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第173話 過去最高額を記録する

ギルマスが言ってた街のお肉屋さんが私の(くーちゃんたちが狩ってきたお肉だけど)納品するお肉を心待ちにしていると言う。

そしてもっとお肉はないのかと問い合わせが来ているとも。

なので今日と明日はお肉狩りになりましたー。

もう、魔物狩りとかじゃなくて、お金になるお肉狩りってぶっちゃける事にする。

そうゆう事なのでくーちゃんたちには遠慮なく心行くまでお肉狩り(暴力)を堪能して貰おうと思うの。

くーちゃんたちが鍛錬と言う名の暴虐に勤しんでいる間私たちは優雅にお茶したりお昼ごはんを頂いたりしていた。

でも血濡れになったくーちゃんを見た時には流石にちょっと引いてしまった。


「くーちゃん一回洗おっか!」


フルフルと首を横に振ってイヤイヤするくーちゃんを問答無用で洗う。

メロディには水魔法でシャワーを出す係になって貰い、リズとドロシーはくーちゃんを洗う係になって貰った。

水を張った桶に石鹸水を入れてアワアワにしてタオルでごしごしと洗う。


「よっし、洗い終わったよ。」


リズの元気な掛け声が聞こえて来る。

血濡れになっておどろおどろしい風体になっていたくーちゃんがそれはもう美しい高貴なお狐様になっていた。

さ、後は拭くだけって所でくーちゃんが身体をブルブルっと震わせて水気をはらう。


「あ、ちょっと!」

「きゃあぁぁぁあ!」

「冷たっ!」

「う 動かないで!」


はい、もうみんな濡れ濡れよ。

シャツも濡れて透けちゃってるじゃない。


チラ。


チラチラ。


んふー、女の子の透けブラっていいよねぇ。

私の大好物だわ。

みんなちゃんと私の作ったブラしてくれてたんだね、ありがとね。


「コラー、その痴女。目がイヤらしいぞー!」

「そうだー、慰謝料としてお肉を要求するー!」

「恥ずかしいよ。」


頬を赤く染めて恥ずかしがるドロシーの破壊力の凄さよ。

これはもうノックアウト必至ですな。

それに比べてリズとメロディは……。


「オルカのばか♪」

「「オルカのバカー!!」」


ちょっと待って。

同じ馬鹿でも全然違うんですけどっ?

ドロシーのばかはご褒美だからいいの、だけどリズとメロディのは頂けないわ。

そこは可愛らしく媚びるようにハートマーク付けてさ……


「あ、くーちゃんさんが逃げようとしてる!」


メロディの言葉でくーちゃんを見るとそろーっと逃げようとしてピタッと動きを止めこっちを見てた。


「くーちゃん逃げようとしたわね?」


ふふふと笑う私の圧に怯んだくーちゃんは大人しくなってシュンと項垂れる。

それを見た3人は「あははは」と声を上げて笑う。


タオルドライをしたあと最後の仕上げに私が火魔法と風魔法の合わせ技で温風を出して乾かした。

うん、完璧。


「ふわっふわのもふもふだ。」

「くーちゃんさんイイ匂いですぅ。」

「ただでさえ綺麗なコートが光り輝いてる!」


三者三様でくーちゃんに賛辞を贈るとまんざらでもないようでくーちゃんも尻尾をふわんふわんと振っていた。

どうやら嬉しいみたいね。

だったら逃げようなんてせずに最初から大人しくしてたらいいのにねぇ。

まぁ、そんなくーちゃんも可愛いんだけどね。


この日街に戻ってギルドで魔物の買取をして貰った。

例によって量が量だからと受付で直接解体場へ持って行って下さいと言われる。

それはいいんだけど、私たちに対する解体場の職員さんの目が厳しいから出来たら一緒に解体場へ行って欲しいのよね。

一緒に行ってこれは正式なギルドからの依頼だと言って欲しかったんだけど……。

やっぱりダメでした。

窓口のお姉さんもとばっちりで怒られるのはイヤみたいで首を横に振られた。


ひえぇぇ。


これからあの殺伐した雰囲気のとこへ行くのか……。

OMGである。

いや分かってる、調子に乗ってどんどこ持ち込んだ私が悪いんです。

ちょっとだけ勇気を出して、何食わぬ顔で狩った獲物をシレッとストレージから出した。


ドンドンドンドン。

ドドドンドン。

ドカドカドカドカ。


まだあるのか?って非難の目を向ける職員さんを気付かない振りをして更に追加で取り出すと生気を失った暗い目をした亡霊が多数佇んでいた。

そして次の日も同じように夕方解体場へ行くと殺気の籠った鋭い目でギン!!と睨まれた。


怖っ!


ヤバ、すんごい負のオーラが出てる。

ゴメン、私のせいだよね。

でもギルマスから頼まれたから仕方なかったのよー。

これで最後。

本当にこれで最後にするから!

めっちゃ睨まれながら恐る恐る魔物を取り出して並べてゆく。

一体、二体……

どんどんと取り出してゆくにつれて職員さんの視線が厳しくなり殺気が迸るようになる。

これマジでヤバいやつじゃない?

ふと横を見るとリズたちはスススーっと離れて出入り口の所に立っていつでも逃げ出せるようにしていた。

何て事なの。

まさか仲間に裏切られるとは。


「えっと……コカトリスとかバジリスクとか貴重な魔物出しますから……あ、ハイオークもあります! 他にはオーガとかサイクロプスとかも出します?」


すると職員さんは呆れたような目で顎をしゃくってそこへ置いていけと無言で告げる。

ひえぇぇぇぇ。

マジで怖いよぉ。


「あ 後ですね、珍しい火を噴く蜥蜴とか6本足のお馬さんとかもありますけど出します?」


そう言うとクワッ!と目を見開いて「置いてけ」とポツリと漏らす。

どうやらこれは当りだったみたい、あの殺伐とした雰囲気がほんの僅かだけど一瞬緩んだような気がした。

私はその隙に「それでは失礼しまーす!」と残響を残しながら一目散に駆けて解体場を後にした。

そしてそれを見たリズたちに大笑いされた。

もー、私一人に押し付けて、どんだけ怖かったと思ってるのよ!

そう言うとえへへと笑いながらゴメーンと軽ぅく謝られた。

全くもう。

まぁ救いがあるとしたら美味しい獲物は全部買い取りには出さずにある程度の量をキープ出来た事かな。

これらは私のお屋敷で使う予定。


で、次の日の予定だけどどうしようか。

連日魔物の買い取りに出してばっかりだから流石に明日は無理だろうしね。

明後日がお屋敷の受け渡し日でしょ、そうなると恐らく明々後日から引っ越しになると思うのよね。


「明日お休みにする? リズたちも引っ越しの準備とかあるでしょう。」


「そうだね、じゃあお言葉に甘えてそうさせて貰おうかな?」


「ん、分かった。ドリィはどうする?」


「私もそうしようかな。と言っても私の個人の持ち物なんてほんのちょっとしかないからすぐ片付くと思うけど。だから明日の午前中で終わっちゃうかなぁ。」


「そうなの? じゃあ午後から二人でリズたちの手伝いに行こうか。」


「あ、そうだね。それがいいね。四人でやればその分早く終わるもんね。」


「ええー、いいよ。そんなの悪いって。」

「そうだよぉ、自分の分くらい自分たちでするよ?」


「いいからいいから。そんな遠慮しなくたっていいよ。」


今更じゃない、私たちの間で遠慮は無用だよ。

ドロシーもそうだよと追撃する。


「そう? 何かゴメンね。手伝いお願いしていい?」

「ほんとにいいの?」


リズとメロディが申し訳なさそうに聞いて来るけどそんな顔する必要もないし遠慮も要らないよ。

私とドロシーはドンと胸を叩いて「任せてよ」と笑うと「実はどうしようかと思ってんだ」と言ってリズが笑う。

うん、これで明日の予定は決まりっと。

明日はお昼ごはん持って行くからお昼の用意はしなくていいよー。

そう言って私たちは別れた。




明けて翌日。

私は午前中にギルドに寄って買い取りに出しておいた魔物のお金を受け取りに行く。

結局なんやかんやで5日分の魔物だからかなりの量をギルドに出したのよね。

今回はくーちゃんたちも遠慮なく狩って来てたのであれだけの量をギルドに出してなおまた手元には相当量のお肉が残っている。

ここんとこいつもリズたちと一緒だったから一人でギルドに入るのって久しぶりかも。

くーちゃんたちを連れてギルドに入ると「おや?今日は一人なのか?」みたいな視線を感じる。

そのままずんずんと奥へ進んで窓口の所まで行くとミランダさんが居たのでまずは一声かける。


「おはようございますミランダさん。買い取りに出してあった分の受け取りって出来ます?」


「あら、おはよう。 お金の受け取りね、ちょっと待って今確認するわね。」

「よっ、おはようさん。珍しいな、今日は姫さん一人なのか?」


ミランダさんの横に寄り添うようにギルマスが窓口に座っている。

はい?

この人この一番忙しい時間帯に何やってんの?

ギルマスの仕事はどうしたの?


「おはようございます。 ギルマス、ミランダさんの仕事の邪魔しちゃダメですよ!」


だってほら、ギルマスが窓口に座ってるもんだから周りに居る冒険者たちも微妙な顔してどう反応していいか迷ってるじゃない。


「何を言ってるんだ。俺はこうして日々職員の仕事ぶりを見てるんだぞ? こう見えても気づかいの出来る上司だからな。」


「ギルマスの言う職員てミランダさん限定じゃないですか。 他の職員さんにも気づかいしてます? ミランダさんにだけ優しくしてたらダメなんですよ?」


「かー、かてー事言うなよ。 俺の優しさは有限なんだよ。」


「だからそれがダメなんですってば! みんなに公平に気づかいして下さいよ。大体私にばっか無理難題押し付けてぇ…」


「カカカ、そんな可愛らしくむくれるなよ。それに多少厳しくても姫さんなら何とかしてくれるだろうって思ったから声かけてんだよ。」


またそんな事言ってぇ。

そのまるで信頼してますぅみたく言わないでくれます?

そりゃ私も仕事だからやりますよ、やりますけどもうちょっと簡単なお仕事回して欲しいんですよ。

ぷくりと頬を膨らませ抗議の意を伝える。

が、当の抗議された方のギルマスは全く意に介さずいつものように笑っているだけ。

全くもう。


「あらなぁに、ガスパーったらオルカさんを口説いてたの?」


ほら、ミランダさんが来ちゃったでしょ。

ギルマスなんか怒られちゃえばいいのよ。


「んん?俺の愛はオマエだけだぞ。」

「他の女の子にも言ってるんじゃないの?」

「そんな事あるか、俺の目を見ろ!」

「いつもと一緒ね。目つきの悪い。」

「いや、そうじゃなくてだな。」

「んふふ、分かってるわよ。」


「はい、ごちそうさま。イチャつくのは仕事が終わってからにして下さいね。それより買い取りの方どうでした?」


正直イラっと来るので目の前でイチャイチャしないで欲しいわ。

周りの冒険者もそれは同じようで渋い顔をしながらイチャつく二人を見ている。

ね、二人ともそろそろお仕事しましょうか。


「もー、みんなそんな怖い顔してぇ。 ほら笑って笑って。」


いや、ミランダさんあのね、一体誰のせいだと思ってるんですか。

後ろもつかえてますから、ね。

お願いしますホント。


「はいはい、分かったわよ。ちゃんと調べて来たから。それじゃあ言うわねっと。」


ミランダさんは少し身を乗り出すようにして耳元に顔を近づけて来る。

小声でそっと教えてくれたその金額を聞いて驚いてしまう。


はいっ?

マジですか?

思わずミランダさんを凝視すると、ミランダさんはニッコリ笑って頷く。


「本当よ。」


「うわぁ、何と言うか…ヤバイですね。」


「ええ、私も吃驚したわ。」


「いち個人の魔物の買い取り額としてはこのギルド始まって以来の最高記録だそうよ。それもダントツで。」


「うそ……。」


まさかそこまでとは。

うーん、げに恐ろしきかな。

今後はくーちゃんには程々に手加減するように言わないといけないかもね。

視線を下に向けると尻尾をバッサバッサと振って得意満面な顔でこっちを見ているくーちゃんと目が合った。

くーちゃんは私の要望通りに頑張ってくれただけだものね、くーちゃんは悪くない。

だとするとこの場は主としてちゃんと褒めてあげないといけない場面よね?


「くーちゃん・さくちゃんありがとね。」


そう言いながら二人をわしゃわしゃと撫でまくるとそれはもう嬉しそうにしていた。

いや、しかしまさか大台を超えて来るとは……。

因みにそれって解体手数料が引かれた後の金額ですか?そう聞くと口をへの字にして「そうなのヤバイでしょ?」みたいな感じでミランダさんは頷いた。

そっか、まんま掛け値なしの金額なのか。

おっそろしい。


そっかぁ、小金貨152枚かぁ。



……。



…………。



お屋敷の維持管理と使用人のお給金ってどれくらい掛かるのかしら?

これだけの金額だと何年くらい、いいえ何十年も持つんじゃない?

そう思えるくらいのとんでもない金額よね。

それを僅か数日で稼ぎ出すこの子たちって……。

ま、まぁ深く考えるのはヤメよう、考えた所でどうなるもんでもないしね。

さて、このとんでもない金額をみんなにどう伝えたらいいものやら。

まずパーティ資金として小金貨8枚徴収するとして……でも住む家も貰ったし実際はもうそこまでお金が必要って訳じゃないのよね。

徴収後の金額が小金貨144枚で、その内私の取り分が3/4だっけ?

それでも小金貨108枚にもなっちゃう。

で、残りが小金貨36枚、それをリズたち3人で割っても1人頭小金貨12枚かぁ。

きっと遠慮するだろうなぁ、いや、きっとじゃなくて絶対に遠慮すると思う。

今私が考えるべきはどうやってみんなにお金を受け取って貰うかだよね。

前の時ですら受け取りを渋ってたものねぇ。

はぁぁぁ、まさかお金稼いだのにそれで頭を悩ます事になるとは思ってもみなかったわ。


この件はあとで考えるとして、取り合えずドロシー迎えに孤児院に行かなきゃ。


しかしすごい金額よねぇ。

ホントどうしましょ。







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