第23話 これは人助けよ、女の子だったから助けた訳じゃないからね
大変長らくお待たせしました。
ようやく初異世界人の登場です。
久しぶりに拠点に戻ってきた私たち。
うん、やっぱ落ち着くね。
ここは人も魔物も来ないからイイ場所よね。
でも、最近森の中が騒がしいからそろそろ森を出て街に行こうかしら。
そうなるとくーちゃんの事がね。
私としてはくーちゃんも一緒にって思うんだけど、くーちゃんがどう思ってるか、まずはそれを聞いてみない事にはね。
朝食を摂りながら
「ねぇ、くーちゃん。ちょっと聞きたい事があるのだけど、」
そう言って話を切り出した。
くーちゃんてさ、私の従魔ってなってるけど従魔契約した訳ではないのよね。
くーちゃんが怪我をしてその怪我を治した時に私の魔力とくーちゃんの魔力が混ざり合って今のくーちゃんの魔核が出来上がった。
だから契約とか何とかは全てすっ飛ばしてんのよ。
普通の従魔契約だったら、主が亡くなれば従魔は契約から開放されるんだろうけど、私たちの場合はどうなるんだろう?
そこんとこが分かんないのよね。
だからその辺も含めてくーちゃんに聞きたいと思ってね。
私ね、近いうちに森を出て街を目指そうと思うの。
くーちゃんにとっては色々と生き辛い事もあると思うのだけど、それでも
「一緒に付いて来てくれる?」
(仰せのままに。 この命果てるまで主様のお側にっ!)
くーちゃんは嬉しそうに尻尾をふぁっさふぁっさと揺らしてそう答えてくれた。
いいの? 本当に?
私嬉しくて泣きそうよ。 ぐすん。
指先でそっと涙を拭ってニッコリと笑いかける。
くーちゃんは私の家族も同然だね。
くーちゃんが嬉しい事言ってくれたから
いい気分のまま今朝のステータスチェックね。
私がこの世界にやって来て33日目
名前 オルカ・ジョーノ(城之内 薫)
種族 半神 界渡り人
職業 狩人 テイマー 巨乳 美少女
年齢 13歳
HP 110/110
MP 10,488/10,488
ユニークスキル
言語理解
創造魔法
スキル獲得優遇
魔法の才能
芳香異体
ストレージ /時間経過無効1つ・容量制限有(地球一個分)・時間経過有1つ
スキル
魔法 火 LV5
魔法 水 LV6
魔法 風 LV6
魔法 土 LV7
魔法 木 LV7
マッピング LV7
鑑定 LV7
分析 LV6
魅了 LV5
気配遮断 LV7
忍び足 LV5
探知 LV7
探索 LV7
索敵 LV7
警戒 LV7
木材加工 LV6
金属加工 LV5
食肉加工 LV3
魔道具作成 LV1
魔法付与 LV1
採取 LV7
採掘 LV5
並列処理 LV6
解体 LV7
料理 LV3
魔力操作 LV7
狙撃 LV7
身体強化 LV7
豪運 LV777
従魔
葛の葉(妖狐)
女神の祝福
HP/MP 自動回復(小)
毒・麻痺・呪い・魅了・混乱等の状態異常耐性(小)
聞いて聞いて。
HPが増えたのよ! 5……だけね。
ほんとHPが伸びないわね、どうしてよ。
けどね、最大MPがついに10,000を超えたの!
ねぇ、MPってこんな伸び方するものなの?
絶対おかしいよね? なにか間違ってるよね?
普通の人はこんなにMP持ってないような気がするのよ。
って言うか普通の人ってMPどれくらいなの?
「食肉加工」って……こんな変なスキル要る?
私別にお肉屋さんしたい訳じゃないから。
『魔道具作成』と『魔法付与』は伸びてなかった。
まぁこれはある意味当然ね、ベレッタを作ってからなにも作ってないもんね。
あと、『魅了』が伸びてなかった事が地味に嬉しい!
私別に殿方を魅了しようなんて気はさらさらないもの。
可愛い女の子ならウェルカムなんだけどね。
次はくーちゃん。
名前 葛の葉
種族 妖狐
職業 オルカの従魔
称号 森の支配者
年齢 30歳
HP 5,010/5,010
MP 220/220
ユニークスキル
人化
擬態
念話
スキル
警戒 LV7
探知 LV7
気配遮断 LV7
探索 LV4
索敵 LV5
忍び足 LV3
並列処理 LV5
魔法 風 LV6
魔法 水 VL6
くーちゃんのHPがヤバイ事になってる!?
HP5,010ってなに!
私の45倍もあるんですけど?!
そりゃあ森の魔物もくーちゃんを避ける訳だわ。
だって力の差があり過ぎるんだもの。
あれれ、くーちゃん新しいスキルが増えてるわね。
私のステータスの壊れ具合も可笑しいけど、くーちゃんのステータスも大概ね。
これはアレね、気にしたらダメなやつね。
「気分転換に食後のお散歩でも行こっか。」
獣が居ない…… 魔物も居ない……
私たちの姿を見るとサッと姿を隠してしまう。
魔物ですら逃げ出すという恐怖の象徴。
なんなの この状況。
魔物は少なくなったとは言ってもまだ居るには居るのよ。
『探知』さんにはしっかりと反応が出てるもの。
ただ、私たちの周りにだけ居ないって言う……。
お散歩あんまり楽しくにゃい。
……っ!
くーちゃんがツイッと鼻先を持ち上げるように顔を上げる。
耳がぴくぴく動いてる。
(何か『探知』に引っ掛かったの?)
(人間が2人、魔物の群れに襲われているようでございます。)
どうする? 助ける?
私としては助けてもいいんだけど、助けた後で色々と詮索されるのもイヤだし、迷うところではあるわね。
(ゴブリンが4、オークが3と出ております。)
2対7か。
取り合えず様子だけでも見に行くとしよっか。
陰から覗いてみて大丈夫そうならそのまま放置だね。
くーちゃんの案内で現場に向かって走り出す。
あ ホントだ、人と魔物の両方の反応がある。
やっぱ探知はくーちゃんのが優秀だね。
現場に近づいていく。
『気配遮断』しているのでこちらの動きは感づかれていない。
まずは陰から観察っと。
襲われているのは、剣を持った冒険者らしき装備をした女性2人だった。
小鬼3とホブゴブリン1+オーク3。
女性2人はホブゴブリンとオークに退路を塞がれ小鬼に小突かれていた。
あー、これは完全に遊ばれてるね。
大怪我はしていないが細かな傷が無数に出来ていてあちこち血が滲んでいた。
うーん、なんか旗色悪そう、これは拙い状況だね。
でも異種族混合で協力して襲ってくるって珍しくない?
(わたくしも初めて見ました。 スタンピードは別にして一般的に魔物は異種族間では協力など致しません。)
けれど目の前で実際に連携を取りながら攻撃している。
(おそらくわたくし達が狩りすぎたので数の減った魔物どもが協力して生き残りを模索しているのではないかと。)
え、私たちのせいなの?
……ごめんよ。
心の中で女性冒険者たちに謝った。
(今回はベレッタは使わずに「身体強化3倍」でいくよ。)
(いつもの銃は使われないのですか?)
(アレはこっちの世界には無い物だからね、不用意に使わないようにしないとね。)
私はそうくーちゃんに念話で伝える。
あ、私が異世界人だってのはもうくーちゃんには話してあるの。
それから元男ってのもね。
意を決して伝えたら、なんだそんな事かみたいな感じでくーちゃんに笑われたけど。
私くーちゃんに助けられてばっかりだよ。 ありがとね。
「キャッ」
「メロディ!?」
メロディと呼ばれた女性冒険者の方へもう1人の方が駆け寄る。
見るからに劣勢。
ぜーぜーと肩で息をしている。
もう限界っぽいね。
くーちゃんはオークの方をお願いね、私はゴブリンの方をやるから。
「いくよ!」
私たちは戦闘の中へ飛び込んで魔物と女性冒険者の間へ割り込んだ。
「手助けするわ! 下がってて。」
私は女性冒険者たちに少し後ろに下がってくれるよう頼むとゴブリンの方へと走った。
「身体強化3倍」で今の私のHPは330相当だ。
身体を前傾姿勢にしゴブリンの横を走り抜ける時に手刀に纏わせた「風刃」一閃、首を切り落とす。
私は余裕を持ってひらりと相手の攻撃を躱すと「風刃」を飛ばす。 2匹目!
3匹目はスピードで翻弄したあと上段回し蹴りを首に決める。
ゴキリと骨の折れる鈍い音がした。
くーちゃんはと言うと、例によって例のごとく瞬殺ね。
そもそも実力差がありすぎてくーちゃんにしたらやり過ぎないように力をセーブする方が大変なくらいなんだもの。
くーちゃんはこの森の支配者なのよ。
3匹のオーク達は胴体と頭部がサヨナラして倒れていた。
となると、残るはホブゴブリンのみね。
ホブゴブリンは両手を上げて「グギャギャ」と威嚇してくる。
相手が女だと思って舐めてたんでしょ?
でも残念ね、相手の力量も測れない時点で勝ち目なんてないのよ。
「風刃」で首を撥ねて
「終わりよ。」
私はくるりと向きを変えて冒険者たちの方へ歩いてゆく。
後ろでドサッとホブゴブリンが倒れる音がした。
ふー、戦闘終了っと。