第3話 女神アリアによる異世界転生前講座
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異世界に行くにあたってまずは情報収集が必要だろう。
まずそこはどういう世界なんだ?
魔王は? 冒険者は? 魔法はあるのか? 魔物は?
時代的には地球でいうところのどの年代相当なんだろうか。
疑問は尽きない。
それから異世界転生特典みたいなチート能力とかは貰えるのか?
貰えるとしたらいくつくらい貰える?
「まぁまぁ、そんなに慌てないで。 異世界は逃げませんよぉ。」
ほよほよと女神様が言う。
神様らしい威厳は感じないが変な威圧感とかがない分だけ親しみやすくていいな。
話を聞いていてほっこりとしてしまう。
「では、順番にご質問にお答えしますね。 まず、魔王は居ません。 なので魔王に相対する勇者も当然居ません。」
おお、と言う事は転生勇者になってイキナリこの世界を魔王から救って欲しいなんていうテンプレは無いと言う事だな。
ラッキー! 助かった!
魔王を倒して欲しいなんて言われたらどうやって断ろうかと思っていたのだ。
よし、これで難関1つクリアだ。
「魔物や魔獣は森や草原に普通に居ます。 ダンジョンも在りますので冒険者と言う職業もあります。 冒険者ギルドがあって領地・国を跨いで冒険者を一元管理しています。」
冒険者ギルド来たーっ! 来たよ来たよ。
異世界ファンタジーの定番冒険者ギルドだよ。
これは是非とも見ておかないと。 あ、あれか、私も冒険者になるってのも面白いかも。
そうだ、魔法は 魔法。
魔力がある世界なのだから魔法だってあるはず。 その辺りはどうなんだ?
「もちろん魔法もありますよ。 これから行く世界では人々は皆魔力を持って生まれてきます。 ですが殆どの人は魔法が使えません。」
そうなのか? では私は魔法は使えるのか?
「魔法使いたいですか? なら魔法を使えるようにしましょうか。 折角魔法が使えるようにするんですから100万人に一人の適性全属性持ちにしときますね~。」
え、いいのか? それって相当にチートなのでは?
「問題ありません。 出来る限り要望を聞くようにと上司から言われていますので。」
上司って……それって本物の神様って事だよな。
そうか神様のお墨付きか。 そう言う事なら遠慮なく要望を出させて貰おうか。 いいんだよな?
「はい、なんなりと。 私の権能の範囲内でならお好きなだけ。」
そうか、ではっ!
まずは、言葉が理解出来ないとどうにもならないから読み書きが出来るようにして欲しいな。
それから何でも創り出せる魔法とかあるならそう言うのも欲しい。
他には鑑定、これは必須だろう。
例えばそこらに生えている草が毒草だったりしてそれが分かると便利じゃないか。
折角魔法が使えるようにして貰ったのだから魔法の才能なんてスキルもあるといいかも。
っと、忘れてた。 あれだあれ。 収納! 収納スキル。
収納スキルがあるかないかで快適さが全然変わってくるからな。
これは是が非でも欲しいところだ。
あと、生存確率を上げる為にも運は高いほうがいいか。
ざっとこんな所だが、何か思いついたらまた言うとするか。
で、どうでしょう。 今言ったような能力って頂けたりします?
「ん~、たぶん大丈夫じゃないかなと思いますぅ。」
本当に? マジか、これはすごいラッキーだぞ。
女神様ありがとうございます!
「言葉の方は『言語理解』でいけますし、『何でも創り出せる魔法』はあるにはありますよ。 ただ魔力燃費が悪いので扱いづらいとは思いますがあって困るものでも無いですし付けておきますね。」
「次に『鑑定』ですがこれも大丈夫です、お付け出来ますよ~。『鑑定』便利ですもんね。」
「収納スキルはストレージと言いまして、これは機能制限ありでならお付け出来ますよ。 これも付けときますね。」
ほぼほぼ全部OKか、非常に助かる。
ストレージと言うんだな、それって収納系スキルの上位スキルなのでは?
機能制限ありとの事だが、例えば時間停止機能がないとか、容量が小さいとかなのか?
「半分正解で半分ハズレです。 時間停止機能ありの容量制限付きです。 収納可能最大容量は地球1個分相当です。 ちなみに時間経過ありと無しで2種類分けて別々に収納出来ます。最大容量は2つ合わせてになります。」
は? いま何て言った? 地球1個分? なにそれ。
ひっどいチート。 事実上容量制限なしと変わらないじゃないか。
あ、いや、文句ではなくてちょっと呆れてただけです。
地球1個分なんて多分使い切れないだろうな。
「まだまだお付けできますが如何なさいますかぁ?」
そうだな、まずは先立つものがないとどうにもならないから当面の生活費とかあれば尚良しかな。
それと転移する時は比較的安全な場所への転移でお願いします。
こんなところかな。
「では、転移前に肉体を作り直しますね。 貴方の肉体は爆発四散してしまったので、飛び散った肉体を集めて再構築するよりも新たに作り直した方が楽ですから。」
そう言って女神様には左側に赤い珠を、右側には白銀の珠を出現させ浮かび上がらせた。
血のように真っ赤な深紅の珠と煌く白銀の珠。 すごく綺麗なのだがあれは一体なんだろう。
「これはですね~ 赤いのが車の中で回収した飛び散った貴方の肉体の一部で、白いのが私の身体の一部です。 私の身体の一部を使うことで私の意識が通りやすくなる為肉体の再構築が容易になるメリットがあるんです。 デメリットは特にありません。」
うげっ、あの赤いのって私の肉片って事か。
嫌すぎる。 かなり気持ち悪いぞ。
けれど白銀の方の珠って女神様の身体の一部なのか、そっか。
なぁ、それって何気に拙い気がしないか?
片方は人間の肉片、もう片方は女神様の身体の一部。
このままやっちゃって大丈夫か? 問題が起きたりしないか? 私は人間で居られるんだろうか。 デメリットは特に無いと言ってはいたが不安しかないぞ。
どれだけ考えても不安を拭い去れない。
や やっぱ 一応大丈夫かどうか聞いてみた方がいいか?
どうしたものかと迷っていると
「おやぁ~、遺伝子情報が破損していますね~。 これちゃちゃっと修復しておきますね。 ついでに少し若返らせておきますね♪」
と。
あ、はい。 お願いします。
思わず言ってしまったが、ちゃちゃっとじゃなくて丁寧にお願いします。
これで可笑しな事になったらそれこそ人間じゃなくなってしまうからな。
そうなったら洒落にならんわ。
まさかそれがあんな事になろうとは……。
あの駄女神様をうっかり信じた私がバカだったのだ。
「さぁて、さささっと肉体の再構築すませちゃいますね。 それが終わったらいよいよ新たな世界へ転送しますので。」
深紅の珠と白銀の珠が溶けるように混ざり合い融合してゆく。
それが淡い光を放ちながら大きくなり人型を作り始める。
「では、この子は一旦片付けますね。」
女神様はそう言うと人型のそれは姿を消した。
きっと転送準備場所へ先に移動させられたのだろう。
もうすぐだ。 もうすぐでついに異世界へ転生だ。
不安半分楽しみ半分。
どんな世界なんだろうか。
「あと私からプレゼントがあります。 当面生きていけるだけのお金や食料、生活に必要だと思われる物を色々とお付けしておきました。 それから市民カードも。 市民カードとは、名前や出身国、冒険者ランク等を表示させた多国間相互身分証明書の事です。 これがないと街に入れませんから。」
「ご要望通り比較的安全な森の中へ転移させますので、向こうへ着いてもすぐに移動したりせずに、まずはご自身のステータスと持ち物の確認をして下さいね。 私からは以上です。」
途中一抹の不安もあったが結局女神様は女神様か。
何から何まで良くして頂いたな。 ほんと感謝しかない。
向こうへ行って女神様の像とか見かけたらお祈りくらいはしてあげないとな。
まだ見ぬ新たな世界へ想いをはせていると
「準備が整いました。」
いよいよか。
「あ、あの車は次元の狭間に漂流してしまったので探してみますね。 もし見つかったら回収してお届けしますよ。」
最後の最後まで。 この女神様にはありがとうしか出てこないな。
「では、最後に。 アナタの第二の人生に幸多からんことを願いここに女神の祝福を授けます。」
「あっ……」
ん?
どうしました?
何か問題でも?
「い いえ、何でもありません。何でもありませんよぉ。 ほほほ。」
そう言うと私の周りにキラキラと金色に輝く光の粒が降り注ぐ。
一抹の不安を感じつつ私は祝福の光に包まれながら異世界へと旅立ったのだった。