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第36話 わたし どっち系なの?

部屋に戻ると灯りの魔道具で灯りをつけると部屋の中がぼんやりと明るくなった。

暗いとまではいかないくらいの薄明るい程度。

まぁ、これくらいなら良しでしょう、妥協出来る範囲ね。


私はポテッとベッドの端に座り仰向けに寝転んだ。

はぁ~疲れた。

今日は1日とっても楽しかったけどその分疲れちゃった。

リズさんたちとお買い物して、美味しい夕飯食べて、お風呂に入って。

お風呂上りに皆で冷たい果実水飲みながら歓談を楽しんだ。

うん、楽しかったよ。

楽しかったけど、森の中で引き篭もり生活をしていた私としては、知らない人と居るのは多少の緊張感を伴うのよね。

あ、リズさんたちは別よ。

彼女たちとは、くんずほぐれつ未遂の仲だから。

未遂ったら未遂よ。

危うく貞操の危機に陥りかけたけど窮地は脱したもの。


領都へ向かう商人の護衛依頼で明日から2日間リズさんたちに付いて行くんだけど、商人さんてどんな人なんだろうね。

悪い人じゃないといいんだけど。

野営しながら荷馬車で行くだろうから商材は荷馬車に乗せるとして、そうしたら御者の人も居るよね。

すると私たち護衛は歩きになるのかな?

まぁ歩くの自体は森の中をくーちゃんと一緒に走り回ってたしたぶん大丈夫でしょう。

問題は野営地での夜警かな。

いつもくーちゃんがやってくれてたから私自身はやった事ないんだよね。

だからそれがちょっと心配。


色々と考え事をしてる内に瞼が重くなってきて私は眠りについていた。



ゴーン ゴーン ゴーン


翌朝、3の鐘で目が覚める。

私は起き上がるとぐぐっと身体を伸ばし伸びをする。

んーっ。

さ、起きよ。

ベッドから出て木で出来た窓を開けると外はもう明るくなっていて少し涼しい風が入って来た。

今日から護衛だからいつも森で着てた服に着替えて1階に降りる。

あ、パトリシアさんだ。


「おはようございます。 朝ごはんいけますか?」


「大丈夫だよ、食べておいで。 ところで今日からの泊まりはどうするんだい?」


パトリシアさんにそう聞かれて、ああそっか、まだ言ってなかったっけ。

なので今日から領都へ向かう事を簡単に説明する。


「そうなんだね、分かったよ。 そうだこれを持って行きな。」


「これは何ですか? 手紙?」


見てみると宿屋と思われる名前が書いてあった。

宿屋の女将さんの名前が「カミラさん」で、この手紙を持った女の子が行くから宜しく頼むって言う、要は私の為に書いてくれた紹介状なのだと言う。


「カミラはアタシの元仲間さ。 現役時代にパーティーを組んでてね、二人とも現役を引退した後は女性冒険者の為の宿屋をやろうって決めてたんだよ。」


女性冒険者って何かと不利益を被ったり、扱いが悪かったり。

そうゆうのが多かったんだって。

男ばかりのパーティーに女性1人だと、酷い話だけど無理矢理……なんてのも良くある話だとか。

なにそれ、酷い。

自身もそうゆう扱いを受けたりしたから、そう言った不幸が少しでも減るなら、或いはそう言う理不尽な目に遭った女の子が逃げ込める駆け込み寺のような場所になればいいなと思って宿屋をやっているんだそう。

最近はそうゆうのも段々と減って来て昔ほどはそんな話は聞かなくなったけど、それでも無くなった訳ではないと。

だから自分たち現役を引退した女性冒険者が立ち上がって、各地域に女性専用宿を開いているんだとか。

すごい、カッコいい!

女性専用宿のオーナーさん達は独自のネットワークを持っているので女性冒険者の名前をリスト化し連絡し合ってフォロー体制を築いている。

今回もその一環で、女性冒険者が安心して泊まる事の出来る環境を用意する。 そうゆう事なんだって。

有難い話だよね。

感謝しかないわ。

私はお礼を言って紹介状の手紙を受け取って食堂に入って行った。


朝は昨日の残りと思われるベーコンと野菜のスープに豆を足してかさ増ししたのと、目玉焼きが2個。

目玉焼き2個は豪勢ね、それと山盛りのパン。

丁度食べ終わるような頃給仕の女の子が「女将さんからです。お昼にお食べ下さい。」と言って焼きたてパンにソーセージを挟んだ物を大きな葉っぱに包んで持って来てくれた。


「ありがとう。 パトリシアさんにも宜しくね。」


私はそう言って謝意を伝える。



朝食を食べたら次はくーちゃんの朝ごはんね。

私は急ぎ足で厩舎に行くとくーちゃんが尻尾ぶんぶん振って


「主様、おはようございます。」


おはよう、くーちゃん。

いま朝ごはん出すからね。

それと、昨日言ってた通りリズさんたちと一緒に領都に行くからまた後で迎えに来るね。

私はくーちゃんをわしわしと撫でて愛でたあと水場に行って塩磨きをして顔を洗った。

部屋に戻ったら荷物の整理……と言っても斜めがけのポシェットを掛けるくらいなんだけどね。

大抵のものはストレージに片づけてお仕舞いだもん。

準備はすぐに終わったから、毎日の日課のお米を出すのと結界石への魔力の補充。

もうすぐリズさんたちが来るから何かを創るのは時間的に無理そうね。


あ、私の『探知』さんに見知った反応が。


さ、もう行かなきゃ。

トントントントン 階段を降りて受付でパトリシアさんに部屋の鍵を返す。


「この2日間お世話になりました。 この街に来る用事が出来たら必ずこの宿に泊まりますね。」


「元気でね、いつでも帰ってらっしゃい。 待ってるよ。」


パトリシアさんはそう言って元気に送り出してくれた。

いつでも帰ってらっしゃい、待ってるよ  か。

そんな事言われたのこっちの世界に来て初めてだからちょっとジーンてきちゃった。

待っててくれる人が居る、それって喜ばしい事よね。

短い間だったけどこの街はいい街だったな。


入り口のドアが開きリズさんたちが入って来る。


「あ、オルカさんがもう来てる。 ごめーん待たせちゃった?」


「大丈夫よ、私も今来たとこだから。」


って、なんか恋人同士の会話みたい。 くす。


「二人ともおはよう、くーちゃん迎えに行ってくるからちょっとだけ外で待ってて。」


くーちゃんを迎えに厩舎に行くと


(あの二人の冒険者が迎えに来たようですね。)


うん、じゃ行こっか。

私はくーちゃんを伴って外にでた。


「お待たせ。」


「こっちよ、商人のところに案内するから付いて来て。」


リズさんたちの後ろを私と左側にくーちゃんが並んで付いて歩いてゆく。

門の方へ向かって歩いているみたい。

整然とした街並みからだんだんと雑多なものへと変わってゆく。

来た時と逆ね。


馬車が沢山停まってる一角にやって来たところで、こちらに気付いて右手を挙げて近づいてくる男の人が1人。


「やぁ、おはよう。」

「マルクさん、おはようございます。」


リズさんの会話からあの人が依頼主の商人でマルクさんね。

ふーん、見た所30代半ばってとこか。

優しそうではあるけど商人(あきんど)らしい厳しさはあまり感じられないかな。

リズさんが私の方を指して


「この子が言ってたテイマーのオルカさん、隣の大きいキツネがオルカさんの従魔よ。 彼女たちメチャクチャ強いから頼りになるわよ。」

「オルカと言います。 今回は無理を言ってすみません。 ご迷惑をお掛けしますが領都までの道中宜しくお願いします。」


「へぇ、随分としっかりとしたお嬢さんですね。 領都で商人をしているマルクです、こちらこそ宜しく。」


マルクさんが右手を差し出して握手を求めて来たけど私は一瞬躊躇してしまった。

なにせこちとら森の中で引き籠ってたし男性との接点がゼロだったから免疫がなくて慣れてないのよ。

前世の私なら当たり前に握手したんだろうけど今の私は完全な女性だからちょっと ね。


「あ、オルカさん男性はちょっと苦手なんですよぉ」


そう言ってメロディちゃんがフォローしてくれる、ありがたや。


「ああ、そっち系の方だったんですね、そりゃそうですよね、失礼しました。」


ん? そっち系ってどっち系?

なんか微妙に勘違いされてるような気が。

マルクさんてちょっとピントがズレてる人?

ねぇ、メロディーさんこれどうゆう事? 明確な説明を求む!

リズさんも俯いて肩がブルブル震えてるけど、それ笑ってるでしょ。

ねーねー、すっごい気になるんだけど。

私マルクさんにどう思われてんの?

ねぇ、教えてよー。


「レオ。」


マルクさんが御者に声を掛けて馬車を呼び寄せる。

馬車は馬2頭立てのかなり大きな幌馬車で、御者台にはさっきレオ君て呼ばれた男の子が座ってた。

へー、見た感じ私より年下っぽく見えるけど御者出来るんだ。

マルクさんとレオ君が御者台に座り、私たち3人は後ろの荷台に乗る。

3人だとかなり狭くなるけど座れない事もないかな。

くーちゃんは歩き。 ごめんね。

ねぇ、やっぱり私も一緒に歩こうか? そう聞いたんだけど


(主様は馬車に乗ってゆっくりとなさって下さいませ。 わたくしは大丈夫です。)


(そう? でも寂しくなったら言ってね、降りて私も一緒に歩くから。)


馬車の後ろをくーちゃんが付いて歩く。

でも、このままで門を通れるの?

くーちゃんは私の従魔なんだから私も一緒に歩いてないと拙くない?

なんかそんな気がしたのでマルクさんに断りを入れて街の外に出るまではくーちゃんと一緒に歩く事にした。

案の定、門の所で止められかけたけど私の市民カードを見せる事で事なきを得た。

スムーズに門を通る事が出来て良かった。


「よいしょっと。」


門を出たところで私も馬車に乗る。

警備がてら荷台の一番後ろに座る。


さよならウーズの街。

また来るからね。


森の中での生活、くーちゃんやリズさんたちとの出会い、ウーズの街、そしてこれから領都へ。

私にとって新しい世界への扉がまた1つ開いてゆく。


領都ってどんな所なんだろう。

人 沢山居るんだろうな。

楽しい事、面白い事一杯あるかな?

美味しいお料理やお菓子なんかもあるといいなぁ。


ワクワクが止まらないね。

期待に胸躍らせながらゆっくりと流れる景色を眺めた。






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