表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/174

第2話 女神アリア


お正月3が日は毎日更新




真っ黒。


そうとしか言いようがない、本当に真っ暗なのだ。

何も見えないし、なにも感知出来ない。 感覚がなにもない。

しかし何かが違う。 どうにも変な違和感がある。

この違和感の正体はなんだ?

どうやら真っ暗で見えないのではなくて、私の目が見えていないような気がする。

耳は 何も聞こえない。

音の無い世界と言うのはこんなにも不安で怖いものだったのか。

暑さや寒さは特に感じない。

と言うか温度自体全く感じられんのだ。

快適なのではなくて、なにも感じない。

イヤな汗が出…ないけど、出たように錯覚する。


そうだ、身体は? 身体は動くか?

首を左右に動かそうとしてみる。 動いている感じがしない。

む、これはマズイのではないか?

ちょっと焦る。

どこか痛いところはないか?

手はどうだ? 足は?

付いている感じがしないな。

痛いどころか触覚すら感じられない。

と言うか付いている感覚が全くない。

付いている感じがしないのだから当然動くハズもなしか。

これは非常にマズイ。

理知的で理性的でクールな私でも流石に心配になってくる。


これはアレか。

いわゆる植物状態というヤツか。

意識だけはあるが只それだけという。

生ける屍。 参ったな。


北海道に旅行に来てたのだから北海道のどこかの病院に運び込まれたのだろう。

が、ここは何処だ? なんて名前の病院だ?

会社や実家の方にはもう連絡はいったのか?

皆心配するだろうな。

妻には先立たれ、旦那は植物状態。

残された家族には酷い罰ゲームだ。

私や香流(かおる)の家族が一体何をしたと言うのだ。

申し訳ない気持ちと不安な気持ちがない交ぜになり絶望的な気持ちになる。

どうすればいい? どうする事も出来ない。

何をすればいい? 何もする事が出来ない。

そんな絶望感が心を支配しかけた時


「……さん、聞こえますかぁ?」


女性の声が聞こえた。

さっき呼ばれたような気がしたが同じ女性なのだろうか。

ちょっと間延びした、それでいて優しい穏やかな声。

でもどこから?

今の私は寝たきりの植物状態だと思っていたのだが。


「さっきからずっと呼んでるんですけど、聞こえてますか~?」


今度はハッキリと聞こえた。

間違いない。 誰かがそこに居る。

良かった、私は独りではないのだ。

はい、聞こえます。 と答える。

いや、念じる。

今の私は言葉を発せない。

だから念じる。

どこのどなたか存じませんが聞こえますか? と。


「はい、大丈夫ですよ。 ちゃんと聞こえてますよ。」


そっか、それなら良かった。

これで少なくとも意思の疎通は出来そうだ。

しかしなんで通じるんだろう。


「それは、私が貴方の意識に直接話しかけているからです。 しいて言うなら念話ですかね。」


っ!! こちらの意識を読まれた!

意識に直接話しかける? 念話!

まるでファンタジー世界か何かだな。

と言うか貴女はどちら様ですか?


「申し遅れました、私神様の眷属でアリアと申します。 以後お見知りおきを。」


は? えっと神様の眷属 ですか?

それって女神様ですよね。

女神アリア様。


「女神アリア様。 なんと言う素敵な響き♪ ですが正確にはまだ神ではなく、神様見習いとでも申しましょうか。」


神様見習い、でも少なくとも人ではないのだから女神様でいいのでは。

その女神様が私に一体何の用があるのだろう。

植物状態になった私を不憫に思い、天国へ連れていってくれるとか?

それとも神様の超常的な力で治してくれるとか。


「実は貴方に謝らなければならない事がございまして、まずは心を落ち着けて私の話を聞いて下さいね。」


はぁ、分かりましたが、話とは一体?


「あ、その前に貴方の意識へ今の周りの状況を見えているように感じるよう映像を送りますね。」

「これで見えると思います。」


女神様がそう言うと私の意識の中に映像が流れ込んできた。

それはひと言で言うと『真っ白』だった。

地面も空も何もかも、空間そのものが白一色なのだ。

でもなぜか地面とか上下は分かるのだ。

とても不思議な空間だ。

もしかしてここは神域とかそう言う場所なのではなかろうか。

嗚呼 そうだ。 今の私はどうなっているんだ?

酷い怪我とかしてなければ良いのだが…


「ちなみに今の貴方はこんな感じです。」


……人魂だ。


あれだ、絵画とかで良く見る幽霊とセットに描かれているやつ。

或いは怪談映画とかで出てくる青白い人魂、まんまそれだ。

これってあれだよな、私は既に死んでいるって事だよな。

あーなんだ、自分はもう既に死んでいるっていう事実を突き付けられた訳だが、これが不思議と落ち着いていると言うか慌ててないと言うか。

こんな物なのか? 普通はもっと驚いて慌てふためくと思うのだが。


「それはですね~」


女神様が答えてくれる。

思いの他慌ててないのは心が壊れないようにプロテクトを掛けてあるからなのだと。

なるほど、女神様の優しさと言うわけか。

優しさついでに生き返らせるとかダメですかね?

ダメですよね?


「はい、いいですよぉ もとよりそのつもりですし。」


ですよね~ いくら女神様でも死者を勝手に生き返らせちゃダメですよ ね?  えっ?

いいんですか? 本当に?


「貴方が死んでしまったのは此方のミスですから。 ただ地球ではなくて別の世界で生き返る事になりますけど。 それで宜しければ。」


別の世界で生き返る。

所謂異世界転生? 私が?

生前()()嗜んでいたラノベとかに良く出てきたアレか。

少々と言ったら少々なのだ。 決してヲタっていた訳ではないからな。

自室の中にラノベやアニメ関連の物が人より()()多かった程度なのだ。

しかし、いきなり勇者になって魔王を倒してくれとか言われたらどうしようか。

それはちょっと嫌だな。 なんかハードル高そうだし。


ところで女神様、別の世界に転生するっていうのは分かりましたが、そもそも私が死んだ原因とは何だったんですか?

まずはそこから教えて頂けませんか? あと、転生先の世界とかも。


「っと、その前に、一応確認ですがあなたのお名前は『じょうのうち かおる』さんで間違いないですよね?」


うん? そうだが、それがなにか?


「間違いなければそれでいいんです。 念の為の確認ですから。 さて、それではご説明させて頂きますね。」


ふむ、何だろうな。 心の隅にほんのちょっと引っ掛かりを感じるんだが…。


「何から説明しましょうか。 まずは私の仕事が何なのかそこから説明しないとダメですよね。私の仕事は地球の維持・管理です。 他の世界からの干渉を防止・予防、次元の狭間や歪みの修復などが主な仕事です。」

「貴方の死因は端的に言いますと、次元の狭間に落ちてしまって、超高濃度の魔力に曝露した為です。 超高濃度の魔力に曝された結果、魂を残して肉体は爆発四散。 車内は肉片や血や脂、髪の毛が飛び散りそれはもう目をそむけたくなるくらい酷い有様でした。」

「見てみます? もし良ければ映像を送りますよ。」


いえ、結構です。 自分の死に様なんか見たくないです。


本来ならこうした事故を未然に防ぐ為に女神様が仕事をしているのだそうだ。

他の世界からの干渉だとか次元の狭間や歪みが観測されると警報(アラート)が出るしくみで、警報が出たら即対処。

それが今回は本当に突発的に発生した次元の狭間だったのだとか。

警報が出た時には私は次元の狭間の直前を走っていてそのまま突っ込んだ為次元の狭間を修復するヒマもなかったのだそうだ。


「問題はここからなのです。 貴方の魂が超高濃度の魔力に曝露してしまったので魔力のない地球での生き返りが出来なくなってしまいました。 それで已む無く魔力のある別の世界への転生となった訳です。」


地球には魔力がない。

そして魔力を帯びてしまった私の魂は地球環境下では適応出来ない。

だから私が生きていける魔力のある別の世界への転生となった。

そっか、地球では生き返れないのか。

今回はイレギュラーな死亡&転生の為地球での生き返りは出来なかったが、普通に死亡した場合は魂は記憶を消され全てをリセットされて通常の輪廻転生の枠に戻るのだそうだ。

今回は通常ではない死に方の為記憶は保持したままなのだという。

別世界とは言えそれでも生き返る事が出来るだけマシなのかもしれない。

それにこれから行く世界には魔力があるのだと言う。

魔力。 なんと心躍るキーワードなのだろう。

少し()()()事のある人ならばこの気持ちを理解出来るはずだ。

魔力がある、即ち魔法がある。

もしかしたら私にも魔法が使えるかもしれないじゃないか。


ちょっとワクワクしてきたぞ。

どうせ一度死んだ身、二度目の生では目一杯楽しまなければ!

これから行く転生先の世界がどんな世界なのか。

あと、可能ならば転生先で役立つ便利な能力とか貰えると助かるのだが。


さぁ、女神様。 ご説明を願おうか。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ