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第16話 狼が出たぞぉ~!

いつもの野営地に戻ってきた私は早速夕飯の用意を始める。

今日はいつもの簡易竈を二口分作る。

1つはメスティンでごはん、もう1つはお肉を焼く用。


「おっにく、おにく♪」


思わず鼻歌が出ちゃう。

だって嬉しくない? お肉だよお肉。

今までみたいに干したヤツじゃなくって、やっと生肉が手に入ったんだから。

今日の晩ごはんは獲れたての兎肉のローストです。 ぱちぱちぱち。

地球産のより2倍くらい大きいだけあって、1羽でも結構な量あるね。

私一人だと3食分、ちょうど1日分てとこね。

お肉に塩と香草を刷り込んで少し置いてなじませる。

その間に付け合わせの野菜類を用意する。

小さい片手鍋でお湯を沸かして、百合根みたいな根菜類を見つけたのでそれを湯がいて付け合わせにしよう。

あと、茸も採取してあるのでそれも使おうかな。

フライパンを出して竈にかけて温めて と。

骨付きもも肉に、むね肉、前足部分、肋骨部分。


ジュージュー


お肉が焼ける香ばしい匂い。 耳をくすぐるパチパチ音。

ゴクッ

喉が鳴る。

水を少し足し蓋をしてじっくりと蒸し焼きにする。

蒸し焼きにしてる途中に付け合わせをフライパンに投入。


出来上がるのを待ってる間に炊き上がったごはんをお皿によそう。

炊き立てごはんの甘い香りがふわりと立ち上る。


「もう、いいかな?」


フライパンの蓋を開けると、暴力的なまでの良い香りが鼻腔を刺激する。


「あ♪」


もうダメ、この誘惑には抗えない♪


「いただきます。」


もも肉を1本掴み ガブリッ!

口の中がジューシーな肉汁で溢れる。


「おいしいっ♪」

「ヤバ、あつっ。」


はふはふしながらガッツく。 これは止められない。

ヤバい、美味しすぎる!

ほっぺたが落ちそうってのは正にこの事だわ。


お肉+ごはん=美味しいは正義

はい、優勝~!


あまりに美味しくて結局半身食べちゃった。

ちょっと食べすぎ。 お腹苦しい。

げぷ。 あら、ごめんあそばせ。


残った半身はストレージに収納して明日食べようっと。

こうゆう時 時間経過無効って便利だよね。

食器類を『洗浄』の魔法で洗って『乾燥』させたらストレージにお片付け。

歯磨きして、『鎮痛』の魔法かけて、結界石を作動させたら


「おやすみなさい。」



翌朝、少し身体が重ダルいけど『鎮痛』魔法のおかげで夜中に痛みで目が覚める事もなく寝られた。

朝いつものように朝食を摂った後ステータスをチェックする。

そうしたらまたスキルが増えてた。

一体どうなってんの?

『狙撃』と『身体強化』だって。

『狙撃』はアレね、銃で撃ったから。 それしかないよね。

じゃあ『身体強化』は?

ん~多分なんだけど、銃で狙いをつける時に目に魔力が集まっちゃったのがそうなんじゃないかなと。

身体の部分強化、そんな感じなんだと思う。

私のHPってすんごく伸びにくいみたいで体力の底上げは中々難しそうだから、今後は『身体強化』でちょっとでもHPの上乗せ出来たらいいなって。

『身体強化10倍』とかちょっとカッコよくない?

『狙撃』スキルは伸ばそうと思ったら撃つしかない!

撃って撃って撃ちまくる。 これしかないよね。

だから私は狩りに出る。

美味しいお肉をゲットするため兎さんを狩るのよ。


『探知』発動。

不思議な事に最初の拠点の周りだけはなぜか獣の反応が少ないのよね。

反応があっても小動物ばかり。

中型や大型の獣ってこの周りではまだ見た事がない。

森を探索してると時々、猪とか鹿とか見かける事はある。

遠目にだけど1回だけ狼を見た時はあれには正直ビビッた。

たまたま運良く風下だったのと、遠かったので大丈夫だとは思ったけど全力の『気配遮断』で即行逃げた。

あの頃はまだ銃を持ってなかったからね、戦ったら確実に負けてたと思う。

この厳しい森の中で戦いに負ける、イコール『死』だもの。

折角生まれ変わって女神様から頂いた命、私だってまだ死にたくはないわよ。

逃げるが勝ちってね。


いつもの拠点を離れ森の中心部へと歩いて行く。

『探知』に小さい反応がポツポツと現れ始める。


「ふふふ、いるいる。」


私はほくそ笑む。

今の私ってきっとすんごい悪い顔してんだろうね、悪女ね悪女。

まずは近いところから、風下に周わって『気配遮断』をしながらゆっくりと近づいて行く。


「居た、 でも角がない?」


いつもの角兎じゃない?

それとも雌だから角がないのかな?

ちょっと疑問だったので『鑑定』をかけてみると「爪兎」と出た。

「角兎」は額に生えたその角で攻撃し、「爪兎」は前足の爪で攻撃してくる。

「角兎」と同様、最弱の類の魔物で食肉として普通に流通しているんだそう。

そ、だったら狩り決定ね。


ストレージから銃を取り出し撃鉄をゆっくりと起こす。

カチリ。

そっと引き金に指を掛ける。

呼吸が落ち着いたら息を止めそっと引き金を引こう  とした瞬間


「あっ。」


逃げて行ってしまった。


っ!!! 


と同時に『警戒』に反応がっ!

なに? 何が起こったの?

『探知』した範囲の一番外側辺りからこちら方向に向かって少し大きい反応が高速で動いてくる。

それに伴い小さな反応が蜘蛛の子を散らしたように逃げて行く。

これってなんか拙くない? もしかして危険が迫ってる?

私はすぐにストレージからもう1丁の銃を取り出し2丁拳銃に構える。

高速で動いている物体の方向に銃口を向け意識を集中させる。

緊張でこめかみがキンキンする。

反応が近づいてくるのが分かる。

来るっ!

どうやら前の動物を追いかけて後ろの……狼っ!

逃げているのは、キツネ? それも真っ白なキツネ。

追いかけてるのは3匹の狼。

逃げているキツネはくるりと方向を変えこちらには来ずに狼を従えてどこかへ行ってしまった。


ふうぅ。

緊張感から開放されると同時にふるふると身体が小刻みに震える。

良かった、狼と戦闘だなんてぞっとしないわ。


追いかけてたあの狼、『鑑定』したら「森林狼」と出た。

森に良く居る一般的な狼みたい。

普通の森なら上位の魔物なんだって。


今の騒動で小動物はみな逃げていってしまった。

仕方ない、また探そう。

さっきの真っ白なキツネが気になってしまった私は『探知』と『警戒』の他に『探索 白いキツネ』をかけた。

さっきの子は私の探索範囲には居ないみたいね、どこか遠くへ行ったかな。

上手く逃げ果せているといいけど。


また森の中をウロウロと動き回る。

探知に小動物の反応が引っかかった。


「私のウサギちゃ~ん」


ちょっとテンションが可笑しな事になってるけど気にしないで。

美味しいお肉に心が浮き立つのが分かる。

逸る気持ちを抑えながら風下から獲物にゆっくりと近づいてゆく。

今度こそ。


っ!!


また来た。 さっきのキツネだ。

まだ追われている。

逃げて! 頑張って!

私は全力で『気配遮断』しながら心の中で応援する。

それにしてもあの狼めー。

キツネさんが可哀相じゃないか。


「ギャイン!」

「キャーン」

「ギャギャ」

「「グルルル」」


キツネと狼達の鳴き声が森の中にこだまする。

戦っているのは分かるんだけど姿は確認出来ない。

1対3ってちょっと酷くない?

ザザザザ ガサガサ

草が擦れる音が遠のいて行く。

あーまただ。

キツネさん今度こそ逃げ切れるといいな。


なんか今日は森の中が騒々しいせいか兎などの小動物が怯えて動かなくなっちゃったみたい。

居るには居るんだけど見えないとこに隠れてるんだよね。

今日はお肉はなしかなぁ。

兎肉美味しいからもっと欲しかったんだけどね。残念。

仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。

でも何にも収穫なしって訳にはいかないからいつもの河原に行って簀子でお魚採りでもしようかね。


それから数時間後、お魚を20匹程補充して拠点に帰還です。

もうそろそろ拠点に着こうかと言うところで『探知』に反応があった。


少し大きい反応がゆっくりと私の探知範囲内へと入ってくる。

ゆっくりとゆっくりと。


そして止まった……。


どうしよう。

怖いけど確認しなきゃだよね。

私は意を決して反応の動きが止まった場所へと向かった。




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