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第152話 オルカの陶芸教室 ② ~なんで領主様が?!~

さぁみんな出来たかなぁ?

まだの子はいる?

粘土は足りてる?


「「「出来たー!」」」

「「はーい。」」

「「もう少し。」」


ふむふむ、子供たちは概ね出来てるみたいで大丈夫そうね。

こっちにはお鍋をスープ皿だと言い張るダメなお姉ちゃんが約1名居るけどそれは参考にしちゃダメだからね。

そう言うと子供たちは口を開けて大爆笑していた。


「えー、オルカ酷いよー。私にとってはこれは間違いなくスープ皿だよぉ。」


ぷくっと頬っぺたを膨らませてぷりぷり怒ってるけど、それ可愛いだけだからね。

んー、よちよち。

オルカお姉さんが頭ナデナデしてあげる。


「しょーがない、今日の所はこれで勘弁してあげる。」


すぐに機嫌が直るメロディ、ちょっろ。

それを見ていた子供たちが私も私もと頭を撫でて欲しいとやって来る。

年長の子は流石に照れや恥ずかしさが勝ってしまって言って来なかったけど小さい子たちはそんなの関係ないからね、エラちゃんを筆頭に女の子たちと顔を赤らめながら数人の男の子がわらわらーっとやって来た。

ワクワク顔で頭をちょこんとこちらに向けて来る。

ぐはっ、可愛い。

顔を赤らめながら恥ずかしそうにしている男の子も可愛いじゃないの。

あ、念の為言うけど私は幼女趣味やショタ好きではないからね。

中身はコッテコテのおじさんだから。

ま、それはこっち置いといて、せっかく子供たちが頭撫でてって来てるんだから撫でてあげないとね。


「はい、良く出来ました。」

「君も、良く出来たね。」

「エラちゃんも頑張ったね、えらいえらい。」


そう言いながら一人一人順番に頭を撫でてゆく。

頭を撫でてあげると満足そうに目を細める子供たち。

うん、みんなニコニコだ。

カワユイのう。


子供たちの頭を撫でたあと子供たちには一旦元の場所に戻って貰う。

それから私は各テーブルを順番に周りながらそれぞれの子供が作った作品をストレージに収納してゆく。

あたかも魔法鞄(マジックバッグ)に収納している風に見せかけてストレージに収納する。

ストレージに入れる時に子供の名前を聞いてからストレージに収納すると、ちゃんと誰が作った物なのか分かるようになるのが素晴らしい。

女神様謹製のストレージが有能過ぎる。

作った本人はポンコ……こほん、ちょっと抜けてるのにね。

全員分回収したら次の予定をみんなにお知らせする。

本当はこれから乾燥させたり素焼きしたり、釉薬を掛けて本焼きしたりと時間も手間も掛かるんだけど、そう言う面倒な部分は今回は全部こっちでやっておくから次来たときは焼きあがった作品に絵を書いてもらうよって。

そうだね、次来るのは5日後くらいになるかな。

準備が出来次第連絡しますと院長先生に伝える。

さぁみんな、手を洗っておいで。

それから今日もお肉置いていくから楽しみにしててと言って私の陶芸教室は終了した。


「お姉ちゃんバイバーイ!」

「またねーっ!」


「うん、バイバイ。」


「使徒様、はあぁぁぁ。」


「いや、そんなに拝まないで。」


「お肉のお姉ちゃんありがとー!」


「はい、私が変なお肉屋さんです。」


私が冗談っぽくそう言うとみなクスクスと笑っている。

ただ1名ドロシーだけはジト目で残念な子を見るように私を見ていたけど。

くはっ、何か新たな扉が開きそうになるからその目はヤメて、癖になるから。

薄っすらと開いた扉に新たな可能性を見出した私だった。



それからの数日間私がした事は、乾燥、素焼き、釉薬を掛ける、本焼きだ。

これらの作業をストレージの中で魔力の続く限りする。

と言っても実際に私がするんじゃなくて、私の各種スキルと『創造魔法』さんがやってくれるだなんだけどね。


乾燥。

これはストレージ内で特に問題もなく出来た。

各種スキル群と『創造魔法』の合わせ技でそれ程魔力を消費せずに出来たのは重畳だった。

問題は焼きの部分、これが難題だったのよ。

なんせみんなそれぞれ形も大きさも違う物を作るもんだから全部一緒くたに魔法でチョチョイのチョイって訳にはいかなくて。

だから大きさ毎に分けてそれぞれ個別にストレージ内で焼く事にした。

んでね、本来ならそれぞれの作品に対し適切な火力と適切な焼き時間があるんだけど、そんなの素人の私に分かる訳がない。

なのでその辺の所はアバウトに『創造魔法』さんに丸投げした。

よって魔力消費が嵩み、素焼きだけで丸2日掛かる事になった。

同じように、釉薬を掛けて乾燥それから本焼きにも丸2日掛かる事になり、結果当初の予定通り4日間作業して翌日孤児院に行く事になる。

けれど苦労した甲斐あって出来上がった作品はどれもピッカピカ。

ツヤツヤつるつるの白いボディが美しい子ばかり。

ただの1つも割れる事なく全部上手く焼き上がったみたい。

さすが私の『創造魔法』さんである。

で、この4日の間に冒険者ギルドに行って依頼を出して来た。

最終工程の上絵付けをしたら最後の焼きに入る訳だけど、その時は私の『創造魔法』さんで()()んじゃなくて実際に窯で焼こうと思っている。

こっちの世界に来た当初に作ったはいいが使ってなかったあの薪窯を使うつもりなのね。

薪窯で実際に焼く時の薪の管理とか、焼き終わったあと窯が冷えるまで子供たちが窯に触れて火傷とかしないように見張りしたりとかそうゆうのをしてくれる人が必要になって来るんだけど、それをリズとメロディとドロシーに指名以来って形でギルドに依頼して来た。

都合3日間、依頼主は私じゃなくて院長先生って事にして貰った。

勿論費用は私が出すんだけど、私が出すって言ったら3人は絶対に受け取らないと思うから院長先生からって事にして貰って院長先生からは許可は貰った。

なので今4人で冒険者ギルドに居る訳だけども。

ギルマスが私たちを見つけて声を掛けて来る。


「おーい、そこの姫さんの取り巻きの愉快な仲間たち3人さんよー。」


「愉快な仲間って何よ!」

「取り巻きじゃないもん、付き人だもん。」

「いや、メロディそれも違うよ。」


リズたちは三者三様のやはりそれっぽい反応をしている。

そんなだから愉快な仲間たちって言われるんだよね。

クツクツと笑うギルマスを見てリズが「もー、私たちも暇じゃないんですからね!」と小言を言っている。


「別に揶揄ってる訳じゃないぞ。」


いや、今のは完全に揶揄ってたでしょ、おちょくってたでしょ。

間違いなく確信犯よね。


「喜べ、リズとメロディとドロシー宛にに指名依頼が来てるぞ。 日にちは明日だ。」


「「ホントに?!」」

「誰からどんな依頼ですか?」


「ちょっと待ってろ、今見てみるぞ。 っと、孤児院からの依頼だな。すると依頼主は院長先生ってこったな。依頼内容は中庭で管理業務? なんだこれ。」


「院長先生から? なんで? まぁどの道明日孤児院に行くからいいんだけど。」

「依頼が中庭で管理…業務? は? 建物の修理とか? それとも畑耕すのを手伝うとか? ドロシーなんか聞いてないの?」

「ううん、全く。 院長先生もサラさんもパメラさんもそれらしい事ひとつも言ってなかった。」

「「「ううーん?」」」


3人とも首をひねるばかり。

そりゃそうだ、私も院長先生も内緒にしてたもん。

明日行って、実際に焼く時になれば分かるからさ。

ま、それはまだ言わないけど。


「別に悩む事ねーだろ。 院長先生からの依頼なら変な依頼は来るハズないしな。 大方万年金欠病のお前たちの事を哀れに思ったんだろう。」


「万年金欠病って……違ってはないけど。」

「でも何で院長先生が……、」


ふふ。

まあ、明日現地で驚いてよ。




明けて翌日。

私たちは孤児院に居るんだけど、なんでここに領主様がいらっしゃるのでしょう?

領主様ってお忙しいはずですよね?

それにアシュリー様も、満面の笑みで領主様の隣に立っている。

その後ろにはグレイソンさんと護衛の人が二人、アシュリー様の後ろにはジャスミンさんとベアトリーチェさんが。

アシュリー様が右手をそっと上げて嬉しそうに手を振っている。

私の隣には院長先生が居て、サラさん、パメラさん、リズたち3人は後ろに居る。

チラリと院長先生を見ると領主様を前にしていつもと変わらずニコニコと優しい笑みを浮かべている。


「久しいなペネロペ、息災であったか?」


「はい、日々恙なく過ごしております。 坊ちゃまもお元気そうで。」


「もう孫も居るのだ、坊ちゃまはヤメてくれまいか。」


「ふふ、そうでしたね。 ですが私にとっては貴方様はいくつになっても坊ちゃまで御座いますよ。」


穏やかに話す二人。

院長先生が領主様のお屋敷で働いていたって言うのは以前聞いたけど、今の会話から想像するにとても親しい間柄だったのが伺える。

どうやら領主様と院長先生とグレイソンさんだけにしか分からない何かがあるようだ。

みんなが不思議そうにその様子を眺めていると領主様が「コホン」と咳払いを1つしてちょっと照れ臭そうに説明してくれた。


「あー、彼女はペネロペは私の幼少期のナニーだったのだよ。 ナニーであると同時にとても優秀なガヴァネスでもあった。 そう言えばペネロペには子供の頃よく怒られたな。」


「坊ちゃまはわんぱくでしたもの。 授業を抜け出して遊びに行くなんて日常茶飯事でした。そうそうガスパー様と一緒によく遊んでおられました。ダメだと言うのに木登りをヤメなかったり、虫を捕まえてはそれをメイドに見せて驚かせたりとか。懐かしいですね。」


「いや、すまぬ。ペネロペには要らぬ苦労をかけさせたな。」


「いいえ、とんでもない。とても楽しい思い出で御座います。」


院長先生はそれはもう優しい目で領主様を見ているけど、その眼差しは孤児院の子供たちを見る目と同じように見えた。

院長先生にとっては領主様も孤児院の子供たちもどちらも同じ自分の子供のような存在なのだろうね。

その院長先生の優しい眼差しが隣にいるアシュリー様を捉える。


「そちらのお嬢様が?」


「ああ、娘のアシュリーだ。 さぁアシュリーご挨拶なさい。」


領主様に促され一歩前に出て淑女の礼をとるアシュリー様。


「メイワース侯爵が長女アシュリー・メイワースと申します。 以後お見知りおきを。」


その様子を見ていた領主様も院長先生も目を細めて穏やかに笑っている。


「まぁ、とてもしっかりとしたお嬢様ね。」


院長先生にそう褒められて薄っすらと頬を朱に染めるアシュリー様。

その様子を見て「お可愛らしい方ですわね。」と。

それで更に顔を赤くするアシュリー様がとても可愛らしい。

ついみなの顔が綻ぶ。


「ここで立ち話もなんですから応接室に移動しましょうか。」


院長先生にそう促されみんなで応接室に移動する。

サラさんとパメラさんはお茶の用意をする為に一足先に戻っていった。

応接室に入ってソファに座る。

なんだけど、ソファに座っているのは私と私の隣に院長先生が、向かいのソファには院長先生の前に領主様、私の前にはアシュリー様が座っている。

他のみんなはそれぞれの後ろに控えている。

ええっとね、前もそうだったんですけど、これはこれで中々に気まずいものがあるのよ。

向いに座っているアシュリー様は「お姉さま♪」と嬉しそうにこちらを見ているし、そんなアシュリー様を見て領主様も優しい目で見ている。

今座っている4人の内貴族でないのは多分私だけ。

院長先生に確認した訳ではないけれど領主様のナニーをしていたって事は院長先生は貴族の出ってのはまず間違いないわよね?

十中八九グレイソンさんも貴族の出だろうし、なんなら護衛の二人やジャスミンさん・ベアトリーチェさんも貴族のご令嬢かも。

なんかすっごいアウェイ感。

場違い感が半端ないんですけど。

背中にイヤな汗が流れる。

サラさんとパメラさんが皆の前にそっとお茶を出してくれた。


……。



…………誰もお茶に口をつけない。




この場では院長先生がもてなす側だからまずは院長先生からお茶に口を付けるのが普通なのよね?

なのだけれどその院長先生が口をつけないので誰もお茶に手を伸ばせずにいる……と思っていたら違った。


あ、あれ?

視線を感じる。

それもすーっごい視線を。


ソファに座る3人から見つめられ、得も言われぬプレッシャーを受ける。

え? 私?

思わず自分で自分を指さしてしまう。

貴族の淑女にはあるまじき振る舞いなんでしょうけど生憎私はそこらの平民の小娘、なので委細問題なし。

と思ったらどうやら違ったようだ。


「まずは使徒様から。」


と院長先生からお茶に口をつけるよう促される。

領主様は「ふむ、使徒様の御前であるからな。」と言い、アシュリー様は「流石オルカお姉さまですわ!」と。

おうふ、なんかとんでもない事になってるし。

ワタシヘイミン。

けど私が口をつけないと始まらないのでそっとお茶に口をつける。

それが合図でみなお茶を飲み始める。


「ほう、悪くない。」


「そうなの、値段の割に美味しいのよ。結構気に入ってるの。」


どこそこのお茶が良いとかあそこのはとても入手が困難だとか、まぁ平民には全く無縁の話をする院長先生と領主様。

こうゆう所がやはり貴族なんだなぁと思う。

お茶で喉を潤した後、いよいよ今日のメイン最後の上絵付けだ。


前回と同じように食堂で絵付けをするので食堂へ移動する。

サラさんとパメラさんは先に行って段取りをすると言っていた。

移動は勿論領主様も一緒。

つまりアレですか、領主様も絵付けなさる訳ですね。

絵付けをする食器に関しては自分用に沢山作ってあったからそれ使えばいいよね?

けど手とか服とか汚れちゃうかもしれないのにいいのかな?

不敬とかならないよね?


メロディいつもの調子でポカやらかしたりとか、子供たちも楽しくてはしゃぎ過ぎたりしないとイイのだけど。

むむ、心配だわ。





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