第24話 ポンコツオルカちゃん
ここから暫くイチャイチャします。
助けられた安心感からかへたり込んでいる女性冒険者の所へくーちゃんを連れ立ってゆっくりと歩いてゆく。
「くーちゃん、ご苦労様。」
そう言いながらくーちゃんの顔の横から耳の後ろ辺りを撫でてあげるとすっと目を細めて気持ち良さそうに「くうぅ」と声を漏らした。
改めて女性冒険者たちを見てみる。
小さい擦り傷が無数に出来ているね、衣類にも血が滲んでたりする。
剣は女性にも扱いやすい短めの片手剣、見たところ二人とも剣士タイプね。
「大丈夫? 立てる?」
私はそう言いながら両手を前へと差し出す。
「はぁぁ、すごく綺麗な人。」
「しかも、大きいです。」
ん、私? 綺麗? ありがと。
でも大きいってなに。 胸を凝視しないで、恥ずかしいじゃない。
身体を少し反らして重心を後ろにかけながら「ほら、手出してね」と彼女たちの手を掴んでグイと引っ張る。
「「あ、ありがとう。」」
どういたしまして。 にっこりと笑う。
私は人として当たり前の事をしただけよ。
そんな褒められるような事じゃないわ。
え、助けるかどうか迷ってただろって?
まぁね、助けたら助けたで何で女の子がこんな所に1人で居るんだとか色々詮索もされるだろうし、後々面倒な事になりそうじゃない?
冒険者ってのは基本的に自己責任の職業だから大丈夫そうならそのままスルーでも良かったんだけど、どう見ても旗色が悪そうだったからね。
だから助けに入っただけ。
それ以下でもそれ以上でもない。
「助けてくれてありがとう。 私はリズ、この子はメロディ。」
「メロディと言います、助けてくれてありがとうございます。」
リズって子はホワイトブロンドの金髪に碧眼、ほっそりとしたスレンダー美人。
胸は貧……こほん 慎ましやかで控えめな感じ。
大丈夫、私はちっぱいも好きだから。
メロディって子はストロベリーブロンドの金髪にブルーグレーの瞳、背はそんなに高くない可愛い系の女の子。
胸は均整の取れた美乳系。
二人を見て分かった。
うん、私ってかなり巨乳だったみたい、いま初めて知ったよ。
どうりで走ったりすると揺れて痛い訳だ。
身長に関しては私とリズって子が同じくらいでメロディって子が少し低いくらい。
「私はオルカよ、オルカ・ジョーノ」
「「っ!! 苗字持ち? お貴族さま!?」」
「あー、違う違う、私ヤパーナだから。」
これは女神様が用意してくれた設定ね。
私が黒髪だから、東の端の海の向こうの島国「ヤポヌ」の出身って事にしたの。
その国では女性を「ヤパーナ」男性を「ヤパーノ」と呼んで、国民みんなが苗字を持っているという珍しい国なんだって。
だから、
「「な、なんだ そうだったんだ。 ビックリした。」」
と、こんな反応になるらしいの。
女神様ありがとう、助かったわ。
っと、まずは怪我の治療が先ね。
二人に手をかざし二人同時に
「治癒」
二人は淡い光に包まれて細かな傷がみるみる塞がってゆく。
うん、バッチリ。
これでひと安心だね。
あとは……
「え、治癒魔法?……さっき風魔法使ってたのに?」
「すごい、オルカさん複数属性持ちだったんですね。」
あ あれ? なんか微妙な雰囲気なんですけど。
私なんかやらかしちゃった?
二人とも驚きつつも感心したような顔で私を見ている。
いや、そんなに見つめないで。 照れちゃうから。
そうだ、服汚れてるよね?
今綺麗にしたげるからちょっとジッとしててね。
いい? 動かないで。
「洗浄」「乾燥」
「「洗浄? 乾燥?」」
「オルカさんていくつ属性魔法使えるんですか?」
メロディさん、可愛いお顔がすぐ近くに……近すぎだって。
「いやいや、それもそうだけど連続で魔法使ってなんで魔力切れ起こさないの? オルカさんてどれだけ魔力持ってんの?」
リズさんも近すぎだってば。
あ、二人とも引っ張らないで。
揺らさないで、ぐらんぐらんするから。
「「あ、ああ オルカさん ごめんさない。」」
「ええっと、お二人に質問なんですが私ってなにか変? ですか?」
「「気づいてないっ?!」」
二人してハモらないでよ、私自信失くしちゃうよ。
私ね、ちょびっとだけやらかしたっぽい?
まず最初に小鬼たちを倒すのに風刃っていう風系統の魔法使ったでしょ。
次に使った治癒の魔法が木と水属性が必要で、乾燥は火と風の属性が必要っと。
つまりこれだけで私は4属性持ちが確定しちゃう……うん、ごめん やらかしてるわ。
まだ使ってないけど土魔法も使えるのよね。
さすがに全属性持ちってバレるのは宜しくないから不用意に土魔法は使わない様に気を付けなきゃ。
うわー、二人してジト目で見てるよぉ。
(主様、不用意が過ぎます。 もう少しお考えを。)
くーちゃんにも念話で注意されちゃった、てへ。
「魔法の事は今は一旦置いといて、後でじっくり聞くとして、」
やっぱり聞くんだね、リズさんそれはそのまま置いといていいんですよ? それが優しさってもんですよ。
「オルカさんてテイマーなんだ。」
ええ、まぁ、一応。 職業にもそう出てますし。
「そう!それ、こんな大きいキツネ私見た事ないです。」
メロディさんが目をキラキラさせながらこっちを見てるー。
「この子「葛の葉」って言うんですけど、キツネが魔物化したみたいな?」
「なんで疑問系なんですか?」
メロディさんナイスつっこみ。
ホントの事言うとまた色々とあれだから……だからくーちゃんは私の従魔って事で。
あ、いや、従魔ってのは本当の事なんだけどさ、くーちゃんの種族って「妖弧」でしょ。
しかもHPが5,000オーバー。
この時点で人類にとって脅威でしかない訳で、こんなのが知れたら普通に討伐対象よね。
だからこれは秘密。 秘密のくーちゃんで。
ところで、
「倒した魔物はどうしようか? 3人だから配分は1/3づつでいい?」
私揉め事は好きじゃないから、ホラよく言うじゃない?こうゆう戦闘時は先に戦闘してたパーティーに権利があるって、穏便が一番ってことで、みんなが一番納得出来る……
「「ダメ!!」」
二人揃ってダメですか、そうですか。
どうやら納得頂けなかったご様子。
なんで?
「私たちは襲われてるのを助けて貰って、治癒して貰って、更に洗浄までかけて貰ってる。それなのに分け前貰うなんてそんな厚かましい事出来るわけないじゃない。 報酬は全部貴女が貰って。」
リズさん、そう言われても
「そうですよー、この魔物は全部オルカさんとオルカさんの従魔が倒したんじゃありませんか! だから全部オルカさんのものですよ!」
メロディさんまで。
私の総取り? いいのかなー?
なんか気が引けるよ。 ホントにホント? 問題ない?
「私もメロディも納得してるから大丈夫よ。 遠慮なく貰ってちょうだい。」
リズさんがそこまで言うなら まぁ、
「では、遠慮なく頂戴します。」
そう言って私はペコリと頭を下げて感謝の意を表す。
リズさんとメロディさんにはやはり通じなかった。
意味が分かんないって顔してるもの。
でもいいの、私の気持ちの問題だから。
意味が分からなくても感謝してるって気持ちが伝わればいいのよ。
しかし小鬼かぁ、これ臭いし汚いし気持ち悪いしで普段は魔石だけ回収したら焼却してたんだけれど、どうしようかしら?
オークは食用として美味しく頂いてるんだけれどね。
あぁ、折角食肉加工スキル持ってるんだし、今度ブッチャーナイフでも作ろうかな?
うん、それはいい考えかもしれない。
ボーっとそんな事を考えてたら
「オルカさん、ゴブリンの処理ってやっぱ躊躇しちゃうよね。私もゴブリンだけは触りたくないって思うもの。一応討伐証明の右耳を切り取って持って行くだけでいいのよ。 後は地面にでも埋めるか燃やしとけばいいからね。」
親切にリズさんが教えてくれる。
それでいいの? ならちょっとは楽ね、助かるわ。
「オークはギルドに持って行けば買い取ってくれますよ。 あれは食肉として普通に流通してますし、美味しいんですよね。 そう言えばオーク肉久しく食べてないんです。食べてないんですよ。」
よほど大事な事なのか2度言ったね。
メロディさんがうるうるの目ん目でこっちを見つめてくる。
それって食べたいってアピールよね?
胸の前で手をギュッてしてちょっと上目遣いで猛烈アピール。
ちょっと、ヤダ 可愛いじゃない。 危険が危ないわ。
わ 分かったわよ。 ご馳走してあげるからっ!
「オーク肉一緒に食べます?」
可愛いさに負けた、これからはメロディちゃんと呼ばせて貰うわね。
「やったっ!」
「いいのっ?」
うん、いいのいいの。 メロディちゃんの可愛いお顔見れたからね。
魔物から魔石を回収したら小鬼とホブゴブリンは纏めて焼却!
いつもなら土魔法で穴掘ってポイしてからファイヤーなんだけど、今日はリズさんとメロディちゃんがいるからね、くーちゃんに運んで貰って小山にしてから燃やした。
燃やす時にチロチロと燃やしてたんじゃ待ち時間が勿体無いから、
「蒼炎!」
ゴオォォォォ!!!!
前に伸ばした私の掌から放たれた蒼い炎弾がゴブリンに着火するや否や蒼い火柱がドンッ!と上がった。
おぉー、良く燃えてるねぇ。
あ、二人ともちょっと待っててね、すぐ終わ
「「ひっ!!!!!!」」
るから。
どうしたの?
「あ 有り得ない、蒼い炎なんて……。」
「蒼い炎って初めて見ました。 すごい。」
対照的な反応ね。
コワクナイヨー。
温度が高いと炎は青くなるのよ。
ギュギュッと凝縮する感じで、炎を大きくしないように注意しながら魔力を注ぐとこうなるの。
慣れが必要だけどコツさえ掴めば意外と簡単よ。
あっちのオークだけどホントに貰っちゃっていいの?
なんか悪いわね、じゃ、仕舞っちゃうね。
ホイ ホイッと。
「「えええええ!っ」」
なになに、今度は何に驚いてるの?
「私はもう驚かないからね。」
「違うし! 驚くのは私たちの方だから!」
「オルカさん、それってアイテムBOX? それともまさか……」
おや? リズさんよくお気付きで……
って、私またやらかしたーっ?!
ええええ えっとね、何か上手い事言って誤魔化さなきゃ。
(主様って……意外とポンコツだったのでございますね。)
ポンコツって何よ、失礼しちゃうわ。
そんな事より何かいい案ない? くーちゃんも考えてよ。
「オルカさんすごいです! 魔法は4属性持ちで、テイマーで、収納スキルまで持ってて、しかも巨乳で美少女なんて最強じゃないですか!」
これこれメロディさんや、最後の巨乳と美少女は余計だから。
「こここ これはアイテムBOX。 そうそれよ一応。」
「なんで一応なのよ。」
リズさんそんな疑いの目で見ないで。
「はぁ、まぁいいわ。 分かったわ、それで納得してあげる。」
リズさま、ご配慮まことにありがとうございます。
助かった の?
「でもね、オルカさん。 今後は人前で不用意な言動はダメよ、いい? 分かった?」
「はぁ~、心配になっちゃうわ。 放っておいたらこの人すぐ悪いヤツらに騙されそうね。」
「オルカさん、あんまりリズに心配かけさせちゃダメですよ。 メッですからね。」
おうふ、メロディちゃんにまで心配された。
私ってそんなにダメな子?
(わたくしがお守り致しますのでご安心を。)
くーちゃんまで……
「私 自分では結構しっかりしてると思ってたんだけどな……。」
「「どこがですか!」」
そんな間髪いれずに言わなくても。
ぐぬぬ、解せぬ。