に入るから、お風呂から上がった人から順番にまた食堂に来てくださいね。その時に冷たい果実水を渡しますから。」


「「「「「はーい。」」」」」


それじゃ、お風呂にしますか。

って、きっとまた何か巻き起こすんだろうな、アルマさんたち。

悪い人たちじゃないし楽しいからいいけどね。


部屋に行って着替えとか取ってきます。

そう言って私は一旦食堂出た。



大浴場なんてこっち来て初めてだから楽しみだね。






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