表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
169/174

第169話 なにあの甘酸っぱいのは!

ドロシーと手を繋いだまま、なるべくいつもと変りない風を装ってリズとメロディが待つ冒険者ギルドの前まで歩いて行く。

大丈夫、私もドロシーもいつもと同じ ハズだ。

普段からよく一緒に居るから、別に手を繋ぐのだって初めてじゃないし、そもそも初心な恋愛初心者じゃあるまいしさ、昨日の今日で私たちの態度がそんな変わる訳ないのよ。

いつもと一緒いつもと一緒。

そう言い聞かせながらリズたちに近づいて行く。

途中くーちゃんたちが私とドロシーを見て((…………。))と無言の念話を飛ばしてきた。

何故だろう、くーちゃんたちの目がまるで子供でも見るようにとても優しい目をしていたような気がする。


「「おはよう!」」


ドロシーと一緒に朝の挨拶。

これ大事。

仲が良いから挨拶しなくてイイなんて事はなくて、仲が良いからこそそうゆうのはキチンとしないとね。

『親しき中にも礼儀あり』

仲が良いからこそ礼節は重んじないといけない、非礼は不和の元だからね。


「ゴメーン、待った?」


「うん、待った。」


いや、メロディさんや、そこは普通「今来たとこ。」って言うんじゃないの?


「にゃははは。うそうそ、今来たとこだよ。」


そう言ってペロッと舌を出すメロディ。

こうゆう茶目っ気のある所はメロディらしいね。

メロディは我がパーティーの和み&お笑い枠担当だから。


「そう言えば今日はドロシーと一緒に来たんだー。」


え、あ、うん。

そう。


「ドロシーを迎えに行って、そんで一緒に来たの。」


「ふーん、そうなんだ。 でもなんかいつもと違うくない? なんだろう、なんか二人よそよそしくなぁい?」


ギクッ!


ややや やだなぁもう。

そんな事ある訳ないじゃない、やーねー。

ねー、ドロシー。


「う うん。 そそ そうよ。いつもと同じだよ。」


ドロシーめっちゃ焦ってるし。

なんなら慌てまくってるのもモロバレだし。


「所でさ、いつまで手繋いでんの? それにいつもよりちょっとだけ距離が空いてるように見えるんだけど?」


ギクギクッ!


それまで黙ってたリズが鋭い指摘をしてくる。

お主デキルな。


思わず繋いでいた手をパッと放す。

それまで繋いでいた温かなドロシーの手の感触が消えた事で寂しくなって手をニギニギしてしまう私。

ドロシーは顔をピンクに染めながらちょっとだけ寂しそうにしながら私の方へ身を寄せて来る。


「「んんーっ?」」


二人の目。

そんな訝し気な目で見ないでくれます?


「なーんか怪しい。」

「確かにそう言われてみれば怪しい気がする。」


リズの言葉にメロディが同意し二人してジッと私たちを見ている。

そんなに見つめないで。

別になーんにも怪しい事なんかないから。


「別にいつもとおんなじだよ、普通だよ?」


「いやいや、そう言ってる時点で普通じゃないし同じじゃない。」


ぐっ、鋭いな。


「ほらほら、白状しなさい。」

「そうだぞー、吐いた方がスッキリするぞー。」


犯罪者じゃないんだから!

別に悪い事なんて何もしてないもん!


「な 何でもないから本当に。」


私がそう言うも「ホントかなぁ。」、「なーんか怪しいよねー」とジトッとした目で見て来る二人。


「ね、人に言えないような事はしてないよね?」


ないないない!

私とドロシーはブンブンと首を横に振る。


「アリア様に誓ってそれは絶対ない!」


私がそう言うとドロシーも一緒になってヘッドバンギングかと思うほど激しく首を縦に振っている。

ま まぁ、私たち二人が異世界人だって言う人には言えないような存在ではあるけれど人には言えないような事は何一つしていない。

それは確かだから。


「それならイイけど。」

「そもそもオルカやドロシーがそんな事する訳ないってリズだって分かってるくせにぃ。」

「それはそうだけど、一応ね。」


ワリとすんなり引き下がったなと思ったら信用はしてくれてたんだ。

それ聞いて何かホッとした。

取り合えずここだと往来の邪魔になっちゃうから中に入らない?

それとも依頼とかは見ずにこのまま街の外に行く?

リズたちにそう聞いたら、


「んー、このまま外行こっか! 常設依頼こなしてもいいし、他の魔物狩ってもいいしね。」と。


「リズがそう言うんなら私たちはそれでいいけど、メロディは?」


「私もそれでいい。 出来たら美味しいお肉狩りたい!」


相変わらずブレないね。

お肉至上主義者め。


「そうゆう事なら草原行って久しぶりにくーちゃんたちに何か狩って来て貰おうか。 くーちゃんたちも偶には楽しみもないとね、やってられないものね。」


「「りょーかーい。」」


「私はオルカに従う。」


(くーちゃん、さくちゃん、そうゆう事だから今日はお楽しみの日だよ!)


(左様で御座いますか、爪がうなります。)

(やった、楽しい楽しい狩りなのです。)


そっか、「腕が鳴る」じゃなくて「爪がうなる」のか。

成る程、確かにそうかも。

言い得て妙だね。


「よーし、レッツラゴー!」

「「おおーっ!!」」

「ぉぉー。」


ドロシーだけが控えめに小さく「ぉぉー。」と言っていたのが可愛らしくて可笑しかった。



いつものように門兵さんに市民カード見せて門をくぐり街を出る。

今日も晴れ、朝から入道雲がもっくもっくと空に浮かんでいる。

私たちはくーちゃんを先頭に街道を歩いている。

くーちゃんには開けてて見晴らしが良くて木陰がある休憩するのに丁度いい場所まで案内して貰える?って頼んだら、耳をピコピコさせながらすぐに動き出して案内してくれている。

今そんな状態。

くーちゃんたちが先頭で私たちは真ん中で右側にドロシー、後ろにはリズとメロディが歩いている。


昨日の事もあってドロシーが、ルカが側に居るってだけでなんかソワソワするって言うか緊張するって言うか……いや、緊張とは少し違うか、気になって気になって何とも言えない落ち着かない気持ち。

だってもう二度と会えないって思ってたのにそれが転生してて同い年になって横を歩いてるんだよ?

なんかフワフワする、そう、フワフワしたような胸の奥が甘くなるような切ないようなそんな感じだから意識するなってのが無理ってものよ。

自分の頬っぺが熱く赤くなってくのが分かる。

うー。

どうしていいのか分かんないよー。

前はこんな時どうしてたっけ?

なに話してた?

ドロシーの気が紛れるような何か気の利いた台詞とかない?

ちょっと焦りながら横目でドロシーを見ると頬をピンクに染めてこっちを伺うようにチラッと見てる。


ドクン!


それだけで心臓が跳ねた。

か 可愛いーっ!

んもー、私のドロシーったら可愛い過ぎでしょ。

ヤッバ。

これは辛抱堪らんです。


……なんだけど妙に意識しちゃって実は何も出来ずにモジモジしてるだけの私が居る。


今までだったら何にも考えずにそれこそ当たり前に普通にドロシーの手を握ったりしてたのに、今は意識しちゃって手を握るどころか触れるのさえも躊躇ってしまう。

ほんのちょっと右手を動かすだけでドロシーの手に触れる事が出来るはずなのに、そのちょっとがやけに遠く感じる。

私いつからこんな臆病になっちゃった?

ヘタレにも程があるでしょ。

私とドロシーは両想いなのよ両想い。

別に手を繋ぐくらいどうって事ないのに、今までだって昔だって普通にしてたのに。

なのに……なんでこんなにドキドキするんだろう。

ねぇ、なんで?

ドロシーの事を想うと胸が苦しい、切ない、心臓がドキドキして早鐘を打ったようになって心臓の音がうるさい。

ドロシーの白魚のような細くしなやかな指に触れたい。

そう思えば思うほど逆に動けなくなってしまう。


勇気を出してそっと右手を動かしてみる。


ほんのちょっとだけ右へ。


あ、でもドロシーに嫌がられたらどうしよう。

そう思うとこれ以上動かせなくなって手を引っ込めてしまう。

でもやっぱり手を繋ぎたい。

だからまた手を動かす。

今度はさっきより少しだけ大きく動かす。

触れるか触れないか、そのギリギリの所で手が止まる。


やっぱりダメ、なんか恥ずかしい。


そう思っていたら不意に柔らかい指が私の手に触れる。

ドロシー?

横を見るとドロシーが熱っぽい目で私を見つめていた。

ドロシーも同じ気持ちだったんだね。

それが良く分かって何かすごく嬉しくなって泣きそうになってしまう。

えへ。

幸せ♪


「ドリィ、好きよ♪」

「うん、私も♪」


私たちは笑顔で見つめ合う。

それから恋人繋ぎをする。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「ねぇリズ、あの甘酸っぱくて初々しくて付き合いたての初心な恋人同士みたいなの、あれなに? 前の二人何かあったの?」

「知らない。メロディこそ何か知らないの?」

「知らないから聞いてるんだけどさ。 それにしても何かすっごい甘々だねぇ。甘すぎて胸やけしそう。」

「同じく。」

「私どれだけオーク肉食べても胸やけなんかした事なんかないけど、これはダメ、もうお腹いっぱい。」

「私も甘い物は好きだけど人の甘々なの見るのはちょっとねぇ。ごちそう様って感じ。」

「オルカって元々ドロシー愛の重い子だったけど、あんな蕩けたような顔もするんだねー。あんな顔してるの初めて見たから吃驚したよ。」

「確かに!それ分かるぅ。 けどそれ言ったらドロシーだって普段はもっと冷静なイメージだったからあそこまでメロメロになってんのも初めて見たよ。」


「リズリズ、オルカが手を繋ごうとしてる。」

「しっ、メロディ声が大きいって。聞こえちゃうよ。こうゆうのは見て見ぬふりをするのが大人の対応だよ。」

「あ、そっか。そうだね。」

「ほらオルカ頑張れっ。」

「そうそう、手繋いであげないと。」

「あーもう、何でそこで手を引っ込めるのよ!そこはガっと行きなさいよガっと!」

「ヘタレか、オルカってヘタレ痴女だったんだ。」

「ぷ。メロディ上手い事言うねー。」

「もー、いつもは人前でお漏らししちゃう癖にこうゆう普通の事が出来ないなんてどんだけなのよ。」

「まーまー、オルカも普通の女の子だって事よ。 あ、ほら動き出した……と思ったらやっぱり止まってる。」

「んーっ、あのもどかしい動き見てるとイライラする。女は度胸だよ!そら、行けっ!」

「メロディ声が大きいって! 待って、ドロシーが動いた。」

「ついにドロシーが動いた! ワクワク。」

「「繋いだーっ♪」」


「ねぇねぇメロディ奥様今の聞きました?オルカったら『ドリィ好きよ♪』だって。」

「聞きましたわリズ奥様、その返事が『うん、私も♪』ですって♪」

「「若いっていいわねぇ♪」」



◆◇◆◇◆◇◆◇



「「後ろの二人五月蠅いっ!」」


もーさっきからなに後ろでごちゃごちゃ言ってんの、五月蠅くってしょうがないじゃない!

せっかくいい雰囲気だったのに台無しよ。

人がなけなしの勇気振り絞って手繋ごうとしてんのに茶化さないでよ!

私たちの愛の語らいの時間を邪魔しないで。

大体なによ、甘々で胸やけするとかヘタレ痴女とか。


「そこは余計な事言わないで私たちを祝福してよ、もう。」


「ちゃんと祝福してるじゃん。ねーメロディ奥様。」

「ええ、そうですとも。リズ奥様。」


「近所の井戸端会議してるBBAか!」


「あー、今BBAって言ったー!ひっどーい!私たちオルカの1コ上なだけなんですけどぉ?」

「そうですよー、今のは撤回を要求しますぅ!ついでに美味しいお肉と添い寝も要求です。」


「ゴメン、BBAは撤回する。それはあんまりだよね、ほんとゴメン。 だからBBAじゃなくて近所のオバさまくらい?」


「「一緒だし!」」


「え、でも撤回してちゃんと言い方も変えたよ?」


「言い方変えただけで言ってる事一緒じゃん。」

「そうだそうだー。」


「いや、でも今のリズとメロディはどこからどう見ても只の噂話好きの近所のオバちゃんにしか見えなかったよ。」


私がそう言うとドロシーがそれに続けて口を開く。


「それにメロディさん、お肉はまぁまだ分かるとして、どうして添い寝が必要なんです?」


「ん? いや、だからたまにはオルカのおっぱいに顔うずめて添い寝したいなぁなんて♪」


「却下!」


「えぇー、横暴だぁ。独り占めいけないんだぁ。」


「却下と言ったら却下です! オルカは私だけの……私だけの……」


そこまで言ってドロシーが顔を真っ赤にして口ごもってしまう。

それを見てニヤニヤ笑いをするメロディとリズ。

ねー、めっちゃ悪い顔して笑ってるよ?


「オルカは私だけの……なに? ほれ、言ってみ。」


うっわー、メロディ鬼畜か。

何もそこで追い打ちかけなくても良くない?

ドロシー顔真っ赤にしてぷるぷるしてるじゃない。


「ほれほれっ。はよう言え。」


そこにはそれはもう見事な悪人顔で笑うメロディが居た。

ドロシーは顔を赤くして「うーうー」と唸っている。


「もー、メロディそれくらいにしてやりなよー。ドロシーが可哀想じゃない。それにそれ以上やるとオルカに切り刻まれても知らないよ?」


程々の所でリズが助け船を出してくれる、けどもうちょっと早くても良かったかな。

それと別に切り刻んだりはしないよ。

ドロシーがまだ顔を真っ赤にして口をハクハクとしてる姿は可愛らしいんだけど、ちょっと可哀想だなと思ったので私が代わりに言う事にする。


「ドリィは私の大切な人よ。 これでいい?」


「だよね、知ってた。」


メロディがさも当たり前って感じで軽くそう言う。

なんで分かってる事を聞くかなぁ。

私の言葉を聞いたドロシーは「オルカが私の事大切な人って言った……大切な人って……」と真っ赤になって俯いて呟いている。


「それをね、ドロシーの口から聞きたかったの。」


悪びれもなくそう言ってテヘペロするメロディ。


「で、二人に何があったの?」


リズが興味津々で聞いて来るけど、これは何と答えたものか……。


「んー。」


返事に窮する。

今はまだ言えない事が多いのよねぇ。

リズたちにはいずれはきちんと全部話すつもりではあるけれど、今はまだその時ではないのよね。

だから今言える事は、


「二人の気持ちが通じ合ったから。」


これに尽きるかな。


「「それって最初からじゃん。」」


何を分かり切った事を!て顔をするリズたち。

そうなんだけどね。

なんだけど、きちんと確認し合ったのは昨日だから。

なので、


「今はこれで納得してよ。いずれちゃんと話すからさ。」


そう言って見つめ合う私とドロシーだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ