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第21話 くーちゃん狼を蹂躙す

チチチチ


朝 小鳥の囀りで目覚める。


「うーん、んはぁ~。」


テントの中でぐぐーっと伸びをしてゆっくりとテントから這い出る。

眠い目をこすりながら


「くーちゃん、おはよう。」


(おはようございます。)


くーちゃんがそう言いながら嬉しそうに駆け寄ってくる。

昨日の夜は何もなかっ    た?


「なに、これ」


そこには兎や猪、なんか鶏と蛇を混ぜたような大きな鳥の魔物とか色々……。


「くーちゃん説明してくれるかな?」


くーちゃんの説明によると


(主様の睡眠を邪魔しようとするので排除致しました。)


との事。

でも私結界石使ってるから大丈夫だよ。

そう言うとツイっと視線を逸らして


(お守りするのがわたくしの役目でございますゆえ。)


……ははぁ、要は狩りがしたかったんだね?


まぁ、いっか。

守ってくれてたんだし、ありがとね。


あ、人型の小鬼が居るわね。

人型の魔物って初めて見たわ。

でもなんでゴブリンだけ除けてあるの?


(あ、あれは臭い汚い気持ち悪いの3拍子揃っていますのでわたくしの朝食用にと。)


いや、くーちゃんそんな物食べなくていいよ。

お腹壊したらどうすんの。

汚物は焼却しなきゃ。

食べる物なら兎とかあるじゃない。

ね、そうしよ?

小鬼なんて食べ物じゃないからね!

魔石だけ取ったらあとはポイで焼却処分よ。

いいわね?


その後二人で朝食を摂ったあと今日の予定を考える。


「くーちゃんは何かしたい事とかある?」


(実は狼を狩りに行きたいと思っております。)


狼狩り?

そう言えばくーちゃん狼に襲われて大怪我したんだもんね。

だからお礼参りがしたいと、そう言う訳ね。

いいわよ。 やろっか、お礼参り。

でも狩りすぎはダメだよ、狼が居る事で森の生態系が守られてるって一面もあるからね。

だから増えすぎない程度に狩るのはオッケーね。

それでイイ?確認すると


(御意。)


じゃ、食後のお散歩がてら狼狩りに行くとしますか。



『探知』を掛けながら二人並んで歩く。

あれ?

いつもと違う反応があるね。

これなんだろう、くーちゃん分かる?

さっきも感じた違和感って言うかなんて言うか。

3~6つくらいのひと塊で動いてて、明らかに動物とは少し違う行動をしている。


(それはおそらく人ではないかと。)


(人? 人間って事?)


そう言えばこっちの世界に来てからまだ人には会ってなかったかも。

今人に会うのはちょっと怖いな。

まだ心の準備が出来てない。


「くーちゃん、人の反応があったら避けて行ってね。」


(仰せのままに。)


なんか急に人の気配が増えたような気がする。

どうしてだろう。

今までこんな事なかったのに。

もしかして狼が関係してるとか?

だとしたら早く狼退治しないと私たちの安寧が乱され兼ねないね。

今本当に怖いのは魔物とかじゃなくて人間の方だからさ。


(くーちゃん急ごうか。)


私たちは森の中心近く、最初にくーちゃんを見た場所付近へと向かった。

この辺りは完全に狼のテリトリー内だね。

『探知』の反応にもしっかりと現れてる。

このパックはかなり大きくて20頭近くになるとくーちゃんが言っている。

これがこの森の最大勢力であとは小さいのがいくつかあるくらいなんだって。

つまりこの大きいのを狩れば私たちの平穏は守られると。


『気配遮断』を使いながら慎重に森の中を進んでゆく。

くーちゃんは『探知』を、私は『警戒』をメインにかけておく。

もちろん、探索や索敵も忘れずローテする。

さっきから遠い所にいくつかの少し大きめの反応がある。

なんか遠巻きにこちらの様子を窺ってる感じ?

でも、狼は集団での狩りが得意な生き物だからその内絶対に襲ってくるハズ。

今はまだその時じゃないと。


私はストレージからベレッタを2丁取り出してスライドを操作し安全レバーを動かしておく。

これで万が一の急襲にも対応可能。

更に念の為女神様から頂いた結界石も起動させておく。

これはくーちゃんのたってのお願いだった。

だって


(主様の安全はわたくしの命に代えましても!)


なんて言い出すんだもん。

くーちゃんが狼ごときにやられるとは思わないけど、怪我くらいはするかもしれないじゃない。

私くーちゃんが怪我する所なんか見たくないもん。

私の安全が確保出来てるならくーちゃんも安心して狼狩り出来るってものよ。

だからこれはくーちゃんの精神衛生上の問題ね。


っ! 来たっ!


私の『警戒』さんが反応している。

『探知』でも周りをぐるりと取り囲むように輪になってじりじりと間を詰めて来ている。


(くーちゃん、来てるよ。 気を付けて。)


探知さんによると狼は全部で19匹だった。

その中の前方奥に居るのがアルファ雄、この群れのリーダーね。


これだけの数に囲まれると威圧感がハンパないね。

ちょっと息苦しいくらい。

緊張感で喉がひり付く感じがする。

いくら結界石に守られてるって言っても怖いものは怖いのよ。

くーちゃん、数が数だから綺麗に首を刎ねられなくても大丈夫だから。

とにかく倒すのを優先ね。

くーちゃんは自由に動き回っていいから好きにやっちゃって!

念話で伝えておく。


私はくーちゃんに背中を預け両手を広げるように銃を構える。

そのままゆっくりと時計回りに円を描くように回転する。


(くーちゃん、私が発砲したらそれが合図よ。)


後は、私は足手まといにならないようにくーちゃんのフォローに回るから。



パンパンパンパン!!


私のベレッタが咆哮をあげる。

一番近くにいた1頭の狼が地に倒れた。

それが戦闘の合図となり狼が一斉に襲ってくる。


「ひっ!」


こ こ こ 怖いーっ!

こっち来ないで~。

くーちゃんのフォローするから?

ムリムリムリ、そんなの絶対ムリだよぉ。

私はがむしゃらに銃を乱射する。

これ地球だったら銃乱射事件の犯人としてお縄な事案だわ。

なんて場違いな事を思いながらベレッタを撃ちまくる。


ガキン。


弾切れでスライドが止まる。

すぐさま次のカートリッジを2本ストレージから取り出して装填しようとした時、すぐ目の前に狼が口を大きく開けて噛みつこうとしていた。


「きゃっ。」


ガンッ!!


結界石の結界に阻まれ狼は私に近づけない。

結界に跳ね返されている。

けれどまた飛び掛かってくる。それの繰り返し。

前も、横も、後ろも、周り中狼だらけ。

ひーっ! 怖いよぉ。

狼キライー!

パンパンパンパン!!

私は一頭づつ地道に狩ってゆく。


そこらの狼より大きいくーちゃんが風のように駆け回りスピードで狼を翻弄しながら首を撥ねてゆく。

狼ののど笛に噛み付きグルンと振り回すだけで狼は絶命する。

前足を振り払うだけで狼の身体が上下で泣き別れになる。

くーちゃんの独壇場、独り舞台と言ってもいい状態。

くーちゃん無双。

残るは群れのリーダーのみ。

しかしその群れのリーダーもくーちゃんの前には成す術もなく地に落ちる。


終わってみれば私たちの圧勝。

完全勝利!

しかし見た目は惨状、蹂躙劇。

分かりやすい言葉で言うと只の「弱い者いじめ」。

そのくらい普通の狼とくーちゃんとでは力に差があると言う事。

くーちゃんヤバいくらい強すぎだよ。

私が狩ったのが4頭、くーちゃんが15頭。

これが今の私たちの実力の差ね。

ね ね、くーちゃんと私って仲良しよね?

これからも宜しくね。

くーちゃん嬉しそうに尻尾ばっさばっさしてるけど身体中狼の返り血ですごい事になってるよ。

今綺麗にしてあげるからちょっとジッとしてて。


さてと、まずはこの狼をなんとかしないと。

もう、面倒くさいからまとめてストレージに収納して魔石を回収。

あとは放置かな。

狼は美味しそうじゃないし、いつか街に行った時に売却でいいかな。

15匹も居ればそれなりに路銀の足しにはなるでしょ。


拠点までの帰り道、来る時と同じように『探知』には大勢の人間と思しき反応が確認された。

これは、相当に大規模な探索ね。

きっと狼の討伐隊か討伐依頼ってとこかしらね。

まぁ、一番大きいパックは私たちが狩っちゃったから骨折り損だろうけど。ごめんね。

今頃はあまりにも狼が居なくて首を捻ってるだろうね。


人に遭遇するとそれはそれで説明が面倒だからこそっと帰ろ。

こうしてくーちゃんの狼リベンジは成されたのだった。




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