第20話 焼肉パーリーだぜい
猪を狩った後いつもの河原の拠点に寄って獲物の下処理をする事にした。
狩った獲物は魔石を取り出して、兎5羽は内臓を取って血抜きしたら部位毎にバラしてストレージへ保存。
捨てる部分は穴を掘ってポイ。
これは後で焼却ね。
ちなみにキングボアの魔石は濁りはあるものの少し大きめの魔石だった。
兎の血抜きをしてる間に創造魔法で大き目の鉄板焼き用の鉄板を作った。
くーちゃん、今日の晩ごはんは鉄板焼きパーリーだよ。
さて、キングボアは……大きすぎるのよね、どうしよう。
一旦ストレージで保存?
いやいや、折角くーちゃんが狩ってくれたんだもん、やっぱ食べたいよね?
可愛いくーちゃんの為だ、気合い入れて解体するか!
体長2m越えのキングボアって体重何キロぐらいあるんだろうね。
とてもじゃないけど私じゃ到底無理だからくーちゃんにちょっと協力して貰ってこっちに移動ね。
愛しのマイ包丁を取り出して解体に取り掛かる。
ぐぅ、皮硬っ!
あっちこっちと包丁を入れて苦労しながら何とか皮を剥ぐ所までは出来た。
けれどここで力尽きた私。
これは無理、一旦ストレージに収納して休憩が必要だわ。
首をコキコキさせながら
「ふぅ、これは難儀ね。」
私の身体能力じゃこれだけの大物は難しいな。
なんかいい方法はないものかしら。
例えば、ストレージに収納したままで解体を出来たりしたらすっごく便利なんだけどな~。
……もしかして出来るんじゃない?
私解体スキル持ってるし魔法だってある。
薪の時は魔法使えばストレージ内でも加工出来たんだからお肉でも出来るよね?多分。
考えるよりはまずはやってみよう。
実践あるのみ。
出来なかったら地道に自分で解体すればいいだけの話だしね。
ストレージ内のキングボアを指定してまずは血抜きしてみる事にする。
少量の魔力と引き換えに出来ました。
ガーン。
こんなあっさりと……。
だったら、部位ごとに分けて、骨は全部外してっと。
当然出来ますよね、少しばかり魔力は必要だけれども自分でやる労力に比べたらアータ。そんなの問題にもならないわよ。
ともかくストレージの有効な使い方を発見したのはラッキーね。
「くーちゃん、私川で水浴びしてくるから見張りお願い出来る?」
そう言うと
(御意。)
くーちゃんはほんと頼りになるね。
大助かりだよ。
私はショートブーツを脱ぎ素足になり川へ入って行く。
いつものように土魔法で背の高い壁を作り出して入り口から中に入ったら入り口を閉じる。
脱いだ服と替えの服を置く台を作って、壁には外套を掛けるフックみたいなのをちょこんとくっつける。
羽織っていた外套を脱いで「洗浄」と「乾燥」の魔法をかけてフックに掛けておく。
革の手袋を外し革製の胸当ても外す。
これらも「洗浄」と「乾燥」をかける。
今までならここで「探知」と「警戒」の魔法を使って周囲の確認をしてたんだけど、くーちゃんが居てくれるからね、見張りをお願いした。
手早く服と可愛くない下着を脱ぐ。
この下着可愛くないのよね~、可愛い下着欲しいなぁ。
あ、思考が完全に女性のそれになっちゃってる。
もうあれだね、私完全女性化でいいよね。
服と下着もそれぞれ「洗浄」と「乾燥」を掛けてストレージに片づけて替えの下着と服を取り出す。
台の上に置いたらごわごわの布を取り出して水に濡らして身体を拭いてゆく。
ホントはシャンプーがあればシャンプーで髪も洗いたいんだけどこの世界にはないもんね。
なので水で濡らしながら髪の汚れを落としていく。
この世界の私の髪質は脂質は多くなくサラサラストレートで繊細な柔らかさと滑らかさだ。
不思議なのだけれど髪が全くパサつかないの。
かと言って脂でギトギトにもならない。ホントどうしてなのかしらね。
そんな事を考えながら顔を濡らし首筋から肩へと濡らした布で拭いてゆく。
そしていつものようにここで一旦手が止まる。
神秘の双丘。
神が創り給いし魅惑の造形。
私はそれに見惚れため息をひとつ。
「はぁぁぁぁ。」
ぷるん。
水を弾く若々しい肢体。
無駄な贅肉なんかひとつもついてない、かと言って痩せてもいない。
出るとこは出てて、括れるとこは括れてる。
女の私から見ても魅力的。
ちょっとだけ触れてみる。
「んっ。」
思わず声が漏れちゃう。
これ マジでヤバいかも。
変な気持ちになっちゃうからヤメヤメ。
流石にこれ以上はマズイから。
歯止めが利かなくなりそうなんだもん、それはまだちょっと怖いのよ。
濡れた身体を拭き服を着替えたら川からあがる。
「ふう、さっぱりした。 くーちゃんお待たせ。ありがとね。」
私はそう言ってくーちゃんにお礼を言う。
(主様、お顔が少し赤いようにお見受けしますが? 風邪でございますか?)
(今日は早めに休まれるのが宜しいかと。)
えっ、ううん。大丈夫よ。
き き き 気のせいよ気のせい。
くーちゃん鋭いわね、侮れないわ。
くーちゃんを引き連れて拠点に戻った私はすぐに夕飯に取り掛かる。
今日は焼肉パーリーだから竈はいつもより横長の大き目のを作らなきゃ。
土魔法でぐもももっと竈を作る。
今じゃかなり自由自在に作れるようになってきた感がある。
ストレージから鉄板を取り出して竈にドンッ!と置く。
お肉は兎肉と獲れたてキングボアの肉。
キングボアはサーロインとヒレとバラの部分をチョイス。
私は塩と香草で焼いて、くーちゃんは生肉の状態で。
「えっ? くーちゃんも焼いたの食べたいの?」
味付けしてあるのって大丈夫なのかな?
地球だったら人間の食べ物は~ってなるんだろうけど、ここは異世界だからね。
きっと大丈夫なんだろう、本人もそう言ってるし。
分かったよ、くーちゃんには生のと焼いたの両方あげるね。
鉄板が焼けて温まってきて白い煙が上がり始める。
そこへキングボアの脂を落として薄く伸ばしてゆく。
いい感じだねぇ。
「いざっ!」
キングボアのサーロインを鉄板に乗せる。
ジュウゥゥゥ。
パチパチパチ。
脂が跳ねる音、肉の焼ける音がする。
そして香ばしい匂いが立ち上る。
ヤバい、暴力的なまでの美味しい匂い。
ごくり。
これは喉が鳴るよね。堪らん。
くーちゃんを見ると涎がつつーっと垂れてた。
あはは、くーちゃんも辛抱たまらんよね。
待っててね、すぐ焼けるから。
焼き具合はミディアムで。
って言うかレアはあんまり好きくない。
私はミディアムからミディアムウェルが好きなの。
「焼けたよー。 はい、くーちゃんには3枚ね。」
噛み応えのある肉は少しの硬さはあるもののブツンと嚙み切れる具合が心地いい。
そして噛めばじゅわっと溢れる肉汁。
口の中が肉の旨味の洪水で溺れそう。
くぅ~。
「美味しいぃ~♪」
ちょいちょい。
くーちゃんが前足で私を呼ぶ。
余程美味しかったのか一瞬で食べきっていたみたい。
もっと食べるよね?
そう言うとくーちゃんは尻尾をばっさばっさと大きく揺らした。
あは、くーちゃんカワユス。
「ちょっと待ってね、次はガッツリとキングボアのバラ肉にするよ。」
私は脂っこいのは得意じゃないから一口大のが3枚もあればいいかな。
残りの塊は全部くーちゃんのね。
バラ肉を焼きながらヒレ肉と兎肉も用意する。
どんどん焼いていくからねー。
くーちゃん遠慮しないでお腹いっぱい食べてね。
私はストレージから炊き立てごはんを取り出した。
焼肉は肉だけ楽しむのが王道、ごはんは〆に食べるものって言う人も居るけど、私はお肉とごはんは一緒派。
焼肉にはごはん、これが私のスタイル。
焼肉頬張る、ごはんかきこむ。
これよこれ。これなのよ。
嗚呼、なんと言う幸福感。
しかも一人メシじゃなくて一緒に食べてくれる子が居る。
私しあわせよ。
げぷ。
またまた食べすぎちゃった。
もうお腹いっぱいで何にも入らない。
でもしあわせ。
くーちゃんもお腹ぽっこりとっても満足そうにしてる。
よほど機嫌がいいのか尻尾がゆーらゆーらとゆっくり大きく揺れてる。
動きたくないんだけど暗くならない内にお片付けしないとね。
ちゃちゃっと片づけてのんびりしよっと。
食後、ゆらゆらと揺れる焚火の炎を眺める。
何かよく分からない葉っぱで作った手作り茶を飲みながら満天の空を見上げる。
あ、一応食用なのは『鑑定』さんのお墨付きだからね。
くーちゃんは側でのんびりまったりしてる。
私はテントを出して寝る準備を始める。
今日はいい日だったね。
明日もいい日になるといいね。
おやすみ、くーちゃん。