第15話 私専用の武器「ベレッタ92オルカ改」
一夜明けて翌朝、テントの中で身体ちょい重ダルで目覚める。
実はね、昨日の夜ついに来ちゃったのよアレが。
こちらの世界に来ておよそ2週間。
ただ今絶賛女の子の日真っ只中なのよ。
精神が身体に引っ張られてんの。
だから急に女の子みたいな言葉遣いになってんのかって?
いやいやいや、私最初から紛うことなき女の子だよ?
ボンッキュッボンッだよ?
巨乳だよ、美少女だよ?
なんにも可笑しい事ないじゃん。
なんせ初めての事だから何をどうしていいやらでさ。
こっちには鎮痛剤もないし途方に暮れかけてたんだけど、魔法の『鎮痛』を使ってみたらこれがまぁ痛みに効いてくれてね。
ありがたい事に私のは軽い方なんだろうね。
だから動くのは何とかなりそう。
テントからゆっくりと這い出て周りの様子を窺う。
うん、どうやら危険はないようね。
こうやって常に周りを気にするのが当たり前に出来るようになってきた。
良い傾向だと思う。
危機管理は大切、安全第一。
竈に火を入れて朝ごはんの用意をする。
1合炊きメスティンでお昼の分を炊きながら小さい方の片手鍋で雑炊を作る。
「んふふ~♪」
雑炊の具は塩抜きした干し肉と焼き魚。
あとそこらで摘んできた食べられる香草の類い。
焼き魚は半分は雑炊に、半分はお昼のおにぎりの具にする。
まだまだサバイバル感ありありだが、それでも衣食住が整いつつあるのは実感している。
「いただきます。」
「やっぱお米は美味しいなぁ」
朝ごはんを食べたら塩で歯磨きをする。
相変わらず指を口に突っ込むと言うおよそ女子らしくない事をしているが、歯磨きしないよりは全然いい。
健康大事。
そして朝のステータスチェック。
「ステータス」
こちらの世界に来て14日目の私
名前 オルカ・ジョーノ(城之内 薫)
種族 半神 界渡り人
職業 森人 巨乳 美少女
年齢 13歳
HP 105/105
MP 1,699/1,719
ユニークスキル
言語理解
創造魔法
スキル獲得優遇
魔法の才能
芳香異体
ストレージ /時間経過無効1つ・容量制限有(地球一個分)・時間経過有1つ
スキル
魔法 火 LV3
魔法 水 LV5
魔法 風 LV5
魔法 土 LV7
魔法 木 LV7
マッピング LV5
鑑定 LV6
分析 LV3
魅了 LV4
気配遮断 LV5
探知 LV5
探索 LV5
索敵 LV5
警戒 LV5
木材加工 LV6
金属加工 LV4
魔道具作成 LV1
魔法付与 LV1
採取 LV6
採掘 LV4
並列処理 LV4
解体 LV2
料理 LV3
魔力操作 LV3
豪運 LV777
女神の祝福
HP/MP 自動回復(小)
毒・麻痺・呪い・魅了・混乱等の状態異常耐性(小)
相変わらず各ステータスの伸びがおかしい。
職業が無職から森人へと変わった。 ねぇ、それって職業なん?
おおっ、ついにHPが増えてる! って5だけだけど……。
MPに至っては最大MPが1,719ってどうゆう事? これ毎日10%づつくらい伸びてんだけど?
各スキルも順当以上にレベルアップしてるんだよね。
『鑑定』さんはLV6になって二重鑑定が出来るようになったし表示される情報も増えた。
『探知』なんかも有効距離が長くなって使いやすくなった。
『採取』や『採掘』も伸びてるし、『並列処理』もレベルが上がった事で、これまで2分割だったのが3分割出来るようになった。
これで『探知』と『警戒』を同時に常時割り当て出来るようになり、私の安全度がグッと上がった。
あとはまた新しいスキル『分析』、『解体』、『料理』、『魔力操作』、『魔道具作成』、『魔法付与』が生えてた。
「分析」とよく似た言葉に「解析」がある。
両者の違いはと言うと、「分析」は物事を細かく分解してどんな要素で成り立っているかを調べる事で、「解析」とは「分析」で得たデータがなぜそのようになっているかを調べる事だと思う。
なので私が『分析』を得る事が出来たのは設計図を書いたからだと思っている。
『解体』はお魚を下ごしらえした時に、『料理』は調理で、『魔力操作』は結界石に魔力を移したから?だと思う。
『魔道具作成』と『魔法付与』は魔力銃を作ったからだと思う。
と言うかそれしか考えられない。
火魔法が思ったより上がってないな、なぜなんだろう?
火力不足感は否めないが、そこは新たに作った魔力銃が補ってくれるから大丈夫。
あと一番分からないのは魅了が上がっている事よ。
ねぇ、私が何をしたと言うの?
食事情が少し改善されて毎日水浴びしてるくらいだよ?
そんなくらいで魅了が上がったんじゃ堪んないよ。
私罪作りな女になっちゃうよ?
もはや突っ込むのがお約束と化したステータスチェックを終えて、使った分のお米を『創造魔法』で作って補充して「結界石」に魔力を込めてこちらも補充しておく。
いよいよ昨日作った魔力銃の試し撃ちをしてみよう。
革の胸当てを装備しグローブを嵌めて、外套を羽織る。
銃は予備も含めて全部で3丁作った。
石礫の弾は1発づつ作っていると大変なので最初の1発だけ気合入れて作って、後は最初の1発を見本に指定して創造魔法で大量生産した。
これだと効率もいいし、しかも魔力消費も抑えられて一石二鳥だったりする。
取りあえず1500発程作っておいた。
作りすぎだって? だって心配なんだもん。
マガジンも10個程作って弾は装填済み。
まずは銃3丁とマガジン3つをストレージから取り出す。
スライドを動かしチャンバーに弾を1発込めてスライドを元の位置に戻しマガジンを挿入する。
カチリ。
小気味良いクリック感、私は安全レバーを操作する。
実は私は前世で実弾射撃をした事がある。
新婚旅行で海外へ行った時に妻と一緒に実弾射撃をして遊んだのだ。
緊張の瞬間。
腰を軽く落とし、両手で銃を構える。
最初の1発。
ドキドキする。
ちゃんと弾は発射出来るのか?
撃鉄を起こし、照準をじっと睨む。
引き金に掛ける人差し指にぐぐっと力が入る。
「ふぅ」
ダメダメ、余計な力が入っちゃってる。
もう一度最初からね。
右手で銃を握り引き金に人差し指を掛ける。
銃のグリップの下の方を左手で包むように握り、少しだけ腰を落とすように構える。
撃鉄を引き、的に照準を合わせて
パァーン!
火薬の炸裂音とはまた違う軽い破裂音にも似た音とともに弾が飛んで行く。
「っ!!!」
やった、成功!
火薬を使った実弾射撃とは違いあまり反動はなかった。
私の女の子の細腕でも十分に撃てる程度の反動でしかない。
これなら十分に実用に耐えうるわね。
さっきはでダブルアクション試したから今度はシングルアクションで検証ね。
同じように両手でしっかりとホールドし少し腰を落として照準を合わす。
そこから一気に引き金を引ききる。
パァーン!
よし、成功!
私は左手で小さくガッツポーズをとる。
思わず笑みがこぼれる。
自分で作ったものが上手くいくと嬉しいわね。
火薬で発砲する銃じゃないから煙とかは出ないんだけど、それでも私は分かってて銃を立てて銃口に向かって息を吹きかける仕草をする。
「ふーっ。」
ふふ、これ一遍やってみたかったのよね。
なんかとってもイイ気分。
私ってちょっとカッコイイ?
残りの2丁も同じようにシングルアクションとダブルアクションを検証して問題なく動作する事を確認して、準備は万端。
さて、これから狩りのお時間。
まずは森の中心部へ向かって歩き始める。
女の子の日だから念の為もう一度『鎮痛』しておく。
『気配遮断』をかけながら『探知』を発動。
今の私の探知は半径100mくらいまでが有効範囲。
これくらい広範囲を探知出来るようになるととても助かる。
ん。 東へ少しずれたところ、距離にして60m程離れた所に小さな反応が2つある。
私は指を唾で濡らしピンと指を立てて風向きを確認する。
そして風下から気配を殺しながらゆっくりと近づいて行く。
いた。
額の真ん中に角が生えている兎だ。
『鑑定』さんの見立てでは「角兎」と出た。地球産の兎よりも2倍くらい大きい。
最弱の類の魔物で、一般的な食肉として流通しているとも書いてある。
なるほど、食用なのね。 ならば是非とも仕留めたい所ね。
草の陰に身を潜め、最新の注意を払いながら撃鉄を引く。
そっと引き金に指を掛ける。
角兎に照準を合わせ、息を吸い吐ききって姿勢が安定したところで息を止め引き金を引く。
パァーン!
当たった。 角兎の頭が揺れ、倒れるように崩れ落ちるのがここから見えた。
けれどもう1匹の方は銃撃に驚いたのか一目散に逃げて行ってしまった。
急いで角兎の所まで行くと、地面に倒れて事切れているのが見えた。
私は手を合わせ「ごめんね」とひと言謝る。
でもちゃんと美味しく頂くから。
私は倒した角兎をストレージへと仕舞って次の獲物を探し始める。
それから私は獲物を求めて森の中を歩き回った。
『探知』すると意外なほどに小さい反応が沢山ある事に驚く。
「すごい、この森は生命の宝庫ね」
反応がある度にそちらへ向かうが、時には近づくまえに気づかれて逃げられる事もあった。
やはり野生動物は気配に敏感なんだろうね。
上手く近づけたと思っても射撃を外してしまって逃げられた事もあった。
それでも最終的には3羽の角兎を仕留めることが出来たのはラッキーだったかな。
これで3日分のお肉ゲットだもの。
テンション上がるわ。
一旦いつもの河原に戻って仕留めた兎さん達の解体作業に入る。
兎さんを見るとどれも頭に穴が開いて銃創が出来ていた。
反対側を見ると貫通している、これは一撃だ、即死だったろうと思いちょっと安心する。
長い時間痛い思いをしなくてすんだのなら良かった。
残酷なようだけれど弱肉強食の世界なのだから仕方ないんだよ。
兎さんに手を合わす。
太い血管を切り、蔦で縛ったら川に漬けて血抜きと低温処理をする。
血抜きが終わったら内臓を取り出して廃棄ね。
穴を掘ってその中にポイする。
皮を剥いだら部位ごとに関節で切り分けて皮と骨付きお肉はストレージへ、その他の食べられない部分は内臓と一緒にポイで最後に焼却して終了。
あ、角とクズ魔石は確保したよ。何かの役に立つかもしれないからね。
こっちの世界にやって来てついに新鮮なお肉を手に入れたよ♪
フライパンもある、塩もある、香草もある、お米もある。
ならばメニューは兎さん焼肉定食に決まりだ。
食べられる根菜類やキノコ類も採取済みなのでそれらも付け合せにする。
やったね、今日はごちそうだわ。
さぁいつもの野営している拠点に戻ろうか。