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第159話 薪窯とパーティー活動費

ほっぺにソースが付いてたんでそれ取ってあげてペロッてしたら顔赤くなったからお熱でもあるのかと思っておでこピトッてした。

そうしたら二人ともテーブルに突っ伏して身悶えた。

リズには「女たらし」と言われメロディには「責任取りなさい」と言われる。

あっれー?


どうしてこうなった?

Why?


けれど当の二人を見ると幸せそうにしてるので問題はないと思う。

ですよね?



「お楽しみ中の所申し訳ありませんが……」


お楽しみ中って何よお楽しみ中って。

それだと私が二人を揶揄って楽しんでる悪女みたいじゃない?

それにそんな本当に申し訳なさそうに話さないで欲しいんですけど?

まぁ、それはいいとして。

で、グレイソンさんの用事って何でしょうか?


「おお、そうでしたそうでした。 実はですな、先日の食器を焼いたあの薪窯ですがあれを侯爵家にお譲り頂けないかと主から言付かっておりまして。」


ほ?

今なんと?


「あの薪窯 ですか?」


「はい、左様で御座います。」


ちょっとだけ考える。

あれはあれでいい物なのよね。

あればあったでまた新しい食器作りたくなったらいつでも作れるし。

でもね、でもなのよ。

別にあの薪窯じゃなきゃダメって事もないのよね。

あの薪窯を改良したらもっともっと使い勝手のいい物が出来るんじゃないかと思ってさ。

それを考えたら別に譲るのは問題ないかなぁって私はそう思う訳。

ここまで考える事約3秒。


「いいですよ。」


「そんなまたあっさりと……。」


私が簡単に了承したものだから逆に驚かれてしまう。

こっちの世界で食器と言うのはステータスその物。

良い食器、高級な食器はそれを持っているだけでその人の権勢を示す。

そして食器製造は元来職人や工房の秘匿事項でもある。

それが窯ごと手に入るとなれば驚くのも無理からぬ事。


「窯ならまた作ればいいだけですし。」


そうなのよね。

私の『創造魔法』さんに掛かったら窯を作るのだってそう大変ではないのよ。

だから簡単に考えちゃってるってのはあるかもね。


「有難う御座います。 では如何ほどでお譲り頂けるのでしょうか。」


「へっ?」


「いえ、代金で御座いますが。」


いえいえ、私はお金なんて取るつもりはこれっぽちもないですから。

そう言うと更に驚かれた。

そんなに吃驚する事?

私普通よね?


…………。


ジトッとした視線が返って来るだけだった。


「このメイワースと言う領地は交通の要衝であったり冒険者が多いなどの特色はありますが特にこれと言った産業は育っていないのが現状なのです。」


そう前置きしてグレイソンさんの説明が始まる。


「そんな中貴族や裕福な商人などに引き合いの強い高級食器を作りそれを販売すると言うのはとても魅力的な事なのです。」


これまで高級食器などは他領や外国から購入していたのだがそれが自領で生産出来るとなるとどうなるか。

普通の食器等はメイワース領でも作るのは作っていたけれど高級食器までは生産出来ていなかった。

それが今後可能になるかもしれない。

食器のような高額商品は利幅も大きく、即ちそれは領地とその民を潤す事に他ならない。

その為には今ある工房や職人を一所に集め一旦は領主主導で事業を始める。

そうやって事業が軌道に乗ったら民間におろす予定なんだとか。

ついてはその為に私の持っている薪窯を有償で譲って欲しい、そしてその複製を作る事を許可して欲しいとの事。

その為の代金についてはグレイソンさんに一任してあるので相談して欲しいと。


「はい、いいですよ。もう全部何もかも許可します。領主様の都合のいいようにやっちゃって下さい。」


私は一も二もなくそう返事をするとまたも驚かれる。


「そう言う訳には参りません。」


グレイソンさんの言葉に少しばかりの怒気が乗る。

あれ?

何か選択間違った?

でも本当に何も対価は求めてないのよね。


「あんなに大きなお屋敷を頂いてしまったら何か申し訳なくって。せめてこれくらいしないとお返し出来ないと思いまして。」


だって小金貨500枚超えの家ですよ、それをポンと贈るって……。

そんな豪邸を貰っておいて「はい、そうですか」って訳にいかないじゃないの。

せめて私に出来る何かでお返しでもしないと私の気が休まらないのよー。


「褒賞は褒賞、対価は対価ですぞ。」

「そうですわお姉さま。お金はある所からガッポリ取るのが鉄則ですわ!」


アシュリー様言い方!

貴族のお嬢様がガッポリなんて言葉使っちゃダメでしょうが。

それにある所から取るって、そのお金のある所って貴女のお家なんですけど?

自分でそれ言っちゃダメだと思うの。

本当にお金はいいですから考え直しませんか?

別にお金が欲しい訳じゃないですし、あの食器作りにしたって趣味みたいな物だし。


「趣味で高級食器作りとはこれまた。」

「聞いた事もない趣味だぞ。」

「やっぱり非常識ですわ!」

「もはや常人の感性では理解出来ませんね。」


「「「まぁ、オルカだしねー。」」」


そこの3人! シレッとディスってんじゃないわよ。

アシュリー様たちもどうしてそうゆう解釈になるのか理解に苦しむわ?


「兎に角、お代はいいですから。」


「しかしですな……」


「私も借りてばっかりじゃどうにも落ち着かないですし返せる時に少しでも返しておかないと。」


「それを言うならばお嬢様をお救いした恩人に何を持って恩に報いれば良いのやら分からなくなります。」


「それはお屋敷を頂く事で済んでますし。」


「そうですか。では、薪窯の代金は正当な額を算出してお支払い致しましょう。」

「そうですわ! ガッポガッポですわ!」


ん?

なぜそうなる?

私は単に貰い過ぎは気持ち的に落ち着かないってだけなんだけれど……。

堂々巡り。

私とグレイソンさんどちらも受けた恩は返したい。

その想いが変な方向にいっちゃってどうにも話が纏まらない。

これは困ったね、どうしようか。

私も貰いっぱなしは性格的にどうにもね。

そんな時に控えめにそっと手を挙げてドロシーが提案があると申し出る。


「あの……ひとつ提案があるんですけど宜しいですか?」


「お聞きしましょう。」


突然のドロシーの提案にも嫌な顔ひとつせずにこやかに頷いて了承してくれるグレイソンさん。

流石は侯爵家の執事、人間が出来てるねぇ。


「オルカは商業ギルドの会員でもありますし実際に幾つか特許も取っていると聞いています。なのでまずは食器製造の特許を取得して、食器の種類毎に割合を取り決めるとかして特許料として印税を支払うと言うのは如何でしょうか。」


「ふむ、一考の余地ありですな。検討致しましょう。」


ドロシー、ナイス!

助かったわ。

特許料としての印税なら多分数%程度だろうし、これまでの経験からある程度基準となる物もあると思うのよね。

それに高級食器がそんなポンポン売れるもんでもないでしょうから印税もそんな高額にならないだろうしさ。

グレイソンさんの話だとまずは私が特許を取る、その費用は侯爵家が出してくれる。

無事に特許が取れたらその特許を丸ごと買い上げるか印税を払う方式にするか検討するとの事。

成る程、私としては特に異論はありません。

と言う事でそれでお願いしますと了承する。


「確かに承りました。」


グレイソンさんの〆の言葉でこの日はこれで終わったのだけれど結論から言うと後日通常通りに食器を1つ製造する毎に印税を支払う方式にすると決まった。

丸ごと買い上げるのはどうしても至急お金が入用な場合の時で、私のように特にお金に困ってないのなら特許を丸ごと売るのは得ではないと言う理由で通常の方式に落ち着いた。

そしてこれ以降私の所にちょっと引くくらいのお金が入ってくる事になるとはこの時思いもしなかった。

だって高級食器だもん、売れたら儲かるんだよねマジで。

それと庶民でもちょっと頑張ったら手が届くくらいの、お祝いとかプレゼント用途にと売り出した食器がバカ売れしたのも大きかった。

後年メイワース領は冒険者と焼き物の領と言う一風変わった名誉を得る事になる……。





この日アシュリー様一行と別れてから私たち4人は冒険者ギルドへ向かった。

くーちゃんとさくちゃんが狩ってくれた獲物を買い取りに出したお金を受け取りに行く為。

前回がメチャクチャ大量にあったからきっと買い取り額もそれなりに期待できるのではと思っているのよ。

そんな事をみんなと話ながらギルドの窓口へ顔を出す。

あ、今日はメイジーさんなんだ。

ミランダさんはお休み?

ふーん、じゃあ今噂の彼氏さんとデートかもね。

そう言ったらメイジーさんは苦笑しながら「あの二人仕事中もずーっとイチャイチャしてるんですよぉ。」と言う。

ダメじゃん。

ギルマスもミランダさんもちゃんと仕事しようよ。

そんな話をしながらもしっかりと手を動かして仕事をするメイジーさんが有能だわ。


「うえっ?!」


メイジーさんが変な声を出す。

そしてこちらをチラリと見て小声で「あまり人前で言わない方がいいくらいの額が振り込まれてますよ」と。

そうなの?

やったね!

私は満面の笑みで3人の方を見ると状況がまだ上手く呑み込めてない3人は嬉しそうに笑った。

一応念の為にパーティー通帳にいくら入金されたのか聞いてみたら、うん、ちょっと吃驚した。

いい?聞いて驚くなかれ。

なんとなんと小金貨35枚にもなったのよ!

ねー、すごいでしょ!


「で、で、結局いくら入ったの?」

「入ったお金でお肉いっぱい買える?」

「これまでのパターンから考えてもイヤな予感しかしない。」


ドロシー正解!

今回もとんでもなかったわ。


「正直に言いなさい! いくらだったの?」


ドロシーの詰問調の問いにニヤリと笑い少しドヤッて答える私。


「えっとね、全部で小金貨35枚だったわ。」


「「「はぁっ?!」」」



しばし沈黙の後



「「「ええええぇぇぇぇっ!」」」


っと声が響き渡る。

ちょっと、声が大きいって。

大袈裟だなぁ、もう。


「大袈裟だなぁじゃないわよ。これで吃驚するなって言う方が無理よ。」

「そうだよー、そんなにお肉ばっかり買えないじゃない。」

「いや、メロディ1回お肉から離れて。 そうじゃないかなぁとは思ってたけどまさかそこ迄とは……。」


「因みにね、キングとアーチャーとメイジで小金貨20枚だったよ。儲かっちゃったね。 この3匹がやっぱダントツで高かったわ。」


ここから一旦私が立て替え払いしてたパーティー用の制服代を引いて、更にパーティー資金を徴収。

残ったのを4人で均等割りすると1人あたま約小金貨7枚ってとこかしらね。


「「「えっ?! 小金貨7枚っ?!」」」


そだよ。

今回は沢山狩れたからイイ稼ぎだったね。

くーちゃんとさくちゃんに感謝だね。


「ダメだよ、そんなに受け取れないよ。」

「そうだよー、私たち一緒に付いていってごはん食べてのんびりしてただけなのにこんなに貰っちゃ悪いよ。」

「私もそう思うな。魔物を倒したのだって全部オルカの従魔が倒したんだから本来なら全部オルカの物になっても可笑しくないんだよ?それを何で4等分なの?」

「だよね、ドロシーの言う通りだよ。 4等分は私も可笑しいと思うよ。 メロディもそう思うでしょ?」

「思う思う。 だって小金貨7枚って言ったら私たちの半年分の稼ぎと変わんないんだよ? それをパーティー結成してから僅か10日あまりで稼ぐなんてどう考えても可笑しいよ。」


あれー、思ったより反発が強いな。

金額が大きかったから余計に反応してんのかな。

でももう各人の個人通帳に振り込んであるからね。


「返品は受け付けません!」


私は笑顔でにっこり言い切る。

断固として返金には応じないよと言う姿勢が伝わったのかどうやら諦めてくれるみたい。

けれど理解も納得もしてない様子で今回は最初だったから仕方なしって感じで渋々了承したって所かな。

次からは絶対ダメだからね!とリズに釘を刺された。

そして影のリーダードロシーから提案が。


「今後はパーティーとして討伐依頼を受けて私たちも戦闘に参加した場合のみ4等分で、それ以外特にくーちゃんさんたちが狩って来た場合は3/4をオルカの取り分とする事!」

「あ、それイイかも。」

「それでも私たちは何もしなくてもお金が入って来るから本当は良くはないんだけどねー。」


「ブーブー。 ドロシーの横暴でーす!」


「異論は認めませんっ!」


くっ、ドロシーが手強い。

しかし私も諦めない。

私たち友達なんだから友達の為に何かしてあげたいって思うのは当然じゃない?

そう言ったら「気持ちは有難いけども程度問題だよ」ってドロシーに諭された。

ぐうぅ、ドロシーの正論に反論出来ない。


「そうだよ、友達だからこそ対等じゃないと。」

「だよねー、誰か1人が一方的に持ち出すのは可笑しいと思うもん。」


こんな時に限ってリズもメロディもまともな事言うのズルいよー。


「それにオルカはあんな大きなお屋敷を維持して行かなきゃならないし孤児院の子たちのお給金も払わなきゃならないでしょ? お金はいくらあっても足りないんだよ、多すぎて困る事はないんだから。 まさかあの子たちを路頭に迷わせる気?」


私はブンブンと激しく首を横に振る。


「でしょ? だったらあのお屋敷の主としてあの子たちの雇用主として、私たちのパーティーリーダーとして、そしてくーちゃんさんたちのご主人様としてしっかりしないと!」


はい、ゴメンなさい。

私が悪かったです。

ぐうの音も出ません。

降参です。


「分かってくれたらいいの。 もう今後はこんなの無しだからね。」


ねぇ、ドロシーがこんなにしっかりしてるんだからもうこの際ドロシーがリーダーで良くない?

ダメ?

なんで?

私の方が知名度があるおかげで他の3人の影が薄くなって助かるって。

私は客寄せパンダか何かですか!

むう、納得いかないわー。

私がほっぺた膨らませてぷりぷりしてると両側からリズとメロディにほっぺたツンツンされた。


「そんなに可愛いく怒っても逆効果だよー。」

「オルちゃん怒っても可愛いでちゅねー。」


それを見てドロシーもクスクスと笑っているし。


ふんだ、もういいもん!


そう言うと更に笑われちゃったよ。

無念。







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