第32話 魔物ってそんなに高く買ってくれるの?
ゴーン ゴーン ゴーン
うーん、なに?
なんの音?
いつもはこんな音聞こえないよ?
ねぇ、くーちゃん 今のなに?
……くーちゃん?
あ、そっか。
リズさんたちと一緒にウーズの街に来て宿屋に泊まったんだっけ。
くーちゃんは従魔専用の厩舎に居て貰ってるんだった。
さっき鳴ったのが鐘3つって事は前世で言うなら朝の6時ごろ?
だったらいつも森で起きてた時間より遅い時間よね。
はっ!
くーちゃんお腹空かしてないかしら。
すぐ行かなきゃ。
バタバタバタ。
トントントントン。
階段を駆け下りて厩舎へ走っていく。
「くーちゃん!」
「主様、おはようございます。 良く眠れたようでございますね。」
くーちゃんはそこに居て私の顔を見て嬉しそうに尻尾をブンブンと振っている。
くーちゃんお腹空いてない?
すぐに朝ごはん用意するからね。
くーちゃんに朝ごはんを出して食べて貰ってる間に私も朝ごはんにしようっと。
食べ終わった後のお皿は後で回収に来るからそのままにして置いてね。
私はそう言って夕飯の時と同じく食堂へと足を運んだ。
あ、パトリシアさんが居る。
昨日の夜も遅くまで居たわよね? 一体いつ寝てるのかしら?
働きすぎはダメよ。 私も前世では休憩や休暇は出来る限りとるようにしてたもの。
「おはようございます。」
「おはよう。 もう起きたのかい? 早いんだね。」
普段は日の出と共に起きるから。
それにくーちゃんの朝ごはんの事もあったから。
そう言うと
「へぇー、随分と従魔に優しいんだね。 感心感心。」
「最近のテイマーは酷いもんさ、従魔の扱いがなっちゃいないんだよ。その点お嬢ちゃんはエライねぇ。」
そうなんだ。
そんな酷いんだ。
けど私はくーちゃんに酷い事なんてしないし、するつもりもないけどね。
なんたってくーちゃんは私の家族だもの。
家族に酷い事なんてしないでしょ? 当たり前よね。
「もう朝食って食べれますか?」
「大丈夫だよ、好きなとこ座って待ってな。 運んだげるから。」
私はお礼を言って昨日の夕飯の時と同じ場所に座った。
暫く待っていると昨日の給仕の女の子が朝食を運んで来てくれた。
「おはようございます。 朝食をお持ちしました。」
「あら、おはよう。」
私はちょこんと小首を傾げながらにっこりと笑うとそれだけで女の子はパァーっと顔を輝かせて笑顔になった。
んふ~ 朝から可愛い子の笑顔はプライスレスね。
でも蕩け顔はダメよ。 女の子が朝からする表情ではないからね。
ほらほら、仕事に戻らないと怒られるわよ。
そう言うとぷくーっと頬っぺたを膨らませてプイとそっぽを向いた。
私は頬っぺたをちょんとつつきながら
「ダ メ よ。」
ちゃんとお仕事してきなさい。
夕飯にまた来るからそれまでイイ子で待っててね。
そう言って彼女を仕事に戻した。
朝食は昨日の夕食と同じパン、塩漬け肉と野菜のスープ、ドライフルーツが乗ったポリッジだった。
あとは一人に1個ゆで卵が付いてた。
あれ? 異世界では卵は貴重品なんじゃなかったの?
前世でよく読んでた小説にはそう書いてあったんだけどな。
一般市民や農家には貴重品でも冒険者が泊まる宿だと普通に出たりするのかな。
まぁ、どっちでもいいんだけど。
朝食としては味・栄養面ともに文句なしね。
とても美味しかった。
ただまぁ日本人としてはやっぱりお米が食べたいってのはあるんだけどね。
朝食も食べた事だし一旦部屋に戻ってステータスの確認でもしようかな。
今日の私
名前 オルカ・ジョーノ(城之内 薫)
種族 半神 界渡り人
職業 冒険者 テイマー 巨乳 美少女
年齢 13歳
HP 111/111
MP 11,796/11,796
ユニークスキル
言語理解
創造魔法
スキル獲得優遇
魔法の才能
芳香異体
ストレージ /時間経過無効1つ・容量制限有(地球一個分)・時間経過有1つ
スキル
魔法 火 LV6
魔法 水 LV7
魔法 風 LV7
魔法 土 LV7
魔法 木 LV7
マッピング LV7
鑑定 LV8
分析 LV7
魅了 LV8
誘惑 LV2
気配遮断 LV7
忍び足 LV6
隠蔽 LV1
探知 LV7
探索 LV7
索敵 LV7
警戒 LV7
木材加工 LV6
金属加工 LV5
食肉加工 LV5
魔道具作成 LV1
魔法付与 LV1
採取 LV7
採掘 LV5
並列処理 LV7
解体 LV7
料理 LV5
魔力操作 LV8
狙撃 LV7
身体強化 LV8
豪運 LV777
従魔
葛の葉(妖狐)
女神の祝福
HP/MP 自動回復(小)
毒・麻痺・呪い・魅了・混乱等の状態異常耐性(小)
たった1だけどHPが増えてる。
けどMPの伸びが全然鈍くならないのはなぜ?
これ絶対可笑しいから。
あとね、変なスキルが2つも生えてる。
誘惑と隠蔽……。
どっちもロクでもないスキルである事は間違いないわね。
誘惑って……ねぇ、酷くない?
そんなスキル要らないよ。
私は殿方なんて絶対誘わないからね。
私が誘うのは女の子だけよ。
それに隠蔽ねぇ。
何を隠そうっていうのよ。
あ、でも隠せる物にもよるか。
ステータスを偽装出来たりするんならありかな。
だって私のステータスって鑑定で覗かれたらその時点でアウトだもの。
あと地味にショックなのは魅了レベルが3も上がってる! なんで?
リズさんたちや給仕の女の子と仲良くなったから?
そんなくらいで3も上がるようだとカンストするのも時間の問題かも。
ねぇ、女神様。 一体私ってどこに向かってるの?
私に何をさせたいの? 教えてよー。
結界石に魔力を補充して、創造魔法でお米を出してストックを作っておく。
昨日のお風呂で気になった石鹸。
あれなんだけど、ハーブを入れて香りづけしたら獣臭を消せないかしらね。
ストレージの中には狩った獲物がまだたっぷりと入ってるから、リズさんたちが来るまでに解体を済ませて脂だけ回収しとこうかな。
次にストレージの中で石鹸に使えそうなハーブや薬草がありそうかどうか調べるのを鑑定さんにお願いした。
塩もあるから塩析も出来るし、あとは創造魔法でちょちょいのちょいと。
今の私は魔力いっぱいだから創造魔法使っても平気だしね。
そんなこんなで真っ白で香り高いハーブ石鹸が出来ました、それも30個ほど。
獣脂もまだ余ってるから次はフローラル系のを作ってみるのもいいかも。
魔力はまだまだ余裕があったのでストレージ内にストックしてある木材で石鹸ケースとマイ木桶を作った。
あとは木で出来た櫛、ほんとは柘植の櫛が良かったんだけどあいにく柘植はストレージには入ってなかったので硬い獣の毛と木材でヘアブラシも作っておいた。
今日からお風呂はマイお風呂セット持参だね。
これも創造魔法さんのおかげ。
ほんと創造魔法って便利だよねー。
そうこうしてる内にリズさんたちが訪ねて来たので出かける事にした。
「おはよう、わざわざ迎えに来て貰っちゃってゴメンね。」
「あー、いいのいいの。 そんなの気にしないで。 さっ、行きましょ。」
私たちは3人並んで冒険者ギルドへ向かう道すがら軽食を食べながら歩いて行く。
固いコッペパンみたいなのにソーセージとザワークラウトみたいな酸っぱい野菜を挟んであるホットドッグのような軽食だった。
これは庶民が食べる一般的な軽食なんだそう。
こっちの世界も地球と似たような料理って意外とある印象ね。
これなら食べ物で困る事はなさそう。
前世にあったふかふかのバンズにパリッとジュワッとした瑞々しいソーセージとは違って、こっちのは固いコッペパンに塩味の強いサラミみたいなソーセージを挟んだもの。
なのでよーく噛んで食べないとならない。
これが結構アゴが疲れるのよね。
私は1個で十分お腹いっぱいになったけど二人は両手に味の違うのを持って2個食べてた。
昨日の晩も思ったけどこっちの女性ってみな健啖家なのね。
ギルドに着いてドアを開けて中に入ると、中に居る冒険者は少なかった。
お昼だもんそりゃ皆お仕事に行くか。
冒険者って荒くれ者で馬鹿ってイメージだけど実際は仕事しないと生活出来ないからね。
そりゃ仕事はするよねって話。
ただ荒事が得意なのは間違いないでしょうけど。
それに馬鹿で字も読めないと依頼も受けられないから仕事にならないじゃない。
なので冒険者に限って言えば識字率は100%なのよね、これ意外と誰も気づいてない事実だと思うのよ。
普通ならここで粗野で下衆い冒険者が「よぉ、オネーチャン俺たちとパーティー組まねえか? 色々と教えてやるぜ。」とか何とか言ってくるシチュエーションなんだろうけど、くーちゃんが居るから誰も声を掛けて来ない。 否、声を掛けたくても掛けられないが正解。
ほんとくーちゃん様様ね、
(いつも守ってくれてありがとね。)
(ありがたき幸せ、従魔冥利に尽きると言うものでございます。)
くーちゃんまだまだ固いよ、もっと気楽にしていいんだよ。
受付には昨日応対してくれた職員さんが居た。
私は「昨日の買い取り依頼のお金を受け取りに来たんですが……」そう言うと、分かってますって顔をしながら奥のギルドマスターの部屋に通してくれた。
コンコン。
「どうぞ。」
「失礼します。 昨日の冒険者がお見えになりました。」
私たちはローガンさんに促されて昨日と同じ場所に座った。
そしてローガンさんは職員さんに「彼女たちにお茶と、それと用意を。」とそう言った。
「では、早速ですが清算を。」
そう言って細々と説明してくれた。
狼は毛皮と牙と爪が買い取り対象で今回はどれも切り口が綺麗で程度も良かったのでいい値がついた。
特に毛皮は需要に対して供給が追い付いてなくていつも品薄状態の為高値がついたとの事。
狼の毛皮×18と大きい狼の毛皮×1で小銀貨60枚。爪と牙×18と大きい爪と牙×1で小銀貨10枚。
オーク肉×2で小金貨4枚。
えっ、オーク肉ってそんなに高いの?
私がびっくりしてると
「おや、ご存じない? オーク肉は人気で庶民にとっての贅沢品ですよ。品物さえあれば即完売です。」
へーそうなんだ。
だから森でメロディちゃんがあんなにもオーク肉を食べたがったのね、納得。
その他にもオークの皮は革製品の材料として引き合いがあってオークの皮×2で小銀貨10枚、オークのある部分は精力剤として珍重されていてそれが×2で小銀貨10枚。
その他の獣は纏めて小銀貨30枚。
「さて、今回の一番の目玉商品コカトリスですがこれは状態が素晴らしかったので良い値がつきました。こちらとしても良い買い取りが出来て大変満足です。」
「コカトリスの肉は高級食材だし、爪や皮・羽はそれぞれ材料として引き合いがありますのでコカトリス1羽で小金貨22枚と査定させて頂きました。」
はいっ?
いま何て……
「き き き 金貨22枚?!」
たた 高すぎない?
だって鶏だか蛇だか分からない変な魔物よ?
それが……。
「いえいえ、妥当なところかと。」
「と、言う訳で〆て小金貨27枚と小銀貨20枚です。 さ、こちらが清算金です。」
革袋に入った硬貨がドンッとテーブルの上に置かれた。
ガシャンと金属が擦れる音がする。
硬貨の入ったずっしりと重い革袋を手元に引き寄せた。
すごい、こんなにお金稼いじゃった。 って くーちゃんがだけど。
「ローガンさん、買い取りして下さり有難うございました。」
「何をおっしゃいます、こちらこそ良い取引が出来て大変満足です。」
ローガンさんにお礼を言って私たちは退出した。
「「オルカさん、お金いっぱい良かったね。」」
「ありがとう、二人のおかげよ。」
「じゃあ、オルカさんのお買い物に付き合うとしますか。 で、どこに行きたいの? どこでも案内してあげるわよ。」
どこでも案内してくれる?
いいの?
私欲しい物いっぱいあるわよ。
女に二言はないからね、覚悟してね。
香辛料、根菜類、普段着、布、武器に防具、魔道具店、それから絶対なのが下着!
女子3人によるお買い物ツアー開始よ。
主に私だけが だけど。




